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初代LibrettoやDynaBook J-3100に会える! 「ダイナブック大作戦 in 秋葉原」で35周年を迎えたdynabookを振り返ってきた

ITmedia PC USER 2024年8月10日 11時30分

 Dynabookは8月9日、ベルサール秋葉原(東京都千代田区)でリアルイベント「ダイナブック大作戦 in 秋葉原」を開催した。同社の前身である東芝のPC部門が、世界初のノートPC「DynaBook J-3100 SS001」を発売してから35周年を迎えたことを記念した催しで、今日(8月10日)も午前11時から午後7時30分まで開催されている。入場は無料だ。

 イベントでは、初代から最新の「dynabook R9/X」まで、dynabook(DynaBook)の歴史をたどれる展示が行われている他、AI(人工知能)を身近に感じられるワークショップ/セミナーや体験イベントなどが実施されている。

 この記事では、歴代dynabookの展示を中心に、本イベントの見どころを紹介する。

●これまで35年を凝縮した「The History of dynabook」展示

 会場へ入るとあちらこちらで目にするのが「dynabook×AI」のサインだ。これはワークショップの会場で、「音楽生成・編集」「資料生成・作成」「動画生成・編集」の3つの“切り口”でPC(dynabook)から活用できるAIを体験できる。

 ……のだが、AI体験をする前に、まずdynabookの歴史を“一気見”できる展示コーナー「The History of dynabook」を見てみよう。

dynabookのオリジン

 コーナーの最も左側、つまり年表でいうところの最も古い場所に置かれていたのは、1987年7月に発売されたポータブルPC「J-3100GT」だ。PC/AT互換機をベースに、東芝が独自に日本語表示機構を追加した「J-3100シリーズ」の第2世代に相当し、日本においてラップトップPC市場が本格的に立ち上がるきっかけを作ったモデルとなる。

 外観は、1980年代に普及したワープロ専用機(東芝でいうところの「Rupo」)にそっくりだが、それよりも分厚い。「ラップトップ」とはいうものの、膝上で使うには大きすぎる印象もある。バッテリー駆動にも対応しない。

 その隣にケースに入れられて展示されているのが、1989年6月に発売されたDynabook初号機「DynaBook J-3100 SS001」だ。その名の通り、J-3100シリーズの新モデルという位置付けだったが、J-3100GTと比べると非常にコンパクトで、フットプリント(設置面積)はA4用紙サイズにまで縮小している。

 文字通りラップトップで使えるレベルだ。「世界初ノートPC」と名乗ったのも納得である。

熱転写プリンタ内蔵ノートPC

 その隣には、1993年に発売された「DynaBook EZ 486P」が展示されている。

 名前の通り、Dynabook EZシリーズはPC初心者を意識したモデルだ。1992年に登場した初代機「Dynabook EZ」は世界で初めてアプリをプリインストール(初期導入済み)としたことでも注目を集めた。

 DynaBook EZ 486Pは、DynaBook EZの流れを引き継いだモデルで、CPUにIntelの「486SX」を搭載してパワーアップした……のだが、より注目すべきポイントとして熱転写プリンタを内蔵していたことが挙げられる。本体にプリインストールされていたワープロアプリ(ジャストシステムの「一太郎dash」)の機能キーを印字したカードが付いているのも相まって、ワープロ専用機っぽい外観だった。

UMPCの走り「Libretto」

 DynaBookから派生する形で、両手で持って使えるミニノートPC「Libretto(リブレット)」シリーズが誕生したのは1996年だ。

 初代の「Libretto 20」は、6.1型TFTカラー液晶ディスプレイを採用し、Windows 95をプリインストールしている。当時のプレスリリースによると、重さは約840gだったという。

液晶一体型デスクトップPCもあった

 「ノートPC一筋」のように見えるdynabookシリーズだが、1999年にはその技術を活用した液晶一体型デスクトップPC「DynaTopシリーズ」を展開した。

 DynaTopは宙に浮いたようなディスプレイや側面に配置した赤いラインなど、インテリアを意識したデザインが特徴的で、キーボードはディスプレイスタンドに重ねて収納することができる。現在でいうところの「オールインワンPC」だ。

マルチメディア強化型ノートPCも

 マルチメディア対応を意識したモデルとして2003年に登場したのが「DynaBook G7シリーズ」だ。左側面にDVDマルチドライブを1基搭載し、右側面の「マルチスタイルベイ」には追加のDVDマルチドライブの他、TVチューナー、ブリッジメディアアダプター(SmartMedia/CFカード/メモリースティックリーダー)、HDDといったオプション周辺機器を搭載できた(TVチューナーが付属するモデルもあった)。

 スピーカーなどサウンド回りはHarman/Kardonの監修を受けており、当時としては非常に高音質だった。

 その他、TVを楽しむことに特化したAVノートPC「DynaBook Qosmio G10シリーズ」(2004年発売)や「DynaBook Qosmio G20シリーズ」(2005年発売)、Intelが提唱する「Ultrabook」に準拠した世界最薄のモバイルノートPC「dynabook R631」(2011年発売)なども展示されていた。

 なお、歴史展示コーナーからちょっとだけ離れた場所には、DynaBook J-3100 SS001と、最新のdynabook R9/Wの分解モデルが展示されている。ノートPCの“進化”ぶりがよく分かる展示なので、ぜひ見ておきたい。

●NPUを内蔵した「dynabook R9/X」を使ったAIワークショップ

 会場の奥にはステージがあり、AIを軸に置いたワークショップやトークセッションが行われていた。このステージでは、AIにおける推論処理を高速化するNPU(ニューラルプロセッサ)を統合したCPUである「Intel Core Ultra 7プロセッサ」を搭載した「dynabook R9/X」が使われていた。

 初日となる9日には、生成AIを使った業務効率化などを提案するAI活用アドバイザーのKEITO氏による「AI画像生成講座」と、生成AIの技術を生かした動画制作を手掛けるYouTuberのNorihiko氏による「AIを活用したアイドルミュージックビデオ制作講座」、SNSマーケティングやAIコンサルティングを行うmikimiki(扇田美紀)氏による「SNS投稿デザイン講座」などが行われた。

AI画像生成ワークショップ

 KEITO氏によるAI画像生成ワークショップでは、画像生成AIの仕組みや、画像生成AIの1つである「Adobe Firefly」で“できること”の説明が行われた後、短いプロンプトの入力、効果(フィルターのようなもの)を選ぶと、どのような画像を作ることができるかを確認した後、「Luminar Neo(体験版)」で編集する手順を手を動かしつつ一通り学べた。

 Luminar NeoはAIにより明るさやシャープネスの変更、空や時間帯の生成などを行える画像編集ソフトだ。「Adobeシリーズでもそれはできるのでは?」と思うかもしれないが、Adobe PhotoshopやLightroomはそれなりに学ばないとどこにどのツールがあるのか把握しづらいが、Luminar Neoで直感的で分かりやすい位置にメニューを用意しているのが印象的だった。

 KEITO氏は画像生成の楽しさだけでなく、著作権を侵害する可能性についても伝えてくれた。Adobe Fireflyなら、「Adobe Stock」の画像やオープンライセンスの画像を使って学習している上、既存キャラクター“のような”画像を作れないので、安全に利用できるという点も強調していた。

ミュージックビデオ制作講座

 Norihiko氏は、以前からアイドルのMV(ミュージックビデオ)制作を行ってきたという。生成AIの登場で「仕事が奪われる」という感情よりも「これをどのように仕事に生かして業務効率化が図れるか」を模索するというポジティブな考え方により、今の立ち位置を得るようになったそうだ。

 ミュージックビデオ制作講座では、人物の静止画を「Runway」に読み込ませて、ズームイン/アウトさせたり、左右にパンさせたりする動きをつけることに挑戦した。「あまり大きく動かすと、絵柄がかなり変わってしまうので注意してください」という指導を受け、わずかに動きのある4秒の動画を作ることに成功した。

 作った動画に歌詞入りの音源を読み込ませて、先ほど作った動画に口の動きが加わったときには、思わず「おお」とつぶやいてしまった。

 作業用PCを用意してもらった上に、ツールの使い方まで無料で教えてもらえる(しかも、何らかの登録や入会なども不要)機会はめったにないので、Dynabookの太っ腹ぶりに感謝の念を表明したい。

体験コーナーでも同じ生成AIを試せる

 「ワークショップだけでは理解が追いつかなかった」、もしくは「もっと時間をかけてAIによる画像生成や動画生成を試したい」という人のために、冒頭で述べた「dynabook×AI」ブースが用意されている。

 コーナーにはスタッフが常駐しており、使い方を個別に教えてもらえるので、こちらも活用したい。

●“温故知新”が詰まった楽しいイベント

 イベント会場の外では「輪投げ」や「けん玉」「ヨーヨー釣り」など、縁日風の催しも実施されている。

 たまたま通りかかった人も気軽にチャレンジし、景品を引き換えるためだけに会場へ入ったものの、展示物を熱心に眺めていたのが印象的であった。

 また、現在開発中というXRグラスの体験会も行われていた。開発機は、フレーム上部から投影する光をグラス部分の上半分に貼り付けた銀色のライン状のフィルムに反射させて映像を目に届けるという仕組みになっていた。銀色のラインとラインの間が空いているにもかかわらず、明るくくっきりとした映像を見ることができる。

 また、下半分は視界を遮るものがないので、キーボードを見る、デスク上の飲み物を見るということを容易に行えそうだ。

 なお、このXRグラスを製品として販売するかどうかは、ニーズを見て決めたいという。スタッフは「現実世界に情報を重ねて見る、そんな世界がもうすぐやってくると思うし、そうなってほしい」と期待していた。

 35周年を迎えたdynabookは、「世界初」というステータスに甘えることなく、将来をも見据えているということが分かる内容であったし、生成AIの使い方をワークショップで体験させることにより、AIを身近に感じてもらいたいという主催者側の目的も果たすイベントであると感じた。

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