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スチームパンクな見た目と磁気センサースイッチ、ラピトリ対応が魅力のキーボード「NuPhy Field75 HE」をチェック

ITmedia PC USER 2024年10月21日 15時15分

 中国・深センに本社を置くキーボードメーカーであるNuPhyの「Field75 HE」は、どこかスチームパンクっぽさも感じさせるユニークなデザインのキーボードだ。見た目だけでなく、磁気センサースイッチの採用やラピッドトリガーへの対応など、ゲーミングキーボードの最新トレンドをしっかりと押さえた意欲的な製品に仕上がっている。

 こうした目を引く製品は“実は見た目だけ”ということも多いが、シビアな操作が求められるゲーミング用途では実用性もかなり重要だ。キーボード業界では知名度も高まっているNuPhyの製品だけに期待もある。本記事ではその実力を確かめてみよう。

●1台で全て対応できる75%キーボード

 NuPhyのField75 HEはいわゆる75%キーボードで、テンキーが無いモバイルノートPCに近しいキー配列となっている。

 75%キーボードはゲームプレイだけでなく、普段の利用にも適したバランスのいいサイズだ。価格は税込み3万1680円と高価ではあるが、Field75 HEの1台でゲームから普段利用まで幅広く対応できる。

●今ではゲーム用キーボードに欠かせない磁気センサースイッチに対応

 一昔前のゲーミングキーボードといえば、基本的な仕組みは通常のメカニカルキーボードとほぼ同じで、専用ユーティリティーソフトによる細かな設定変更や、RGB LEDによるライティング機能の搭載といったものしか差別化ポイントがなかった。

 そんな中、2021年8月25日に登場した「Wooting 60HE」に搭載された磁気センサースイッチによって、ゲーミングキーボード界に転機が訪れることになった。

 磁気センサースイッチは従来のメカニカルスイッチとは異なり、スイッチの可動部に磁石が搭載されており、押し込んだ際の磁界の変化から、キー入力をアナログ的に検知する仕組みを採用している。

 メカニカルスイッチの場合、完全にキースイッチを押し込まなければキー入力が検知されなかったが、磁気センサースイッチの場合、キーが何mm押し込まれたら入力されたと検知するか、押された状態から何mm戻せばキー入力を解除するかを設定できるので、より高度な操作を実現できる。これをラピッドトリガー機能と呼ぶ。

 特に人気ゲームタイトルの「VALORANT」や「Counter-Strike 2」のような、細かな移動操作が求められる競技性の高いタクティカルシューターゲームをプレイするユーザーにとっては、普段のゲームプレイのスキル以上のパフォーマンスが発揮できるため、ラピッドトリガー対応キーボードを購入することで「Pay to Win(課金すれば有利になる)」といわれるくらい、今では重要な機能となっている。

 先ほど例に挙げたWooting 60HEは、まだまだ日本国内で手に入れにくい状況が続いている。さまざまなキーボードメーカーもこの磁気センサースイッチを採用(ラピッドトリガー対応)した製品を発売しており、Field75 HEもその内の1台だ。

●NuPhy Field75 HEの外観をチェック

 少し前置きが長くなってしまったが、Field75 HEの外観をチェックしていこう。冒頭でも述べた通り、どこかスチームパンクっぽさを感じつつも、特徴的なオレンジ系のキートップが一部採用されているので、そこまで重厚感を感じさせないデザインに仕上がっている。

 75%キーボードなので、フルサイズキーボードを使っている方にとってはキー数が少なく物足りなさを感じるかもしれないが、その物足りなさを補うために好みのキーやファンクションキーを指定できるオプションボタンが搭載されている。

●キーボードの配列にレイヤー(多層化)の仕組みを持たせる

 Field75 HEの面白い特徴の1つとして、キー配列にレイヤー(多層化)の仕組みを持たせていることが挙げられる。

 自作キーボードをたしなむ方にはなじみの深い機能だが、キーの配列をいくつかキーボードに持たせて、複数のレイヤーとして定義できるキーボードがこの世には存在している。

 Field75 HEは市販のキーボードでありながら、キー配列を3つ定義できるようになっており、「~」キーの左隣にあるシフタースイッチを切り替える事で、瞬時に任意のキー配列に切り替えられる。

 初期設定ではWindows向け、macOS向け、ゲーム向けとしてそれぞれ定義されているが、後述するカスタマイズツールでそれぞれのキー配列を自由に変更できるので、普段使い用、FPSゲーム用、MMORPG用などのような使い分けも可能となる。

●特徴的なボリュームコントロールノブ

 Field75 HEにはキーボードには似つかないコントロールノブが搭載されている。デザインもField75 HEのスチームパンクっぽさを強調するもので非常にスタイリッシュだ。

 残念ながらボリュームコントロール以外に機能を割り当てられないが、それでもキーボードでスピーカーボリュームをキー連打で調整するのではなく、スクロールホイールで調整できるのは何とも格好が良く使いやすい。

●キーボードの設定に専用ユーティリティーのインストールは不要

 現在、市場で販売されている多くの多機能キーボードやゲーミングキーボードは、カスタマイズ設定をするために専用ユーティリティーのインストールが必要だ。

 筆者もさまざまなメーカーのガジェットを利用しているので良く分かるのだが、扱うガジェットが増えれば増えるほど、メーカーの範囲が広まれば広まるほど必要なユーティリティーが山積みになる。

 結果としてOSの再インストールやPCを新調した際に、さまざまなユーティリティーのインストールが必要になるため、非常に面倒くさいのが正直なところだ。

 ところが、Field75 HEはキーボードのカスタマイズができるのにもかかわらず、専用ユーティリティーのインストールを必要としない。Webブラウザで専用の設定サイト「NuPhyIO」にアクセスして設定を行う。

 設定自体もキーの割り当て変更といった作業が視覚的に分かりやすくなっており、専用ユーティリティーのインストール無しで、ここまでできるのかと驚くばかりだ。

 もちろん、ラピッドトリガーやアクチュエーションポイントの設定もNuPhyIOを通して行うのだが、こちらも設定インタフェースが非常に分かりやすくかつ丁寧に作り込まれている。

 設定自体も全てのキーが独立しているため、例えばFPSで多用するWASDキーだけ他のキーと違う設定を行うことも可能だし、全てのキーで一括設定することも可能だ。

 NuPhyIOは非常に良くできており、それぞれのキーを押下すると画面下部の左側に押し込み量が視覚的に表示される。この計測結果をもとにして、それぞれ設定を追い込めるため、世界に1つだけの自分だけの感度に設定したキーボードが簡単に出来上がる。

●実際にゲームをプレイする上でどんなメリットがある?

 Field75 HE本体の使用感やユーティリティーの使いやすさを試してきたが、非常に完成度の高いキーボードと感じる。では実用ではどうか。実際にゲーム「APEX Legends」をプレイして、その操作感を体験してみた。

 テスト当初、マップ上での立ち回りが重要になるバトルロイヤル形式のAPEX Legendsでは、VALORANTやCounter-Strike 2ほどラピッドトリガー機能は求められないと考えていたが、実際は違った。

 例えば、スナイパー武器を持った状態でADS(スコープをのぞく)操作を行った際の左方向、右方向に動く際、Field75 HEに搭載されているラピッドトリガー機能や、アクチュエーションポイントの調整が非常に有用である事が分かり、筆者の思い込みが良い意味で崩壊した。

 プレイする度に、都度NuPhyIOを使って微調整することで、普段よりADS操作を含めたエイム操作や移動などにおいても非常に快適かつ正確性を高めることができた。

 また、キーの押し心地についてもメカニカルスイッチ形式の物と比べて、キータイプ時のフィードバックがスムーズで、快適なタイピング経験が得られた。

 Field75 HEを試して感じた同製品のメリットは、高いカスタマイズ性でとにかくオールマイティーであるところだ。場面に応じたカスタマイズに対応し、切り替えも専用のシフタースイッチでスムーズに行える。

 少し変わった見た目に心引かれたなら、十分に購入検討候補に入れる価値がある製品だ。

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