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私たちの“仕事”に適したビジネスPCをどう選ぶ? ~ストレージ編~

ITmedia PC USER 2024年10月11日 18時45分

 私たちの“仕事”に適したビジネスPCの選び方について、ポイントごとに連載して解説しているが、本記事ではビジネスPCを選定する上で重要かつ、モデルによっては後戻りができない、ストレージの選び方を解説していこう。

●「NVMe」と「SATA」の違い

 ストレージの選び方に掘り下げていく前に、基礎知識として現在の主流である「SSD」の種類について少し簡単に触れておこう。最近のビジネスPCのほとんどは、以前のHDDと同じ大きさ/形をしていた2.5インチSSDではなく「M.2 SSD」という非常に薄いタイプが採用されている。

 M.2 SSDは、さらにNVMe接続とSATA接続という接続方法の異なる2種類がある。ビジネスPCとして利用する場合、どちらを選べば良いのか。SATA接続とNVMe接続を簡単に比較すると以下の通りだ。

 HDDや光学ドライブを接続する規格としても使われてきたSATAは、最大転送レートが6Gbpsであるのに対し、NVMe接続はPCI Expressというインタフェースを利用しているため、NVMe Gen 4のモデルであれば約6.7倍の40Gbpsという非常に高速なアクセス速度を実現する。

 ストレージの速度はOSの起動時間や、アプリケーションの動作速度に直結するため、NVMe接続のSSDを搭載しているPCを選択するのが望ましい。と言っても、現在のビジネスPCは基本的にNVMe接続のM.2 SSDを採用していることがほとんどで、機種選定の際に見比べて困るということはないだろう。ただし、基礎知識として理解しておく価値はある。

 NVMe SSDは世代がいくつかあり、PCI Express 5.0(PCIe 5.0)が記事執筆時点での最新世代となっている。しかし、現状は発熱量がすさまじいためか、ビジネスPCにおける採用例は見かけない。NVMeを搭載したビジネスPCを選定する場合は、PCI Express 4.0という記載をチェックしよう。

●後から変更できないストレージ容量 必要量をしっかり見積もろう

 ビジネスPCの多くは持ち運びしやすいノートPCを採用することがほとんどだが、一昔前と比べると、どのモデルも薄型/軽量化を実現していることが多い。

 その理由の1つとして、昨今発売されているビジネスPCは、一昔前と違ってほぼ全てのモデルでSSDが採用されている。SSDはHDDと比べると、モーターなどの可動部品がなく、基板とチップのみで構成されるため、非常に薄く、低電力で高速なストレージを実現できる。

 さらに、最近のモデルはSSDを搭載するスロットを用意せずに、システムボードに直接はんだ付けすることで、製造過程の効率化とPC本体のさらなる薄型化を実現している。

 メーカーの視点だけでなく、ユーザーの視点から見ても、省電力かつ高速で、薄くて軽いとなれば非常に大きなメリットを受けられる。

 しかし、その一方でメーカー出荷時からシステムボードにSSDがはんだ付けされているということは、後から大きな容量のSSDに交換するといったことができない。

 そのため、ストレージ容量が足りなくなったら不要なファイルを削除するか、PCの買い換えが必要となってしまう。よってストレージを選定する場合、余裕を持った容量を確保することが非常に重要だ。

 他のパーツを選ぶときにも実施している内容だが、社内の業務を洗い出し、業務でどの程度のデータを扱うのかを検討し、3~4年の間で容量不足に陥らないような見積もりを立ててから、ストレージのサイジングを必ず行うようにしたい。また、ストレージ容量はファイルを保存するだけでなく、アプリケーションのアップデートや仮想メモリにも使われる。あまりにも容量が少ないと、アプリの起動や動作不良にも繋がるため、かなり余裕を持たせたほうがよい。

●高価な大容量SSD、限られた予算……どうする?

 さて、ストレージのサイジングを行った上で、必要な容量が分かったとして次に立ちふさがる壁は、SSDのコストではないだろうか。

 例えば、富士通の13.3型ビジネスノートPC「LIFEBOOK U9313/NW(Core i5)」を購入検討したとして、必要なSSDの容量が1TBだったと仮定しよう。BTOでストレージのカスタマイズを行い、SSDを1TBに変更すると、4万9500円の追加費用が発生する(記事執筆時点)。

 予算に余裕があり、SSDカスタマイズの費用が許容できるのであれば、そのまま発注すれば良いのだが、予算に余裕がない場合はどうすれば良いだろうか。

 この場合、「CPUのモデルをダウングレードする」「薄型軽量なモデルの採用を諦める」といった選択肢もあるが、あらためてデータの保存方法について再考するということも提案したい。

 例えば、PCローカルで全てのデータを管理するのではなく、「社内にファイルサーバを用意して、使用頻度が低いデータを退避する」「法人向けクラウドストレージを契約して、データの保存場所として利用する」といった方法を採用すれば、本体のストレージ容量をそこまで大きくしなくても問題ないケースもある。

 むしろ、手元のPCにしかデータが無い状態が横行すると、PC故障時にデータが消失するリスクもあるため、必ずしも業務で取り扱う全てのデータを保存できるPCを用意する必要はないともいえる。

 ストレージのサイジングは、扱うデータのサイズがどれほど膨れ上がるのか、ファイルサーバやクラウドストレージの有効活用など、検討事項が非常に多く意外と面倒なのが正直なところだ。

 しかし、冒頭でも述べた通り、最近のモデルはストレージが換装できないため、ストレージのサイジングを中途半端に行うと、後で取り返しの付かない状態に陥るため、面倒くさがらずに丁寧なサイジングを心掛けるようにしよう。

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