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Lenovoが「Copilot+ PC」準拠のAI PCを一挙投入 Core Ultra 200V搭載モデルは「Aura Edition」に

ITmedia PC USER 2024年9月6日 21時0分

 Lenovoは9月5日(ヨーロッパ中央時間)、ドイツのベルリンにおいて「Lenovo Innovation World 2024」を開催し、最新CPU/SoC搭載の新型ノートPCを発表した。ヨーロッパでは10~12月にかけて発売される予定だが、日本での展開はコンシューマー向けモデルの一部を除いて未定となっている。

 今回の新製品は、9月3日に発表されたばかりのCore Ultraプロセッサ(シリーズ2)の他、Ryzen AI 300シリーズやSnapdragon X Eliteなど、いずれも強力なNPUを備えるCPU/SoCを搭載していることが特徴だ。特にCore Ultraプロセッサ(シリーズ2)を搭載する製品については「Lenovo Aura Edition」という特別な呼称が付与されており、同社AI PC群の中でもアプリを中心に新機軸が盛り込まれている。過去2年間にわたる、IntelとLenovoの水面下でのコラボレーションの成果が結実したものだという。

 なお、新製品と併せて発表されたコンセプトモデル「Lenovo Auto Twist AI PC」については、別の記事で紹介している。

●Core Ultra(シリーズ2)搭載のノートPC「Aura Edition」

 先述の通り、今回の新製品のうちCore Ultraプロセッサ(シリーズ2)搭載モデルは「Lenovo Aura Edition」という呼称が付けられている。具体的にはビジネス向けプレミアムモデル「ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition」と、コンシューマー向けプレミアムモデル「Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9(15インチ)」の2モデルが登場する。

 ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionの日本展開は未定で、ヨーロッパでは11月に販売国と数量を限って発売される予定となる。ヨーロッパにおける最小構成の想定価格は2699ユーロ(約42万8800円)となる。Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9は日本で9月6日から販売予約を受け付けており、9月下旬~10月初旬に発売される予定だ。想定価格は24万9810円前後となる。

 Aura Editionは、次の3つの機能がサポートしている。

・Smart Modes(スマートモード):ユーザーの好みに応じて、機能の動作モードを切り替える機能

・Smart Share(スマートシェア):タップ操作でスマートフォンとPCをスムーズに連携

・Smart Care(スマートケア):Lenovoのオンラインサポートと、連携してチャットボット形式で24時間365日サポートを提供

 Smart Modesには「Shield」「Attention」「Collaboration」「Wellness」の4種類の動作モードがあり、それぞれ「セキュリティ機能(VPNなど)の強化と自動化」「作業に集中するための各種タスクやタイマー設定」「バーチャル会議におけるパフォーマンスや動作の最適化」「姿勢や画面の凝視時間などを計測して健康状態のチェックとアラートを出す」といった機能を有効化できる。

 Windows 11にはスマートフォンとの連携機能「Phone Link(電話リンク)」が実装されているが、Smart Shareはスマホとの連携をよりスムーズに行うための機能だ。

 BluetoothとWi-Fi(無線LAN)でのリンクが両者間で確立している状態を前提に、スマホをPCに“タップ”すると連携アプリが起動し、ファイルのドラッグ&ドロップで両者間での写真などのファイルを簡単に共有できる。タップ操作は、AIによって両者の位置関係を判断してタップしているかどうかを判定しているとのことで、特別なハードウェアを必要としない。

 ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura EditionとLenovo Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9は、いずれもCore Ultraプロセッサ(シリーズ2)を搭載し、「Copilot+ PC」の要件を満たしている。Microsoftが11月に予定しているWindows 11向けのアップデートを適用することでCopilot+ PCの特徴的な機能を利用できるようになる見通しだ。

●Ryzen AI 300シリーズを搭載するモデルも複数投入

 今回の発表では、6月に発表されたAMDの最新APU「Ryzen AI 300シリーズ」を搭載する新モデルも披露された。

 Ryzen AI 300シリーズはピーク時のAI演算パフォーマンスが最大50TOPS(毎秒50兆回)となっており、Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)と同様にCopilot+ PCの要件を満たす。

 「ThinkPad T14s Gen 6 AMD」は、ThinkPad Tシリーズの14型モバイルモデルの第6世代だ。既にSnapdragon X Elite搭載モデルが発売済みだが、そのRyzen AI搭載版という位置付けとなる。日本展開は未定だが、ヨーロッパでは11月に発売される予定だ。ヨーロッパにおける最小構成の想定価格は2199ユーロ(約34万9400円)

 搭載APUは、未発表の「次世代Ryzen AI PROプロセッサ」とされているが、順当に行くとRyzen AI 300シリーズに企業向け管理/セキュリティ機能「AMD PRO」を追加したものだと思われる。ディスプレイは1920×1200ピクセルの14型IPS液晶で、カスタマイズモデルではタッチ非対応パネル(sRGB色域100%カバー)とタッチ対応パネル(NTSC色域45%カバー)から選べる。

 「ThinkBook 16 Gen 7+」と「Yoga Pro 7 Gen 9」については、共にAPUとして「Ryzen AI 9 365」を搭載する。Ryzen AI 9 365はRyzen AI 300シリーズに新たに加わったモデルで、CPUコアは10基20スレッド(Zen 5コア4基+Zen 5cコア10基)、稼働クロックは最大5GHzだ。内蔵GPUは「Radeon 880M」(12コア)となる。

 ビジネス市場をターゲットにしたThinkBook 16 Gen 7+に日本展開は未定で、ヨーロッパでは12月の発売を予定している。ヨーロッパにおける最小構成の想定価格は999ユーロ(約15万8700円)だ。コンシューマー市場をターゲットにしたYoga Pro 7 Gen 9は、日本でも9月下旬~10月初旬に発売される予定で、想定価格は25万9820円となる。

 AMD製APU搭載製品としては、モバイル向けRyzen 7000シリーズを搭載した「IdeaPad Slim 5 Gen 10(13インチ/15インチ)」も登場する。本モデルの日本展開は未定で、ヨーロッパでは10月に発売される予定だ。ヨーロッパにおける最小構成の想定価格は699ユーロ(約11万1000円)となる。

●Snapdragon Xシリーズ搭載モデルも拡充

 スマートフォン向けSoC(System on a Chip)で知られるQualcommは、「Snapdragon X Elite」「Snapdragon X Plus」と立て続けにノートPC向けSoCを投入している。これらSnapdragon Xシリーズは、Armアーキテクチャベースの自社開発CPUコア「Oryon(オライオン)」と、高い性能を誇るNPU「Hexagon(ヘキサゴン)」を備えることが特徴だ。

 Snapdragon Xシリーズは、Microsoftの「Surface Pro(第11世代)」「Surface Laptop(第7世代)」で採用された他、Lenovoも「Yoga Slim 7x」「ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon」で採用済みだ。

 今般、QualcommはSnapdragon X PlusからCPUコアを削減してコストを抑制した「Snapdragon X Plus 8-core」を投入した(従来のSnapdragon X Plusは「Snapdragon X Plus 10-core」に改称)。CPUコアは2基少なくなったものの、45TOPSのピーク性能を備えるHexagonはそのままで、Copilot+ PC準拠のAI PCとしてのパフォーマンスは妥協がない。

 Snapdragon X Plus 8-coreのリリースに合わせて、LenovoはSnapdragon Xシリーズ搭載ノートPCのラインアップとして「ThinkBook 16 Gen 7」「IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9」「IdeaPad Slim 5x Gen 9」を追加する。

 ThinkBook 16 Gen 7は中小ビジネス向けの16型ノートPCで、Snapdragon X Plus 8-coreを搭載する構成も用意される。本モデルの日本展開は未定だが、ヨーロッパでは10月に発売される予定だ。ヨーロッパにおける最小構成の想定価格は819ユーロ(約13万1100円)となる。

 IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9は、Snapdragon X Plus 8-core X1P-42-100(最大3.2GHz)を搭載する14型2in1 PCで、タッチ対応有機ELディスプレイを搭載する“多目的モデル”という位置付けだ。日本では9月6日からレノボ・ジャパンの直販サイトで販売を開始しており、想定価格は11万9790円前後となっている。

 IdeaPad Slim 5x Gen 9は14型クラムシェルノートPCで、IdeaPad 5x 2-in-1 Gen 9と同じくSnapdragon X Plus 8-core X1P-42-100を搭載している。メモリを32GB搭載することで、メモリをより多く使うアプリでも利用しやすいことが特徴だ。日本では9月下旬から10月初旬に発売する予定で、想定価格は14万9800円前後となる。

● 企業の「AI PC」導入を支援する施策

 Lenovoでは新製品の他、AI PCを利用するユーザー向けの支援策を複数発表している。

 「AI PC Fast Start」というサービスでは、企業がAI PCを導入して生産性をより向上するに当たって、必要な情報やアドバイスを提供し、社内へ実際に展開するに際に必要な設定/管理を支援する。これにより、AI PCへのスムーズな移行を促進するのだという。

 Lenovoのセキュリティソリューション「ThinkShield(シンクシールド)」では、SentinelOneの「Singularity Platform」がポートフォリオとして加わる。ThinkShieldでは、エンドポイントの深い部分からクラウドまでを包含しているが、保護ソリューションが提供されるが、Singularity Platformがプラスされることで、より強固なセキュリティを期待できるようになる。

 クリエイター向けのAIソリューションでは、CES 2024に合わせて発表された「Lenovo Creator Zone」が改めてフィーチャーされている。Creator Zoneでは自然言語で入力したテキスト情報を基に画像の生成や編集が可能だが、現時点において日本では利用できない。早期対応を期待したい。

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