日本シーゲイトのSSD「FireCuda 530R」は、同社の人気モデル「FireCuda 530」の後継となる製品だ。最高速という点ではPCI Express 5.0 x4接続の上位モデル「FireCuda 540」が勝るが、FireCuda 530Rは現状で最も普及しているPCI Express 4.0 x4接続の新製品として投入され、ある意味では主力モデルと言える。
●前モデルからシーケンシャルアクセスを向上
同社製SSDのネーミングルールはHDDと同様だ。Barracudaシリーズがパーソナル向けのメインストリームモデル、FireCudaシリーズはゲーミングやクリエイター向けのモデルとなる。そしてFireCuda 530Rは、PCI Express 4.0 x4接続というスペックの中で、高速/高耐久を重視するゲーミングモデルと位置付けされる。
FireCuda 530Rの容量は4TB/2TB/1TBで、大容量4TBモデルが先行して発売された。また、ヒートシンク付きモデル、マザーボード付属のヒートシンクを利用するヒートシンクなしモデルが用意されており、利用するマザーボードのM.2ヒートシンクの有無や裏面冷却設計別に選べる。今回はヒートシンク付きモデルをベースに話を進めていこう。
まずは、FireCuda 530Rのラインアップとスペックを表にまとめた。
特徴としては、連続読み出し速度は各容量で同じで毎秒7400MBだが、同書き込みについては1TBモデルが最速の毎秒7000MBとなる。また、一般的に大容量モデルほど有利なTBWは、当然4TBモデルが最も高いが、1TBあたりに換算しても4TBモデルが2TB、1TBモデルに対して若干大きな数値になる。
速度重視なら小容量のモデル、耐久重視なら大容量のモデルを狙うのがよいだろう。なお、保証期間は5年だ。FireCudaの他のラインアップやBarracuda SSDの一部モデルも5年ではあるが、FireCudaの特典として「Rescue Data Recovery Services」データ復旧サービスも3年間適用される。故障が対象の保証とデータに対する保証の両方で安心を得たいならFireCudaを選ぶとよい。
では、FireCudaブランドの他の2TBモデルと比較してみよう。
旧モデルのFireCuda 530と比べると、連続読み出し速度が毎秒100MB向上している他、ランダムアクセスは読み出し/書き込み共に30万IOPSずつ向上している。また、TBWはFireCuda 540より400TBW高く、FireCuda 530より150TBW低い位置になる。なお、NANDセル自体はどれも3D TLCで共通だ。
トータルで見れば従来のFireCuda 530とそこまで大きな違いはないが、高速SSDの弱点でもあるランダムアクセス性能を向上させ、よりバランスよく仕上がったとも取れる。また、FireCuda 530は2021年リリースのモデルなので3年経過している。ファームウェアレベルの改良である可能性もあるが、NANDやコントローラが変わっている可能性もあるだろう。
●ヒートシンク付きモデルはマザーボード側スロットの状態を要チェック
今回メーカーから借用できたのは容量2TBモデルで、ヒートシンク付きの「ZP2000GM30073」だ。パッケージ写真もヒートシンク付きで、ここを見ればヒートシンクなしモデルと区別できる。パッケージに含まれるのは、製品本体とクイックスタートガイド、Rescue Data Recovery Servicesの冊子、保証を解説する冊子だ。
本体に装着されているヒートシンクは、フラットな形状でSeagateロゴとFireCudaロゴ、FireCudaのテーマカラーのオレンジのラインが描かれている。
ヒートシンク全体の厚さは10mm程度だ。大ざっぱに厚さを測ると、基板表面の厚みが約7mm、基板が約1mm、基板裏面の厚みが約2mmくらいだった。ヒートシンク付きM.2 SSD全般に言えるが、裏面冷却用にヒートシンクを設けていたり、サーマルパッドを貼っていたりするM.2スロットには装着できない。
その上で、一見するとヒートシンクを取り外せそうに見えるが、Seageteとしては「SSDが破損する恐れがあるため、取り外すことはできません」と注意喚起している。
FireCuda 530Rを選ぶ際、ヒートシンク付きを選ぶべきかヒートシンクなしモデルを選ぶべきかは、搭載予定のM.2スロットをよく確認しよう。マザーボードにM.2用のヒートシンクがないならばヒートシンク付きを、M.2ヒートシンクがあまりにシンプルなものならばこれもヒートシンク付きがよいだろう。
一方、本製品のターゲットであるゲーミングユーザーやクリエイターは、おそらくハイエンド寄りのマザーボードとの組み合わせと思われる。大型のM.2ヒートシンクを搭載しているならば、特に裏面冷却設計だったならばヒートシンクなしモデルを選ぶのがよいだろう。データドライブ(Dドライブなど)としてセカンダリー以降のM.2スロットに装着する場合も、そこにM.2ヒートシンクがあるかないかで選べばよい。
本レビューのように製品本来の性能を見るという観点からすれば、使用するマザーボード(のM.2ヒートシンク性能)に左右されないヒートシンク付きモデルがベストだ。それでは実際のパフォーマンスを計測してみた結果を紹介しよう。
●毎秒7GBクラスの転送速度でランダムアクセスも速い!?
それでは、ここからはシステムを構築して本SSDをテストしてみよう。検証環境は下記の通りだ。
まずCrystalDiskMarkでは、連続読み出しが毎秒7100MB、同書き込みが毎秒7000MBといった結果だった。ランダム読み出し(Q1T1)は毎秒86MB、同書き込みは毎秒390.6MBだった。ここもPCI Express 4.0 x4接続のハイエンドモデルらしい転送速度で、特に4.0側はけっこう速めの印象だ。
IOPS表記で見ると、ランダム(Q32T16)は129万8821IOPSで公称値に近く、同4.0は162万3708iopsで公称値よりも高い値だった。
AS SSD Benchmarkのスコアは読み出しが4195、書き込みが6602といったスコアだ。コピーベンチマークではISOが毎秒3542MB、プログラムが毎秒1931MB、ゲームが毎秒3209MBといった速度だった。
また、ATTO Disk Benchmarkはキュー数を1~32まで設定して計測、グラフ化してみた。
ゲーミング向けということで3DMarkのStorageベンチマークでは2184ポイントだった。
PCMark 10は、Full System Drive Benchmarkが3036、Data Drive Benchmarkが5191ポイントだった。
●ヒートシンク付きモデルの効果は? 温度変化をチェック
最後に稼働中の温度を計測した。ファン(ケース前面ファンを想定)有りとなしにおけるCrystalDiskMark実行中の温度変化を見た。1つはCrystalDiskMarkのデフォルトであるテストサイズ1GiB、5回計測と、もう1つはテストサイズ64GiB、9回計測でこちらはより長時間稼働させたらどうなるかの検証だ。室温は28度、室内は無風で計測している。
ファン無しでも極端に発熱量が多いということはなく、徐々に上昇していく傾向がある。もちろん書き込み読み込みを連続して長時間行うとより高い温度になる。その際、最大63度に達したが、いちおう本製品で望ましいとされる68度には達しなかった。
どちらもスコアの低下は見られなかった。この点で、FireCuda 530Rのヒートシンクは十分な冷却性能があると言える。
ただし、CrystalDiskMarkを間髪入れずに3回計測した際はさすがにスコアの低下が見られた。ファンレス運用でも大丈夫というわけではなく、ケースファンを用いて適切に冷却したい。適切に冷却していれば、性能も十分で、半導体特性の劣化も抑えられる。そしてヒートシンクなしモデルの場合は、マザーボードのM.2ヒートシンクや市販のM.2ヒートシンクを利用したい。
●システム用としてもデータ用ドライブとしても「ちょうどいい」SSD
このようにベンチマークテストの結果通り、FireCuda 530Rはゲーミング用途やクリエイター向けのM.2 SSDだ。シーケンシャルアクセスではPCI Express 4.0 x4の帯域をしっかりと使っている印象で、ランダム4.0(Q1T1)も速い。発熱量もPCI Express 4.0 x4のハイエンドモデルなりと言えるだろう。PCI Express 5.0 x4対応のウルトラハイエンドモデルよりは扱いやすい。
価格は2TBモデルが4万1000円~3万3000円前後、1TBモデルは2万5000円~1万8000円前後と初値価格だが、じきにこなれてくるはずだ。容量1~2TBモデルはシステム用として、大容量の4TBモデルはシステム&データ共用やデータ用ドライブとして適しているだろう。