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Qualcommの新型SoCはどうだ? Snapdragon X Plus搭載で「Copilot+ PC」準拠の2in1タブレットPC「ASUS ProArt PZ13」(HT5306)を試す

ITmedia PC USER 2024年9月11日 12時0分

 ASUS JAPANから登場した「ProArt PZ13」(HT5306)は、同社のクリエイター向けブランドに属する「Copilot+ PC」準拠の13.3型2in1タブレットPCだ。

 約850gのタブレット本体にスタンドカバーとキーボードを組み合わせることで、ノートPCとしても利用できる3ピースのデタッチャブルスタイルを採用している。

 SoCにQualcommが新たに発表した「Snapdragon X Plus X1P-42-100」を搭載し、Microsoftが推進するCopilot+ PCに準拠することで、先進のAI体験ができるのも特徴だ。実機(型番:HT5306QA-PU161W)を入手したので、性能や使い勝手を検証していこう。

●3ピーススタイルの2in1タブレットPC

 ProArt PZ13(HT5306)の本体は、スレートスタイルのタブレットだ。ボディーの公称サイズは約297.5(幅)×202.9(奥行き)×9.0(高さ)mm、公称の重量は約850gとなる。MIL-STD-810Hに準拠した耐久テストをクリアする頑丈さを備える。

 本体のみでは自立はできないが、背面にマグネットで装着するスタンドカバーが標準で付属しており、これを装着すると自立が可能になる。このスタンドカバーを含めた公称サイズは、約297.5(幅)×202.9(奥行き)×11.8(厚さ)mm、公称の重量が約1.127kgだ。

 このスタンドカバーに加えて、画面カバーを兼ねるキーボードも標準で付属している。本体との通信はBluetoothではなく物理的な端子で行う。本体にスタンドカバーとキーボードを取り付けた時の公称サイズは、約297.5(幅)×211.15(奥行き)×17.6(厚さ)mmで、公称重量は約1.489kgになる。

 スタンドカバーは本体に近づけるだけできっちりと正しい位置に装着でき、意図せず外れてしまう不安は少ない。スタンドのヒンジもしっかりとしており、机など安定した場所で使う分には、本体に直接キックスタンドが付いたタブレットと変わらない使用感だ。

●Copilotキーを標準で搭載

 キーボードの接点部分にはガイドと強力なマグネットが内蔵されており、キーボードを本体に近づければ自然に装着されるため、装着に手間取ることはない。装着すれば自動的に認識される。

 キーボードは、Copilotキーを搭載した日本語配列を採用する。

 キーピッチは実測で横が19mm、縦が18mmと十分な間隔が確保されている。配列も比較的素直だ。「半角/全角」キーと「\」キーが細く、カーソルキーのサイズがやや小さいが、カーソルキーの周囲に他のキーがないため、それほど打ちにくさは感じない。

 キーストロークは不明だが、特に浅い感触はなく、おそらく1.4mm前後と思われる。キートップは指が置きやすく、スイッチの感触や反発が強すぎることなく良好だ。キーボード下の剛性もしっかりと確保されている。全面が接地するタイプであることもあって、タイピング時のたわみも感じない。

●70Whの大容量バッテリーを内蔵

 バッテリー容量は70Whと大容量で、キーボード使用時の公称バッテリー駆動時間は、JEITAバッテリ動作時間測定法Ver.2.0の基準で約23.1時間、同Ver.3.0基準では動画再生時が約16.6時間、アイドル時が約25.2時間となっている(いずれもキーボード使用時)。

 付属のACアダプターはUSB PD(Power Delivery)対応で最大出力は65Wだ。実測のサイズは約63(幅)×63(奥行き)×28(厚さ)mm、実測の重量は301gとコンパクトにまとまっている。

●色再現性に優れた13.3型3K対応の有機ELディスプレイ

 本機のディスプレイは、13.3型の有機ELを採用している。画面解像度は2880×1800ピクセル(アスペクト比16:10)と高解像度だ。

 さらに、色域はDCI-P3比100%の高色域に対応する。カラーサイエンス大手のPANTONEの認証も取得しており、デルタE1以下の高い色再現性を備える。

 HDRコンテンツを高品質で表示できる事を示す「DisplayHDR 500 True Black(最大輝度500ニト以上、DCI-P3比で95%以上などが要件)」に準拠し、DolbyのHDR規格「Dolby Vision」にも対応するなど、対応HDRコンテンツも良い画質で楽しめる。

●SoCはQualcommのSnapdragon X Plus X1P-42-100を搭載

 SoCには、QualcommのSnapdragon X Plus X1P-42-100を採用する、Snapdragon Xシリーズに追加されたエントリーモデルで、CPUコアは8コア、最大動作周波数はマルチコアで3.2GHz、シングルコアで最大3.4GHzとなっている。

 GPUコア(Adreno X1-45)の浮動小数点演算性能は、最大1.7TFLOPS(Snapdragon X Eliteでは3.8~4.6TFLOPS)と大幅に簡素化された。NPUコアについては、Snapdragon X Eliteと同等の45TOPSのHexagon NPUコアを統合している。

 メモリは16GBのLPDDR5X-8448をオンボードで実装する(換装/増設は不可)。ストレージはPCI Express 4.0 x4対応のSSDを1TB備える。

●Copilot+ PCならではのAI体験を提供

 Snapdragon X PlusはArmアーキテクチャのCPUであり、OSにはArm版Windows 11(24H2)を導入している。x64アプリもエミュレーションで動作するが、一部動作しないアプリがあるのに加え、エミュレーションで動くx64アプリもArmネイティブアプリ(Arm64ECを除く)とは相互運用ができないなど、互換性には注意が必要だ。

 特にペンタブレットのドライバなど、普段使っている周辺デバイスやアプリの対応状況を事前に確認しておきたい。

 一方、Arm版Windows 11にはx64版Windows 11に先がけて新しいローカルAI機能が導入されており、NPUを活用した高度なカメラ効果や画像生成などの新しいAI体験を得られる。Cocreatorなどペンでのスケッチから画像を生成可能だ。

●SDメモリーカードスロットにAFカメラなどクリエイターを意識した装備

 通信機能はWi-Fi 7対応の無線LANとBluetooth 5.3を標準で装備する。

 本体にはUSB4(USB Type-C)端子が2基あり、SDメモリーカードスロット(SDXC対応)も装備する。USB Type-C端子は、2基とも画面出力(DisplayPort Alternate Mode)とUSB PDに対応しており、充電端子も兼ねている。

 なお、SDメモリーカードスロットの速度仕様については公式スペックに記載はないが、手持ちのUHS-II対応カードは本来のパフォーマンスで利用できたので、UHS-IIには対応しているようだ。

 液晶ディスプレイの上部に約491万画素のWebカメラと顔認証用IRカメラを搭載し、背面にはアウトカメラとして約1324万画素のオートフォーカス対応の高画素カメラを内蔵する。Webコンテンツ用の写真や動画素材を撮影するには十分なクオリティーだ。

●快適なパフォーマンスと長時間駆動を両立

 ベンチマークテストの結果を見よう。特に言及がない限り、オペレーションモードは「パフォーマンス」を選んで計測している。

 CINEBENCH 2024(最低実行時間10分)のCPUスコアは、643ptsだった。Snapdragon X Elite X1E-78-100(12コア)を採用する「Vivobook S 15(S5507QA)」の6割程度のスコアで、コア数なりの差はあるが、Core Ultra 7 165H搭載機やRyzen 7 8840U搭載機のスコアを上回っているように、モバイル機としては十分に高いスコアだ。

 また、CPU(シングルコア)ではSnapdragon X Elite X1E-78-100搭載機と互角以上の良いスコアが出ており、シングルスレッド処理時にしっかりブーストが機能していることが分かる。Word/Excel/PowerPoint/Edgeを利用したオフィス作業のシミュレートであるPCMark 10 Applicationsのスコアも上々だ。

 一方、GPUについては公称性能が半分以下に低下しているだけあって、グラフィックス性能には相応の影響が見られる。3DMarkのスコアは、Snapdragon X Elite X1E-78-100搭載機の半分前後にとどまる。

 また、バッテリー駆動時間は、PCMark 10/Applications Battery Lifeでの実測で約18時間57分(ウィスパーモード/画面輝度は50%)だった。Snapdragon X Plus X1P-42-100の電力効率の良さと70Whの大容量バッテリーの組み合わせで、長時間使えることを実証している。

 動作音も静粛な部類に入り、特にウィスパーモードでは高負荷時を含めて常に静かだ。キーボードが本体から独立しているため、高負荷な処理をしてもパームレストなどが不快な熱を持つこともなく、快適に利用できる。

●先進のAIとクリエイティブ作業をカジュアルに楽しめる2in1タブレット

 ここまで、ProArt PZ13(HT5306)について詳しく見てきた。Snapdragon X Plus X1P-42-100のパワーと電力効率を生かしつつ、色再現性の高い有機ELディスプレイを採用し、オートフォーカス対応の約1324万画素アウトカメラやSDメモリーカードスロットの搭載、ペンの標準装備など、ProArtシリーズらしくクリエイティブ向けの要素を盛り込んだ製品となっている。

 ペンでの入力しやすいスタイルで使えるため、クリエイターなど新しいAIアプリとの相性も良い。Armアーキテクチャゆえ、互換性の課題やGPU性能から本格的なクリエイティブワークでは不都合が出る可能性があるが、アクティブに持ち歩いて、新しいAIやクリエイティブでの作業、エンタメをカジュアルに楽しめる製品となっている。

 希望小売価格は24万9800円だ。CPUはSnapdragon X Eliteシリーズの下位モデル搭載機としては少し高価だが、上記の付加価値を考えると理解できるところだろう。新しいAI体験が可能なCopilot+ PCの選択肢として魅力的な存在だ。

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