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AMDの新型CPU「Ryzen 9 9900X/9950X」の真価はどこで発揮される? 試して分かったこと

ITmedia PC USER 2024年8月14日 22時5分

 AMDの新型デスクトップ向けCPU「Ryzen 9000シリーズ」のうち、ハイエンドモデル(Ryzen 9000Xシリーズ)の上位モデル「Ryzen 9 9900X」「Ryzen 9 9950X」の日本における発売日時が8月23日午前11時に決定した。日本における想定価格は以下の通りだ。

・Ryzen 9 9900X:8万8800円

・Ryzen 9 9950X:11万9800円

 Ryzen 9000Xシリーズの下位モデル(Ryzen 5 9600X/Ryzen 7 9700X)のレビューを先日お伝えしたばかりだが、この記事では上位モデルとなるRyzen 9 9900X/9950Xのレビューをお伝えする。

●Ryzen 9 9900X/Ryzen 9 9950Xの概要(一部おさらい)

 ベンチマークテストの結果の前に、まずはRyzen 9 9900XとRyzen 9 9950Xについて簡単におさらいしておこう。

 両CPUは、COMPUTEX TAIPEI 2024に合わせて発表された。先述の通り、Ryzen 9000Xシリーズとしては上位に相当し、下位モデルの「Ryzen 5 9600X」「Ryzen 7 9700X」と併せて米国では7月31日に発売される予定だった。

 しかし、ハイエンドモデルは初期生産分に品質面で不備があったため、在庫の差し替えを行うために発売が延期された。

 両CPU共に、CPUコアは最新のZen 5アーキテクチャを採用する。一方で、GPUコアはRDNA 2アーキテクチャベースの「Radeon Graphics」(2コア)で据え置かれているため、特にゲームや映像編集に活用する際はグラフィックスカード(外部GPU)を別途用意することが望ましい。

 CPUコアの製造プロセスは、TSMCの 「N4X(4nm)」で、先代の「Ryzen 7000シリーズ」比で微細化が進んだ。今回レビューする両CPUの場合、CPUコアのユニット(CCD:Core Complex Die)は2基構成となる。一方、入出力回りを担うI/Oダイは、先代と同じくTSMCの「N6(6nm)」プロセスで製造される。

 今回レビューする2モデルは、先に紹介した下位モデルと比べるとTDP(熱設計電力)が高めの設定となっている。具体的にはRyzen 9 9900Xが120W、Ryzen 9 9950Xが170Wと下位モデルの約1.85~2.62倍となっている。ただ、Ryzen 9 9900Xについては、先代の「Ryzen 9 7900X」と比べると50Wも引き下げられている。IPC(クロック当たりの命令実行回数)の改善を含めて考えると、消費電力当たりの性能(いわゆる「ワッパ」)は大きく改善しているといえそうだ。

 もっとも、下位モデルと比べるとTDPが高いことに変わりはない。別途用意する冷却機構については、水冷を含めて性能の高いものを選ぶ必要がある。

 ワッパの改善もあるため、両CPUは先代(Ryzen 9 7900X/Ryzen 9 7950X)からの単純交換だけでも、一定の性能向上(と消費電力の削減)を期待できる(※1)。

(※1)Ryzen 7000/8000Gシリーズ対応のマザーボードを流用する場合、出荷時期によってはUEFI(BIOS)を事前に更新する必要があります

 その他、主な仕様は以下の通りだ。

・Ryzen 9 9900X

・CPUコア数:12基24スレッド(3.8GHz~5.5GHz)

・L1キャッシュ:960KB

・L2キャッシュ:12MB

・L3キャッシュ:64MB

Ryzen 9 9950X

・CPUコア:16基32スレッド(4.3GHz~5.7GHz)

・L1キャッシュ:1280KB

・L2キャッシュ:16MB

・L3キャッシュ:64MB

 次ページからは、Ryzen 9 9900X/Ryzen 9 9950Xの実力をベンチマークテストを通してチェックしていく。

●ベンチマークテストで実力をチェック!

 ここからは、Ryzen 9 9900XとRyzen 9 9950Xの実力をベンチマークテストを通してチェックする。今回はAMDから借りたCPUと、各種自作PCパーツを組み合わせてベンチマーク環境を構築している。

 また比較用として、過去にベンチマークテストを実施したRyzen 9000Xシリーズの下位モデルとRyzen 7000Xシリーズのスコアや、今回のテスト環境と同様に外部GPUとしてGeForce RTX 4080 SUPERを搭載したPCにおけるスコアを掲載している。

 直近で行ったRyzen 9000Xシリーズの下位モデルのテストを除き、現在とはテスト環境が異なることもあり、あくまでも参考程度に捉えてもらえれば幸いだ。

CINEBENCH R23

 まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスを確認できる「CINEBENCH R23」を実行した。スコアは以下の通りだ。

・シングルコア

・Ryzen 9 9950X:2215ポイント

・Ryzen 9 9900X:2187ポイント

・Ryzen 7 9700X:2196ポイント

・Ryzen 5 9600X:2174ポイント

・Ryzen 9 7950X:2056ポイント

・Ryzen 9 7900X:2012ポイント

・Ryzen 7 7700X:2001ポイント

・Ryzen 5 7600X:1965ポイント

・Core i9-14900K:2253ポイント

・Core i7-14700K:2115ポイント

・Core i5-14600K:2009ポイント

マルチコア

・Ryzen 9 9950X:4万293ポイント

・Ryzen 9 9900X:3万2616ポイント

・Ryzen 7 9700X:1万9858ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万6682ポイント

・Ryzen 9 7950X:3万7811ポイント

・Ryzen 9 7900X:2万8864ポイント

・Ryzen 7 7700X:1万9515ポイント

・Ryzen 5 7600X:1万4988ポイント

・Core i9-14900K:3万8042ポイント

・Core i7-14700K:3万3035ポイント

・Core i5-14600K:2万3602ポイント

 シングルコアのスコアについては、直近で測定したRyzen 5 9600XやRyzen 7 9700Xと大きな差がない。同じアーキテクチャで動作クロックにも大差がないので当然といえば当然だが、Ryzen 7000Xシリーズと比べるとシングルコアの性能は着実に改善していることは間違いない。

 マルチコアのスコアに目を向けると、Ryzen 9 9950Xは4万ポイントの大台に乗った。これまでも「Ryzen 9 7950X」や「Core i9-14900K」において4万ポイント近くを記録したことがあるものの、あくまで“近く”だった。

 今回、CPUに対するオーバークロックは特に設定していない。標準設定のままでも4万ポイントを超えるとは、新時代の到来を感じる。

 余談だが、筆者が先日まで使っていたメインPCのCPU「Ryzen Threadripper 3970X」(32コア64スレッド)も、マルチコアのスコアは4万ほどだった。Ryzen 9 9950Xは半分のコアで同等の演算能力を有すると評価されているわけで、やはり進化の度合いはすごいと思う。

PCMark 10

 次は、PCの総合的な性能をチェックできる「PCMark 10」の結果を見ていこう。

 ここからは、Ryzen 9000XシリーズとCore i9-13900Kを搭載するPCで比較していく。総合スコアは以下の通りだ。

・Ryzen 9 9950X:1万949ポイント

・Ryzen 9 9900X:1万632ポイント

・Ryzen 7 9700X:1万646ポイント

・Ryzen 5 9600X:9120ポイント

・Core i9-13900K:1万54ポイント

 PCMark 10は、Webブラウジングやオフィスソフトの利用といった処理の軽いものから、ビデオ会議や画像編集といった重たい作業まで、PCで行われる多くの作業をまとめてテストする“総合テスト”だ。テスト中は、意図的にいくつかの作業を並行して行うシーンも用意されている。

 並行作業は、物理コア(あるいはスレッド数)が多いCPUほど優位に立ちやすい。しかし前回、8コア16スレッドのRyzen 7 9700Xは、合計で24コア32スレッドを備えるCore i9-13900Kを上回るスコアを記録した。1コア当たりの性能改善に加えて、「全部がPコア」という設計方針が奏功したものと思われる。

 今回のテストでは、Ryzen 9 9900XはRyzen 7 9700Xに僅差で負けているが、これは誤差の範囲だろう。そして、Ryzen 9 9950XはRyzen 7 9700Xに勝っているものの、そこまで大きな差とはなっていない。

 日常利用だけではRyzen 9 9900X/9950Xの性能は持て余す――そういうことなのだろう。

3DMark

 続けて、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」の主要テストを一通り実行してみた。今回はDirectX 11ベースの「Fire Strikeシリーズ」と、DirectX 12ベースの「Time Spyシリーズ」における総合スコアは以下の通りだ。

・Fire Strike(フルHD:1920×1080ピクセル)

・Ryzen 9 9950X:5万719ポイント

・Ryzen 9 9900X:4万9572ポイント

・Ryzen 7 9700X:4万9218ポイント

・Ryzen 5 9600X:4万6596ポイント

・Core i9-13900K:4万781ポイント

Fire Strike Extreme(WQHD:2560×1440ピクセル)

・Ryzen 9 9950X:3万3054ポイント

・Ryzen 9 9900X:3万2274ポイント

・Ryzen 7 9700X:3万1862ポイント

・Ryzen 5 9600X:3万783ポイント

・Core i9-13900K:3万1613ポイント

Fire Strike Ultra(4K:3840×2160ピクセル)

・Ryzen 9 9950X:1万8036ポイント

・Ryzen 9 9900X:1万7833ポイント

・Ryzen 7 9700X:1万7730ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万7339ポイント

・Core i9-13900K:1万7982ポイント

Time Spy(WQHD:2560×1440ピクセル)

・Ryzen 9 9950X:2万5014ポイント

・Ryzen 9 9900X:2万4848ポイント

・Ryzen 7 9700X:2万4506ポイント

・Ryzen 5 9600X:2万2391ポイント

・Core i9-13900K:2万6660ポイント

Time Spy Extreme(4K:3840×2160ピクセル)

・Ryzen 9 9950X:1万3806ポイント

・Ryzen 9 9900X:1万3328ポイント

・Ryzen 7 9700X:1万2066ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万1239ポイント

・Core i9-13900K:1万4118ポイント

 Ryzen 9000Xシリーズ内で比較をすると、「Ryzen 9 9950X>Ryzen 9 9900X>Ryzen 7 9700X>Ryzen 5 7600X」という感じで上位ほどスコアが向上している。

 当初、「Ryzen 9 9900X/9950Xなら、Core i9-13900Kに勝てるのではないか?」と思っていたのだが、DirectX 11ベースのFire Strikeシリーズでは“ほぼ”完勝、DirectX 12ベースのTime Spyシリーズでは全敗という結果となった。惜しい……。

 このあたりのスコア差は、今後のOSやデバイスドライバの最適化などで埋まったり逆転したりという可能性もある。一概に「最新世代でも、Intelの1世代前の最上位には勝てない」と判断するのは尚早だろう。

 今回は時間の都合で試せなかったが、AMD純正のユーティリティーアプリ「Ryzen Master」などを使えば、スコアをもう少し改善できたかもしれない。

 ここまでのテストではっきりと言えるのは、「シングルコア性能の向上の効果は大きく、まだまだ伸びしろがあるはず」ということだ。

FF14旧ベンチマーク/FF15ベンチマーク

 続いて、実際のゲームをベースとするベンチマークテストを実行してみよう。

 まず、比較的軽量な「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14旧ベンチマーク)」を試してみる。

 本来であれば、最新バージョンの「ファイナルファンタジーXIV: 黄昏のレガシー ベンチマーク(FF14新ベンチマーク)」を実施したかったのだが、比較用のCore i9-13900K環境においてテストした時点では同ベンチマークはリリース前だった。そのため、今回はあえて旧バージョンでのテストを実施して比較する。

 画質設定は「最高品質」として、フルHD(1920×1080ピクセル)/WQHD(2560×1440ピクセル)/4K(3840×2160ピクセル)の3つの解像度でテストを行った。結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 9 9950X:3万7376ポイント

・Ryzen 9 9900X:3万5826ポイント

・Ryzen 7 9700X:3万7517ポイント

・Ryzen 5 9600X:3万6740ポイント

・Core i9-13900K:3万9402ポイント

WQHD

・Ryzen 9 9950X:3万1416ポイント

・Ryzen 9 9900X:3万400ポイント

・Ryzen 7 9700X:3万2215ポイント

・Ryzen 5 9600X:3万2076ポイント

・Core i9-13900K:3万4457ポイント

4K

・Ryzen 9 9950X:2万1332ポイント

・Ryzen 9 9900X:2万1055ポイント

・Ryzen 7 9700X:2万1780ポイント

・Ryzen 5 9600X:2万1703ポイント

・Core i9-13900K:2万2292ポイント

 こちらのテストでは、なぜかRyzen 9 9900X/9950Xのスコアが伸び悩んだ。さすがに「あれ?」と思ったので、設定を見直してみたのだが、おかしい部分は見受けられない(前回の計測と同様に、CPUやマザーボードの標準設定のままとしている)。何度か計測し直したのだが、数値に有意な変動はなかったため、今回はそのまま掲載することとする。

 伸び悩んだ原因として考えられるのは、CPUやGPUへの最適化が十分でないことだろう。FF14旧ベンチマークはリリースが古いため、Ryzen 9 9000Xシリーズの多コアを生かし切れないという面もあるかと思う。

 では、負荷のやや重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」では、スコアに差が付くのだろうか。今回は画質を「高品質」として、FF14旧ベンチマークと同じ3つの解像度でテストを行った。結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 9 9950X:2万2282ポイント

・Ryzen 9 9900X:2万1309ポイント

・Ryzen 7 9700X:2万1915ポイント

・Ryzen 5 9600X:2万1446ポイント

・Core i9-13900K:2万2100ポイント

WQHD

・Ryzen 9 9950X:1万9413ポイント

・Ryzen 9 9900X:1万8939ポイント

・Ryzen 7 9700X:1万9134ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万9564ポイント

・Core i9-13900K:1万9398ポイント

4K

・Ryzen 9 9950X:1万1654ポイント

・Ryzen 9 9900X:1万1861ポイント

・Ryzen 7 9700X:1万1936ポイント

・Ryzen 5 9600X:1万1958ポイント

・Core i9-13900K:1万2154ポイント

 フルHDとWQHDでは、Ryzen 9 9950XはCore i9-13900Kよりもスコアが高い。Ryzen 9 9900Xも、スコア的には悪くない。全体的にRyzen 9000Xシリーズは、物理コア数で勝るCore i9-13900Kといい勝負をしている。

 スコアを細かく見てみると、Ryzen 9000Xシリーズの中で下位モデルが“逆転”して勝利しているケースもある。これは先述の通り、多コアへの最適化がなされていないことが原因として考えられる。

 だが、CPUのシングルコア性能の向上が総じてスコア向上に貢献しているという構図は変わらない。後述するが、多コアのメリットを明確に生かせるシーンもある。

●より高負荷なゲームタイトルでも強い?

 CPUだけでなく、GPUにも大きな負荷を掛ける場合、Ryzen 9 9900X/Ryzen 9 9950Xはどこまで“戦える”のだろうか。今回は「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(アーマードコア6)」「Cyberpunk 2077」「Microsoft Flight Simulator」の3タイトルで、平均フレームレートをチェックしてみよう。

アーマードコア6

 アーマードコア6では、フルHD/WQHD/4Kの3解像度で画質設定「最高」にしてテストを行った。表示モードは「フルスクリーン」、上限フレームレートは「120(fps)」として、ゲーム前半の関門ステージ「ウォッチポイント襲撃」をプレイした際の2分間の平均フレームレートを「CapFrameX」で計測している。

 結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 9 9950X:119.8fps

・Ryzen 9 9900X:119.8fps

・Ryzen 7 9700X:119.7fps

・Ryzen 5 9600X:119.8fps

・Core i9-13900K:119.3fps

WQHD

・Ryzen 9 9950X:119.5fps

・Ryzen 9 9900X:119.7fps

・Ryzen 7 9700X:119.8fps

・Ryzen 5 9600X:119.8fps

・Core i9-13900K:119.7fps

4K

・Ryzen 9 9950X:116.9fps

・Ryzen 9 9900X:117.1fps

・Ryzen 7 9700X:116.6fps

・Ryzen 5 9600X:117.8fps

・Core i9-13900K:118.1fps

 アーマードコア6は、比較的最近(といっても1年前)のゲームタイトルで、PlayStation 5などの据え置き型ゲーム機にも展開されている。そのこともあり、グラフィックスの美麗さの割に、CPUやGPUへの負荷は軽めだ。そのため、ある程度強いグラフィックスカード(GPU)を用意すれば、4K解像度でも上限の120fps近いフレームレートを平均して記録できる。

 とはいえ、CPUかGPUのどちらかが低性能だと良好なフレームレートは出ない。開発コストを最適化する観点から、最近は大作ゲームタイトルでも据え置き型ゲーム機とPCの両方で楽しめるケースが増えた。

 Ryzen 9000Xシリーズを搭載するPCを用意すれば、ゲーム環境の“一本化”も現実的な選択肢になるだろう。

Cyberpunk 2077

 現行のPCゲームの中でも、上位を争う高負荷タイトルであるCyberpunk 2077では、ゲーム内に設けられたベンチマーク機能を使って平均フレームレートのチェックを行った。

 ゲーム設定はプリセットの「レイトレーシング:ウルトラ」を選択し、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度でテストした。DLSS(超解像技術)も有効にし「クオリティ・フレーム生成あり」をオンにしている。結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 9 9950X:224.82fps

・Ryzen 9 9900X:218.38fps

・Ryzen 7 9700X:224.81fps

・Ryzen 5 9600X:217.69fps

・Core i9-13900K:218.31fps

WQHD

・Ryzen 9 9950X:181.99fps

・Ryzen 9 9900X:183.17fps

・Ryzen 7 9700X:180.37fps

・Ryzen 5 9600X:184.26fps

・Core i9-13900K:150.12fps

4K

・Ryzen 9 9950X:120.6fps

・Ryzen 9 9900X:119.61fps

・Ryzen 7 9700X:120.05fps

・Ryzen 5 9600X:120.33fps

・Core i9-13900K:102.01fps

 Cyberpunk 2077で高画質と高フレームレートを両立するには、高品質な超解像技術とフレーム補間機能を備える「高性能なGPU」だけではなく、演算性能の高い「高性能なCPU」も求められる。

 今回、Ryzen 9 9950Xはもちろんのこと、Ryzen 9 9900Xも優秀なフレームレートを記録している。GPU(GeForce RTX 4080 SUPER)の優れた性能をしっかり引き出せた結果といえる。

 もっとも、このゲームタイトルをもってしても、12基あるいは16基のCPUコアを“全て”生かし切っているかというとそうでもない。ただ、多コアと高クロックによるフレームレートの“底上げ”効果は十分に得られている。重たいPCゲームには、Ryzen 9000Xシリーズが有用だ。

Microsoft Flight Simulator

 Microsoft Flight Simulatorも、重量級タイトルとして定番だ。高精細に描かれる風景は、さながら実写を見ているかのような再現度だ。一方で、その分読み込まれるデータ量が多いことから、GPUだけでなくCPUにもかなりの負荷がかかる。

 今回はDLSSをオンにしてフレーム生成も有効とし、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度においてディスカバリーフライトの「モナコ」をAI操縦し、CapFrameXで2分間の平均フレームレートを計測した。結果は以下の通りだ。

・フルHD

・Ryzen 9 9950X:178.9fps

・Ryzen 9 9900X:179.81fps

・Ryzen 7 9700X:192.4fps

・Ryzen 5 9600X:188.4fps

・Core i9-13900K:188.4fps

WQHD

・Ryzen 9 9950X:181.0fps

・Ryzen 9 9900X:186.4fps

・Ryzen 7 9700X:191.3fps

・Ryzen 5 9600X:178.2fps

・Core i9-13900K:185.3fps

4K

・Ryzen 9 9950X:146.1fps

・Ryzen 9 9900X:147.4fps

・Ryzen 7 9700X:146.6fps

・Ryzen 5 9600X:147.5fps

・Core i9-13900K:170.3fps

 このゲームでも、Ryzen 9 9900X/9950Xの平均フレームレートは優秀……なのだが、前回テストした下位モデルとほぼ同等か、少し下回ってしまっている。これも、ゲーム側が多コアを生かしきれていないゆえの結果だと思われる。

 とはいえ、1コア当たりの性能は高いゆえに、肉眼でゲーム画面を見ている限り極端に引っかかるような動作が劣る場面はない。動作は非常にスムーズだ。

 各種テストの結果だが、まずRyzen 9000シリーズの底力として、やはりシングルコアの性能向上の恩恵がとにかく大きいということが挙げられる。

 さまざまなシチュエーションでシングルコア性能が向上した結果、スコアが先代や競合と比べ大きく伸長している。どんなGPUを組み合わせるかにもよる部分も大きいが、ゲーミング用途に選ぶCPUとして有力な進化を遂げていることは間違いない。

 その上でRyzen 9 9900XやRyzen 9 9950Xに絞って話をすると、≪マルチコアをどこまで生かせるかが、選ぶ上での鍵となる。現状では、10基を超えるCPUコアを使い倒せるアプリの数はまだ限られる。

 特にゲームはその傾向が顕著だ。多コアCPUは、ゲーム側の最適化状況によって本領を発揮できない可能性もゼロではない(むしろ動作が遅くなるタイトルもありうる)ことは覚えておくといいだろう。

●クリエイター系アプリは多コアを生かしやすい

 PCで行う「重たい処理」は、何もゲームに限ったことではない。写真や動画の編集でもCPUパワーが求められるシーンは多い。時間の都合で、今回は「Adobe Lightroom Classic」を使って写真(RAWファイル)の現像(書き出し)処理に要する時間のみ計測した。

 本アプリでは写真の編集時にはGPUもフル活用しているが、写真の現像処理にはCPUを使っている。つまり、現像はCPUのパフォーマンスを見る上で有用なのだ。

 テストでは、レンズ交換式カメラ「Nikon Z 7II」で撮影したRAWファイル100枚分を、解像度を維持したままJPEGファイルとして書き出すのにかかる時間を測定した。結果は以下の通りだ。

・Ryzen 9 9950X:30.1秒

・Ryzen 9 9900X:31.8秒

・Ryzen 7 9700X:33.4秒

・Ryzen 5 9600X:38.3秒

・Core i9-13900K:47.6秒

 前回もRyzen 9000Xシリーズの下位モデルの現像スピードに驚いたところだが、Ryzen 9 9900X/9950Xは、CPUコアが増えた分だけさらに高速化していて一層驚いた。

 筆者の現在のメインPCは「Core i7-12700F」なのだが、こちらは同じ書き出しに1分以上の時間がかかる。Ryzen 9 9950Xに乗りかえたら、半分以下の時間で書き出しを完了できてしまう――これは本当にビックリするしかない。

 仕事柄、筆者は写真を100枚以上現像することが意外と多い。製品発表会などの後は、かなりまとまった数の写真の編集/現像を行う。プライベートでも、子供の学校行事などはベストな写真を数枚選んだつもりが気付けば100枚を超えているようなこともざらだ。

 いずれにしても、「少しでも早くデータ(JPEG写真)を送らなければならない」ことも多いため、書き出し時間を大きく短縮できるRyzen 9000Xシリーズは、それだけで魅力的に感じられる。

●「多コア」が必要かどうかで分かれる必要性

 Ryzen 9000Xシリーズの中でも上位モデルとなるRyzen 9 9900X/9950Xだが、正直にいうとゲーム“だけ”ではその優れた性能を生かし切れないかもしれない。もちろん、1コア当たりの演算性能は高いので、ゲームのパフォーマンスも高めてくれることは間違いないのだが、それなら前回紹介した下位モデルでも十分に役割を果たせる。

 ゲームだけでなく、クリエイター系アプリを使う機会が多いユーザーにこそ、Ryzen 9 9900X/9950Xはピッタリだ。まだまだ“余力”を感じるので、今後さらに重たいゲームタイトルやアプリが出てきたとしても、余裕で動かせるだろう。これからPCのアップグレードや新調を行う際に「長く使える1台」を目指すのであれば、両CPUは最有力候補となるのは間違いない。

 ちなみに消費電力だが、今回のテスト環境ではアイドル時で「91W」、3DMark(Time Spy Extreme)実行中のピーク時でRyzen 9 9900Xで「546W」、Ryzen 9 9950Xで「573W」となった。さすがに、Ryzen 9 9950Xはやや“電気食い”だが、Ryzen 9 9900Xは思ったよりも消費電力が少ない(とはいえ、Ryzen 7 9700Xよりは大きい)。

 Socket AM5に対応するマザーボードやDDR5メモリなど、Ryzen 9000Xシリーズを迎え入れるに当たり、環境を刷新する必要がある人も多いとは思う。しかし、先述の通り、Ryzen 7000Xシリーズから単純に置き換えるだけでもパワーアップを図れる。価格も、Ryzen 7000Xシリーズの登場時と比べると“落ち着き”を感じる。

 Ryzen 9000Xシリーズは、先代や競合と比べても、魅力的な高性能コンシューマー向けCPUだと言っていいだろう。

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