Windows 11 2024 Update(バージョン24H2)では、Copilot+ PC(新しいAI PC)の要件を満たしたPCに対して「リコール(Recall)」と呼ばれる新機能が実装される予定だ。ただし、主にプライバシー面での懸念が指摘されたこともあり、同バージョンの一般リリース時点での提供は見送られた。
そんな中、Windowsの新バージョン/ビルドを先行して提供する「Windows Insider」のDev(開発者)向けチャネルにおいて、11月22日(米国太平洋夏時間)からリコール機能を試せるようになった。この記事では、リコール機能を試すために必要な設定と、注意点をまとめる。
●「リコール」の要件(おさらい)
先述の通り、リコール機能を使うにはCopilot+ PC(新しいAI PC)の要件を満たしたPCが必要だ。ただし、システムのストレージに50GB以上の空き容量がないと機能を有効化できず、有効化しても空き容量が25GBを下回ると自動的に停止される。
リコール機能を有効化すると、スナップショット(スクリーンショット)が最大3カ月間保存される。そのため、ストレージに以下の通り“予約領域”が確保される(括弧内は設定可能な容量)。
・ストレージ容量が256GB:25GB(10GB)
・ストレージ容量が512GB:75GB(25GB/50GB)
・ストレージ容量が1TB以上:150GB(25GB/50GB/75GB/100GB)
設定容量を超過した場合、スナップショットは古い順に自動削除される。また、任意のスナップショットを削除する機能も実装されたので、うまく活用したい。
なお、セキュリティ保護の観点から、リコール機能を使う場合は以下の要件も満たす必要がある。
・デバイスまたはシステムストレージを暗号化すること
・起動時に「セキュアブート(Secure Boot)」を用いること
・「Windows Hello 拡張サインイン」に対応できる生体認証デバイスを搭載していること
・少なくとも1種類の生体認証デバイスでサインイン(ログイン)できる状態であること
●プレビュー提供は現状で「Snapdragon X」のみ 6言語に対応
現時点においてリコール機能を試せるのは、「Snapdragon X Plus」「Snapdragon X Elite」を搭載するCopilot+ PCのみとなる。
Copilot+ PCにはAMDの「Ryzen AI 300プロセッサ」やIntelの「Core Ultra 200Vプロセッサ」を搭載するものも存在するが、これらIntelアーキテクチャのモデルでは今後のDevチャネルに対するアップデートで試せるようになる予定だ。ただし、その時期は「Coming Soon(間もなく)」となっており、明示されていない。
また、利用できる言語は以下の通りで、国/地域によっては利用できない場合もある。
・中国語(簡体字)
・英語
・フランス語
・ドイツ語
・日本語
・スペイン語
●プレビューは「Insider Preview(Devチャネル)」向けに提供中
リコール機能のプレビューを利用するには、Windows 11の新ビルド/新バージョンを先行提供する無料の会員制プログラム「Windows Insider」に登録した上で、Windows 11の「Insider Preview」のDevチャネルを適用する必要がある。
Devチャネルは主にPC(Windows)の上級者やアプリ/デバイスドライバの先行開発を行う技術者向けに提供されているもので、Windowsの新機能あるいは仕様変更を、候補を含めて“先行提供”することを目的としているものだ。ここである程度安定し、リリースが決定した機能は「Betaチャネル」に移行され、ほぼ完成すると「リリースプレビュー」に回されるという仕組みだ。
●Dev チャネルの適用するだけでは「リコール」を使えない?
Windows Insiderに登録(参加)するには、個人ユーザーは「Microsoft アカウント」、法人ユーザーは「Microsoft Entra ID(旧Azure Active Directoryアカウント)」が必要となる。
登録後、以下の手順で設定を行うとWindows 11 Insider PreviewのDevチャネルを利用可能だ。
1. 「設定」を開く
2. 「Windows Update」をクリック
3. 「Windows Insider Program」をクリック
4. 「使用を開始する」をクリック
5. Windows Insiderに登録したMicrosoftアカウント/Microsoft Entra IDを選ぶ
・必要に応じてサインイン(ログイン)操作を実施
・Insiderチャネルとして「Devチャネル」を選んで「続行」をクリック
・注意事項(英語)をよく読んで「続行」をクリック
・「続行」をクリック
・PCを再起動する
・再起動が完了したら、Windows Updateで更新を確認してインストール
なお、注意事項にも書かれているが、Devチャンネルを適用した後、Insider Previewを取りやめたい場合はOSまでのクリーンインストール(またはリカバリー)が必要となる。事前に回復ドライブ(リカバリーメディア)の作成と、データのバックアップを取っておくことをお勧めする。
これでリコール機能を試せる……と思いきや、リコール機能はユーザーのオプトイン(能動的な同意)に基づいて提供されるため、追加のセットアップ手順が必要だ。手っ取り早く使い始めたい場合は、以下の手順で操作しよう。
1. タスクバーの検索バー(スタートメニュー)をクリック
2. 「リコール」と入力
3. 「リコール(プレビュー)」アプリをクリックして起動
リコールアプリが起動すると、Windows Updateからリコール機能に必要な更新プログラム(2種類)がダウンロードされる。プログラムのインストールが完了すると、アプリの表示が更新される(更新されない場合は、アプリを一度閉じてから再起動すればよい)。
アプリの表示が更新されると、リコール機能の簡単な紹介を確認できる。その後、Windows Helloでのサインインを求められるので、指示に従って登録済みの方法で生体認証を行おう。なお、リコールアプリの起動時には毎回サインインを求められるようになっている。
以上のプロセスを経ると、リコール機能を試せるようになる。ただし、現状ではSnapdragon Xシリーズを搭載するCopilot+ PCでのみ、Windows Insider ProgramのDevチャネルを通して試せる状況だ。先述の通り、Devチャネルの利用には一定のリスクがあるため、誰でも気軽に試せる状況ではない。
今後、リコール機能のブラッシュアップが進むとBetaチャネル、そしてリリースプレビューに回される。「Windows(あるいはPC)がトラブルに遭遇した時に、自力で対処できる自信がない」という場合は、リリースプレビューに登場したタイミングで試すことをお勧めする。「腕に自信がある!」という人なら、今すぐ試してMicrosoftにフィードバックするといいだろう。