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パッと見同じだけど、今までのノリで使おうとしたら文字入力で“困った”――Armベースの「Surface Pro(第11世代)」実用レビュー【第1回】

ITmedia PC USER 2024年8月8日 18時35分

 日本マイクロソフトが6月18日に発売した個人向けの「Surface Pro(第11世代)」と「Surface Laptop(第7世代)」は、AIに関する処理性能を強化した「Copilot+ PC」の初号機として登場した。

 同社はプロモーションであまり言及していないが、両モデルはArmアーキテクチャベースのCPUコアを備えるSoC「Snapdragon X Plus」「Snapdragon X Elite」を搭載している。Armアーキテクチャは、従来のWindows PCで広く使われてきたIntel(x86)アーキテクチャのCPUとは命令体系が異なるため、アプリはArmネイティブのものか、エミュレーションを介してIntelアーキテクチャのものを使う必要がある。

 Copilot+ PCには興味があるものの、Armアーキテクチャゆえにアプリがしっかり動くかどうか不安で踏ん切りが付かない――そんな筆者のもとに、日本マイクロソフトから「Surface Pro(第11世代)かSurface Laptop(第7世代)を使ってみませんか?」という誘いがあった。ちょうど良いタイミングだったので、同社の誘いに乗ってSurface Pro(第11世代)を長期間レビューすることにした。

 今回は、レビューするSurface Pro(第11世代)の概要と、普段通りに使おうとしていきなり“困った”話をしようと思う。

●レビューする「Surface Pro(第11世代)」の概要

 長期レビューするSurface Pro(第11世代)は、発売時点における最上位構成だ。Microsoft Store(直販サイト)における販売価格は39万4680円となっている。具体的な仕様は以下の通りとなる。

・SoC:Snapdragon X Elite X1E-80-100

・メモリ:32GB(LPDDR5X-8448規格)

・ストレージ:1TB SSD(PCI Express 4.0接続)

・ディスプレイ:13型有機EL(2880×1920ピクセル/最大120Hz駆動/HDR対応)

・ポート類:USB4×2、Surface Connect(電源入力兼用)

・無線通信:Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)/Bluetooth 5.4

・OS:Windows 11 Home(バージョン24H2)

 SoCのSnapdragon X Elite X1E-80-100は、「Snapdragon X Elite」の上から2つ目のモデルだ。CPUコアは最大3.8GHz駆動で、2コア限定で4.2GHzまでブーストできる。GPUはコアQualcomm独自の「Adreno」で、DirectX 12をサポートする。目玉のNPU(ニューラルプロセッサ)はQualcomm独自の「Hexagon」で、ピーク時の処理性能は45TOPS(毎秒45兆処理)だ。

 SSDはM.2のType 2230(幅22×長さ30mm)で、モジュールの入手性はさておき、ユーザーでも比較的簡単に交換できる構造だ。ただし、公式には認定技術者による交換が必要とされている。自分で交換するのは“自己責任”となるので注意しよう。

 2基のUSB4端子は、USB PD(Power Delivery)による電源入力と、DisplayPort Alternate Modeによる映像出力に対応している。3.5mmイヤフォン/マイクジャックは備えないので、音声を有線で出力したい場合はUSBオーディオデバイスを用意する必要がある。

 OSはWindows 11 Homeをプリインストールしているのだが、一般向けにはまだリリースされていない「バージョン24H2」となっている。これはArmアーキテクチャのCopilot+ PC向けの“先行リリース”という位置付けのようで、Snapdragon X Plus/Eliteを搭載する現行のCopilot+ PCは、全てこのバージョンが初期搭載される。

●パッと見はIntelアーキテクチャと変わらない

 繰り返しだが、Surface Pro(第11世代)はArmアーキテクチャのSoCを採用している。しかし、パッと見ではIntelアーキテクチャのCPUを使っているデバイスとの差は“全く”といっていいほど分からない。セットアッププロセスも同様なのでなおさらだ。

 有機ELディスプレイを搭載しているせいか、レビュー機では「ダークモード」があらかじめ有効化されている。ライトモード(≒従来の白基調の画面)に慣れている筆者としては、むしろダークモードに面をくらってしまった。

 もっとも、IntelアーキテクチャのノートPCでも、有機ELディスプレイ搭載モデルは初期状態でダークモードが有効になっていることが多い。これからの時代は、ダークモードがデフォルトになっていくのだろうか……?

 アプリがArmアーキテクチャベースかどうかは、「タスクマネージャー」の詳細タブを使えば簡単に確認できる。「アーキテクチャ」欄に「ARM64」と表示されているアプリ(プロセス)は、きちんとArmネイティブである。「x86」または「x64」と表示されているプロセスは、エミュレーションによって動作しているプロセスだ。

 タスクマネージャーでも確認しない限り、外観からArmアーキテクチャを意識することはない――レビュー機を使い始めた当初はそう思っていたのだが、実はそうでもないという“現実”をすぐに突きつけられることになった。

●「ATOK」を入れてみたら、一部アプリで文字入力にトラブル なぜ?

 Windowsでは、日本語を含む一部言語の文字を入力する場合に「IME(Input Method Editor)」と呼ばれるアプリが必要となる。OS標準の日本語IMEとして「Microsoft IME(MS-IME)」が用意されているので、多くの人はそれを使っていると思う。

 しかし筆者の場合、使っている辞書セットの都合から、普段はジャストシステムのIME「ATOK(エイトック)」を利用している。そのため、何も考えずにSurface Pro(第11世代)にもATOKをインストールすることにした。

 インストール自体は問題なく完了し、再起動すると「ATOKスタートアップツール」で初期設定も行えた。

 ところがその後、事件が起こる。一部のアプリにおいて、ATOKを使った日本語入力ができないのだ。全てのアプリではない。あくまでも、一部のアプリのみで発生する事象だ。この場合、Ctrl+Shiftキーを押してMS-IMEに切り替えれば問題なく日本語を入力できる。

 なぜATOKで日本語入力を受け付けてくれないのか――ジャストシステムのWebサイトで動作要件を改めてチェックすると、「Arm版Windowsは動作保証外です」と記されていた。動作しないとも、動作するとも書いていないという状況だ。

 もう少し詳しく調べてみたところ、ATOKはIntelアーキテクチャのアプリでは文字入力可能で、Armアーキテクチャのネイティブアプリでは文字入力できないことが判明した。つまり、IntelアーキテクチャのIME(現在のATOK)は、Armアーキテクチャのアプリで文字入力できないということなのだ。

 恐らく、この問題を解決できる方法はIME(ATOK)のArmネイティブ対応しかないと思われる。ジャストシステムさん、どうにかなりませんかね……?

 セットアップを完了し、IntelアーキテクチャベースのPCと同じように使えると期待したところ、いきなり文字入力の面でつまずいてしまった筆者。ArmアーキテクチャのSurface Pro(第11世代)を使いこなすことはできるのだろうか?

 今後、機会を見て不定期で本機のレビューを続けていく。楽しみにしていてほしい。

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