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レノボの14.5型Copilot+ PC「Yoga Slim 7x Gen 9」を試す 静音/長時間駆動にワンランク上のビジュアルとサウンドが魅力!

ITmedia PC USER 2024年9月5日 17時5分

 レノボ・ジャパンの「Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9」は、約1.28kgのスリムなボディーに14.5型有機ELディスプレイ、QualcommのSoC「Snapdragon X Elite(X1E-78-100)」を搭載する薄型軽量ノートPCだ。Microsoftが定義する「Copilot+ PC」の要件を満たしており、Windows 11(バージョン24H2)が提供する新しいAI体験ができる最先端のAI PCだ。

 今回は実機を借用したので、その性能や使い勝手を検証していく。

●深みのあるダークブルーが印象的なスリムボディー

 ボディーはスリムで軽量、そして美しい。「コズミックブルー」と呼ばれる深みのあるダークブルーが印象的だ。ディテールも丁寧に作り込まれており、狭額縁デザインや有機ELディスプレイの美しさと合わせて、とても洗練されている。

 このボディーは、米軍の調達基準である「MIL-STD-810H(MIL規格)」に準拠したテストをクリアする頑丈さも併せ持つ。

 同社の「Yoga」と聞くと、コンパーティブル式の2in1ノートPCのイメージが強いが、本製品は2in1ではなく、ラップトップスタイルのみで利用できるクラムシェル型ノートPCだ(現行のYogaブランドは、コンシューマー向けプレミアムラインという位置付け)。

●70Whの大容量バッテリー搭載

 バッテリーの容量(定格値)は70Whと、比較的大容量だ。公称の駆動時間は、JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.3.0)基準では、動画再生時で約19.6時間、アイドル時で約16.6時間となっている。JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.2.0)基準では約19.6時間だ。

 JEITA 3.0における駆動時間では動画再生時の方が長いのは、カタログの誤記の可能性もあるが、いずれにしても長時間の駆動は問題なさそうだ。

 付属のACアダプターはUSB PD(Power Delivery)対応で、最大出力は65Wとなる。実測サイズは46(幅)×90(奥行き)×27(厚さ)mmで、ケーブル込みの実測重量は291gだった。

●SoCは「Snapdragon X Elite(X1E-78-100)」

 SoC(System-On-a-Chip)は、Qualcommの「Snapdragon X Elite(X1E-78-100)」を採用する。4モデルあるSnapdragon X Eliteの中で一番下のグレードに当たるもので、CPUコアのうち2コアのみ一層ブーストする機能が省かれている。過去にレビューしたASUS JAPANの「Vivobook S 15(S5507QA)」や、日本HPの「HP OmniBook X AI PC」も、同じSoCを採用している。

 本SoCのCPUコアはQualcommが新開発した「Oryon(オライオン)」を12基搭載し、最大3.4GHzで駆動する。キャッシュは42MBだ。ピーク時に45TOPS(毎秒45兆回の処理)のAIパフォーマンス備えるNPU「Hexagon(ヘキサゴン)」や、ピーク時に3.8GFLOPSの浮動小数点演算をこなせるGPUコア「Adreno(アドレノ)」も統合している。

 メモリはLPDDR5X-8448をオンボードで32GB搭載する。ストレージはPCI Express 4.0 x4対応の1TB SSDを備える。なお、本機は直販サイトでカスタマイズ(CTO)モデルも購入可能で、ここでは16GBメモリ構成や、512GB SSD構成も選べる。

●新しいAI体験ができる「Copilot+ PC」

 Snapdragon X Eliteを搭載し、キーボードにCopilotキーを備える本製品は、Microsoftが定めた要件を満たす「Copilot+ PC」だ。Copilot+ PCには、OS標準のローカルAI機能が導入されており、NPUを活用した高度なカメラ効果や画像生成など、新しいAI体験ができるようになっている。

 ただし、Snapdragon X EliteのCPUコアはArmアーキテクチャであり、OSもArm版Windows 11だ。このArm版Windows 11は、いわゆる「普通のWindows 11(x64版Windows 11)」とUI(ユーザーインタフェース)こそ共通だが、プログラムの命令構造が異なっており、互換性に課題が残っている。

 一応、従来のx86(32bit)/x64(64bit)アプリもエミュレーションで動作するようになっているが、一部動作しないアプリがある他、x64アプリとArmネイティブアプリとの相互運用ができない(「Arm64EC」対応アプリを除く)。具体的な事例でいうと、アドビの「Adobe Creative Cloud」を構成するアプリのうち「Premiere Pro」や「Illustrator」などが利用できない他、x64エミュレーションで動作する日本語IMEは、ArmネイティブのOS標準アプリで利用できない。

●美しい有機ELディスプレイと迫力のサウンド バックライト付きキーボードも

 画面は14.5型有機ELディスプレイ(Pure Sight OLED)を搭載する。パネル解像度は2944×1840ピクセルで、アスペクト比は16:10だ。

 クリエイターを意識して色再現性にこだわった仕様となっており、DCI-P3/Display P3の色域を100%カバーするのはもちろん、約10億色表示に対応し、デルタE1以下(ΔE<1)と高度な色再現性を備える。カラープロファイルの選択も可能で、キャリブレーションレポートを表示するX-Rite(エックスライト)のユーティリティも導入されている。

 HDR表示関連では「DisplayHDR True Black 600」認証を取得した他、「Dolby Vision」規格のコンテンツの表示にも対応しており、各種HDRコンテンツを美しく表示できる。表面は光沢仕様で、リフレッシュレートは最大90Hz。10点マルチタッチ対応のタッチセンサーも搭載しており、タッチ操作も可能だ。

 スピーカーはキーボード両脇のツイーター(2W×2)に加えて、底部にもウーファー(2W×2)を搭載するクアッド構成となっている。クリアかつ厚みのあるサウンドを再生可能だ。Dolby Atoms対応で、コンテンツに適したサラウンドサウンドも楽しめる。

 Copilotキー搭載のキーボードは日本語配列のテンキーレスで、カーソルキーや右端のキーが少し小さくなっている。キーピッチは実測で19mmだ。キーストロークは浅めで、1.2~1.4mm程度と思われる。キートップの形状はThinkPadシリーズに似ているが、打ち心地にはかなり差がある。

 キーボードには白色LEDのバックライトが付いているので、暗い場所でのタイピングも快適だ。

●ポート類は「USB4」のみ

 画面の上部には約200万画素のWebカメラ(フルHD撮影対応)と、アレイマイクを装備している。カメラには顔認証用赤外線(IR)カメラも統合している。また、カメラは電子式プライバシーシャッターを備えており、そのスイッチは側面にある。

 外部ポートの構成はシンプルで、USB4(USB Type-C)端子を左側面に2基、右側面に1基装備するのみだ。いずれも、画面出力(DisplayPort Alternate Mode)とUSB PD(Power Delivery)によるPCの充電に対応している。

 他に端子はないため、USB Standard-Aプラグを持つ機器はもちろん、3.5mmジャックを備えるイヤフォン/ヘッドフォン、カードリーダーなどを直接つなぐことはできない。ここは、ユーザーによって良しあしの分かれそうな部分といえる。

 ワイヤレス通信は、Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)対応の無線LANとBluetooth 5.3を標準装備している。

●高パフォーマンスと長時間駆動を両立

 ベンチマークテストの結果を見よう。比較対象として、同じSoCを搭載するVivobook S 15 S5507QAやOmniBook X AI PCのスコアも掲載しているが、値だけを見るとVivobook S 15 S5507QAに近く、一部上回っているテストもある。

 Vivobook S 15 S5507QAは15.6型で約1.42kgと、本機よりやや大きなフォームファクターを採用している。そのことを考えると、サイズの割にパフォーマンス面で健闘しているといえる。

 PCMark 10のバッテリーテスト(Applications Battery Life)による実測のバッテリー駆動時間は、約17時間36分だった。Snapdragon X Eliteの電力効率の良さもしっかり生かされている。

●エンタメ適性の高いスマートかつ先進的なCopilot+ PC

 Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9について詳しく見てきた。

 本機はCopilot+ PCの中でも、洗練されたビジュアル、画面の美しさ、サウンドの臨場感は印象に残った。新しいAI体験、プレゼンスセンシング、USB4に集約されたインタフェースなど、先進性が満載だ。スマートに洗練されたCopilot+ PCに仕上がっている。

 今回レビューした構成の直販価格は、税込みで25万6300円となる。CTOモデルの最小構成(16GBメモリ/512GB SSD)の価格は22万5940円だ。率直にいうと、Snapdragon X Eliteを採用するがゆえに、現時点では実用PCとしては使いづらい面もあり、万人におすすめできる製品ではない。しかし、Copilot+ PCの先進性を体験したい人ならば、検討に値するだろう。

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