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バッファローのSOHO向け新型NAS「TeraStation TS3030シリーズ」を情シス目線で試す 中小規模ビジネスで「2.5GbE」はメリットになるのか?

ITmedia PC USER 2024年12月3日 17時5分

 バッファローが10月に発売した新型NAS「TeraStation TS3030シリーズ」は、同社製のビジネス(法人)向けNASとしてはエントリーモデルという位置付けで、小規模オフィス(支店/出張所)やSOHOでの利用を想定している。有線LANポートは2.5Gbps(2.5GBASE-T)対応で、より高速なネットワーク環境を生かしやすいことも特徴だ。

 今回、同社から2ベイモデル、4ベイモデル、そしてラックマウント(4ベイ)モデルをそれぞれ借りることができた。いずれも1ベイ当たりの1TBのHDDを搭載しており、2ベイモデルは2TB、4ベイ/ラックマウントモデルは4TBのキャパシティーを備えている。

 TS3030シリーズはどのようなNASなのかを検証していこう。

●2ベイモデル(TS3230DNシリーズ)の外観をチェック!

 まず、小規模オフィス/SOHO向けとしてはベーシックな2ベイモデルの「TS3230DNシリーズ」を見てみよう。

 全体的なデザインは、従来モデル(TS3220DNシリーズ)とほぼ変わらない。ただし、従来モデルでは前面の一部がシルバーカラーだったのに対して、新モデルはブラックカラーになっている。“黒一色”のボディーに、バッファローのコーポレートカラーである赤色のラインが引かれた、やや大人しめのカラーリングに変わった。

 デスクトップに設置するNASは、執務室内に設置することがほとんどと思われる。個人的には、新モデルのカラーリングの方が執務室になじみやすいのではないかと思う。

 TS3230DNシリーズのドライブベイは前面にある。HDDの交換を実施する場合は、付属の鍵を使ってドア(カバー)を開ける必要がある。

 人によっては鍵の管理が面倒に感じるかもしれない。しかし情シス目線からすれば、障害時くらいしかHDDの交換を行わないことを加味すると「変にいじられることも防げるし、これでいいのでは?」と思う。

 今回試用しているのは1TB HDD×2構成のモデル(TS3230DN0202:標準価格12万8700円)だが、HDDはSeagate(シーゲート)製のNAS向けモデル「IronWolf」が搭載されていた。NAS向けのHDDは、一般的なHDDよりも耐久性を高めていることが特徴だ。

 高耐久HDDが採用されているのは、可用性を高める観点で非常にありがたいポイントだ。

 ポート類は背面に集中している。ネットワークポートは1000BASE-T(1GbE)と2.5GBASE-T(2.5GbE)が1基ずつ用意されている。その他、バックアップ用の外付けHDD/SSDやUPSを接続できるUSB 3.2 Gen 1 Standard-Aポート×2も備えている。

 ネットワークポートについては、左側が1000BASE-T、右側が2.5GBASE-Tとなる。一応、背面パネルにもその旨は刻印されているが、マルチギガビット環境で運用する場合は「つなぎ間違い」に注意したい。

●4ベイモデル(TS3430DNシリーズ)の外観をチェック!

 続いて、4ベイモデルの「TS3430Dシリーズ」の外観をチェックしてみよう。

 見た目は、先に紹介したTS3230DNシリーズを少し縦長にしたような感じだ。ベイが2つ増えた分、高さが増したと考えるとしっくりくる。

 TS3230DNシリーズの場合、2ベイゆえにRAIDを利用する場合は「RAID1(ミラーリング)」しか選べなかったが、4ベイあるTS3430DNシリーズでは「RAID5(パリティー)」や「RAID6(ダブルパリティー)」も選べる。ストレージ容量を多く確保しつつも、耐障害性を持たせた構成が取れるため、より大規模なNASを構築するのにうってつけだ。

 物理的な構造も、ベイの数を除けばTS3230DNシリーズと変わらない。ドライブベイには、それぞれドライブの番号が分かりやすく振られている。

 ドライブベイが増えると、HDDが故障して取り替える際に「どのドライブを交換すれば良いか」戸惑うこともある。このように、誰でも一目で分かるようになっている点は、情シスがいない会社でも自社運用しやすいため、地味にありがたい。

 背面のポート構成はTS3230DNシリーズと同じだ。というのも、TS3030シリーズはベイ数やボディー形状を問わずハードウェアの基本スペックが同一だからだ。少し見方を変えると、必要なベイ数とボディー形状だけを選べばいいといった感じだ。

 ただし、「上位モデルならネットワークポートはどちらも2.5GBASE-T」というわけにはいかないのは、少し残念かもしれない。

 2ベイモデルであるTS3230DNシリーズと、4ベイモデルのTS3430DNシリーズを並べてみると、異なるのは高さだけで、基部の寸法(幅と奥行き)に変わりはない。高さ方向のクリアランスに問題がなければ、卓上設置も容易だ。

 両シリーズ共に、動作音は静かだ。執務室内に設置しても騒がしさを感じることはないだろう。独立した「サーバ室」を設置できない場合でも、安心して置ける。

●ラックマウントモデル「TS3430RNシリーズ」の外観をチェック!

 「TS3430RNシリーズ」は、1Uサイズのラックマウントモデルだ。ラックマウント式のサーバ(NAS)というと騒音が気になる人も多いと思うが、先に紹介したデスクトップモデルとベースのハードウェアが同じこともあって、ラックマウントNASとしては非常に静かに運用できる。

 ラックマウントボディーだけあって、デスクトップモデルと比べると横幅は大きい。ただし、その分高さは低くなる。19インチラックに搭載することで、ラック内の集約率を高めることもできる。

 オフィスによっては、執務室内の一部スペースに19インチのサーバラック/ネットワークラックを設置していることもある。そのような場合、ラックに空きスロットがあれば本モデルを選ぶことでラックを有効活用できる。

 側面を見てみると、ラックから引き出すときに転がる大きなベアリングが見て取れる。SOHOや中小企業向けの製品ながら、スライドレールが採用されているためサーバラックへの取り付けも容易でありがたい。

 ラックマウントレールの取り付けは、ツールレスではない。ドライバーを使った取り付けが必要だが、本モデルの重量は約7.7kgと、ラックマウントNASとしては軽量で、ラックマウントレールも軽い。ハイマウント設置時も、大きな負担にならないだろう。

 先述の通り、ポート類の構成は先の2シリーズと変わらない。ファンについては小ぶりなものが背面左右に設置されている。

●設定は「NAS Navigator2」から簡単に

 TS3030シリーズの設定は、Webブラウザからアクセスできる設定画面から行う。Windows PCやMacであれば、バッファロー独自のアプリ「NAS Navigator2」から設定画面を開くことも可能だ。

 これはラックマウントモデルであるTS3430RNシリーズも同様だ。「ラックマウントモデルの運用は(設定面で)専門知識が必要」と思っている人もいるかもしれないが、本機ならWebブラウザから設定できるので、常駐のシステム担当者がいなくても安心して利用できる。

●2.5GBASE-T対応は効果てきめんか?

 先代のTS3020シリーズと比べた場合、TS3030シリーズの一番のメリットは2.5GBASE-Tポートを備えていることにある。

 少し前までは、1000BASE-Tポートよりも高速なネットワークに対応するNASを探すと、10GBASE-T(10GbE)まで“ジャンプ”しなければならなかった。理論上のネットワークの最高速度は一気に10倍に上がるものの、カテゴリー6(長さ55m以内)またはカテゴリー6aのLANケーブルを使わなければならないという制約があり、機器だけでなくケーブルのリプレースも求められることがある。

 また、10GBASE-T対応のネットワーク機器は高速な分だけ発熱も大きく、何の考えなしにサーバ室やサーバラックに据え置くと“オーバーヒート”してしまうこともある。機器やケーブルも含めて、コスト面はもちろん、運用面においても大きな課題を抱えていた。

 その点、2.5GBASE-Tであれば、10GBASE-T対応機器よりも価格は手頃だ。また、ケーブルも1000BASE-T環境で多用されているカテゴリー5eのものを流用できる。発熱もそこまで激しくない。

 昨今、2.5GBASE-T対応のLANポートを備えるPCが増えている他、2.5GBASE-T対応ルーター/ハブ/スイッチも手頃になってきた。今回、ビジネス向けのTeraStationのエントリークラスの製品でも2.5GBASE-T対応を果たしたことは、小規模オフィスやSOHOのネットワークパフォーマンスの“底上げ”につながる観点ではありがたい。

 しかし、TS3030シリーズはHDDのみで構成されたNASだ。RAIDを構成したとしても、2.5GBASE-Tのメリットを享受できるのかと疑問に思う人もいるだろう。

 そこで今回は、RAID10(TS3230DNのみRAID1)でアレイを構成した上で、「CrystalDiskMark 8.0.4」を用いて、1000BASE-Tポートを利用した場合と、2.5GBASE-Tポートを利用したときのパフォーマンスを測定してみた(PC側は2.5GBASE-Tポート搭載)。

 まず、読み出し速度は以下の通りとなった。

・読み出し(SEQ1M Q8T1)

・TS3230DN 1000BASE-T:毎秒118.28MB

・TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒285.24MB

・TS3430DN 1000BASE-T:毎秒118.28MB

・TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒286.25MB

・TS3430RN 1000BASE-T:毎秒118.07MB

・TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒295.48MB

読み出し(SEQ1M Q1T1)

・TS3230DN 1000BASE-T:毎秒112.4MB

・TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒249.55MB

・TS3430DN 1000BASE-T:毎秒113.88MB

・TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒252.51MB

・TS3430RN 1000BASE-T:毎秒113.04MB

・TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒260.47MB

読み出し(RND4K Q32T1)

・TS3230DN 1000BASE-T:毎秒115.94MB

・TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒120.51MB

・TS3430DN 1000BASE-T:毎秒114.02MB

・TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒121.38MB

・TS3430RN 1000BASE-T:毎秒114.77MB

・TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒134.58MB

読み出し(RND4K Q1T1)

・TS3230DN 1000BASE-T:毎秒12.32MB

・TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒12.16MB

・TS3430DN 1000BASE-T:毎秒11.79MB

・TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒12.28MB

・TS3430RN 1000BASE-T:毎秒9.67MB

・TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒12.24MB

 結果は一目瞭然で、2.5GBASE-Tポートを使うと、シーケンシャルリード性能が約2.3倍になった。SSDを普段メインで使っているつい忘れがちだが、今発売されているHDDは、一昔前のHDDと比べると格段にパフォーマンスが向上しているのだ。

 1000BASE-Tは最大1Gbpsなので、メガバイト換算すると毎秒125MBが限界値であるのに対して、最大2.5Gbpsの2.5GBASE-Tは、毎秒312.5MBが限界値となっている。HDDのシーケンシャルリードは1000BASE-T環境では生かし切れず、2.5GBASE-T環境において初めてパフォーマンスを発揮できるようになっているのだ。

 一方、1000BASE-Tでも頭打ちにならないランダムリード性能は、2.5GBASE-T環境でも大差ない。

続いて書き込み性能も計測してみたので、以下に結果をまとめた。

・書き込み(SEQ1M Q8T1)

・TS3230DN 1000BASE-T:毎秒116.18MB

・TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒169.87MB

・TS3430DN 1000BASE-T:毎秒117.65MB

・TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒252.7MB

・TS3430RN 1000BASE-T:毎秒117.64MB

・TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒251.03MB

書き込み(SEQ1M Q1T1)

・TS3230DN 1000BASE-T:毎秒104.01MB

・TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒153.93MB

・TS3430DN 1000BASE-T:毎秒103.18MB

・TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒200.91MB

・TS3430RN 1000BASE-T:毎秒113.8MB

・TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒208.04MB

書き込み(RND4K Q32T1)

・TS3230DN 1000BASE-T:毎秒54.29MB

・TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒56.46MB

・TS3430DN 1000BASE-T:毎秒50.55MB

・TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒54.34MB

・TS3430RN 1000BASE-T:毎秒48.63MB

・TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒52.92MB

書き込み(RND4K Q1T1)

・TS3230DN 1000BASE-T:毎秒11.86MB

・TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒11.2MB

・TS3430DN 1000BASE-T:毎秒10.35MB

・TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒11.95MB

・TS3430RN 1000BASE-T:毎秒10.11MB

・TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒11.87MB

 4ベイモデルについてはシーケンシャルライト性能が約2倍となっている。RAID10の効果はてきめんのようだ。

 一方で、2ベイモデルはスコアが約1.47倍程度しか向上しなかった。RAIDの構成の都合で、書き込み性能が頭打ちになってしまったのだと思われる。とはいえ、特にシーケンシャルライトでは一定のパフォーマンス改善効果は見られるので、2.5GBASE-Tへの対応は大きなメリットとなる。

 2.5GBASE-Tに対応したネットワーク機器が必要となるものの、既存配線を生かしつつ高いパフォーマンスを得られるという大きなメリットを享受できるのが、TeraStation TS3030シリーズの強みだろう。

 クライアントPCがマルチギガに対応していなくとも、上流ネットワークのアクセススピードが速くなれば、複数人でアクセスした際のパフォーマンス改善も期待できる。業務効率の向上も見込める。

 エンタープライズ向けのストレージ製品はどうしても高価になりがちだが、NAS本体代とマルチギガ対応スイッチを買いそろえても、100万円以内の予算に収まるTS3030シリーズは、SOHOや中小企業ユーザであっても、比較的パフォーマンスの高いNASを構築できるので、非常にオススメなNAS製品といえる。

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