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日本と米国で「ロボット掃除機」に対する意識は? ルンバでおなじみの「アイロボット」が調査して分かった違い

ITmedia PC USER 2024年8月30日 17時0分

 既報の通り、アイロボットジャパンは8月29日、ロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」の新製品を発表した。家事の時間を短縮できる、いわゆる「時産家電」へのニーズが高まっていることを受けて、ゴミ収集機能付きの充電ステーションが付属するRoombaとしては初めて、モップの自動洗浄に対応するモデルも投入している。

 本製品の発表に合わせて、同社は同日に「家電の消費傾向に関する調査」「自宅の掃除とロボット掃除機に関する調査」を公表した。前者は国内の30~50代の男女800人、後者は日本および米国でロボット掃除機を所有している各国200人(計400人)を対象としており、日本の消費者ならではの傾向を探ったという。

 8月29日に行われた新製品の発表会では、同社の挽野元社長と、米iRobot(アイロボットジャパンの親会社)のウォーレン・フェルナンデズ氏(製品マネジメント担当ディレクター)が両調査の解説を行った。日本人は、ロボット掃除機をどう思っているのだろうか……?

●買い控え傾向にある「家電」 しかし「時産」につながるなら話は別

 昨今、世界的に物価は高騰する傾向にある。そのこともあり、ある程度まとまった出費が求められる家電の購入をためらう人も少なくない。

 この流れは日本でも例外ではなく、アイロボットジャパンの調査では回答者の約半数(47.7%)が「家電製品を買い控える意識」を持っていると回答した。一方で、回答者の72.6%が時間の余裕を作り出す、いわゆる「時産」につながる家電(時産家電)なら購入を検討したいとも答えている。

 端的にいえば、時産はロボット掃除機を含む家電を購入する大きなモチベーションとなりうるということだ。

●時産家電は「予算超過」傾向もあり? 生まれた時間は何に使う?

 アイロボットジャパンでは、「ロボット掃除機」「ドラム式洗濯乾燥機」「食器洗い乾燥機」を共働き世帯における「令和の『三種の神器』」と定義している。共働き世帯でこれらを所有している人に絞って購入価格について尋ねたところ、回答者の約4分の1(26.2%)が予定よりも高価(あるいは上位)なモデルを購入したという。

 高価なモデルでも、「自分の時間を作り出すのに必要な投資」として妥当なら購入する動向が垣間見える。

 時産家電によって生まれた時間は「家族とのコミュニケーション」「睡眠」に加えて、他の家事に充当するという回答が多かった。

●買いたい家電のトップは「ロボット掃除機」

 今回の調査では、家電全般(24種類)について「最も購入したいもの」を尋ねた。するとロボット掃除機が1位となった。思った以上に、掃除の時間を短縮したいと考えている人が多いかもしれない。

 既にロボット掃除機を持っている人でも、63.8%はより時産につながるのであれば買い換えたいと考えており、共働き世帯に絞るとその傾向が顕著になったそうだ。

 今後も、ロボット掃除機へのニーズは盤石そう……と思いきや、日本でのロボット掃除機の普及率は思ったよりも高くないのだという。どうしてなのだろうか?

●ロボット掃除機を購入をためらいがちな日本人 なぜ?

 日本におけるロボット掃除機の世帯普及率は、調査にもよるが10~15%程度だとされている。一方、米国では35~40%程度と(日本から見ると)思った以上に普及している。この差はどこから生まれるのだろうか?

 フェルナンデズ氏は、日米におけるロボット掃除機の普及率の差は住環境の違いが大きく影響していると指摘する。

 米国ではペットを飼っている世帯が80%程度で、約半数が平屋建ての家屋に住んでいる。「Roombaにピッタリな環境」が多いのだ。一方、日本では集合住宅(アパートやマンション)に居住する人の割合が高いとされ、ゆえにペットを飼えないケースも珍しくない。米国とは逆に、Roomba(ロボット掃除機)のメリットを生かしづらい環境ともいえる。

 ただ、日本におけるロボット掃除機の普及率が低い原因は、環境面の制約だけではない。日本人の“気質”も関わっている可能性がある。

 今回の調査では、ロボット掃除機の導入(買い換え)検討から購入に至るまでの期間を尋ねたという。すると米国の回答者は半数弱(49%)が「1週間以内」と答えたのに対して、日本の回答者で1週間以内と答えたのは約2割(23.5%)にとどまった。高価な買い物ということもあってか、日本人はロボット掃除機の検討/購入を慎重に進めるのだ。

 加えて、米国人と比べて日本人はロボット掃除機の機能に対する評価が厳しい傾向なのだという。「掃除のクオリティー(品質)」「使い勝手」「機能の充実」の3点について満足度を聞いたところ、日本人の方が有意に「不満」と答える比率が高かった。倍率にすると、米国人の約2.5~5倍の“不満”を抱えている計算となる。

 日本人が製品に対してシビアな目を向けるのは、他ジャンルの製品にも共通する傾向にある。多くの国/地域において「これで十分」となっても、日本では「これではダメ」となってしまう可能性があるのだ。

 一方で、日本人は面倒を嫌う傾向にもある。

 床の水拭き掃除について面倒かどうか聞いた所、米国では約半数(48.5%)が面倒と答えたのに対して、日本人はその割合が4分の3近く(74%)まだ上がる。なのに、日本では水拭き機能を備えるロボット掃除機(2in1ロボット掃除機)を使っている割合がわずか1割ほど(11.7%)だ。

 挽野社長は、この現状は「(日本人が)2in1ロボット掃除機を認知していないからではないか?」と分析する。

 日本人はロボット掃除機のメンテナンスも面倒に感じる傾向にあるという。メンテナンス頻度も米国人と比べると有意に低く、特に「したことがない」という回答比率はずばぬけて高い。

 もしかすると、このメンテナンスの面倒さが、日本人のロボット掃除機に対する満足度の“低さ”につながっているのかもしれない。

 今回投入したRoomba新モデルは、これらの調査で示された「日本市場の状況」を踏まえて投入される。特にRoomba Combo 10Max ロボット+AutoEmpty 充電ステーションは、ハイエンド(多機能)志向の日本市場において、より広いユーザーに訴求すべく企画されたそうだ。

 昨今、日本ではハイエンドモデルを中心にロボット掃除機の市場が盛り上がっている。特に、中国メーカーの攻勢は特に強い。ロボット掃除機の草分け的存在であるアイロボットも、現在は激しい競争の中に身を投じている。

 モップの自動洗浄機能など、Roombaの新モデルは自身に“足りない”部分を補うことで魅力を高めた。しかし、ライバルも機能面で切磋琢磨(せっさたくま)してくるだろう。

 ロボット掃除機の競争は、どこまでいくのか。目が離せない。

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