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上下2画面合わせて20.5型! アイティプロテックの折りたたみモバイルディスプレイ「LCD15HC-IPSDUAL」は本当に使える? 試して分かったこと

ITmedia PC USER 2024年8月16日 12時30分

 アイティプロテック「LCD15HC-IPSDUAL」は、15.6型の画面を上下に2つ連結させたモバイルディスプレイだ。PCと1本のケーブルでつないだ状態で、2つの別々のディスプレイとして異なる内容を表示したり、上下合わせて1つのディスプレイとして使ったりと、さまざまな利用スタイルに対応する。メーカーから機材を借用したので、レビューをお届けしよう。

●画面は15.6型×2 重量は約1.7kgとかなりのヘビー級

 まずは通常のモバイルディスプレイと同じく、基本的なスペックから見ていこう。画面サイズは15.6型×2で、解像度はそれぞれ1920×1080ピクセルだ。IPS方式で、ノングレアのパネルを採用している。タッチ操作には対応しない。

 リフレッシュレートは60Hz、輝度は250ニト、コントラスト比は800:1、視野角は170度とされている。これらのスペックは上下どちらのディスプレイも共通で、同じパネルを使用していると見てよさそうだ。

 本体はヒンジで上下に連なっている。強度的にはノートPCのそれと同様で、じわじわと上の画面が倒れてくるような心配は不要だ。2つの画面は180度開けるのはもちろん、360度近くまで回転させ、山折りの状態で使うこともできる。さらにノートPCのように上の画面を立て、下の画面を寝かせた状態で使えるなど、実にフレキシブルに使える。

 スタンドは、たたむと背面にほぼ埋め込まれる構造で、取り外しはできない。この背面にはVESAマウントに取り付けるための75mm間隔のネジ穴が用意されており、スピーカーも配置されている。

 接続方式はUSB Type-CとHDMIで、USB Type-Cポートは映像/給電の両方に対応するポートが2基と、映像にのみ対応するポートが1基の計3ポートが搭載されている。これらはいずれも上下に連なったディスプレイの下の側に並ぶ。後述するOSDメニュー操作用のボタンも下側のディスプレイの右側面にあり、上下では下のディスプレイの方がプライオリティは高い。

 重量は公称値で1585g、実測では1689gと、同等サイズのノートPC並の重さだ。輸送時にはポーチの重量が加わるので、日常的に気軽に持ち歩くのはつらい。とはいえ、2画面合わせて20.5型相当のディスプレイと考えれば、同等サイズのディスプレイを持ち歩くのと比べて圧倒的に負担が少なくて済むことに違いはない。

 付属品は2本のUSB Type-Cケーブルに加え、USB Standard-A→USB Type-Cケーブル、HDMIケーブル、さらにUSBタイプのACアダプターが付属する。本製品は1本のケーブルで2つの画面に映像を出力できるが、消費電力もそれだけ多いことから、別途ケーブルによる給電が必要になる場合も多い。USB Standard-A→USB Type-Cのアダプターが付属しているのはそのためだろう。

 なお、ACアダプターを使わずに表示できた場合でも、バックライトは最大で70%、ボリュームは最大50%に制限される。外出先で一時的に使うだけならまだしも、デスク上に設置して日常的に使う場合は、ACアダプターは事実上必須と考えた方がよいだろう。

●ケーブル1本で3画面全て別々の内容を表示可能

 では、2つの画面の使い方について見ていこう。今回はWindows 11搭載PC×USB Type-C接続という組み合わせで試用しており、その他の構成では挙動が異なる場合がある。筆者環境では利用できない表示方法もあったので、考えられる理由についても詳しく述べる。

 最初にケーブルを接続した時点で、本製品の上下の画面それぞれに対して、PCの画面が複製モードで表示される。つまりノートPCの画面、本製品の上画面、本製品の下画面という3つの画面全てに、同じ映像が表示される。

 さすがに3画面全て同じ表示のまま使うニーズはあまりないと思われるので、まずはノートPC側で「複製」から「拡張」に切り替え、ノートPCと本製品とで別々の画面が表示されるようにする。さらに本製品側の設定画面から「画面を分割」を選択することで、ノートPCと本製品の上画面と下画面の3画面で全て異なる内容が表示されるようになる。

 しかし筆者の環境では「画面を分割」を選択していても、上下は別々のディスプレイとして認識されず、複製表示のままだった。ちなみにHDMI接続ではこの状態が正しく、上下の画面で別々の表示は行えないのだが、今回の筆者環境ではUSB Type-C接続であっても分割表示は行えなかった。

 そこで代替としてUSB Type-Cケーブル2本を用い、上下それぞれの画面をノートPCに接続したところ、すんなりと上下別々の画面が表示された。2本のケーブルで2台のモバイルディスプレイを接続しているのと同じなので表示できて当たり前なのだが、ノートPCの側が非対応でもこうした解決策が用意されているのは、ある意味で安心できる。

 なおUSB Type-CではなくHDMI接続の場合は、2つの画面に別々の内容を表示させることができず、2つの画面に同じ内容を表示するか、もしくは2つの画面を合わせてフルスクリーンで使う(後述)かの二択になる。macOSやiOS、Androidなどでも同様の状態になる。こうした機種ごと/接続方法ごとの制限は多いので気をつけたい。

●上下2画面を連結させて1画面としても利用可能

 続いて、もう1つの使い方である、本製品の上画面と下画面を連結させて1つの画面として使う方法を試してみよう。本製品の画面モードの設定で「フルスクリーン」を選択すると、本製品の上下画面が1920×2160ピクセルの1画面として認識される状態になる。20.5型相当の大画面を持ち歩いて使えるのは、大きなメリットと言える。

 こちらも最終的にはうまくいったものの、当初は解像度で1920×2160ピクセルという選択肢が表示されず、1920×1080ピクセルの画面が縦に2倍に引き伸ばされて表示されるトラブルに遭遇した。うまくいかなかった理由は電力不足で、外部の充電器をつないだところ、ノートPC側の外部出力にそれまでなかった「1920×2160」という選択肢が表示され、無事にフルスクリーン表示を行うことができた。

 ちなみにこの症状、本製品付属のUSB充電器とUSB Standard-A→USB Type-Cケーブルの組み合わせでは改善せず、市販の65W出力対応のUSB PD充電器とUSB Type-Cケーブルの組み合わせることで改善された。付属の充電器を使わないので自己責任になるが、どうしてもうまく行かない場合は、こういった方法があることも知っておくとよい。

 なお画面をフルスクリーンで利用する場合だが、いったん設定を行った後に電源をオフにすると、再び「フルスクリーン」から「画面を分割」に戻ってしまう。毎回フルスクリーンに戻すのはかなりの手間なので、ここは改善を要望したいポイントだ。

●OSDメニューは上下画面それぞれで独立 操作はやや面倒

 最後に、OSDメニューについてもチェックしておこう。OSDメニューは、本製品の上画面と下画面、それぞれについて用意されており、操作のためのボタンも独立している。それゆえ本製品の右側面には、7つのボタンが並ぶ格好になっている。

 もっとも7つものボタンを有しながらも、「戻る」ボタンが省かれているので、画面内で項目を1つ戻るには、「リターン」という項目を選ばなくてはいけないなど、面倒な操作を強いられる。そう頻繁に利用するわけではないため大きな問題ではないが、この辺りの作り込みはいま一歩という印象だ。

●相性らしき問題に注意 類似の他社製品も要チェック

 以上ざっと見てきたが、筆者の環境では表示に手こずったものの、機能的にはかなり優秀だ。実際に使われるのは「PCを含め3画面別々の内容を表示」か「本製品の上下をまとめて1画面としてフルスクリーン表示」のどちらかだと考えられるが、前者はシングルタイプのモバイルディスプレイを2台用意するよりも手間がかからず、後者は本製品ならではの機能ということで、実用性は極めて高い。

 それだけに、PCとの相性があるように見えるのは、少々気になるポイントだ。2画面を合体させて1画面として使うにあたっては、PCの外部出力の解像度が対応しているかどうかを調べておけば済むが、3画面バラバラに出力するのは、今回の筆者環境では1本のケーブルでは実現できず、原因も不明なままだ。

 前述の通り、今回は2本のケーブルを使うことで3画面別々の表示を行ったが、あまりスマートでないのは事実で、さらに試行錯誤の手間もかかる。このあたり、使用するPCとの相性はもちろん、相応のトラブルシューティング能力が必要になるだろう。

 実売価格は5万3990円ということで、15.6型のモバイルディスプレイを2台買うのと比べて、それほど価格面のメリットはない。本製品でしかできない機能、つまり2台まとめて20.5型相当のフルスクリーンとして利用できることにどれだけの価値を見いだせるかがポイントということになりそうだ。

 なお最後になったが、本製品には製造元が同一と思われる兄弟モデルが、他社(サンコー)から発売されている。こちらは前述の表示モードのうちフルスクリーンモードが利用できない代わりに、実売価格は3万9800円と本製品よりも約1万4000円安価なのが特徴だ。次回はこのサンコーの製品について、本製品と比較しつつチェックしたい。

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