私たちの“仕事”に適したビジネスPCの選び方について、ポイントごとに連載して解説しているが、今回はビジネスPCを選定する上で意外と見落としがちな「GPU」(グラフィックスカード)にフォーカスを当ててみよう。
●意外と見落としがちなGPU ビジネスPCにも関係ある
GPUといえば、PCでゲームをするために必要な追加パーツというイメージが強く、「ビジネスPCと何の関係があるの?」と思う人もいるかもしれない。しかし、実際はゲームだけでなく、幅広い用途に使われる重要な処理装置だ。PCの画面を出力する必須の映像処理装置であり、機種によって形は違えど、ビジネスPCにもしっかり搭載されている。
●CPU内蔵GPUと外付けGPUの違い
GPUはCPU内蔵GPUと外付けGPUの2種類に分けられる。
CPU内蔵GPUは、CPUに統合されたGPUのことだ。独立したGPUが搭載されていないPCで画面を出力するために必要なもので、特に小型化が求められるノートPCに適している。
一昔前までは「CPU内蔵GPUはあくまで最低限の映像出力だけできればいい」といった認識だったが、昨今はIntelやAMDの努力により、飛躍的に性能が向上していることにも注目したい。
分かりやすい例として、ASUS JAPANが発売しているハンドヘルドPC「ROG Ally」を例に説明しよう。ROG AllyはAMD Ryzen Z1 シリーズプロセッサを採用しており、外付けGPUは搭載していない。しかし、Steam版「バイオハザード RE:4」を快適にプレイできてしまう。その驚きのGPU性能はITmedia PC USERでも過去に紹介している。
→・Steam Deckの対抗馬現る! 「ASUS ROG Ally」は性能も使い勝手もイケる超小型PCだった
Ryzen Z1 シリーズはあくまでゲーム用に特化したプロセッサなので極端な例にはなってしまうが、今のCPU内蔵GPUはそれほど高いパフォーマンスを引き出せるようになっている。
一方、外付けGPUは独立したGPUを指している。まさしくイメージしやすいデスクトップPCに搭載するもの、ゲーミングノートPCやモバイルワークステーションに搭載されるような薄型のものがあり、高いグラフィック性能を求める用途に対応している。
業務によっては外付けGPUの有無によって大きく処理を効率化できる場合もあり、ビジネスPCの選定において避けては通れないパーツと言っても過言ではないだろう。
●業務でCPU内蔵GPUが必要か、それとも外付けGPUが必要か
CPU編でも触れたが、ビジネスPCを選定するに当たっては、自社の業務の洗い出しが必須だ。
例えば、Photoshop バージョン25.2以降の最小システム構成と推奨システム構成の中でグラフィックスカードの部分を抜粋してみよう。
最小構成と推奨構成のうち、GPUメモリに着目してみると、最小構成が「1.5GBのGPUメモリを搭載していること」、4K以上のディスプレイを利用している場合の推奨構成では、「4GBのGPUメモリが搭載されていること」とそれぞれ記載されている。
外付けGPUには独立したGPUメモリ(VRAM)が搭載されているため、推奨構成を満たすモデルを選定すれば良いが、CPU内蔵GPUについては外付けGPUのように独立したGPUメモリを搭載しておらず、PCのメモリと共有して利用される。CPU内蔵GPUだけではおのずとシステムに利用できるメモリ容量が少なくなってしまう。
Photoshopはどちらかというと3Dモデリングソフトや映像製作ソフトと比べると負荷の低いアプリケーションに分類されるが、それでもGPUのシステム要件が結構高いことが分かる。
もし社内にPhotoshopを多用している部門があるとして、外付けGPUを搭載していないPCをビジネスPCとして選択すると、業務効率が大きく低下してしまう恐れがある。そうしたケースを鑑みて、ビジネスPCを選定する上でGPUもしっかり評価しなければならないというわけだ。
●社内の全てのビジネスPCのスペックを必ずそろえる必要はない
社内の業務を洗い出して、一部の事業部では外付けGPUを搭載したPCを導入した方が良さそうと気付いたとしよう。そうなると、「社内全てのビジネスPCに外付けGPUを搭載する必要があるのか?」という悩みも発生する。
資産管理や運用面の観点から見ると、統一したスペックのビジネスPCを一括導入すれば運用の負担は少なくなるが、ビジネスPCを選定する上での大前提である「対費用効果を最大限得る」という観点から見ると、持て余してしまう社員が大勢発生してしまい、結果として対費用効果を最大限得られなくなってしまう。
とはいえ、一部の事業部だけ毎回希望のスペックをヒアリングして購入すると、資産の使い回しがし辛くなるため、遊休品を多く出してしまう恐れがある。よって一般職向けの「標準PC」とクリエイティブ部門向けの「ハイスペックPC」のように2種類に分類分けして、それぞれビジネスPCを選定する方法を筆者としてはオススメしたい。
この方法は社内の業務の移り変わりや、新しく発売されるGPUにアンテナを張って、定期的な選定見直しが必要にはなるが、ある程度は社内にあるビジネスPCの仕様をハンドリングできるため、効率的な資産運用が可能となる。
ビジネスPC選定する際に、意外と見落としがちなGPUの選び方について、少し掘り下げて解説してきた。ビジネスPCを選定する上で、何かと見落としがちなGPUだが、重要なパーツの1つなので、本記事が自社にとって適切なGPUを選定する一助になれば幸いだ。