10月25日、Intelのデスクトップ向け最新CPU「Core Ultra 200Sプロセッサ」のアンロック対応版が発売された。日本における実売価格は、同日時点で5万7000円程度~11万6000円程度となっている。
ITmedia PC USERでは、インテル(日本法人)から同プロセッサの「レビューキット」の貸し出しを受けた。この記事では、キットに付属するCore Ultra 5 245K(実売価格6万円程度)とCore Ultra 9 285K(実売価格11万6000円程度)を使って、その“実力”をチェックしていく。
●レビューするCPUの概要
今回レビューする2つのCPUは、Core Ultra 200Sプロセッサ(開発コード名:Arrow Lake-S)のアンロック版のエントリーモデルと最上位モデルだ。
Core Ultra 200Sプロセッサは「Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)」の一員で、Intelのデスクトップ向けCPUとしては初めてNPUも統合している。CPUのモデル名に関するルールも新しいものが適用されるが、モデル名末尾の「K」がアンロック対応版を、「F」が内蔵GPUレスを表すことに変わりはない。命名ルールが変わったとはいえ、CPUのクラスは高い順で「9」「7」「5」「3」となり、モデル名の世代相当の部分(現状では百の位)以外の数字が大きいほどハイグレード(≒高性能)であることも同様だ。
今回レビューするCPUの主な仕様は以下の通りだ。
・Core Ultra 5 245K
・CPUコア:合計14コア14スレッド
・パフォーマンスコア(Pコア):6基6スレッド(4.2GHz~5.2GHz)
・高効率コア(Eコア):8基8スレッド(3.6GHz~4.6GHz)
・消費電力:125W(標準)~159W(最大)
・メインメモリ:DDR5規格(最大DDR5-6400/PC-51200対応)
Core Ultra 9 285K
・CPUコア:合計24コア24スレッド
・Pコア:8基8スレッド(3.7GHz~5.7GHz)
・Eコア:16基16スレッド(3.2GHz~4.6GHz)
・消費電力:125W(標準)~159W(最大)
・メインメモリ:DDR5規格(最大DDR5-6400/PC-51200対応)
今回の新CPUは「NPUの搭載」「命名ルールの変更」の他、Pコアにおけるハイパースレッディング(マルチスレッド機構)を廃止したことや、“定格で”DDR5-6400メモリに対応したこと、高クロック稼働時の安定性を高める回路を追加したメモリモジュール(CUDIMM/CSODIMM)をサポートしたこともポイントだ。内蔵GPUはXe-LPGアーキテクチャベースのものを搭載している。
ここ数年のIntelのデスクトップ向けCPUと比べると、Core Ultra 200Sプロセッサは消費電力当たりのパフォーマンス(いわゆる「ワッパ」)に重きを置いている。今回試すアンロック対応モデルは、基本消費電力は125Wで変わりないものの、定格の最大消費電力は159Wに抑えられている。先代の「Core i9-14900K」が最大253Wであることと比べると、実に94W(率換算では40%弱)も低くなった。
CPUソケットは、第12世代Coreプロセッサから3世代に渡り使われてきた「LGA 1700」から「LGA 1851」に変更された。チップセットも「Intel 800シリーズ」に刷新され、10月25日から順次マザーボードがリリースされる見込みだ。
●Core Ultra 200Sプロセッサの実力は?
ここからは、Core Ultra 5 265KとCore Ultra 9 285Kの実力をベンチマークテストを通して検証する。
今回はASUS JAPANから最新マザーボード「ROG STRIX Z890-A GAMING WIFI」を借りつつ、Core Ultra 200Sプロセッサで初めて対応した“定格”のDDR5-6400規格のCUDIMM(16GB×2)を用意してテストを行った。
今回は過去に行った「Coreプロセッサ(第14世代)」のテストの結果も参考として掲載するが、グラフィックスカード(GPU)による差を防ぐために、今回は手持ちの「Radeon RX 7800 XT」で計測している。ただし、OSのバージョンやメモリの容量に差分があるため、スコアの比較は参考程度に捉えてほしい。
CINEBENCH R23
手始めに、3Dレンダリングを通してCPUの性能を確認する「CINEBENCH R23」を実行してみた。スコアは以下の通りだ。
・シングルコア
・Core Ultra 5 245K:2162ポイント
・Core Ultra 9 285K:2394ポイント
・Core i5-14600K:2009ポイント
・Core i7-14700K:2114ポイント
・Core i9-14900K:2253ポイント
マルチコア
・Core Ultra 5 245K:2万5072ポイント
・Core Ultra 9 285K:3万3704ポイント
・Core i5-14600K:2万3602ポイント
・Core i7-14700K:3万3035ポイント
・Core i9-14900K:3万8042ポイント
シングルコアのパフォーマンスは、先代から着実に向上している。Core Ultra 5 245Kでも、わずかながらCore i7-14700Kのスコアを上回っている。
一方、マルチコアのパフォーマンスを見てみると、最上位のCore Ultra 9 285Kは、先代のCore i9-14900K比で約89%のスコアとなった。
実際の利用シーンでは、CPUの全コアが一斉に使われるケースは少ない。そのため、全体的にはCore Ultra 200Sプロセッサの方がメモリのアクセス速度も相まって動作が高速に感じられるだろう。
Blender Benchmark
もう1つ、CPUを使うテストとして「Blender Benchmark」も試してみた。
その名の通り、Blender Benchmarkは2D/3Dアニメーション制作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリで、レンダリングを通してCPUやGPUのパフォーマンスをチェックできる。
今回は「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオをCPUで実行し、1分当たりに生成できたサンプル(オブジェクト)の数を比較する。結果は以下の通りだ。
・Monster
・Core Ultra 5 245K:148.574948個
・Core Ultra 9 285K:246.994241個
・Core i5-14600K:129.915280個
・Core i7-14700K:221.386616個
・Core i9-14900K:259.738638個
Junkshop
・Core Ultra 5 245K:99.405400個
・Core Ultra 9 285K:167.575754 個
・Core i5-14600K:82.542095個
・Core i7-14700K:138.675611個
・Core i9-14900K:161.518998個
Classroom
・Core Ultra 5 245K:73.131543個
・Core Ultra 9 285K:117.096901個
・Core i5-14600K:59.704598個
・Core i7-14700K:104.723469個
・Core i9-14900K:122.491119個
エントリーCPU同士の比較では、Core Ultra 5 245Kは先代よりも着実に性能が上がっている。一方、ハイエンドCPU同士だと、Core Ultra 9 285Kは僅差だが先代に勝ったり負けたりしている。
このくらいの僅差であれば、今後リリースされるであろうUEFI(BIOS)のアップデートで行われるマイクロコードの更新などで十分に逆転できるだろう。
3DMark CPU Profile
今回は、3Dグラフィックスベンチマークアプリ「3DMark」に含まれる「CPU Profile」テストも実施した。
このテストでは「スレッド数」を指定してCPUパフォーマンスをチェックできることが特徴で、一定以上のスレッド数でテストをすればハイパースレッディングの有無がもたらす影響を確認できると考えた。結果は以下の通りだ。
・1スレッドテスト
・Core Ultra 5 245K:1259ポイント
・Core Ultra 9 285K:1378ポイント
・Core i5-14600K:1125ポイント
・Core i7-14700K:1185ポイント
・Core i9-14900K:1266ポイント
2スレッドテスト
・Core Ultra 5 245K:2428ポイント
・Core Ultra 9 285K:2665ポイント
・Core i5-14600K:2262ポイント
・Core i7-14700K:2346ポイント
・Core i9-14900K:2470ポイント
4スレッドテスト
・Core Ultra 5 245K:4720ポイント
・Core Ultra 9 285K:5119ポイント
・Core i5-14600K:4414ポイント
・Core i7-14700K:4638ポイント
・Core i9-14900K:4823ポイント
8スレッドテスト
・Core Ultra 5 245K:7899ポイント
・Core Ultra 9 285K:9115ポイント
・Core i5-14600K:6908ポイント
・Core i7-14700K:8599ポイント
・Core i9-14900K:8941ポイント
16スレッドテスト
・Core Ultra 5 245K:1万2006ポイント
・Core Ultra 9 285K:1万4112ポイント
・Core i5-14600K:9064ポイント
・Core i7-14700K:1万1412ポイント
・Core i9-14900K:1万1825ポイント
最大スレッドテスト
・Core Ultra 5 245K:1万2076ポイント
・Core Ultra 9 285K:1万7675ポイント
・Core i5-14600K:9749ポイント
・Core i7-14700K:1万4840ポイント
・Core i9-14900K:1万6945ポイント
いずれのスレッド数でも、Core Ultra 200Sプロセッサが優位に立った。ハイパースレッディングに対応する代わりに「Pコアの処理効率を高める」「Eコアを増やす」という設計方針には、一定の説得力があることが分かった。
PCMark 10
続けて、PCの総合ベンチマークテストアプリを試していく。まずは定番中の定番の「PCMark 10」の総合スコアを比べてみよう。
・Core Ultra 5 245K:9539ポイント
・Core Ultra 9 285K:9954ポイント
・Core i5-14600K:1万111ポイント
・Core i7-14700K:1万473ポイント
・Core i9-14900K:1万565ポイント
同等の先代プロセッサと比べると、572~611ポイント低くなった。ただ、このくらいの差であれば実際に使う場合に差を感じることはないだろう。
CrossMark
このスコアの傾向は他の総合ベンチマークテストでの同様なのか――気になった筆者はもう1つの定番テストアプリ「CrossMark」も試してみた。総合スコアは以下の通りだ。
・Core Ultra 5 245K:2157ポイント
・Core Ultra 9 285K:2372ポイント
・Core i5-14600K:2153ポイント
・Core i7-14700K:2360ポイント
・Core i9-14900K:2442ポイント
先代との比較では、Core Ultra 5 245Kは4ポイント上で、Core Ultra 9 285Kは70ポイント下となった。この程度なら誤差の範囲内ともいえ、やはり日常利用ではCoreプロセッサ(第14世代)との差を感じることはないだろう。
3DMark
続けて、3Dグラフィックスベンチマークにおける定番アプリ「3DMark」で主要なテストを実行してみよう。今回は先代とGPUをそろえてテストを行っているため、スコア差の大部分はCPUのパフォーマンス差ということになる。総合スコアは以下の通りだ。
・Fire Strike(DirectX 11ベース/フルHD描画)
・Core Ultra 5 245K:3万7718ポイント
・Core Ultra 9 285K:3万5645ポイント
・Core i5-14600K:3万9108ポイント
・Core i7-14700K:4万3037ポイント
・Core i9-14900K:4万3982ポイント
Fire Strike Extreme(DirectX 11ベース/WQHD描画)
・Core Ultra 5 245K:2万3623ポイント
・Core Ultra 9 285K:2万3855ポイント
・Core i5-14600K:2万4541ポイント
・Core i7-14700K:2万5824ポイント
・Core i9-14900K:2万6402ポイント
Fire Strike Ultra(DirectX 11ベース/4K描画)
・Core Ultra 5 245K:1万2594ポイント
・Core Ultra 9 285K:1万2595ポイント
・Core i5-14600K:1万3289ポイント
・Core i7-14700K:1万3663ポイント
・Core i9-14900K:1万3589ポイント
Time Spy(DirectX 12ベース/WQHD描画)
・Core Ultra 5 245K:1万8799ポイント
・Core Ultra 9 285K:1万9256ポイント
・Core i5-14600K:1万9659ポイント
・Core i7-14700K:1万9572ポイント
・Core i9-14900K:1万9953ポイント
Time Spy Extreme(DirectX 12ベース/4K描画)
・Core Ultra 5 245K:9249ポイント
・Core Ultra 9 285K:9750ポイント
・Core i5-14600K:9302ポイント
・Core i7-14700K:9621ポイント
・Core i9-14900K:9989ポイント
Port Royal(リアルタイムレイトレーシング/4K描画)
・Core Ultra 5 245K:1万486ポイント
・Core Ultra 9 285K:1万476ポイント
・Core i5-14600K:1万463ポイント
・Core i7-14700K:1万449ポイント
・Core i9-14900K:1万474ポイント
解像度や負荷が高いほどスコア差が縮まり、Core Ultra 200Sプロセッサが僅差で勝利するテストもあったものの、Core Ultra 200Sプロセッサの方が微妙にスコアが低い傾向だ。
先代のテスト時とグラフィックスドライバーのバージョンが異なるため単純比較は難しいが、同じグラフィックスカード(GPU)を使う前提では、Core Ultra 200Sプロセッサでは感じられるかどうか微妙なレベルのパフォーマンス差が出るかもしれない。
ちなみに「Core Ultra 200Sプロセッサの内蔵GPUはどう?」と考えている人もいるかもしれないので、内蔵GPU(Intel Graphics)単体でも上記のテストを行った。総合スコアは以下の通りだ。
・Fire Strike(DirectX 11ベース/フルHD描画)
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):5422ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):5570ポイント
Fire Strike Extreme(DirectX 11ベース/WQHD描画)
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):2663ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):2719ポイント
Fire Strike Ultra(DirectX 11ベース/4K描画)
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):1264ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):1297ポイント
Time Spy(DirectX 12ベース/WQHD描画)
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):2419ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):2526ポイント
Time Spy Extreme(DirectX 12ベース/4K描画)
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):1160ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):1212ポイント
Port Royal(リアルタイムレイトレーシング/4K描画)
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):760ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):897ポイント
CPUに統合された内蔵GPUとしては、そこそこ性能が高い。軽いゲームタイトルなら、グラフィックスカードを用意しなくても十分に楽しめる。
グラフィックスカードを搭載した場合でも、配信アプリやグラフィックス関連のアプリが行う処理を内蔵GPU(あるいはNPU)に振り分けることでグラフィックスカードに対する負荷を軽減できる。よほどのことがなければ、今回ばかりは内蔵GPU付きのモデルを買った方が便利に使えるだろう。
FF14/FF15ベンチマーク
続けて、実際のゲームをベースとする「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」を試してみる。本来なら最新の「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」を使いたいところだが、先代との比較のために旧バージョンでの計測としている。
ベンチマークテストは画質を「最高品質」設定として、解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)、WQHD(2560×1440ピクセル)、4K(3840×2160ピクセル)の3種類で実行した。スコアは以下の通りだ(内蔵GPUでの計測結果を含む)。
・フルHD
・Core Ultra 5 245K:2万8321ポイント
・Core Ultra 9 285K:2万9951ポイント
・Core i5-14600K:3万233ポイント
・Core i7-14700K:3万2003ポイント
・Core i9-14900K:3万2896ポイント
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):4664ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):4859ポイント
WQHD
・Core Ultra 5 245K:2万3484ポイント
・Core Ultra 9 285K:2万4344ポイント
・Core i5-14600K:2万5076ポイント
・Core i7-14700K:2万6167ポイント
・Core i9-14900K:2万6709ポイント
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):2876ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):2968ポイント
4K
・Core Ultra 5 245K:1万2763ポイント
・Core Ultra 9 285K:1万2982ポイント
・Core i5-14600K:1万2878ポイント
・Core i7-14700K:1万2938ポイント
・Core i9-14900K:1万2890ポイント
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):1133ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):1346ポイント
傾向としては3DMarkと一緒で、基本的に先代の方がスコアがよく、解像度が高くなるほど差が縮まるといった感じだ。高負荷になるほど、Core Ultra 200Sプロセッサの“力”は発揮しやすくなるのだろうか……?
ちなみに、FF14ベンチマークは「ハイパースレッティングを無効にした方がスコアが伸びる」という指摘もある。だが、今回のテストではそのような傾向が見受けられなかった。
続けて、やや負荷の大きい「FINAL FANTASY 15 WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」も実行してみよう。こちらは画質を「高品質」とした上で、フルHD/WQHD/4Kの3解像度で計測した。結果は以下の通りだ。
・フルHD
・Core Ultra 5 245K:1万6383ポイント
・Core Ultra 9 285K:1万6358ポイント
・Core i5-14600K:1万6628ポイント
・Core i7-14700K:1万6536ポイント
・Core i9-14900K:1万6489ポイント
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):1787ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):1634ポイント
WQHD
・Core Ultra 5 245K:1万2184ポイント
・Core Ultra 9 285K:1万2593ポイント
・Core i5-14600K:1万2376ポイント
・Core i7-14700K:1万2439ポイント
・Core i9-14900K:1万2422ポイント
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):1380ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):1458ポイント
4K
・≪Core Ultra 5 245K:7020ポイント
・≪Core Ultra 9 285K:7231ポイント
・Core i5-14600K:7203ポイント
・Core i7-14700K:7142ポイント
・Core i9-14900K:7401ポイント
・Core Ultra 5 245K(内蔵GPU):801ポイント
・Core Ultra 9 285K(内蔵GPU):830ポイント
負荷が大きいからか、フルHD解像度の時点でスコア差はあまりない。一部でCore Ultra 200Sプロセッサが勝っている部分もある。
各種ベンチマークテストでは、単純に「処理スピードを測っている」というだけでは説明できないスコア差が生じることもある。スコア計算の考え方(アルゴリズム)が公開されているなら、ある程度まで差が生じる理由を考察できるのだが、そうとも限らない。
もしもスコアに「論理プロセッサ(処理できるスレッド)の数」あるいは「論理プロセッサの利用状況」が加味されるとなると、ハイパースレッディング非対応のCore Ultra 200Sプロセッサは不利となりうる。
「でも、先代と比べてほぼ同じかちょっと遅いとなぁ……」と、どうしても思ってしまう人もいるだろう。そこでチェックしたいのが消費電力だ。
●処理性能の割に消費電力は低い
ということで、テストの締めとしてCore Ultra 200Sプロセッサの消費電力を確認しよう。
繰り返しだが、Core Ultra(シリーズ2)では、どのCPU/SoCもワッパにかなり重点を置いた設計を取っている。今回試しているCore Ultra 200Sプロセッサのアンロック対応版も、その点でご多分に漏れない。Intelによると、先代と同等のパフォーマンスでは消費電力を最大40%削減できるという。
果たして、それは本当なのだろうか。ワットチェッカーを使って、消費電力を測ってみよう。今回はWindows 11を起動して10分放置した状態を「アイドル時」、3DMarkのTime Spy Extremeを実行している際のピーク時の消費電力を「高負荷時」として計測した。結果は以下の通りだ。
・Core Ultra 5 245K:アイドル65W/高負荷時353W
・Core Ultra 9 285K:アイドル65W/高負荷時357W
・Core i5-14600K:アイドル88W/高負荷時367W
・Core i7-14700K:アイドル88W/高負荷時437W
・Core i9-14900K:アイドル89W/高負荷時519W
まず、アイドル時でも消費電力を3割弱削減できている。Core Ultra 9 285Kについては、高負荷時の消費電力も3割以上減っている。あまりに差があるので、ワットチェッカーの不具合かと思ったが、何度測っても結果は変わらなかった。消費電力は本当に減っている。
Time Spy Extremeの総合スコアを比べると、Core Ultra 9 285KはCore i9-14900K比で3%減にとどまっている。「ほぼ同じパフォーマンスで消費電力を確実に減らせる」となれば、Core Ultra 200Sプロセッサのワッパの良さはかなり光るのではないだろうか。
●「最高」よりも「最良」のパフォーマンスを目指したCPU
新世代のCPUとなると、どうしても「前世代を圧倒するパフォーマンス」を期待してしまう。その観点でいうと、Core Ultra 200Sプロセッサのアンロック対応版には驚きが少ない。
しかし、ワットチェッカーで消費電力を測ってみると、性能はそれほど変わらないのに消費電力が大きく低下している。これは「自作PCパーツ」としてはかなり喜ばしい。
昨今のハイエンドクラスのCPUやGPUは、とにかく“大食らい”な傾向にある。ゆえに特に電源の容量を大きめに取らないと足りなくなることもありがちだったが、Core Ultra 200Sプロセッサを使えば、少なくともCPUの消費電力は確実に削減できるので、それだけでもPCパーツの組み合わせの幅を広げられる。
消費電力が低いということは、CPU自体の発熱も抑えられるということでもある。クーラーやラジエーターのサイズを一回り小さくしやすいので、「小容量のPCケースにハイエンドCPUを収める」という夢も実現しやすい。
性能のためには、大型の冷却パーツや大容量の電源ユニットを積まなければいけない――Core Ultra 200Sプロセッサは、そんな昨今の風潮に“待った”をかけるCPUだ。
「大艦巨砲主義」に近い昨今のハイエンドPCに思う所がある人は、まずCore Ultra 200Sプロセッサのアンロック対応版をチェックしてみてもいいだろう。