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今PCを買うなら「AI PC」にしようと決めた理由 【実用レビュー 最終回】やっぱり最新モデルだとベンチマークテストで実感

ITmedia PC USER 2024年9月20日 17時0分

 日本HPの14型モバイルPC「Envy x360 Laptop 14-fc(インテル)」は、Core Ultra シリーズ1(開発コード名:Meteor Lake)を搭載した「AI PC」だ。これまで使っていた、同じく14型のモバイルPCであるNECパーソナルコンピュータのモバイルPC「LAVIE NEXTREME Carbon」(PC-XC950DAG)からリプレースしてPC USERの記事制作に使い込んできた。

 今回は最終回として、性能面の比較を中心に触れていこう。

●やはり新モデルは快適

 この連載の初回で触れた通り、これまで使っていたNECパーソナルコンピュータの14型モバイルPC「LAVIE NEXTREME Carbon」が1kg以下の937gに対し、Envy x360 Laptop 14は約1.39kgと400g以上の差がある。

 これまで、液晶ディスプレイの見やすさやインタフェース回り、キーボードやタッチパッド、ビデオ会議での使いやすさをチェックしてきたが、この重量差を許容できたのは、性能面も大きい。

 両モデルの主なスペックは下記の通りだ。

 従来は第11世代のCore i7-1195G7(4コア8スレッド)プロセッサを使っていたが、大きな不満があったかというと日常的には感じていなかった。そう、新モデルを触るまでは。

 両モデルとも、日々の業務(原稿執筆や編集、静止画や動画の編集/加工、ビデオ会議、WordやExcel、PowerPointといったオフィスアプリ)での利用がメインだが、やはり新モデルの方が引っかかりもなくスムーズに感じられる。

 ビデオ会議の快適さは前回でも触れたが、別の観点ではビデオ会議中でもながら作業がスムーズに行え、Photoshop作業中のモタつきやアプリの切り替えも気にならなくなった。

 また、ちょっとした動画の編集作業も、より高速なデスクトップPCに切り替えることなくノートPCで完結できるのはもちろん、動画エンコード中もキー入力や画像の編集がままならないため食事に行くということも不要になった。

 こういった感覚的な差異は、ベンチマークテストでどのような差になっているのだろうか。

●SSD以外では旧モデルを圧倒 バッテリーの持ちもまずまず

 PCの総合的な性能を測るULのPCMark 10 Extendedでは、総合結果で約1000pts、約1.23倍高速になった。ProductivityやDigital Content Creationではともに約1.3倍以上と高スコアだった。逆にSSD単体ではいずれもPCI Express 4.0 x4接続で、容量こそ512GBのLAVIE NEXTREME Carbonが1TBのEnvy x360 Laptop 14を上回った。

 モバイルPCでは、性能以上にバッテリー駆動時間の方が気になるという人も多いだろう。試しに、PCMark 10/Applications Battery Lifeを実行したところ、Envy x360 Laptop 14は公称値に近い9時間4分、一方のLAVIE NEXTREME Carbonは約7時間という結果になった。

 ただ、LAVIE NEXTREME Carbonは2年以上の利用を繰り返してきてバッテリーもだいぶ劣化しており、その分は差し引いて考える必要がある

 実際に利用していても、両モデルとも朝から晩まで持ち出して使っても1日ならACアダプターは持ち歩かなくても大丈夫というのは変わらない。とはいえ、頻繁にビデオ会議をこなすなら、どちらも何かしらのACアダプター(純正の出力65W以外でも)を持ち歩いた方がベターだ。

 特に、画面を明るくしてビデオ通話時のライティングとして使えるEnvy x360 Laptop 14のユーティリティー「HP Enhanced Lighting」を使うと、バッテリーはてきめんに減るので気をつけたい。

 ちなみに、Envy x360 Laptop 14に付属するUSB Type-C端子のACアダプターは出力が65Wで、重量は実測で195g、3ピンの電源ケーブルは105gあった。ACアダプター自体のサイズは小型だが、ケーブルはやや太めで電源ケーブルを含めてかさばるため、筆者はスマホも同時に充電できるプラグを一体型の小型ACアダプターを利用していた。

 参考までに3DMarkのテストも行った。どちらもCPU内蔵GPUではあるが、Envy x360 Laptop 14のIntel Graphixsは「リアルタイムレイトレーシング機能」もサポートするなど着実に強化されており、AAAなどビッグタイトルを除けば、意外と快適にプレイできるゲームは多い。

 Steamでちょっとした息抜きのつもりが、うっかり時間が溶けてしまったということもままあったので気をつけたい。

●今、PCを買うなら「AI PC」となる理由

 ここまで、いろいろな角度でEnvy x360 Laptop 14を見てきた。Intelからは最新CPUの「Core Ultra 200V」シリーズが発表され、搭載モデルは日本HPからもリリースされる予定だ。

 とはいえ、現行モデルらしく隙はなく、性能はもちろんのことコロナ禍以降に求められるPCの必須要素はきちんと満たしており、実に快適に利用できた。欲を言えばLAVIE NEXTREME Carbonのように1kgを切ってほしいのと、4G LTEまたは5G内蔵モデルも選べると良かった。

 ちなみに、ここで取り上げたEnvy x360 Laptop 14は対象モデルではないが、同社では、au回線を利用した法人向けMVNOサービスの「HP eSIM Connect」を用意している。5G/4G LTE通信を追加料金なしで5年間使えるPCが複数あるので、対象モデルの拡充を期待したい。

 本機が採用するCore Ultra(シリーズ1)は、米国でも日本でもNPUを搭載したCPUとして、“AI PC”を合言葉に華々しくデビューを飾ったが、ご存じの通りAIを前面に打ち出すには時期尚早だ。

 NPUを活用したアプリやユーティリティーは一部が利用可能だが、目玉の「リコール機能」などを始めとして11月以降のWindows Updateを待つ必要がある。既にWindows 11が標準で提供するAI機能は、Qualcomm製SoC搭載の「Copilot+ PC」で実現しているものの、利用できるのは英語のみだったり、リコール機能が使えなかったりと、こちらも不完全なことに変わりはない。

 このように、“AI PC”に過度な期待を持って本機を手にすると面食らうことになるが、今すぐAI PCあるいはCopilot+ PCが必要なのかと言われれば、多くの人には「ノー」というのが答えになるだろう。しかし、今買うならAI PCやCopilot+ PC以外でベストな選択肢があるのかと言われれば、それも同様に「ノー」だ。

 これまで見てきたように、2年前から使っているLAVIE NEXTREME Carbonと比較しても本機の性能の強化と使い勝手の向上は確かめられた上に、今後のAI機能(OS標準に加え、サードパーティー製品を含め)の上積みも期待できる。

 やはり、PCを買うなら予算が許す限り(できるだけ)最新モデルを手にした方が長く使えるというのはAI PCでも同様のようだ。業務用のPCはともかく、快適に使えるノートPCをこれから買うのであれば、最新モデルをベースに価格やスペック、キー配列などの使いやすさをチェックしていくのが王道だろう。

 ただし本機の場合、同社の直販価格はセールなどで大きく変動(原稿執筆時の価格は18万9800円だったが、連載1回目の時は26万4000円だった)するので、購入時は気をつけよう。

(製品協力:日本HP)

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