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“鉛筆をぶっ刺して発煙”を回避せよ NECの第2期GIGAスクール向けPC「Chromebook Y4」のこだわり

ITmedia PC USER 2024年10月3日 17時5分

 全国の公立小中学校で、児童/生徒に1人1台の学習用端末を整備する施策「GIGAスクール」が2021年に始まってから3年が経過した。間もなく学習用端末のリプレースが順次行われるが、全国の稼働台数でトップ(※)のNECは10月3日、新製品として「NEC Chromebook Y4」を発表した。※2023年、MM総研調べ

 いきなりだが、次の写真がどのような意味を持つか想像が付くだろうか。これは、鉛筆の芯が端子に触れて発煙/発火しないように高さが配慮されたUSB Type-Cポートだ。Chromebook Y4では、これまで現場で得られたフィードバックから、大人が想定しないような使い方に耐えられる、スペック表に現れない細かなアップデートが施されている。

●基本性能の向上、子供が使うことを考えたインタフェースの工夫

 Chromebook Y4は、ディスプレイを奥側に360度回転させてタブレットとしても使えるChrome OS採用の2in1デバイスだ。

 旧モデルの「NEC Chromebook Y3」と比べて、液晶ディスプレイ(11.6型、1366×768ピクセル)やストレージ(32GB eMMC)、LTEモジュール搭載、インカメラ(720p)、アウトカメラ(1080p、AF対応)など、同一仕様の部分がある一方で、CPU(Intel Celeron N4500→Intel N100)やメモリ(4GB LPDDR4X→4GB LPDDR5)、通信機能(Wi-Fi 6→Wi-Fi 6E)といったスペックは向上している。

 こうした基本性能を向上させているのはもちろんだが、同社が大きく打ち出しているのは、学校という特殊な環境下で使われることを想定した、外装やインタフェースの改善だ。

 NEC Chromebook Y4では、ヒンジ部分の内蔵ケーブルを改良することで開閉時のダメージ蓄積を軽減する新設計を採用した他、電源供給も担うUSB Type-Cポート×2や3.5mmイヤフォンジャックを全て本体左側に配置した。これは机上でPCが左側、鉛筆やプリントなどが右側に置かれて使われることを想定したもので、例えば鉛筆の芯部分が端子に触れて発煙/発火しないように配慮したものだ。

 記事冒頭で紹介した通り、接地面からの高さも考慮されており、仮にPC本体左側に鉛筆が置かれても事故が起きづらくなっている。

 NECの石井宏幸氏(商品企画本部 商品企画グループ グループマネージャー)によれば、学校側はちょっとした発煙であっても消防などに報告義務が発生する。万が一、そうした事故が発生してしまうと教職員の負担にもなり得るため、対策は重要だという。

●外装回りの改善、交換可能なバッテリーの採用

 NECによれば、2021年4月から2023年8月にかけて自社で行ったGIGAスクールにおける修理対応(1万2667件)のうち、修理が多かった部位トップ3は順にトップカバー(43%)、液晶パネル(24%)、メインボード(13%)だった。

 これを受け、次期モデルではさらなる頑丈さと耐久性の強化が求められたという。Chromebook Y4の外装はABS樹脂で、グリップ感の向上と傷を目立ちにくくするために、ザラザラな表面処理が施されている。コストが限られたGIGAスクール端末だからこその、低コストで実現できる工夫だという。

 外周部分にはTPU素材の保護材を装着している他、旧モデルに比べて設置面積を拡大したゴム足(交換可)や、底面のネジを緩めた際に脱落しづらくなる脱落防止リングも採用している。

 特に底面のゴム足については調整を重ね、本体が机上で滑らないように設計されている。記者も実際に机上で本体をかなりの強さで押してみたが、滑ることはなかった。机からの落下を防止できそうだ。

 キーボードはキートップの外れや隙間への異物挟み込みを防止するため、旧モデルと比べてキートップ同士の隙間を0.6mmから0.5mmに狭めたという。

 バッテリーは新たに底面から取り外せる着脱式となり、劣化などで交換する際の作業工数を削減している。バッテリーパック部分に限りトルクス(星型)ネジを採用することで、取り扱いに注意が必要なバッテリーを“分解好き”な児童/生徒が容易に取り外せないようにする工夫も施されている。

 一方で、オプションとして用意している専用ペンは本体収納が不可となっている。重量は計測中とのことだが、記者がNEC Chromebook Y3と持ち比べたところ、互いに近しい重量だと感じた。

 文部科学省は公立小中学校の端末調達について、原則として都道府県ごとに一括で行うことを求めている。端末メーカーにとって競争が激化することが予想されることから、NECは現場の要望に寄り添った端末でアピールしたい考えだ。同社は2025年2月下旬にChromebook Y4の出荷を開始し、2028年度までに200万台の提供を目指す。

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