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「iPhone 16」「iPhone 16 Pro」のカメラ機能は想像以上に進化していた 1~2年前のiPhoneユーザーも買い換えたくなるくらい

ITmedia PC USER 2024年10月14日 13時0分

 Appleの「iPhone 16」「iPhone 16 Pro」シリーズが発売されて、早いもので3週間が経過した。ちまたにはさまざまなレビュー記事が出回っているところだが、筆者も両シリーズの実機を使って、インプレッションをお伝えしたい。注目ポイントは“カメラ”だ。

●まずは進化ポイントをざっくりチェック

 スペシャルイベントを俯瞰(ふかん)したレポートでも言った通り、今回は「無印」とも呼ばれるiPhone 16/iPhone 16 Plusのアップデート幅が極めて大きい。

 搭載するSoC(System on a Chip)がProモデルと同世代にそろえられた他、背面の超広角カメラがオートフォーカス(AF)に対応した上でマクロ撮影も可能となった。今世代における“大きなアップデート”ともいえる、カメラを操るための専用コントローラー「カメラコントロール」も見逃せない。

 しかし、実際にiPhone 16とiPhone 16 Proを使い比べてみると、(価格差に見合うかどうかはさておいて)日常使いでもある程度の違いを感じられた。

 カメラの画質に関しては、センサーやレンズの仕様に大きな変更がなされていないにも関わらず、特にアウト側のメイン(広角)カメラの画質が画質が想像以上に向上していることも分かった。このことは「フォトグラフスタイル」の機能と密接に関係している部分がある。イメージ処理のパイプラインが変更され、センサーから得た情報を一層生かしたイメージ処理が施されているのだ。

 このため、ここ数年に渡る毎年のアップデートと同様に、カメラ画質の差はそれなりに存在している。特に動画に関しては画質の向上が大きい。

 また、推論エンジンをフルに活用した機能の1つとして「オーディオミックス」も取り上げておきたい。この機能は、収録した動画の音声の聞こえ方を“後から”変えられるというものだ。

 動画を使ったコミュニケーションが増えている現代において、これは大きな差別化要素となりうる。

 ざっくりと機能についてチェックしたところで、iPhone 16シリーズとiPhone 16 Proシリーズの撮影機能について、もう少しチェックしてみよう。

●カメラコントロールは「今後に期待」

 本体全体を見渡すと、iPhone 16シリーズは美しいガラスの色が目を引く。そしてiPhone 16 Proシリーズは、少しだけ大柄になったことと、額縁を細くしたこと、そしてわずかに大きくなったディスプレイに視線を奪われがちだ。

 もちろん、そういう所も重要なポイントだ。ここまでやるには、外観のデザインから細かなディテールに至るまで、かなりのこだわりをもって取り組まないと難しい。

 だが、それはあくまで“見た目”の話であり、機能面での変化を一番体感できるのは、やはりカメラコントロールの搭載だろう。

 カメラコントロールは、一部のAndroidスマートフォンにもある「カメラ起動兼シャッターボタン」にとどまらない機構を備える。圧力センサーとスライドセンサー、触感フィードバック機能(Tapticsエンジン)を搭載した電子コントローラーの一種なのだ。スライドセンサーは、MacやPCにあるタッチパッドと同じ静電容量式となっている。

 このコントローラーの最も大きな特徴は、操作フィーリングをソフトウェアで制御できることにある。単体のカメラを使ったことがある人なら、レリーズボタンが「半押し」と「全押し」の両方で成り立っていることを知っているはずだ。iPhoneに搭載されたカメラコントロールでは、この操作を圧力センサーで実現している。半押しか全押しかは、Tapticsエンジンが生み出す振動で把握できる。

 実際に使ってみると、カメラを起動してレリーズ(シャッター)を切るところまでは、極めてスムーズに進む。さらに、コントローラーを半押ししてから指をスライドさせると、あらかじめ選んでおいたパラメーター要素を切り替えることができる。例えば「露出補正」を設定してあれば、簡単に露出を切り替えられるし、「トーン」を選んでおけばトーンカーブの深さを手軽に変えられる。

 ただし、現時点のカメラコントロールは、「カメラのあらゆる機能を自在に操る万能コントローラー」とは言いがたい面がある。カメラのほとんどの機能にアクセスできるものの、操作にかなりの“コツ”を必要とするからだ。

 具体的な話は後に回すが、現状ではApple製品の良さである「シンプルさ」「機能の取捨選択の巧みさ」が十分に感じられない。多くのことをこなせるがゆえに、かえって操作性を損なっているようにも思う。

 また、同じくAppleが得意とする、実際の使用感――機能ではなく感覚的なもの――についても、まだ検討の余地があるだろう。MacBookシリーズのトラックパッド(タッチパッド)が好評なのは、単なるハードウェアの優位性ではなく、OSのUI(ユーザーインタフェース)とのすりあわせがうまく行っているという面も強く働いている。そうした操作の“ニュアンス”に関する部分について、カメラコントロールはまだ問題を抱えていると思う。

 ただ、先述しているが、このコントローラーを構成している半分の要素はソフトウェアによる。ソフトウェアで操作フィーリングや機能を定義しているということは、今後アップデートによって改善されることも期待できる。

●自分スタイルの写真を簡単に作り出す

 さて、カメラコントロールにやや苦言を呈したしまったが、使いこなしさえすれば利便性の高いUIであることは間違いない。そこからiPhoneカメラの良い部分を引き出すことによって、自分なりのスタイルで写真を操ることが可能だ。

 例えば露出コントロールだと、従来はフォーカススイッチをタップしながら、上下にスライドさせながらも、うまく調整しきれなかったという人もいたのではないだろうか。そこで筆者は普段、カメラコントロールを露出補正に割り当てている。ただ、普段はボケを生かした写真をよく撮るという人であれば、ここにボケ具合を調整するための機能を割り当てておくとよい。

 筆者的には、露出補正以外にトーンの変更を割り当てておくこともお勧めだ。トーン変更は従来、機能設定の深い部分でしか選べなかった。しかし、iPhone 16シリーズ/iPhone 16 Proシリーズでは、フォトグラフスタイルがより幅広い選択肢を伴ってカメラコントロールから切り替えられる。標準の位置から左側は、主にポートレートを撮影する際に肌色や全体の風合いを変更するための「振り設定」が入れられている。逆の右側には、もっとドラスティックな絵作りや写真全体に影響するプリセットが入っていた。

 もっとも、フォトグラフスタイルは「写真」アプリを通じて後から簡単に変更することも可能となったので、撮影時に時間をかけて選ぶよりも、後から編集にした方が良いのではないだろうか。この辺は好みもあるかなと思う。

 とはいえ、繰り返しになるがカメラコントロールで制御できる項目は、少々多すぎるように思う。例えば、カメラコントロールからはカメラの切り替えを行えるのだが、これは画面をタップしたほうがはるかに早い。ズーム操作も可能だが、画面をスワイプした方が楽なケースも多い。こういう機能はカメラコントロールに割り振らなくてもいいように思える。

 また、カメラコントロールで操作できるパラメーターは「半押しダブルクリック」という過去に経験したことのない操作によって切り替えモードに入り、スライドセンサーによって選択を行う。この半押しダブルクリックは、慣れるまでなかなか難しい。その上、項目の順番を覚えていないと、切り替えも素早くできない。

 慣れれば使いこなせるようになるとは思うのが、いかんせんそこに至るまでのハードルが高いようにも感じる。機能をもっと絞り込んだ上で、半押しダブルクリックをもっと楽にできるようにする調整を入れるべきだろう。

 前のセクションに続いてやや苦言が多くなってしまったが、スマートフォン用としては優れているディスプレイを通して、正確にエフェクトやパラメーターの設定などを反映した映像を見ながら写真を撮れる点は良いと思う。

 使いこなしさえすれば、従来よりも“自分スタイル”の写真を簡単に撮影することが可能だ。カメラコントロールも“邪魔”というわけではなく、撮影を簡単にするための要素として洗練されていけばいいと考える。

●実際に撮ってみると分かるカメラの“良さ”

 さて実際にiPhone 16やiPhone 16 Proで撮影を始めると、今までのiPhoneとの違いが結構あるように感じる。冒頭でも触れたとおり、撮影時の処理パイプラインが変更されたことで、より階調豊かで、センサーが捉えた情報をより正確かつ的確に出力されるようになったようだ。

 テスト撮影した日はあいにくの曇り空で、撮影という意味ではあまり条件が良くなかった。しかし、写真の彩度は良く、明暗のトーンも的確で、ふくよかで立体的な写真を撮影できた。光の条件が良いと、過去モデルとの違いはよりハッキリとする。

 写真アプリからフォトグラフスタイルを簡単に切り替え、さらには明暗や色の濃さなど、いくつかのパラメーターを指先で自在に操ることが可能となったが、これらの操作を後処理で行っても、階調が失われることはなく、いわゆる「トーンジャンプ」も見られないのはすごい。

動画は「シネマティックモード」の品質向上がすごい

 特に動画での撮影では、色味がより良くなっているように思う。特にシネマティックモードでの色の豊かさと深みは、ぜひ試してみてほしい。背景のボケの処理に関しても、推論エンジンの活用が進んだこともあってか、以前よりも的確になっていた。

 一方、こうした画質の向上に対して、アクションカメラモードはそれほど進化していない点は少し気になる。性能が低下したわけではないのだが、アクションカメラモードにした途端に、動画の画質が極端に落ちてしまうのだ。もしアップデートで改良できるのであれば、できるだけ早くやった方がいい思う程の違いがある。

 なお、これらは主にメインカメラで撮影していて感じたことだが、どのカメラを選んだとしても、iPhone 16シリーズやiPhone 16 Proシリーズに共通する特徴だと思ってよい。

「オーディオミックス」は思ったよりも効果てきめん

 動画における音声収録に関しても大きなアップデートがある。先に軽く触れたオーディオミックスだ。iPhone 16 Proシリーズはもちろん、iPhone 16シリーズでも利用できる。

 この機能は動画の音声を背景ノイズと分離して強調するための機能で、具体的には音声のみを分離して“中央”に配置した上で、背景のノイズを抑える処理をしてくれる。

 「スタジオ」を選択すると、背景ノイズをできる限り排除する。「静かな場所で収録しているつもりが、どうしても入ってしまう背景の暗騒音」をきれいに消して、その名の通りスタジオで収録したような声にしてくれる。

 「シネマティック」を選ぶと、騒がしい街中で収録したとしても、被写体の音声を見事にセンターに転移してくれる。背景のノイズは適度に残るので、映画っぽい雰囲気のある動画を撮った際に役立つ。

 筆者が最も驚いたのは、満員のカフェの中で撮影した動画を、問題なく被写体の音声を捉えた上で、周囲の雰囲気も適切に“抜き取って”くれたことだ。撮影時は周囲がかなり騒がしかったのだが、オーディオミックスのシネマティックを適用しただけで、ここまでうまく調整してくれるのはすごい。

 なお、オーディオミックス自体はiPhone 16シリーズでも利用できるが、iPhone 16 Proシリーズでは音声を空間オーディオで収録した動画にも適用できるという機能的差分がある。空間オーディオと組み合わせた方が効果が“際立つ”のは間違いないのだが、iPhone 16シリーズでも十分満足のいく結果を得られるはずだ。

 感覚的なもので申し訳ないが、恐らく4年前の「iPhone 12」、あるいは3年前の「iPhone 13」の世代からの買い替えであれば、特に静止画カメラとしてその違いを大きく感じることはできるはずだ。

 そして動画カメラとしても、2年前の「iPhone14」世代はもとより、わずか1年前の「iPhone 15」世代からも買い替えたくなるかもしれない。

●日常的な領域で感じるiPhone 16とiPhone 16 Proのカメラの違い

 2024年のiPhoneは、無印モデル(iPhone 16シリーズ)でも特にカメラ機能の面で魅力が増している。それだけに、「Proモデル(iPhone 16 Proシリーズ)じゃなくてもいいんじゃない?」と考えている人も少なくないだろう。

 ただ、実際に使い比べてみると、差分はいろいろとある。これから購入する人も多いと思うので、参考情報として記しておこうと思う。

 無印とProモデルの、分かりやすい主な差異は以下の通りだ。

・アウト側のメイン(広角)カメラのセンサーサイズ

・望遠カメラの有無

・標準カメラでのRAW撮影機能の有無

・PrpResコーデックでの動画撮影機能の有無

・4K/HDRスローモーション動画撮影機能の有無

 ただ、これらの差異は、多くのユーザーにとっては大差とは言いがたい面もある。問題は、日常的な利用で違いが出るかどうかだ。

 そこでポイントの1つとなるのが、超広角カメラの違いだ。先述の通り、今回のiPhone 16シリーズでは超広角カメラにAF機能が備わり、マクロ撮影にも対応した。iPhone 15 Proシリーズと同等になったという事実“だけ”見ると「Proモデルじゃなくても」と思ってしまいがちなのだが、実はiPhone 16 Proシリーズでは超広角カメラが新しくなり、画質が一層良くなっている。日常利用では、ここが一番大きな差異となる。

 Proモデルの超広角カメラは約4800万画素と無印の4倍となった上、AFもより的確になっており、超広角での「ワイドマクロ」的な撮影も優れている。画素数の向上により、写真の一部を切り出した際に画質の劣化を抑えられるのも大きなメリットだ。

 ズーム領域でも、超広角カメラと広角カメラの中間域では、両方の約4800万画素センサーの情報を合成して、写真を生成できる点も大きな優位点だ。

 使い勝手の面でいえば、マクロモード時に画質低下を気にしなくてよくなったことで、例えば料理写真を撮影する際に「マクロモードへの移行を手動キャンセルしつつ、ギリギリまで寄ってピントの位置を調整する」といった“余計な苦労”が不要となったことは大きい。

 現在のiPhoneのカメラは光学的なズーム機能は備えていないものの、異なるカメラのセンサー情報を合成し、1枚の写真にしている。超広角カメラが広角カメラと同じ約4800万画素センサーになったことは、スペック以上の成果を得ている印象だ。

●「Apple Intelligence」なしでも通常通りの進化は遂げている

 実際の使用を通して感じたこととしては、iPhone 16シリーズやiPhone 16 Proシリーズはカメラにおける進化の幅が従来よりも大幅で、Appleが目玉に挙げながらも当面使えない「Apple Intelligence」がなかったとしても、3~4年周期でiPhoneを買い換えている人はもちろん、1~2年前のiPhoneを使っている人も買い換えたくなるくらいの機能を備えている。

 このカメラ面での進化は、Appleのプレゼンテーションを聞いたり、Webサイトで詳細な製品情報やスペック情報を見たりしただけでは分からない面もある。正直、今までで一番“文章化”して説明するのが難しい進化ともいえる。

 この違いについては、さまざまな側面でのレビューとして上がってくるだろうが、数年前のiPhoneからの買い替えには、やはり同じくiPhoneを購入したいと思えるだけの魅力が備わっていることは間違いない。

 そうなると気になるのが、Apple Intelligenceの実装後だ。まず10月中に米国英語版がリリースされ、2024年内に他国の英語に対応したバージョンが登場する。βテストが進められている「iOS 18.1」では、その機能の一部が利用可能で、写真における「クリーンアップ」(Googleが「消しゴムマジック」と呼んでいるものと同種の機能)は日本語環境でも利用できるようだ。

 Apple Intelligenceが“完全体”になるには、およそ1年の時間がかかると予想している。もしAI機能を期待するのであれば、その進捗(しんちょく)を確認してからでも買い換えるのは遅くないとは思う。

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