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転換期を感じさせる「GoPro HERO13 Black」と、小さくてかわいい「GoPro HERO」を試す

ITmedia PC USER 2024年10月8日 12時5分

 ミラーレスやスマートフォンでは撮れない、撮りにくいシーンを記録できるアクションカム──その市場をリードするGoProの最新モデル「GoPro HERO13 Black」が登場しました。

 大手メーカー以外にも多くのブランドがさまざまなモデルをリリースしているアクションカム市場だけに、リーダーといえるGoProが選んだ最新の方向性は、多くのカメラマンやスポーツ・アクティビストが気になるところでしょう。

 今回は1世代ぶりの2モデル構成で、13のナンバーが振られたメインストリームの「GoPro HERO13 Black」(6万8800円)と、小型軽量ボディーにシンプルなUIを組み合わせた「GoPro HERO」(3万4800円)です。今回はそれぞれの性能を実機でチェックしてみました。

●レンズ交換式アクションカムの「GoPro HERO13 Black」

 まずはGoPro HERO13 BlackとGoPro HERO、前モデル「GoPro HERO 12 Black」のスペックから確認してみましょう。GoPro HERO13 BlackはGoPro HERO 12 Blackのマイナーチェンジといえます。

 GoPro HERO13 BlackとGoPro HERO 12 Blackの基本スペックはほぼ同一といっても過言ではありません。バッテリー容量は1720mAh→1900mAhと増加しましたが、外寸は変わらず、まさか重量まで同じとは。ケージ、リグなど、旧世代用のアクセサリーがそのまま使えるのはメリットですね。

 新たに登場した「Contactoマグネット式ドア+電源ケーブルキット」は、GoPro HERO 10 Black以降のモデルで利用可能です。バッテリードアを開かなくても充電できるので、水回りで使っても問題ありません。

 ところで気になるのは、連続撮影時間が2.5時間以上という部分です。1080p/30fpsで記録している場合の撮影時間とのことですが、バッテリー容量が少ないGoPro HERO 12 Blackの1080p/30fps撮影時の駆動時間も2.5時間以上なんですよね……。これはつまり、同じGP2プロセッサを積んでいるけれども、GoPro HERO13 Blackはクロックを高めて処理能力を上げているものと考えられますね。

 大きな差となるのは、交換できるレンズ(レンズモッド)の種類が増えたことです。ピント調整が可能なマクロレンズモッド、画角を広げる超広角レンズモッド、明るい場所でもモーションブラーを残せるNDフィルター(ND4、ND8、ND16、ND32)が同時にリリースされ、今後はアナモフィックレンズモッドの登場も予告されています。

 見た目はレンズカバーの交換となるため、ミラーレスを使っているときのような感覚にはなりませんが、撮影領域が大幅に増えるアプローチは大歓迎です。なお交換したレンズモッドはGoPro HERO13 Black側が自動認識してくれるため、ユーザー側で設定する必要はありません。ありがたい!

 他にも着脱が簡単なマグネット式ラッチマウントが使えるようになりました。フォールディングフィンガー(マウント)を内蔵しているとはいえ、GoProはずっと強固なマウントシステムを採用してきた弊害として、脱着するためにいちいちネジ(サムスクリュー)を回さなければならず、時間がかかりました。

 GoPro HERO13 Blackからは左右のラッチを押すだけで取り外せるため、ユーザビリティー面で大きな進化を遂げました。

●GoPro HEROは“初心に戻ったGoPro”

 GoPro HEROはフロントディスプレイを持たない最新の小型軽量GoProです。サイズも小さい。いや、あえてちっちゃいと言わせていただきましょう。なんだこれ、かわいいか。

 GoPro HERO4 Sessionや、GoPro HERO11 Black Miniの系譜かと思ったら、おっと、メインディスプレイはしっかりと備えています。GoPro HERO7 SILVERの現代版と解釈した方がいいかもしれません。

 外観上の特徴は、何と言っても前面パネルのほぼ全体に敷き詰められたヒートシンク。熱対策はバッチリですよ、というメッセージを感じます。

 アクションカムたるもの、タイヤが路面を切りつけ小石が飛び交う場所でも使うことがあるでしょう。その時にレンズカバーが傷つくこともあるかもしれません。でもGoPro HEROのレンズカバーは外せます。交換できます。

 このシステムに期待したいところは、GoPro HEROが魅力ある製品に育てば、メーカー純正の、もしくはサードパーティーのNDフィルターなどの販売があるかもという部分ですね。

 この小ささを実現するためでしょう。バッテリーは取り外しができなくなりました。複数のバッテリーを用意して長時間撮影に挑むといったことができないため、さまざまなシーンで撮影をしたいときはモバイルバッテリーを用意し、細かな充電を繰り返しましょう。

 三脚などに固定するときは、折りたたみ式のフォールディングフィンガーを使います。本体のへこみ部分に収まるGoPro HERO13 Blackと違ってパーツ全体が露出していますが、折りたたんでおけば邪魔にはなりません。

●GoPro HERO13 BlackとGoPro HERO、サイズの違い

 単体の写真だとGoPro HEROの小ささが分かりにくいかもしれないため、2台のGoProを並べてみました。一回り小さくなっているという感覚が伝わるでしょうか。

 物理ボタンの操作は共に同じです。側面のボタンを長押しして電源を入れ、同じボタンを押してモードを切り替え、上部のシャッターボタンで録画開始/停止します。

 画面内のメニューは、デザイン/UI共に同じ系統でまとまっていますが、GoPro HEROはかなり簡略化されました。シャッタースピードなどを細かく設定することはできません。

 画面が小さくなっているぶん、タッチ操作が厄介かなとも思っていたのですが、いい意味で肩透かし。定められた設定のまま、手軽に撮影できるようにチューニングされています。

●日中のブレ補正・どちらのモデルも優秀

 撮影データから最新のGoProクオリティーを確認してみましょう。まずはGoPro HERO13 Black(5.3K/60fps)で撮影した動画からご覧ください。独自の手ブレ補正機能の最新バージョン「HyperSmooth 6.0」は前モデルから採用されましたが、筆者の記憶に間違いがなければ、従来通りの十分有能だと感じる強力な補正力を発揮しています。

 なお、年額1万6000円のサブスクリプション「Premium+」に登録すると、専用アプリの「Quik」(iOS、Android、macOS)上で、HyperSmooth Proという後処理機能を利用できます。さらなるブレ補正スキルが欲しいなら課金をお願いします、ということなのでしょう。

 一方で、本体内手ブレ補正機能を持たないGoPro HEROですが、Quikアプリに撮影データを読み込ませた上でHyperSmooth(バーション表記なし)が利用できます。この動画は4K/30fpsで撮影したファイルを後処理で補正したものとなりますが、画質差はあれど、ブレ補正力はGoPro HERO13 Blackと同等といえますね。

●夜間のブレ補正・GoPro HERO13 Blackの本体内ブレ補正機能が生きる

 シーンが一転して夜間撮影となると、GoPro HERO13 Black(4K/60fps)のアドバンテージが前に出てきます。撮影時に動きをリアルタイムで予測しながらブレ補正を行うHyperSmooth 6.0のおかげで、店の看板などの光源が入っても、歩いているときの縦ブレが目立ちにいです。

 対してGoPro HERO(4K/30fps)の映像は、古い世代のGoProや、ブレ補正機能を持たないスマホの夜景動画のように、歩いているときの振動が画質に大きく影響して、にじみます。夜景撮影で使うなら三脚類に固定して定点で撮る、ということを意識したいですね。

 GoPro HERO13 Blackはさらにリニア+水平ロック設定で撮影することで、さらに光源ブレを低減できます。なおこの動画(新宿・歌舞伎町で撮影)で映っている看板の電球や蛍光灯、ネオンがくたびれているものがあるのでしょうか。アンチフリッカー機能を使ってもジリジリと映像がにじんでいますが、高性能なGoPro HERO13 Blackでもフリッカーを消しきれないことがあると判断しましょう。

●フルHDの10倍スロー・積極的に使いたくなる画質

 スローモーションの効果は1080p/240fpsの動画ファイルでご確認ください(720p/400fpsのバーストスローモーションは動画ファイルが壊れていたようで、検証できませんでした)。

 なお、この動画はQuikではなく、1080p/240fpsの動画ファイルをPCに転送し、Premiere Pro CCで24fps(10倍スローモーション)に変えています。12秒以降はすべてスローモーションとなっています。

 スマートフォンでも1080p/240fpsの動画撮影ができるモデルはありますが、ヘビーデューティーなシーンでも使いやすいアクションカムゆえに、撮影の幅を広げてくれる機能としてプッシュできますね。

●マクロレンズモッド・最短撮影距離は11cm

 GoPro HERO13 Blackにマクロレンズモッドを装着して撮影してみました。もともとGoProはパンフォーカスで撮影するカメラであり、オートフォーカスは搭載されていません。そこにマクロレンズをつけることになるわけですから、無望遠にはピントが合わなくなる...ということを覚えておきたいものです。そうしないと、次のような動画になります。

 マクロなシーンからドローンのような映像になるかなと思ってGoPro HERO13 Blackを装着したアーム付き三脚をぶん回してみましたが、ピントが合っているのは葉が密集しているところのみ。なおマクロレンズモッド装着時は最短11cmから最長75cmの範囲にしかピントを合わせられません。しかも手動です。

 マクロレンズモッドは基本的に固定して使うものだということを、心に刻みましょう。

●超広角レンズモッド・夜景だと光の影響を受けやすい

 超広角レンズモッドも利用シーンを選びます。日中の明るい場所であれば、逆光にさえ気を付ければ、よりワイドな画角が手に入るレンズとして安心して使えますが、夜間に使うとレンズ内での反射が多いのか、解像感の低下、ダイナミックレンジの低下など、画質を損なうことがありました。

 とはいえ、ポケットサイズの魚眼レンズというのは極めて貴重な存在です。使うシーンさえ選べば、キャッチーな映像を撮るための相棒として活躍してくれるでしょう。

●NDフィルターは便利だが炎天下での撮影には要注意なHERO13 Black

 GoPro HERO13 BlackとGoPro HEROの2台を使ってみて、いずれも価値のあるアクションカムとして高いレベルにあると感じました。特にGoPro HEROは小さくて軽くて、操作が簡単というカメラに仕上がっており、しかもディスプレイを内蔵していることでスマホアプリを使わずとも構図を確認できるところが気に入りました。

 自撮りをしないのであればフロントディスプレイはさほど重視しなくても良いため、純粋なアクションカムとして使いたい方にはGoPro HEROを強く推します。

 GoPro HERO13 Blackは1つ、懸念があります。それは熱に弱いところ。バーストスローモーション撮影や、NDフィルターを装着して撮影したはずのデータが読み出せなくなり、いったい何のトラブルかと調べてみたのですが、どうやら熱がこもりすぎてシャットダウンしたときに、ファイルの保存がうまくいかなかったのではと判断しました。

 前モデルのGoPro HERO 12 Blackも熱停止問題を抱えていましたが、GoPro HERO13 Blackも直射日光が当たる場所で長時間の高解像/ハイビットレート撮影していると、同様のトラブルが起きやすい様子ですね。

 GoPro HERO 9とボディーサイズが変わらないまま、高性能化を進めてきたハイエンドGoPro。そろそろ熱対策のためにもボディーの大型化が必要となるのではないでしょうか。

(製品協力:GoPro)

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