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8K/30fps撮影に対応したライカ印の正統派アクションカム「Insta360 Ace Pro 2」を前モデルと撮り比べてみた

ITmedia PC USER 2024年10月23日 0時43分

 Insta360が2023年11月にリリースしたフリップ式ディスプレイ搭載のアクションカム「Insta360 Ace Pro」の後継機種として「Insta360 Ace Pro 2」が発表されました。

 自撮りする時に大きな画面で画角を確認できるという特徴を持っていた初代モデルですが、わずか11カ月で登場した新モデルはどのような進化を遂げたのでしょうか。両者を撮り比べてみました。

→・「Insta360 Ace Pro」は1/1.3インチセンサーにライカの技術を組み合わせたお手軽アクションカム Vlogを意識したフリップ式ディスプレイも魅力

●より高画質な動画/写真が撮れるようになった2ndモデル

 Insta360は360度全天球カメラを始めとして、指先サイズのライフログ向きアクションカム、プロセッサとカメラ/レンズ、バッテリーが分割できるアクションカム、電動ジンバルを用いたWebカメラなど、さまざまな機能や性能を持つカメラを猛烈な勢いで世に送り出してきました。最新のInsta360 Ace Pro 2は「自撮りしやすいアクションカム」という従来機の個性を生かしながら、大幅なアップデートが施されています。

 センサーサイズは1/1.3インチで初代から変わりませんが、メーカーいわくアップグレードはしているとのこと。例えばダイナミックレンジは13.5ストップを実現しています。参考までにソニーの「α7SII」(2015年)は14ストップ、パナソニックの「DC-S5」(2020年)は14+ストップです。

 一昔前とはいえ、低画素で高感度性能を追求したり、動画撮影機能を充実させたりフルサイズミラーレスのダイナミックレンジに迫る性能を持っているとすれば、暗所での撮影クオリティーに期待したくなりますよね。

 レンズはライカ印の「SUPER-SUMMARIT-A 1:26/13 ASPH」が採用されており、フルサイズ換算で13mmです。後ほど紹介しますが、画角は一段と広くなりました。

 センサー解像度は8Kです。詳細は不明ですが、4:3のアスペクト比で写真を撮影した場合、5000万画素のデータとして記録されます。従来機は同じ設定で4800万画素だったので、有効画素数は確実に増えているようです。

 そして新たにノイズ低減/画像処理用のProイメージングチップと、スムーズな動作をもたらす5nmプロセスのAIチップを搭載しています。デュアルAIチップ構成とすることで、従来比200%の処理能力を得たとしています。

 センサーの読み出し速度も高まったのでしょう。動画の最高画質設定は従来機の8K/24fpsから8K/30fpsにアップしました。低照度シーン用のPureVideoモードや、アクティブHDRモードも、従来より高フレームレートで撮影できます。

 カラープロファイルにライカカラープロファイルも入っていますね。ただしInsta360 Ace Proも8月のアップデートでライカカラープロファイルが使えるようになったので、ここはアドバンテージとはならないかもしれません。

 過去モデルにもちゃんと新機能を提供していくところは、ハードウェアメーカーの姿勢として素晴らしいもの。信頼に値しますね。

●モノラル録音でなくても風切り音を低減できるウィンドガード付き

 個人的に秀逸だと感じたのが、取り外し式のウィンドガードを備えているところ。これは大いなる進化です。

 アクションカムは迫力や臨場感のある美しい映像を撮ることにたけていますが、録音品質は特別優れているとは感じないプロダクトでした。これはスマホやミラーレスカメラ、マイク内蔵イヤフォンなども同様で、いずれも超小型のMEMSマイクを使っている時点で、どのプロダクトでも集音品質や録音品質は似たりよったりでした。

 しかし、風を切って走るようなシーンでも使われるアクションカムは、他のプロダクトよりも風切り音対策が欠かせません。ところが、僕の知る限り、これまで純正のウィンドガードは発売されていませんでした。代わりに風切り音が目立たなくなる機能が付いていましたが、モノラル録音になってしまいます。

 その点、Insta360 Ace Pro 2は違います。ご覧のように、最初からウィンドガードを備えているのです。このウィンドガードでも風切り音を消せないときは、モノラルの風切り音低減モードも併用できますし、外部マイクやBluetoothマイクを使う際のゲイン調整ができるから、音割れのトラブルもそうそう起こらないでしょう。

 アクションカムとして正しい進化だと思いませんか。

 また、水中撮影時に使うマイクキャップも標準装備です。細部まで配慮が行き届いてますね!

●ハードウェアとしての使い勝手は従来機と同等

 レンズ、マイク以外を見ていきましょう。電源ボタンを押すと起動、長押しでシャットダウンです。起動中に短く押すと、プリセットされているモードに切り替えられるモードボタンとして機能します。

 防水カバーを開けるとmicroSDメモリーカードスロットとUSB Type-Cポートが見えます。外部ストレージデバイスとして利用できる「Ace/Ace Pro クイックリーダー」と接続することも可能です。

 バッテリー容量は従来の1650mAhから1800mAhへと増加しました。なおバッテリーのサイズは新旧ともに同じです。

 コネクター接点部の形状も同一、極性も同一だったため、試しに入れ替えてみましたが、Insta360 Ace Pro 2のバッテリーをInsta360 Ace Proで使えましたし、その逆も可能でした。

 メーカーが推奨する運用方法ではないかもしれないので注意が必要ですが、容量が少ないとはいえ従来のバッテリーが使える設計はうれしいものです。

 マウントは近年のInsta360シリーズが採用しているマグネット式となっています。使用するマウントパーツも同一です。本体に付属するのは一般的にGoProマウント/フィンガーと呼ばれる、くし状の標準マウントですが、折りたたむことでカメラの三脚穴が使えるようになるオプション品のクイックリリースマウントが便利です。コンパクトで持ち運びしやすいといったメリットもあります。

●明らかに向上した画質が気持ち良い

 ここからはInsta360 Ace Pro 2とInsta360 Ace Proの画質差をチェックしていきましょう。まずはInsta360 Ace Pro 2の8K動画からご覧ください。

 筆者の自宅に8Kディスプレイがないため、43型の4Kテレビで画質をチェックしました。クレーンのワイヤなど一部にゆらぎが見えますが、解像感は良好です。拡大してみると、駅名など大きな文字は読める。記録用としては十分なクオリティーではないでしょうか。

 Insta360 Ace Proで撮影した8K/24fpsの動画を見ると、画面中央はシャープさを保っていますが、周辺の描写が甘いことが分かります。さらにトリミングした画像を見ると、スマートフォンのデジタルズームのように、にじみが多く感じます。またInsta360 Ace Pro 2より画角が狭いことも目立ちます。

●HDR動画もクリアな描写でクオリティーアップ

 続いてハイライト部とシャドー部のバランスを取るアクティブHDRで撮影した動画をご覧ください。

 Insta360 Ace Pro 2のHDR動画は全域がシャープです。暗い部分がジリジリと動いているように見えますが、補正力はばっちり。

 参考例として、8K/30fpsで撮影したHDRなしの動画もご覧ください。空の白飛び面積が明らかに減っているのが分かるはずです。

 陰影が多い自然の中での撮影も、Insta360 Ace Pro 2ならキレイに記録を残してくれるでしょう。

 そしてInsta360 Ace ProのHDR動画ですが……あれっ。こんな感じでしたっけ。暗い部分はまるで塗り絵のよう。一昔前のスマートフォンで撮った動画を思わせます。あれー。ここまで違いがあるんですかとびっくり。

●歩行時のブレと低照度の画作りをPureVideoモードで確認

 ダイナミックレンジが拡大したというInsta360 Ace Pro 2ですが、暗いシーンでの撮影品質はいかがなものでしょうか。同時に歩いているときの縦ブレ、光源のにじみを確認してください。

 電子手ブレ補正の効果が強く、アクションカムでの夜間徒歩映像にありがちな光源のにじみはかなり目立たなくなっています。優秀です。写真モードで撮影すると、AEが選んだISOは655。13.5STOPのダイナミックレンジというのもうなずけます。

 対してInsta360 Ace Proは、PureVideoモードで撮影しても黒つぶれ面積が多めです。ただしこれはユーザーの好みによって評価が分かれるかもしれません。大きなディスプレイで見たときは暗部の解像力に優れたInsta360 Ace Pro 2の映像をキレイだと感じましたが、スマートフォンの画面で見るとフィルターで落ち着かせたようなInsta360 Ace Proの映像が好ましいと感じましたから。

 なお同じ条件での写真撮影時のISOは1539に上がりました。Insta360 Ace Pro 2と比べなければ十分納得がいくものですが、ここまで性能に差が出るとは。

●スローやタイムシフトはレンズ品質止まりかも

 周辺部までクリアに描写するレンズ(もしくはレンズ保護ガラス)を持つInsta360 Ace Pro 2。スローモーションでの画質差をチェックすると、光学系由来と思える部分にしか差を感じませんでした。

 これはタイムシフトなどの撮影モードでも同様です。目を引く動きがある場合、多少の差は気にならなくなってくるものなのですね。

●明らかにポテンシャルアップしたInsta360 Ace Pro 2

 2023年くらいまで、スマートフォンやアクションカムの画質は大きな伸びを見せなくなってきました。ところが2024年は明らかに録画や撮影品質を高めたモデルが次々と登場しています。

 Insta360 Ace Pro 2もそんな高解像トレンドを行くモデルの1つです。デザインが大きく変わらなかったからといって、最初はナメててごめんなさい。メニュー画面のUIも分かりやすくなりましたし、もっと身近で、高解像性能を得られるアクションカムに進化していました。

 カリッとシャープな映像/写真が好き、そして特に自撮りやTikTok/YouTubeショートの縦動画を撮りたい方にはおすすめ。というか、今すぐ買うべきマストなカメラと言ってもいいでしょう。

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