Infoseek 楽天

約3万円のジンバル内蔵Webカメラ「Insta360 Link 2/2C」を試す 段違いの高画質に驚いた

ITmedia PC USER 2024年9月24日 22時0分

 Insta360は9月24日、全方位カメラやアクションカメラで培ったトラッキング技術を土台にして開発したジンバル内蔵のWebカメラ「Insta360 Link」(2022年8月発売)の新モデル「Insta360 Link 2」「Insta360 Link 2C」を発表しました。価格は順に3万3000円、2万5800円で、同日より販売を開始しています。

 Webカメラに画質を求めるユーザーから高い評価を受けている製品の新モデルで、しかも今回はラインアップが2モデルだそうです。一足先にメーカーから届いた評価機で使い勝手を試してみました。

●高画質でオンライン会議したい!

 コロナ禍を経て、Microsoft TeamsやGoogle Meet、Zoomといったオンライン会議ツールに高画質な映像をストリーミングしたいというニーズが一部で高まりました。「SIGMA fp」のようなコンパクトなミラーレス一眼をWebカメラとして使うスタイルも流行しましたが、よほどのデジタル好事家以外の家庭ではすぐに鎮火しました。

 なぜなら、カメラ/レンズの画角から自分が外れないように意識し続けなければならないためです。給電環境の整備や設置も面倒でしたね。

 続いて4Kセンサーのトリミング耐性を活用した超広角Webカメラが市場にじわじわと登場し始めました。あらかじめ広い範囲を撮影しておき、被写体をズームアップして撮影するスタイルは人気を博しましたが、その需要を満たす製品として全てを持っていったのがInsta360 Linkだったというわけです。

 ジンバルでカメラの向きを上下左右に変えながら常に人物をトラッキングして追いかけてくれるこの機構は、ガジェット好きのユーザーだけではなく、カメラのセッティングが面倒だと感じている人にも評価されています。発売から2年近くが経過した現在も、画質を評価する声がSNSや口コミサイトなどで確認できます。

●AI追跡&オートフレーミング対応の「Insta360 Link 2」

 Insta360 Linkの正当なアップデート版となるのがInsta360 Link 2です。

 もう1つのInsta360 Link 2Cを含めた比較リストは以下の通りです。

 スペックで判断できるところでは、Insta360 Link 2シリーズとInsta360 Linkのセンサー/レンズは同等のようですが、制御用のプロセッサが刷新されています。AIを活用することでトラッキングやノイズキャンセリングの精度を高めてきたものと考えられます。

 ジンバルの数は3つから2つに減りました。傾いた場所にも設置できるのがInsta360 Linkのセールスポイントでしたが、Insta360 Link 2は純粋にノートPCやデスクトップモニターの上に置く(=平行がとれている場所に置く)ことを想定して2軸ジンバルとしたのでしょう。

 追加された新機能も、ビジネス用途を強く意識しています。「ポーズトラックエリア」はジンバルの可動範囲を設定するものです。ユーザーが歩き回ってプレゼンをしているとき、「まだジンバルの可動範囲内だけど、設定した角度を限度としてカメラの動きを止めてほしい」といった場合に活用できる機能です。

 さらに、従来は認識マーカーを設置した場所をホワイトボードとして認識し、画角をユーザーからホワイトボード、またはその逆となるようにスイッチングできましたが、Insta360 Link 2シリーズでは認識マーカーがなくてもホワイトボードの設定が可能になりました。

 また、背景のぼかし、ボケ、置き換えやフィルターなどをInsta360のコンパニオンアプリ側で設定できるようになりました。被写体と背景の認識力というか、背景の切り抜き力は既存のオンラインミーティング用アプリよりも精度が高い印象です。

 プライバシーモードに設定すると、カメラやレンズが下向きとなる点など、前モデルに準じている機能もあります。一目でカメラが向いていないことが分かるため、ユーザーからの評価も高かったのでしょう。

 なお、下部にある丸いマークはタッチキー(タッチパネル)です。シングルタップでAIトラッキングの開始/停止、ダブルタップでレンズを中央位置に戻せます。

●高画質据え置きWebカメラとして使う「Insta360 Link 2C」

 コンパクトかつクラシックの意味を込めて「C」の文字が使われているInsta360 Link 2Cは、ジンバルが省かれたモデルです。しかし、Insta360 Linkシリーズの被写体を追いかけるという理念は失われていません。

 ズームを駆使したオートフレーミング機能により、1人のときは主にバストアップに拡大、多人数が並ぶときはズームアウトして全員が画角に入るように自動調整してくれます。

 メーカーとしては、トラッキング人数は2~3人がベストとのこと。オンラインミーティングの小さな画面ではそれ以上の被写体が小さな枠に収まっても見にくいだけですし、実用面において相応な要素といえるでしょう。

 常にカメラ/レンズが前を向いた状態となるため、プライバシーモードとして物理シャッターが採用されています。一見したときに判断しやすくなるように、赤いシャッター幕となっているのもポイントです。

 カメラ/レンズ横の丸いくぼみはタッチキーです。ダブルタップでズーム倍率が1.5倍になります。

●ノートPCの内蔵カメラとは段違いの画質

 近年、駅や商業施設などでの設置が進んでいるボックス式のシェアオフィスで使ってみました。照明が設置されており、人間の眼には十分な明るさがあると感じる場ですが、Webカメラにとってはそうではありません。

 今回はM1 MacBook Airを使いましたが、内蔵のWebカメラで撮った映像は低照度であることを補うべく補正効果が強まっています。

 その結果、相手に届く映像はアニメ的というか、塗り絵のごとく低階調のビジュアルとなりがちです。さらに椅子の真上にある照明が顔の凹凸に強い影を落としているため、目元が沈み込んでいます。

 目の下にクマがある、どころの騒ぎではありません。いつものプロジェクトメンバーとのオンラインミーティングであればこれでも良いですが、営業先とのミーティングではあまり使いたくないと感じる絵面になります。

 対してInsta360 Link 2シリーズで撮った映像は高精細でダイナミックレンジが広く、適切な補正により顔にかかる影も上手に低減してくれます。このハイライトとシャドーのバランスの良さはお見事です。

 斜め下にレフ板を置いて、顔の明るさを持ち上げたくなる晴天の屋外からオンラインミーティングしなければならないときも、十分な効果を発揮してくれるでしょう。

 自分の顔を撮っておいて何を言うんだという自問自答が脳裏をよぎりますが、これは良い顔をミーティング相手に届けられるWebカメラです。正直いってめちゃくちゃ感心しました。

 オートフォーカスも速い。顔へのフォーカスを優先しているために、商品プレゼンの時などは顔を手か商品で隠す必要がありますが、フォーカス位置が変わる撮り方をしていても快適です。

●喋り声への影響が少ないノイズキャンセリング

 映像品質と同じく感銘を受けたのが、マイクの録音品質です。前述したボックス式のシェアオフィスは空調の通気口が近い場所にあるため、強いノイズにまみれがちです。

 オンライン会議アプリのノイズキャンセリング機能も、年々その精度と効率を高めてきていますが、ボリュームの大きなノイズが入ると声への影響が大きく、たまに声がブツブツを切れてしまいます。ミーティング相手にとっては、今何を言っていたのかが判断しにくく、ミーティングの進行の妨げとなります。

 しかし、Insta360 Link 2シリーズのマイク録音品質は上々です。声/ノイズ成分の認識力が高く、声は強調したうえでノイズをしっかりと除去してくれます。

 また、ノイズキャンセリングを「混雑」モードとすることで、周囲の人の声を省いてハウリングしにくくなります。他の人が同席しているオフィスや会議室でも扱いやすいこのモードこそ欲しかった、という方もいるでしょう。

●カメラの向きや詳細設定など扱いやすい専用アプリ

 Insta360 Link 2シリーズをPCで使うには、専用アプリの「Insta360 Link Controller」が必要です。Insta360 Link 2シリーズの性能や多機能をフルに引き出すための操作画面がまとめられています。

 Insta360 Link Controllerを使っていて特に良いと感じたポイントは、背景のぼかし、ボケ、置き換えやフィルターを適用した映像を他のアプリに送ることができることです。

 OBS Studioで試してみましたが、映像をライブ配信で扱いやすい状態に整えるOBS Studio側のプラグインを駆使せずに済むため、リッチな映像を作り込む際にPCのCPU/GPUへの負荷が減るのではという期待をしたくなりました。

 あまりにも多機能なため、普段は使わない機能も出てくるでしょう。そんなときはInsta360 Link Controllerで不要な機能をOFFにすれば大丈夫です。初期設定は必要ですが、不安を感じる要素をなくしてくれる設計思想が素晴らしいですね。

●2カメ、3カメを駆使したライブ配信でも使いたくなる

 暗い場所でも十分な映像品質が出せるし、明るい場所であれば4Kの高解像性能が生かせる──そんなInsta360 Link 2シリーズは、オンラインミーティングだけで使うのはもったいないのではないかとも感じてきました。複数台のInsta360 Link 2シリーズを1台のPCに接続し、Elgato Stream Deckなどのガジェットで入力チンネルを素早く切り替えていけば、ライブコマースでも生きるカメラになるのではないでしょうか。

 実はInsta360 Link Controllerを使えば縦位置動画もカンタンに設定できます。

 1台目のInsta360 Link 2Cは真正面から自分の姿を捉え、2台目のInsta360 Link 2は斜めしたから煽るように、3台目は真上にセッティングしてデスクビューモードで手元がしっかりと映せるようにする。実際に試したわけではありませんが、5分もかけずにこんなセッティングができそうという予感があります。

 いずれも本体側に三脚穴を装備しているので、さまざまなスタイルでのセッティングが可能です。しかも配信用PCとUSB Type-Cケーブル1本でつなぐだけ。HDMI&HDMIスイッチャーを使わなくても良いという気楽さは、ライブ配信をしてみたくなるというモチベーションにつながります。

(製品協力:Insta360)

この記事の関連ニュース