アマゾンジャパンは11月5日、セキュリティカメラやドアベルなどスマートホームセキュリティを展開する「Ring(リング)」ブランドにおいて、サブスクリプションサービスの内容を一新する。新サービスの名称は「Ring Home」で、3種類のプランを用意する。
10月22日、同社はRing Homeに関する説明会を開催した。説明会にはアマゾンジャパンの瀬口雄介氏(Ring事業部 シニアプロダクトマネジャー)と、米Ringのデイブ・ワード氏(インターナショナル・マネージング・ディレクター)が登壇し、Ringデバイスや新サービスの概要を説明した。
●サブスクリプションサービスは「2種類」から「3種類」に
Ringの現行のサブスクリプションサービス「Ringプロテクトプラン」には、月額350円または年額3500円の「Basic」と、月額1180円または年額1万1800円の「Plus」の2種類がある。Basicプランはデバイス単位、Plusプランは住所単位での契約だ。
新しいRing Homeでは、住所単位契約のプランが「Standard」と「Premium」の2つに分かれる。Standardは従来のPlusプランに相当し、PremiumはStandardプランに付加サービスを追加したもので、料金は月額2380円または年額2万3800円となる。
BasicプランとStandardプラン(旧Plusプラン)の料金は据え置かれる。いずれのプランも、初回申込時には30日間の無料体験が可能だ。
Basicプラン:ビデオプレビュー付き通知を利用可能に
Basicプランでは「最長180日間のビデオイベント履歴の保存」「パーソンアラート」「荷物アラート」といった機能に加えて、「ビデオプレビュー付き通知」に新規対応する。
これは、会議中や商談中などスマートフォンの操作が難しい状況でも、Ringカメラ/ドアベルがモーション(動き)検知した際に映像のアニメーションGIF付きプッシュ通知を行うという機能だ。わざわざアプリを開かなくても、すぐに対応すべき事案かどうかを判別できるようになる。
Standardプラン:遠隔地からドアベルのチェックが可能に
Standardプランでは、従来のPlusプランで提供されてきた機能(「デイリーイベントサマリー」など)に加えて、新機能として「ドアベルコール」「長時間ライブ映像」を利用できるようになる。
ドアベルコールは、Ringドアベルのベルが鳴らされた際に、Ringアプリをインストールしたスマホにビデオコールをかけるという機能だ。スマホで受話ボタンをタップすると、ドアベルの前にいる訪問者と会話できる。
これまでも、外出時にドアベルが押されたことは“通知”として受け取れていたが、「短い通知では見逃してしまう」という意見が寄せられたことで実装した機能だという。
長時間ライブ映像は、これまで最長10分間だったライブ映像の視聴を最長30分間に拡充したものだ。留守中のペットの様子や、別の部屋で遊んだり寝たりしている幼い子供を、これまで以上に長い時間見守れるようになる。
Premiumプラン:24時間連続録画と連続視聴ライブ映像に対応
Premiumプランでは、Standardプランの機能に加えて「24時間連続録画」「連続視聴ライブ映像」も利用できる。
24時間連続録画は、その名の通りRingカメラ(一部)で24時間連続で録画し続ける機能だ。モーション検知ゾーン外で起こったイベントも、常時録画とすることで確認できるようになる。
ただし、24時間連続録画が使えるカメラは1住所当たり最大10台までとなり、併用できない機能もある。また録画のクラウドでの保存期間は14日間となるので、永続的に保存したい場合は、保存期間内にダウンロードする必要がある。
連続視聴ライブ映像は、時間制限なくRingカメラのライブ映像を視聴できる機能だ。
なお、これらの機能は以下のRingカメラで利用できる。
・Ring Stick Up Cam(電源アダプターの接続が必要)
・Ring Indoor Cam(第2世代)
・Ring Pan-Tilt Indoor Cam
現行プラン(Ringプロテクト)契約者の扱い
既にRingプロテクトを契約している場合、その契約は11月5日からRing Homeに自動移行される。
Basicプランを利用している場合はBasicプラン、Plusプランを利用している場合はStandardプランでの契約となる。
●アマゾンジャパンのショールームで実演
新プランの説明が一通り終わると、アマゾンジャパンの瀬口氏が新プランで提供される新機能のデモンストレーションを行った。
今回の説明会はアマゾンジャパンの本社内にある「スマートホームセンター」と呼ばれる部屋で実施された。この部屋は実際の家屋を模して作られており、その名の通りアマゾンジャパンが自社で取り扱う「Amazon」「eero」「Ring」ブランドのスマートデバイスと、それらと組み合わせられるスマート家電を実際に試せるショールームとなっている。
このセンターの玄関部分には、「Ring Doorbell Plus」が、それぞれの部屋には各種Ringカメラが設置されている。
スタッフがドアベルを鳴らすと、瀬口氏が手にするスマホに電話のような通知が表示された。応答ボタンをタップすると、ドアベル前の人と会話できた。
また、Ringカメラ(今回はRing Doorbell Plus)の前で動きが検知されると、スマホにアニメーションGIF付きのプッシュ通知が表示された。これなら、会議中であったとしてもスマホに目を落とすだけで何が起きているかすぐに分かるだろう。
なお、Ringデバイスは、サブスクリプション契約を結ばなくてもライブ通知などの機能を使える。しかし、クラウドへの録画機能などを使う場合は、サブスクリプション契約が必須だ。瀬口氏は「AWSをサーバーとして使うからこそ、(サブスクリプションサービスの)低価格が実現している」と解説する。
●「何が起きるか分からない」からこそ、常に見守れる環境を構築したい
今回の説明会に合わせて来日したRingのワード氏は、「10年以上前に米サンタモニカでRingを立ち上げてデバイスを開発したのは、自分たち家族と近隣住民の安全を守るためだった」と開発経緯を説明した。起業当初の根幹は、今も変わっていないという。
Ringは現在、米Amazon.comの傘下にある。ドアベルに始まり、インドアカメラ、屋外カメラ、照明付きカメラなど、現在では約50種類のデバイスを約30カ国で展開している。セキュリティだけでなく、ユーザーそれぞれが自分たちなりの使い方を発見し、再定義しているという。
例えば、ユーザーがさまざまな使い方をする中で、「自分たちの近況や日常のハプニングなどの瞬間を、映像として親しい友人や離れた場所に住む家族とシェアすることで“思い出”として残すことがトレンドになっている」とワード氏は語る。
「ユーザーが発見した使い方に寄り添いたい。そんなニーズをさらに満たせるものを提供したい」という考えをより具体的に表現しているのが、「Keeping people close to what's important(『今』を想う。Ringでつながる)」という新しいミッションだ。
新しいRing Homeに実装された24時間連続録画や連続視聴ライブ映像といった機能は、このミッションを“体現”すべく生まれたのだという。
クラウド保存するという特性上、ユーザーが気にするプライバシーについては「十分に配慮したソフトウェア開発をしている」という。アプリ内で録画をしない時間やエリアなどを設定できるようにしているのは、その一環だ。
日本におけるRingデバイスの販売は2022年に始まった。その翌年(2023年)には、売り上げが前年比で70%伸びたという。
ワード氏は米国内でユーザーから提供された「Ringのドアベルのおかげで強盗を撃退できた」というビデオを流しつつ、「悲しいことに、日本でも郊外において強盗事件が増えつつある。近隣の安全を守りたいという思いから始まったRingデバイスを、今こそ役立ててもらいたい」と訴える。
Ringのデバイスやサービスでは、AI(人工知能)も活用されている。今後も「AIは2016年から使っているが、まだまだ伸びしろのある分野なので、これからも積極的に取り組んでいきたい」という。
最後に、ワード氏は次のように抱負を語った。
「これまでの10年では、Ringとしての象徴的なハードウェア構築に力を入れてきた。これからの10年はあなたの大切なもの――家族、ペット、車などとつながれるような開発をしていきたい。Ringを通じた比類のないビデオ体験により、それを可能にしていきたいのです」