ちょっとした空き時間に“いつもの”ゲームを進めておきたい。暇つぶしのゲームをしたい――そんな用途にピッタリなのが3.5型のIPS液晶を搭載したAndroidデバイス「AYANEO POCKET MICRO」だ。国内ではハイビームが正規代理店として予約販売を開始している。
前回は、ファーストインプレッションとしてメーカーから貸し出しを受けた評価機をレビューしたが、今回は海外のクラウドファンディングで購入した製品版が届いたので、ベンチマークテストや実際のゲームプレイでの使い心地などを紹介していきたい。
●クラシカルな見た目の限定カラーモデル「Retro Gray」
筆者が購入したのは、限定カラーの「AYANEO POCKET MICRO Retro Gray」だ。
OSはAndroid 13で、SoCにMediaTekのHelio G99を採用していることなどベースは前回紹介した評価機と同じだが、メモリーは8GB、ストレージが256GBと、1つ上のモデルになっている。
各部のカラーはほとんどMagic Blackと共通だが、ホールセンシングジョイスティックがグレーに変更されており、AYANEO POCKET MICRO本体側面のカラーに統一されている。
では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。
●SoCは同じでもモデルによって違いが出たベンチマークテストの結果
ベンチマークテストで使ったのは「3DMark」と「Geekbench 6」だ。6GB/128GBモデルのMagic Blackでテストした。AYANEOの製品は設定アプリ「AYA SETTING」でパフォーマンスを切り替えられる。テスト中はPerformance(実行能力)とFan回転数ともに「Max」を選択した。
1回目のテスト開始前に全てのアプリをバックグラウンドから落とし、再起動を行った。内蔵バッテリーは80%以上を保つようにし、それぞれ5回ずつテストして平均値を取った。
3DMarkの「Wild Life」では、スコアの平均が1253.6、フレームレートの平均が7.5であった。一般的なMediaTek Helio G99搭載スマートフォンでは、それぞれ1243、7FPSとのことなので、ファンをフル回転させているからか多少、高いスコアを獲得できた。
同じく3DMarkの「Sling Shot」(ES 3.0)では、平均値が3538であった。これは他のデバイスの平均値である3596を下回ったが、誤差に近いレベルではある。
気を取り直してGeekbench 6での結果を確認しよう。こちらはCPUのシングルコアが707.8、マルチコアが1985、GPUが1312であった。スコアまとめサイトによっては、他のデバイスの平均値がシングルコアで729、マルチコアで1979、GPUでは1322とあったので、こちらの結果も3DMark同様だ。
Retro Grayでは若干アップ
せっかくRetro Grayカラーの8GB/256GBモデルという上位モデルが手元にあるので、こちらでもテストしてみたい。テスト条件はそろえているので、SoCが同じであれば何も変わることはないだろうと考えていたのだが、若干ではあるがスコアは改善された。
3DMarkの「Wild Life」では、スコアの平均が1256.4、フレームレートの平均が7.53であった。
3DMarkの「Sling Shot」(ES 3.0)の平均値は3659.6で、3538の6GB/128GBモデルと比べ、有意な差が出た。
Geekbench 6では、CPUシングルコアが733.2、マルチコアが2048.2、GPUが1314であり、こちらも高めのスコアとなった。
●ゲームの快適さはどうか?
スマホゲームを実際に快適プレイできるだろうか。ここでは「ゼンレスゾーンゼロ」「崩壊:スターレイル」「Stardew Valley」で試してみた。
それぞれ推奨スペックは以下のようになっている。
・ゼンレスゾーンゼロ
・崩壊:スターレイル
・Stardew Valley
ゼンレスゾーンゼロ
ゼンレスゾーンゼロはメモリー8GB以上が推奨スペックとなっており、8GB/256GBモデルであってもギリギリプレイできるレベルだ。
追加データのダウンロードに、後述する崩壊:スターレイルと同じようにかなり時間がかかった。25GB近くあるので、これに関してはWi-Fi環境やサーバによるところがありそうだ。
プレイ開始直後、町の中を動き回るところではカクカクとした動きが気になったが、ゲームを進めていくうちに滑らかになっていった。また戦闘シーンでも遅かったり、カクついたりしていると感じることはなかった。
画質は最低に落とす必要があるが、そもそも画面解像度が960×640ピクセルで、画面そのものも小さい。全体的にぎゅっと圧縮されて見えるため、画質の粗さが目立たない。
フレームレートはゲーム全体を通じて30FPS以下なので、ハイスペックなゲーミングスマホを普段使っている人だと気になるのかもしれない。筆者の場合、そんなに高価なデバイスを持っているわけではないので、違和感がない。
気になる人もならない人も、日課のクリアをAYANEO POCKET MICROでこなす、という具合に限定した使い方ならできそうだ。
崩壊:スターレイル
グラフィックが美しい崩壊:スターレイルは、システム要件がゼンレスゾーンゼロより多少緩やかだ。とはいえ、画質や解像度を最低にしておいた状態でプレイしたい。
オープニングアニメーションの光の粒子に粗さを感じるものの、いったんゲームがスタートすると、さほど違和感を覚えることなくプレイできる印象だ。
フレームレートは戦闘シーンでも25FPS以上を保っており、カクつきをほとんど感じることはない。実際、AYANEO POCKET MICROを手にしてからというもの、それまで週に1度しか開かなかった崩壊:スターレイルを2日に1度は開き、プレイしていた。
手に取りやすい大きさで、持っていても疲れない質量、どこにでも持っていきやすいコンパクトさなどのおかげだろう。
ゲーム体験で辛かったことといえば、画面上に表示される細かな解説文字(フレーバーテキスト)の1文字1文字が米粒ほどの大きさで、見えづらかったというところだろうか。
Stardew Valley
本作は、PC向けにSteamプラットフォームで展開されていたものが、さまざまなゲームコンソールやスマホに移植されているゲームだ。その内容は「町で会社勤めをしていた若者が、祖父の残した古く広大な農場で、地元住民と交流しながら開拓をし、農場を広げ、収益を上げていく」というものだ。メーカーは「田舎暮らしRPG」と銘打っている。
残念ながらStardew Valleyはログインすれば、どのデバイスでも続きからゲームをプレイできるというタイプではないので(ただし、セーブデータを転送すれば続きからプレイ可能)、普段はAYANEO Pocket Sで、出先ではAYANEO POCKET MICROで日課を回すというような遊び方ができない。
とはいえ、温かみのあるドット絵で構成されたプレイ画面がAYANEO POCKET MICROの世界観にピッタリハマる。
データサイズが小さいこともあり、ゲームをサクサクと進められる。小さいディスプレイでも(ほとんどの場合)目を凝らさずとも内容を視認できるのがうれしい。
●クラウドゲームでは?
ぜひやってみたいと考えていたゲームのリモートプレイの結果を最後に紹介したい。ここではアカウントを持っているSteamを試してみる。AYANEO POCKET MICROに必要なのは「Steam Link」アプリだ。
ホストにはAYANEO SLIDEを利用した。以前、AYANEO Pocket Sでもうまく接続できた端末だ。
残念なことに、AYANEO POCKET MICROへSteam Linkのインストールはできたものの、いざ起動しても黒い画面が表示されるだけで何もできない。バックグラウンドアプリを全て落とし、端末そのものの再起動を幾度か行ったものの、記事執筆時点で、アプリを操作することはできなかった。
クラウドゲームは、アプリさえ起動すれば端末のスペックに関係なくスムーズに楽しめるはずなので、これに関しては継続的にチャレンジしていきたい。
いろいろな制約や特殊な部分はあるものの、持っているだけで楽しいし、コンパクトなので携帯しやすく、スキマ時間を“日課を回す”時間に充てられるのがAYANEO POCKET MICROの最大の良さだ。生活にちょっとした遊びをもたらしてくれる、そんなガジェットだと感じた。