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ついに電子ペーパーPCディスプレイにカラー到来! ただしいろいろ割り切りが必要かもしれない「DASUNG Paperlike Color」を試す

ITmedia PC USER 2024年10月17日 12時5分

 大の電子ペーパー好きである筆者は、当連載でも電子ペーパー製品のレビューを何本かお届けしています。

→・実は安い? 正当進化なカラー電子ペーパー端末「BOOX Go Color 7」は、快適な読書体験ができるオススメな1台

→・利用用途にマッチすれば最高の10.3型白黒電子ペーパータブレット「BOOX Go 10.3」 洗練された高い完成度が魅力

 基本的には電子ペーパーという部品は(数が出ないということもあり)高級品です。しかし、どうしても眼精疲労がきつい時には電子ペーパーを使ったPCディスプレイで仕事をしたいので、清水の舞台から飛び降りる気持ちで「BOOX Mira Pro」を購入しました。購入当時で約27万円ぐらいしました。それくらい疲労に困っていたのです……。

 そして、近しいスペックを持つDASUNGの電子ペーパーディスプレイも2023年末にレビューしております。

→・眼精疲労対策、集中力UPには激オススメ! 電子ペーパーディスプレイ「DASUNG253U-F」レビュー

 上の記事にて「このあと、カラー化した製品の登場が予想できるため、購入タイミングが難しい……」と書きましたが、そうです。カラー版、来ました。

 今回はカラー化された電子ペーパーディスプレイ「DASUNG Paperlike Color」を体験する機会を得たので、実際にどの程度使えるのか試してみました。

 電子ペーパーなので、当然、通常のPCディスプレイと比べると妥協して使う部分はあります。大きなメリットは「目に優しい」という1点です。この点について価値を感じる方は、大きな価値が見いだせると思います。

●要するに、カラーの電子ペーパーPCディスプレイ

 ストレートに言えば、電子ペーパーPCディスプレイのカラー版です。タブレットなどでカラー電子ペーパー端末を使っている方はイメージが湧くかと思いますが、表示はまさにそれです。ただし25.3型という大きな画面サイズなので、用途は一般的なPCディスプレイに近いものになります。

 フロントライトを搭載しているので、部屋が暗くても利用できます。寒色、暖色、ミックスのコントロールも可能です。インタフェースもPCディスプレイらしくHDMIやDisplayPort、USB Type-Cが備わっています。

 しかし、残念ながら一般的な液晶ディスプレイの発色には及びません。ありのままの様子が伝わるように、本記事ではディスプレイ自体の写真を撮影し、できるだけ実物に近い状態をお伝えできるようにしております。

●カラーで用途が広がる

 しつこいですが、この製品はカラー表示ができます。つまり、文字色を判別できるのです。こうした点で地味に大きいと感じた用途は、プログラミングです。

 「プログラミングってテキストを書くだけでは?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、例えばVisula Studio Codeといったリッチなテキストエディタを使う場合、関数部分やコメント部分などの文字色が重要になってきます。

 なお、電子ペーパーディスプレイは発光していないので、かなり顔を近づけて作業しても問題ないです。本を読む時のように、画面にぐっと目を近づけて作業できるのも1つのメリットかもしれません。私はかなり至近距離(30cm未満)で使うこともあります。

●物理ボタンで設定変更をしやすいのは素晴らしい

 DASUNGの電子ペーパーディスプレイは、フロント部に物理ボタンを搭載しています。これがなかなか秀逸で、電子ペーパーでコントロールしたい機能が一通りできます。

 画面のリフレッシュ、表示モードの変更、フロントライトの色合いやコントラスト/輝度などの調整です。一部は複数ボタン同時押しという複雑な操作が求められる場合もありますが、操作できないよりは断然良いです。画面にメニューが表示されて変更するタイプよりも、物理ボタンでポンポンと変えられるのはやはり利便性が高いですね。

 電子ペーパーディスプレイは、使うシーンによって、それなりに設定を変更しないと見えづらい場面が多いです。特にコントラストは大事で、見たいものが文字なのか、画像の色調なのかで、適切な表示設定が異なります。手軽に設定変更できることは、使い勝手を大きく左右する要素なのです。

●いろいろと気になる点もある

 最近の電子ペーパーはかなりキレイに(文字を)表示できるようになりました。モノクロタイプの電子ペーパーはおよそ300ppi(1インチ当たりのピクセル数)です。例えば、25型の4Kディスプレイは176ppiとなるので、その細かさが伝わるでしょうか。

 しかし、DASUNG Paperlike Colorは150ppiとなります。解像度は3200×1800ピクセルですが、スケーリングが100%だと、私はやや文字の汚さを感じました。こうした事象に対しては、スケーリングを200%にすればおおよそ解消します。しかし、それでは画面に表示できる情報量は減ってしまうので、バランスをどうするかは考えないといけないですね。

 こうしたppiが気になるかは、普段使っているディスプレイの性能にも左右されるかと思います。あまりにきれいなディスプレイを普段から使っている方は、そのギャップでより気になるかもしれません。実物を見ていただくのが一番よいとは思います。

 もう1点気になったのは、PCからDASUNG Paperlike Colorを操作するソフトウェアについてです。ソフトを使えば画面の物理ボタンを触らずともPCから操作できるのですが、この接続をするためには個別にUSB接続が必要です。USB Type-Cでディスプレイ接続していても、別のケーブルをつなぐ必要がなります。ややスマートさに欠けますね。

●一番気になったのはマウスカーソルの動き

 PCディスプレイとして一番気になったのは、マウスカーソルの動きです。一般的な液晶ディスプレイなどに比べるとどうしても遅延があるため、マウスカーソルの動きがややカクつきます。

 表示設定を高速にすることでかなりスムーズになりますが、すると描画がやや粗くなり、影(表示書き換え前の情報)も残りやすくなります。このトレードオフをどこまで許容するかがなかなか難しいです。

 ちなみに、Webブラウジングなどスクロール動作はあまり気になりません。細かなコントロールが不要だからでしょうか。描画速度で気になったのは、個人的にはマウスカーソル操作のみでした。文字入力なども、よほどの高速タイピングでない限り遅延に気が付かないのではないでしょうか。

 なお、こうしたデメリットがあっても、目に優しいというのは大きな利点です。仕事で長時間に渡って画面を見ないといけないような状況では、唯一無二の製品となるでしょう。

●製品としてはヨシ しかし、さらなるモデルが登場予定

 カラーの電子ペーパーPCディスプレイ──DASUNG Paperlike Colorはしっかりとその用途を実現してくれる製品に仕上がっています。

 しかし、まず立ちはだかる大きな壁はやはり価格です。29万8000円(税込)とかなり高額なので、この価値を自分に見いだせるかはよく検討する必要があります。

 そして、さらに大きく悩む問題があります。

 なんと、この後すぐに後継モデルが発売される見込みなのです。その名も「DASUNG Paperlike Color Revo」──DASUNGの本家サイトでは既にページが公開されています。

 この後継モデル、リフレッシュレートがなんと33Hzもあり、一般的なPCディスプレイと比べても実用に耐えうるレベルです。ここまでしっかり表示できるようになると、オフィス用途で問題になるケースはほとんどないのではないでしょうか。

 もし、一番厄介なマウスカーソルの動きに違和感がなくなれば、より快適にPCディスプレイとして使えるようになると大いに期待が持てます。ただし、日本での価格はまだ不明です。価格差にもよりますが、どこまで何を求めるかを考え、製品を選択することになりそうです。

(製品協力:SKT)

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