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【動画あり】デスクトップでもカラーE Ink! DASUNGの25.3型ディスプレイ「Paperlike Color」を試す

ITmedia PC USER 2024年9月27日 15時0分

 DASUNGの「Paperlike Color」は、25.3型のカラーE Inkディスプレイだ。カラーE Inkを採用したデバイスは、国内では楽天「Kobo」の読書端末、またAndroidタブレットの「BOOX」シリーズなどがあるが、デスクトップ向けのディスプレイは非常に珍しい。

 バックライトを使わないため目に優しいとされるE Ink電子ペーパーにおいて、カラーに対応したパネルは技術的にはまだまだ発展途上にあるが、今回の製品の実力はどのようなものだろうか。国内代理店から機材を借用したので、レビューをお届けする。

●見た目は一般的なディスプレイ

 まずは外観から見ていこう。本製品は、ベゼルに厚みがあってゴツいことを除けば、見た目は一般的なディスプレイと違いはない。唯一目につく大きな違いは、画面左下に複数のボタンを搭載していることで、これは画面のリフレッシュや表示モードの切り替え、コントラストの調整に使用するためのものだ。従来のモノクロ版でも同様のギミックがある。

 スタンドは高さ調整はもちろん、縦/横の回転、さらに前後の角度調整にも対応する。これらはVESAマウントを利用して背面に取り付けられていることから、本体だけを取り外し、ディスプレイアームに装着することも可能だ。

 なお本製品は公称値で約4.63kgとなっているが、これはディスプレイ本体だけの値のようで、スタンド込みでは実測で6.8kgと、25型クラスとしてはかなり重い。外見からは分からない部分の1つだ。

 ディスプレイとしてのスペックは、3200×1800ピクセル(アスペクト比は16:9)、解像度は150ppiとなっている。カラーE Inkという特性上、一般的な液晶ディスプレイと比較すべきではないが、解像度が低いのはやや気になるところだ。こちらについては後述する。

 接続方式はHDMI/USB Type-C/DisplayPortをサポートする。ポート類は背面に集中しており、スタンドにある穴を通してケーブルを背後に逃がす構造になっている。ちなみにスピーカーも内蔵しており、これら入力ポートと並んでイヤフォンジャックも搭載するなど、音声出力系は充実している。

●Kaleido 3を採用 設定はユーティリティーの利用が望ましい

 では早速接続してみよう。接続方法は3種類から選べるが、今回はケーブルが付属するHDMIで接続を行う。ドライバなどは必要とせず、PCとつなげばすぐに表示できるのは、一般的なディスプレイと同様だ。

 本製品が搭載するカラーE Inkは「Kaleido 3」という、楽天KoboのカラーE Ink端末「Kobo Clara Colour」や、Onyx InternatinalのE Inkタブレット「BOOX」のカラーモデルに搭載されているのと同じパネルだ。つまり決して特殊な部材ではないのだが、これら端末は大きくても10型程度までなので、25.3型というビッグサイズはかなりの迫力がある。

 カラーE Inkの表示モードやコントラストの調整、画面のリフレッシュは画面下部のボタンで行う。表示モードについては、テキスト/グラフィック/ビデオの3モードが用意されており、表示するメディアに合わせて切り替えて使用する。自動的に切り替えるオートモードもあるが、なるべくなら手動で設定した方が良い。

 続いて、コントラストを調整する。以前のモノクロモデルは、目で見て違いが分かるのは9段階のうち3~4段階程度だったが、今回のカラーモデルは9段階のどれもはっきりと違いが分かる。優先順位が高いのはあくまでも前述の表示モードだが、このコントラストでも見た目の印象はガラリと変わるので、設定する必要性は高い。

 ゴーストを消去するためのリフレッシュは、ボタンを使っての手動実行も可能だが、Windows/Mac用のユーティリティーを用いれば、間隔(秒)を指定して自動実行することもできるので、そちらを基本にして、補えない場合のみ手動で操作した方が良いだろう。

 このユーティリティーは、「グラフィックモード、リフレッシュ頻度3、コントラスト7」といった具合に、表示モードおよびコントラストと組み合わせてプリセット登録しておき、キーボードショートカットで一発で切り替える機能を備えている。こちらを有効活用するのが、本製品を使いこなすためのコツということになるだろう。

 本製品はフロントライトを搭載しており、さらに寒色と暖色を切り替えられる。ただし、カラーE Inkはもともと色合いが微妙で、暖色は本来の色味が失われてしまうため、あまりお勧めしない。ちなみに通常時でもかなり暖色寄りなので、テキスト入力などオリジナルの色味にこだわらない用途であれば、寒色に設定しておいた方がいいくらいだ。

●カラーのクオリティーよりも解像度がネック?

 さて実際に使ってみた感想だが、以前のモノクロモデルにも増してクセが強い。現行のカラーE Inkは、世代を重ねるごとに進化しているものの、画面の彩度を中心にまだまだ改善の余地があり、「カラーE Inkにしては」という但し書きを入れなければ、ディスプレイとしてはなかなかつらいものがある。本製品についても、その域を出るものではない。

 とはいえ、カラーで表現されているグラフなどの図版をきちんと見分けられるのは、モノクロのE Inkディスプレイにはない利点だ。またモノクロE Inkだと、画面がグレースケールで表示されているせいでボタンが背景に同化してしまうことが多いが、本製品はカラー化によってかなり緩和されている。

 ただし本製品の場合、ネックとなるのはむしろ解像度の低さだ。現行のカラーE Inkデバイスは、カラーは低解像度であっても、モノクロは300ppiクラスの高解像度であることが多い。つまりカラーの表現力はいまひとつでも、モノクロのテキストは最低限きちんと読めるようにすることで、一定の実用性をキープしているわけだ。冒頭で紹介した楽天のKoboやBOOXのカラーE Ink端末もこのパターンとなる。

 しかし本製品はカラーだけではなくモノクロも150ppiという低解像度ゆえ、ブラウザでWebページを表示しても、見出しのようなサイズの大きいフォントはまだしも、本文に使われている標準的なサイズのフォントすら、読みづらく感じることが多い。「ば」と「ぱ」といった、濁音と半濁音の識別にも苦労するほどだ。

 カラーの図版も、Excelのグラフのように自分でベタ塗りの色を指定できる場合は、カラーE Inkと相性のよい色をカラーパレットから選ぶことで美しい表示が可能だが、既存の画像をそのまま表示すると、それほどのクオリティーは出ないことが多い。本製品に限ったことではないが、メーカーの製品ページで使われているデモ画像は、こうした特殊な素材である可能性があることは、頭に入れておくべきだろう。

●一方でパフォーマンスは高評価 価格をどう見るか

 このように、表示のクオリティーはかなり微妙なところなのだが、一方でパフォーマンスはかなり高い水準にある。以下の動画は、本製品とノートPC(液晶ディスプレイ)を並べた上で、タイピングの追従速度、スクロール時のレスポンス、さらに動画再生におけるコマ落ちの程度を比較したもので、いずれもかなり実用的だ。

 もちろんこれはあくまでも「E Inkとしては」であって、液晶ディスプレイの方が表示性能が高いのは紛れもない事実だが、例えばタイピングで漢字変換に付いてこなかったり、スクロールや動画再生で画面が完全に固まったりといった、利用に支障をきたすレベルでは全くない。ここはプラスに評価してよい部分だろう。

 以上のように、パフォーマンスについてはそこそこ実用的なレベルながら、解像度の低さがネックというのが総合的な評価になる。もっとも、低い解像度であるからこそこれだけのパフォーマンスが出せている可能性もあるので、一概に「もっと高解像度ならば」と言えないのが難しい。これについては製品の進化を待つしかない。

 いずれにせよ、現状では本製品が使えるか否かはあくまでも「用途次第」なので、表示したいコンテンツがここまで見てきた条件をクリアできそうになければ、無理に本製品を使うべきではないだろう。

 実売価格は32万8000円と、文教用途がメインになるのもやむを得ない額だ。この価格を許容した上で、クオリティーをある程度我慢してでも目への負担を和らげる必要があり、なおかつ用途がきちんと合致して、初めて検討対象になる製品と言えそうだ。

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