ヘッドフォンやイヤフォン、スピーカーなどを手掛けるEdifierの「MR3」は、Bluetooth接続にも対応する小型のモニタースピーカーだ。実売価格が1万4980円と手頃でありながら、日常利用だけでなく楽曲制作にも適しているという。本記事では、実機を用いて使い勝手などをチェックしていこう。
MR3はEdifierのロングセラー製品「MR4」と同じラインの製品だ。両者を比べると、定格出力が最大42Wから最大36Wにスペックダウンされているが、新たにBluetooth 5.2への対応やHi-Res Audio認定を受けるなど、スピーカーのトレンドに対応したアップデートが施されている。そして実売価格はMR4(1万6980円)と大して変わらないのでお得感がある。
サイズは実測で155(幅)×125(奥行き)×220(高さ)mmと、卓上スピーカーとしては比較的大きい。購入を検討するなら、事前に置けるスペースがあるかよく確認しておくことをオススメする。
カラーバリエーションはホワイトとブラックがある。モニタースピーカーと言えばブラックが主流であったが、最近は他社でもホワイトのモデルが展開されており、机回りや部屋のインテリアにあったカラーを選べるのはありがたい。
ウーファーのセンターキャップカラーはカッパーで、高級感を感じられるデザインに仕上がっているのも好印象だ。
スピーカー正面に向かって右側のスピーカーユニットには、電源ボタン兼ボリュームコントロール、ヘッドフォン出力端子、AUX入力端子が備わっている。
電源を入れる際は、電源ボタン兼ボリュームコントロールを押し込む必要がある。スピーカーの電源を入れるには、ボリュームを上げるかボタンを押し込むかのどちらかになるので、取り扱い説明書を見ずに操作すると少し戸惑うかもしれない。
●お手頃な価格ながら、マルチ入力に対応
MR3は充実したインタフェースも魅力だ。前面にAUX入力端子、背面にバランスTRS端子、RCA端子が備わっている。
スマホなどの音声を有線接続で流したい場合は前面のAUX入力端子に接続し、PCとの有線接続は赤と白のRCAを利用する。さらに、バランスTRS端子を利用することでオーディオミキサーなどにも接続できる。卓上スピーカーとしての利用から、モニタースピーカーとしての利用まで、幅広いユーザーをカバーできるようになっている。
それに加え、Bluetoothで無線接続も可能だ。特にUSBオーディオインタフェースを用意しなくてもPCスピーカーやスマートフォンのストリーミングアプリ、ゲームの音声を流すスピーカーとしても利用しやすい。
Bluetooth接続では、2台同時接続が可能なマルチポイント機能にも対応しているため、PCとスマホを接続しておき、普段はPC用のスピーカーとして利用し、休日などのゆっくりしたいタイミングではスマホ用のスピーカーとして利用する、といったような使い方も実現可能だ。
●ACアダプターが不要、電源周りがコンパクトに
モニタースピーカーをはじめ、卓上に置く普通サイズのスピーカーは大体のモデルがACアダプターを使った電源供給を行っている。
ACアダプターがあると、どうしても机回りの配線がごちゃごちゃしがちだが、MR3はACアダプターが不要で、メガネ型のコネクター電源ケーブル(メガネケーブル)を挿すだけで済むのは非常にありがたい。
●スマホでイコライザーのカスタマイズや、音響のチューニングが可能に
MR3はうれしいことに、スマホアプリの「EDIFIER Connecx」でイコライザーのカスタマイズや、音響のチューニングが行える。ハイエンドモデルと比べると設定できる内容は非常にシンプルだが、不慣れな方でも操作に迷うことの無いシンプルなUIに仕上がっている。
イコライザーの設定自体も非常にシンプルで、モニタースピーカーとして使うための「モニター」モードと、音楽を視聴する際に利用する「音楽」モード、そしてゲイン設定からカスタマイズできる「カスタマイズ」モードが備わっている。
他メーカーの上位モデルなどでは、いくつかのジャンルにあわせたプリセットが用意されているが、MR3にあらかじめ用意されているプリセットは2つのみだ。
本来はDTMやレコーディングなどで利用するモニタースピーカーなのでイコライザーの設定は特に変更しない想定ではあるが、音楽再生を楽しむユーザーもカバーするため、「音楽」モードと「カスタマイズ」モードが用意されているのだろう。
イコライザーのプリセットが少ないものの、「音楽」モードに設定すれば低音域から高音域まで素直に音を鳴らしてくれるので、プリセットだけで十分楽しめる。
MR3にはイコライザーだけでなく、音響のチューニングもできるようになっており、EDIFIER Connecxの「音響のチューニング」画面から、細かな調整ができる。
スピーカーはイヤフォンと違って耳から離れた場所に置くものだ。スピーカーの設置位置によっては聞こえ方が微妙に違ってくる。
メーカー公式サイトでスピーカーの位置とリスニングエリアに関するアドバイスも記載されているが、このアドバイスに従ったとしてもスピーカーを設置する部屋の状態は人によってバラバラだ。
そのため、各部屋の状況にあわせて音響のチューニングがアプリ上から実施できるようになっている。
例えば、「低音域周波数のカットオフ」機能は指定した周波数より低い周波数の音を、設定した減衰量で減衰(カットオフ)できるようになっている。
スピーカーは再生できる周波数の範囲によって得意不得意や音質に大きな差が出てくることがある。例えば高音域が目立つ音楽を聞く際などに、特定の低音域周波数以下の音を減衰させることで、より良い音楽視聴体験を実現させることもできる。
「音響空間」では、スピーカーの設置場所によって、低音を効かせるためのチューニング設定が可能で、部屋の中央にスピーカーを置く場合は0dB、部屋の隅に置く場合は-4dBに設定することで、低音域の音をより聞きやすく調整できるようになっている。
さらに、「デスクトップコントロール」機能では、スピーカーを大きなデスクなどに設置した際、物体が前方にあると特定の周波数帯の音が大きくなることがある。この影響を緩和する機能のオン/オフも設定できる。
筆者はそこまで音響回りに詳しくないため、掘り下げた説明がかなわなく恐縮だが、実売1万4980円のスピーカーとは思えないくらい、事細かな調整ができる本格的なモニタースピーカーとして仕上がっていると感じる。
イコライザーの設定や、空間オーディオの設定であれば、最近の製品で実装されていることも多くなってきたが、スマホ上でここまで細かく設定できるものは今まで見たことがない。
●24bit/96kHzのハイレゾオーディオ認定済み
MR3は機能面の充実さだけでなく、24bit/96kHzのハイレゾ音源を正しく再生できるスピーカーとして外部認証を受けている。
ただし、あくまでHi-Res AUDIO認定のみで、「Hi-Res AUDIO WIRELESS」の認証ロゴは特に見当たらない。とはいえ、BluetoothのLDACコーデックに対応していれば、ハイレゾ音源を流すことでHi-Res AUDIO相当の視聴体験を得られるようになるはずだ。
しかし、取り扱い説明書や公式サイトでは対応するBluetoothオーディオコーデックの記載が無い。念のためLDACに対応したPixel 8aとBluetoothペアリングを実施し、開発者向けオプションから対応するBluetoothオーディオコーデックの対応状況を確認した。
結果としては、残念ながらMR3は、BluetoothオーディオコーデックがSBCにしか対応していないようで、LDACはグレー表示となっている。
つまり、MR3はワイヤレスでハイレゾ音源を本来の音質で楽しむことはできない。ハイレゾ音源を視聴したい場合は、有線で接続する必要があるので、注意が必要だ。
●気になる点もあるがコスパ優秀の本格的なモニタースピーカー
MR3は上級者向けに細かな調整ができるが、プリセットが用意されたシンプルなイコライザーモードによって、初心者にもおすすめできる製品に仕上がっている。有線接続だけでなく、Bluetoothによるワイヤレス接続も利用できるため、かなりオールマイティーなスピーカーに仕上がっている。
ただ、プリセットのイコライザーの少なさや、Bluetooth接続ではハイレゾオーディオがフルで楽しめないといった気になる点もあるが、実売価格が1万4980円であることを踏まえれば、非常に優秀なモニタースピーカーといえるだろう。
(製品協力:Edifier Japan)