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世界最軽量のPCをみんなで作る! 島根富士通の「富士通FMVパソコン組み立て教室」を体験してきた

ITmedia PC USER 2024年8月26日 16時5分

 島根富士通は8月24日、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)との共催で「第17回 富士通FMVパソコン組み立て教室」を開催した。組み立て教室では、小学5年生から中学3年生までの親子20組47人が軽量ノートPC「LIFEBOOK WU-X/X3」または「LIFEBOOK WU2/H1」の組み立てに挑んだ。

 今回の組み立て教室に当たり、共催者であるFCCLからPC USER編集部宛に「小中学生と一緒に、LIFEBOOKを組み立ててみませんか?」というお誘いを受けた。検討の結果、筆者が“編集部代表”としてチャレンジすることになった。この記事では、その模様をお伝えする。

●東は千葉県、西は福岡県から集まった20組

 今回の組み立て教室は、親子20組を島根富士通の本社工場に招待して行われた。7月1日から15日まで参加者を募集したところ、20組を超える応募があったため抽選をした上で、参加者を決定したのだという。

 場所が場所だけに、島根県内からの参加者が8組と一番多かった。その他、広島県と東京都から各3組、大阪府から2組、千葉県/愛知県/兵庫県/福岡県から各1組の親子が参加した。今回は親子の他に「同行者」も1人参加可能で、参加者の兄弟/姉妹が付き添うというケースも見受けられた。

●組み立てるのはモバイルノートPC「LIFEBOOK UH」

 教室で組み立てられたのは、FCCLのWeb直販サイト(富士通 WEB MART)で販売されているモバイルノートPC「LIFEBOOK UHシリーズ」の直販限定モデル「LIFEBOOK WU2/H1」または「LIFEBOOK WU-X/H1」のいずれかだ。価格はいずれも12万4800円で、希望者には1万6000円プラスすると「Microsoft Office Home & Business 2021」を追加できるようにした。

 WU-X/H1は14型モバイルノートPCとしては最軽量の約689gという点が魅力だ。一方、WU2/H1はバッテリー容量が大きい上、カラーを「ホワイト」「ブラック」「グレー」から選べる。いずれにしても“普通に”購入するよりも手頃であることから、お母さん“が”希望して本教室に参加することになったと語る参加者もいた。

 参加者(保護者?)が選んだモデルの内訳は以下の通りとなる。

・LIFEBOOK WU2/H2:合計8組

・グレー/Officeなし:2組

・ブラック/Officeなし:1組

・ホワイト/Officeあり:3組

・ブラック/Officeあり:2組

LIFEBOOK WU-X/H2(ブラックのみ):合計12組

・Officeなし:2組

・Officeあり:10組

 ということで、機種別では軽量性重視のWU-X/H2の方がやや多い。Officeの有無では「Officeあり」が圧倒的だ。

●「258点を13分」vs「43点を90分」

 参加者は集合したら、組み立て教室の会場に移動する。

 会場には机が並べられている。机の上にはエプロン、各種工具、ねじキット、ドライバー、ネジ締め練習キット、小物部品と作業確認用のタブレットPCなど、組み立てに必要なパーツ類があらかじめ用意されていた。ネジ締めに使われるドライバーは「大」「小」2種類が用意されており、大きなドライバーについては握り手のサイズが異なる「子ども用」「大人用」が用意されている。この辺は、2022年のイベントと変わりない。

 変わったポイントとしては、それぞれの机に島根富士通の「匠(たくみ)」が1人ずつ付いて、作業のチェックや手伝いをしてくれることが挙げられる(2022年は「呼び出し」式だった)。困ったことがあったら、すぐに聞けばいい。タブレットPCは、純粋に作業手順を確認するためのツールとなる。

 今回組み立てる2モデルには、258点の部品が使われている。島根富士通の匠(工員)は、これを1台当たり約13分で組み立てるのだという。教室では工程をデフォルメ(簡素化)して休憩を挟みつつ、43点の部品を約90分で組み立てることになる。

 デフォルメなしで13分で組み立てる匠に対し、組み立てに参加する親子はデフォルメして90分――それだけでも匠がいかにスゴいのかが分かる。

 ちなみに今回は、PC USER(筆者)を含む在京メディア3社も一緒に組み立て体験を行う。組み立てつつ取材ということになる。結構大変かもしれない……。

 教室の開始に当たり、FCCLの大隈健史社長があいさつに立った。

 大隈社長は「島根富士通は、日本にあるPCを作っている工場の中では一番大きくて、一番進んでいる工場だと自負しています。そこに皆さんをお迎えして、一緒にPCを作る体験をしていただいて『PCがどのように作られているのか?』ということを知っていただくことは、非常にうれしいことです。県外からいらっしゃった方も多いと思いますが、(イベントを通して)島根や島根富士通を感じていただいて、ひと夏の思い出にしていただければと思います」と語った。

 なお今回、大隈社長はFCCLの浜辺舞鈴さんと一緒に組み立て体験に参加した。浜辺さんは4月に入社したばかりの新入社員で、もの作りのDNAをあらゆる従業員に知ってもらう一環として、このような形になったようだ。

●部品を受け取り、ネジ回しの練習

 机上にある部品は、作業工程で使う“小物”だ。主要な大型部品は箱に入れられた、「AGV(無人搬送車)」によって会場に運び入れられた。

 このAGVは島根富士通の工場内で実際に使われているもので、パッケージ(箱)や部材などの運搬に使われている。例年通り、イベントのために「石見神楽」にちなんだ装飾も施されている。

 部品を受け取ったら、エプロンと手袋を着用してネジ回しの練習に入る。3種類のネジを3本ずつ、島根富士通純正の「ネジ締め練習キット」に締めていく……だけなのだが、ネジは意外と小さいこともありなかなか難しい。

●最初からクライマックスな作業

 ネジ回しの練習が終わったら、いよいよ組み立て作業に入る。先述の通り、今回は43点の部品を、休憩を挟みつつ90分で行う。

 作業は匠が普段しているものよりもデフォルメされている……のだが、幾つか実際の工程よりも難しい部分が組み込まれている。その典型例が、1つ目の工程「キーボードのネジ締め」だ。

 今回組み立てる2モデルでは、74本のネジでキーボードをCカバー(キーボードベゼル)に固定している。キーボードのサイズを想像すれば分かる通り、固定用のネジは非常に小さい。ゆえに通常、この工程は専用のネジ締めマシンによる自動化が行われている

 だが、今回の教室では74本のうち5本のネジをあえて“手締め”で締めるように仕向けけられている。

 繰り返しだが、ネジは非常に小さい。2モデルで使われているネジの中でも“最小”だという。ゆえに、大人(≒保護者や筆者)の指で締めようとすると“悪戦苦闘”待ったなしだ。

 しかし、さすがに落としたネジを拾うのは大変そうなものの、子どもは余裕でこの作業をこなしてしまう。手や指が小さいからだ。ノートPCの組み立てでは、子どもの方が有利に立てる部分も多そうだ。

●ケーブル類の取り付けは子どもも苦戦?

 キーボードのネジ止めが終わると、メインボード(マザーボード)の取り付け、USB Type-C端子を保護する金具の取り付け、各種フレキシブルケーブルの接続、スピーカーケーブルと進んでいく。

 メインボードは、デスクトップPCのそれよりも薄くてしなりやすい。取り扱いは注意を要する。とはいえ、Cカバーの指定された箇所にはめ込むだけだから、作業は簡単……と思いきや、ケース側の端子類に合わせてはめ込まないといけないので、意外と大変だ。

 一応、作業をしやすくするための「位置決めピン」は用意されているのだが、それでもビシッと一発で決まることは少なかった。

 デスクトップPCと比べると、ケーブル類も小さめだ。ネジ回しと同様に子どもの方が作業的に有利……と思いきや、先ほどのネジ回しと比べると苦戦傾向が見られた。恐らく、小さなコネクターを“真っすぐ”に差し込むのが大変だったのだと思われる。

 ここまでの作業が終わると、島根県の観光キャラクター「しまねっこ」が参加者を激励に訪れた。このようなイベントでは、しまねっこが参加者と一緒に「しまねっこのBI・HA・DANCE」を踊るのが恒例らしいのだが、目の前に組み立て途中のPCがあることもあり、しまねっこ(とお姉さん)が踊るのに手拍子を送る形となった。

●ディスプレイを取り付けて「ノートパソコン」らしく

 後半戦は、液晶ディスプレイやSSDなど、メインボード以外の“大物”の取り付けが続く。ケーブルも幾つか装着することになる。

 液晶ディスプレイのケーブルは、前半に取り付けたケーブル類と比べると大きく、取り付けやすいように見える。しかし、フレキシブルケーブルと同様に、真っすぐ差し込むのが意外と難しい。カメラのケーブルも同様で、やはり真っすぐ差し込むのが簡単ではない。

 世の中、簡単そうに見えることほど意外と難しい――ある意味で、社会勉強になる。

 2つのコネクターをつないだら、ケーブルの整理を行った上でヒンジのネジ止めと、底面上方の足(滑り止め)の取り付けを行う。

 何気ない作業に思えるが、ケーブルの整理が意外と大変だった。恐らく、ここは指の小さい子どもの方が有利だと思われる。

 組み立ても、いよいよ終盤。SSDやバッテリーを取り付けて、Dカバー(底面カバー)を取り付ければ完成……なのだが、ここからが“真の”クライマックスとなる。

 SSDの取り付けは、簡単なように見える。しかし、SSDモジュールを奥までうまく差し込めなかったり、差し込めたと思ったら浮いてネジ止めできなかったりと、意外な悪戦苦闘ポイントだ。

 バッテリーについては、選んだモデルによって容量が異なる。当然、物理的なサイズも違うが、ネジ止めの位置が異なるだけで、止めるネジの数(4カ所)に変わりはない。外れにくくするために、コネクターは結構固めで、その固さに苦戦する子どもが多いようだった。

 最後にDカバーを取り付ける……のだが、筆者的に一番焦ったのがこの作業だ。理由は2つある。

 1つは、2022年にLIFEBOOK WU2/F3の組み立てを体験した際に、Dカバーのネジを1カ所“切って”しまったトラウマである。力みすぎた結果なのだが、結論からいうとここは問題なくクリアできた。前回の反省を生かした結果ともいえる。

 もう1つは想定外だったのだが、Dカバーにあるコネクターの取り付けが難しいことである。2022年のWU-X/F3はDカバーに何も部品は取り付けられていなかったのだが、今回組み立てたWU-X/F3はDカバーにスピーカーが取り付けられており、そのケーブルの結線が必要なのだ。

 「ケーブルをつなぐのなんて、もう慣れたでしょ?」と思うかもしれないが、ケーブルの長さが(筆者としては)超ギリギリで、ケーブルがピンと張ってしまい、コネクターになかなかうまくはめられなかった。

 深呼吸をして、何とかはめることができたものの、再び“最後の最後”で焦ってしまった。

 他の参加者はどうかというと、Dカバーを固定するネジを締めきることに苦戦していた。というのも、本機のDカバーは2種類のネジ(小型×10+大型×2)で締めるのだが、大型ネジを規定の箇所まで締めきるのに意外と力が必要で、一部の子どもは締め切れなかったのだ。

●いよいよ完成!

 Dカバーを取り付けたら、司会の指示に従ってACアダプターを取り付けて、電源を入れて動作をチェックする。

 今回は、教室に参加したメディアを含む全てのグループが問題なく起動した。これで、組み立ては完了だ。

●自分で組み立てたLIFEBOOKで動画を制作

 今回のイベントでは、組み立てたばかりのLIFEBOOKを使った動画制作体験も行われた。講師を務めたのは、島根県松江市でTV番組の制作を行っているTSKエンタープライズDC(山陰中央テレビの子会社)の皆さんだ。

 制作する動画は出雲市の15秒CMだ。初めにLIFEBOOKのカメラとマイクを使って「WE LOVE IZUMO!」という映像を録画した上で、インストールされた素材を使って15秒ちょうどのCMを作る。

 意外と苦戦するかと思いきや、子どもたちは思った以上にスムーズに作っていった。むしろ、どの素材を使うのか選ぶのに時間を掛けていた(迷っていた)ようだ。今どきの子どもだからなのだろうか……?

 制作した動画は、USBメモリを使って持ち帰ることができた。良い思い出となりそうだ。

●工場見学では「ネジ締め競争」も実施

 動画制作体験の後は、3つのグループに分かれて工場見学が行われた。見学は「ネジ締め競争」「基板生産ラインの見学」「『ふくまろ』との交流」の3パートに分かれており、それぞれのグループが入れ替わる形で行われた。

ネジ締め競争

 ネジ締め競争は、その名の通りネジ締め機(電動ドライバー)で10本のネジを締めるスピードを島根富士通の匠と競うというものだ。もちろん、匠にはハンディキャップが設定されているのだが、それでも相当ネジ締めを高速に行うので、勝つのはなかなか大変だ。匠に勝利すると記念品がもらえるとのことで、子どもたちの目はかなり“マジ”だった。

 匠は地元のゆるキャラ「湯あがり美人姫やがみちゃん」を含む3人(?)の中からランダムで選ばれる。筆者が見学した回では、3人の中でも一番強いとされる三代さんに挑戦することになってしまった……のだが、三代さんに「ネジが足りなくなる」というトラブルが発生し、この回ではほとんどの子どもが三代さんに勝利していた。

基板生産ラインの見学

 島根富士通では、LIFEBOOK(ノートPC)用の基板(メインボードとサブボード)を自社生産している。

 同社の各種生産ラインは、基本的に平日の日中時間帯のみ稼働しているが、基板の製造ラインだけは原則として年中無休/24時間稼働なのだという。夜間も含めて作りだめした基板を、日中の生産ラインに回すというイメージだという。

 このラインは自動化がかなり進んでおり、係員は通常、ラインの稼働を監視するだけで済む。しかし「部品の実装不良(疑いを含む)」あるいは「部品切れ」の際は、係員の出番となる。見学中も、アラートを聞いたと思われる係員が作業している様子も見受けられた。

ふくまろ体験

 FCCLでは、独自の音声エージェント「いつもアシスト ふくまろ」の開発を継続している。2023年11月のバージョンアップでは、バックエンドに「ChatGPT」を用いることで応答内容の拡充を図っている。

 生成AIに注目が集まる昨今において、FCCLとしてAIに積極的に取り組んでいることを示すべく、ふくまろを体験する時間を設けたそうだ。

 筆者にとって約2年ぶりの取材となった富士通FMVパソコン組み立て教室だが、やはりノートPCの組み立ては難しい。デスクトップPCよりも基板は薄いし、コネクターは小さく、ケーブルの長さは多くの場合“ギリギリ”なので、かなりの“精神力”を求められる。日々、たくさんのノートPCを組み立てている匠の皆さんのありがたみを痛感した次第である。

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