Mobvoi Information Technologyが、OSに「Wear OS by Google」を搭載した新型スマートウォッチ「TicWatch Atlas」を発売した。価格は4万9999円で、カラーはブラックとシルバーの2色展開となる。
Google出身のエンジニアが立ち上げたMobvoiは、早くからWear OS搭載スマートウォッチを牽引してきたメーカーの1つだ。Wear OSがバージョンアップする際には、真っ先にその対象となっており、最新機能を試すことができた。
一方で、Wear OS 3へのアップデートの頃から徐々にアップデートが遅れていった。2024年5月にTicWatch Pro 5 Enduroをリリースしたものの、採用されたのはWear OS 3.5のままだった。Wear OS 4へのアップデートは、Wear OS 4正式リリースから約1年遅れの2024年9月にようやく開始されたところだ。
そんなMobvoiから新たに発売されたTicWatch Atlasは、同社としては初めてのWear OS 4をプリインストールするスマートウォッチとなる。実際に数日利用してみたので、どのような特徴があるのか紹介したい。
●頑丈設計とデュアルディスプレイの採用
TicWatch Atlasは、1.43型(466×466ピクセル/326ppi)のディスプレイを装備する。いかにもアウトドア向けというデザインだが、MobvoiもTicWatch Atlasを登山/アウトドア向けスマートウォッチとアピールしている。
その見た目通りに「MIL-STD-810H」準拠の頑丈さ(耐熱性/耐衝撃性/耐水性/防じん性/防湿性)を備えており、さらに5気圧防水(5ATM)にも対応している。ディスプレイには、高強度のサファイアクリスタルガラスを採用する。
搭載チップセットはQualcommの「Snapdragon W5+ Gen 1」で、メモリは2GB、ストレージは32GBという構成だ。ボディーサイズは約52.2(幅)×47.8(奥行き)×12.05(厚さ)mm、バンドなしの重量は約47.2gとなっている。
側面にはメインの竜頭ボタンとその上にサイドボタンを配置する。サイドボタンは、デフォルトでは最近使用したアプリが起動するようになっているが、他のアプリの起動などに割り当ても可能だ。
TicWatchシリーズの特徴の1つが、有機EL(AMOLED)と超低消費電力ディスプレイ(FSTN液晶)の二層ディスプレイを備えていることだ。一般的なスマートウォッチの常時表示モードをFSTN液晶が担うことで、消費電力を削減する。かつて、カシオの「PRO TREK Smart」シリーズでも採用されていた構造だ。
FSTN液晶での表示は手首を返しただけでは解除されず、画面をタップしたりボタンを操作したりするとAMOLEDを使った通常のWear OSの表示に切り替わる。どちらかというと、FSTN液晶の画面を目にする時間の方が長いはずだ。なお、設定ですぐにAMOLEDでの表示に切り替えることも可能で、常時表示でFSTNを使わないという選択もできる。
ちなみに、FSTN液晶の表示はモノクロの単純なものだが、バックライトの色は好みに応じて変更が可能となっている。
●バックライトで確認しやすい心拍ゾーン
バックライトのカラーは、単にアクセントになっているだけはない。運動中の心拍ゾーンに応じて、カラーが変化する。心拍ゾーンは「準備運動(青)」「脂肪燃焼(黄)」「心肺強化(オレンジ)」「無酸素(紫)」「危険(赤)」の5段階で、利用者の最大心拍数に応じてゾーン分けされる。
心拍数の文字色や、画面中のグラフ表示で心拍ゾーンが表示されるものは多いが、バックライトの色だと一目で分かるので、運動中でも確認しやすい。
●ワークアウトの自動検出機能
ワークアウトの計測も、TicWatch Atlasの特徴に挙げられる。手動で計測を開始できるのは当然だが、ウォーキングやランニングなどの屋外アクティビティーを自動検出する機能も備えている。これ自体は他でも見かける機能だが、この検出がかなり早い。
例えば、Googleの「Pixel Watch 3」ではウォーキングは10分程度経ってから通知が出て、計測を開始するかどうかの選択となる。これに対してTicWatch Atlasは、2~3分で通知され、特に操作を行わなくてもそのまま計測が開始される。これだと、近所へのちょっとした外出でも運動として計測される可能性があるが、実際のところそれで不都合が生じることはないはずだ。
しかし試したところ、この自動計測は意図しないタイミングで計測を終了することがあった。しっかりと記録を残したい場合は、手動で開始した方が安心だ。
●Mobvoi Healthアプリでデータ管理
本機とスマートフォンをつなぐコンパニオンアプリは、「Mobvoi Health」(Android 8.0以上/iOSは非対応)だ。最初のペアリングや各種データの同期も行われる。注意点として、本機はWear OSスマートウォッチだが、Android標準のWear OSアプリは使用しない。Wear OSアプリの共存もできないようで、インストール済みの場合はアンインストールを促される。Pixel WatchとTicWatch Atlasをその日の気分で着けかえるというのは難しそうだ。
計測データそのものについては、通常のWear OSと同等で、特別なところはない。心拍数や睡眠計測、VO2 Max(最大酸素摂取量)などを確認できる。
なお今回は利用しなかったが、Mobvoi Healthにはヒートマップ機能が追加されている。アメリカンフットボールやバスケットボール、ラグビー、サッカー、テニスなどをプレイする場合、コート内のどの場所に多くいたのか、どのように動いていたのかを可視化することで今後のプレイに役立てようという機能だ。サポートされるアクティビティーは、今後のアップデートで変更される可能があるとしている。
●バッテリー持ちの良さが魅力
TicWatch Atlasを語る上で、最も特徴的なのが長時間のバッテリー駆動だ。Wear OSのバッテリー持ちは昔から悪かったが、バージョンを重ねるごとに改善はしており、最新版を搭載するPixel Watch 3では、45mmモデルなら何とか48時間程度は利用可能だ。これに対して本機は、初期設定の状態で約70時間(約3日間)利用できた(3回の睡眠計測/80分のウォーキング3回を含む)。公称値の最長90時間には及ばないが、GPSを使わなければ90時間は持ったかもしれない。
なお今回、70時間経過の時点で、バッテリー残量は5%になり、省電力のためにWear OSは終了し、FSTN液晶のみのエッセンシャルモードに移行した。
エッセンシャルモードでは、スマートフォンからの通知やアプリなどは利用できないが、心拍数/血中酸素/睡眠/歩数などの計測は行える。常にエッセンシャルモードで利用することもでき、この場合は最長で45日間利用できるとしている。
●バッテリー持ちがいいWear OSスマートウォッチ
バッテリー持ちがいいだけであれば、XiaomiやHUAWEI、OPPO、Amazfitなどから1週間程度は利用できるスマートウォッチがいくつかリリースされている。健康管理という面でみれば、機能的には十分なものだ。しかし、TicWatchはWear OS採用という点が特徴になる。Google Playからさまざまなアプリをインストールすることもできる。FeliCaは非搭載でSuicaは利用できないが、NFCには対応しており、ウォレットを使ってのタッチ決済は可能だ。
Wear OSのスマートウォッチが気になるものの、バッテリー持ちが気になって手を出しづらいと考えている人にはぜひ試してみて欲しい製品だ。