筆者は仕事に活用できるガジェット、そして何より電子ペーパーデバイスが大好きです。しかし、電子ペーパーは液晶や有機ELといったディスプレイを搭載した製品に比べると、多くの点で劣ります。
例えば、画面の応答性は低く、発色も劣ります。そもそも大半の電子ペーパーはカラー表示ではありません。このあたりは技術的な特性なので、ようするに用途に合わせて使い分け、つまり“一芸に秀でる”デバイスであることに価値があるのです。
今回は、電子ペーパーを活用した“AIスマートノート”をうたう「iFLYTEK AINOTE Air 2」という製品を試用する機会を得ました。日頃から数多くのガジェットに触れる私ですが、実はAINOTE Air2のような”AIを売り"にした製品は初めて使います。そうした状況もあり、楽しんでいろいろと触ってみました。
実際に使ってみたところ、なかなか素晴らしい割り切りをしている製品だと感じました。AI特化というよりは、今使える技術を組み合わせながら、紙のノートにデジタルを融合させて利便性を高めています。このコンセプトにハマる方には、間違いなくオススメできます。
●AIスマートノート「iFLYTEK AINOTE Air 2」とは?
電子ペーパーのタブレットに、ペン入力や音声認識、文字起こしといった機能を搭載しています。さらにChatGPTとのシームレスな連動機能が大きな特徴で、ペン書きメモ、会議の議事録作成、ToDoの管理など、ビジネスシーンで求められるノートの用途に対応できるものです。
画面サイズは8.2型(1920×1440ピクセル)、本体サイズは約136(横)×193(縦)mmと、ほぼ「iPad mini」と同じです。重さは約230g、厚みは約5mmと、軽量かつ薄型で、持ち運びが苦にならず、まさにノートのように使えます。
カメラも搭載しています。本体の形を工夫することで、出っ張りの影響を最小限に抑える工夫がなされています。カメラが出っ張っていると、本体がガタガタしてペン入力がしづらくなってしまうことも考えられるため、重要なポイントです。
●フォーマルな手帳みたいな専用カバー、専用ペン
本体に装着できる専用カバーも用意されています。カバーの質感も高く、高級な手帳を手にしているような感覚があります。
この専用カバー、装着方法がユニークです。よくあるマグネットで接着するタイプではなく、本体に引っ掛けて装着します。最初は装着方法に悩みましたが、力技で引っ掛けるだけでした。カチッとハマりますので、外れるようなことはないと思います。
ペンはマグネットで本体に装着できます。さらに専用カバーにはペンホルダーが付属しています。これにより、カバンの中でペンが外れるといったことが回避できるため、よく考えられた工夫だと感じました。
ペンは充電不要なタイプです。私は電源管理が手間なので、充電不要な方がありがたいですね。
電源ボタンに内蔵された指紋認証センサーも搭載しており、ビジネスシーンで使う機密性の高いファイルの取り扱いにも配慮されています。
●目的に特化した使い方、だから素晴らしい
AINOTE Air 2の魅力は、その特化された用途にあります。議事録、要約、共有──このためのノートと言って過言ではないでしょう。
会議は「録音」ボタンを押せば、すぐに音声録音と文字認識、文字起こしが始まります。そして会議終了後、AIアイコンを押せば、ChatGPTと連動してそのまま議事録を要約できるというわけです。
要約した議事録の共有も簡単です。要約したページで「共有」ボタンを使い、Webで共有したりPDFに変換したりできます。Webで共有する場合、即座に表示されるQRコードを他の参加者に読み取ってもらえば、その場で共有できます。
翻訳しながらの文字起こしも可能です。例えば、英語で話された内容を日本語で文字起こししていく、といった具合です。
また、その会議に対する手書きメモの追加や、写真を撮って貼り付けておくといったことも可能です。文字起こしされたテキストをタップすると、その録音再生位置にも飛べるので、会議内容の振り返りや確認を簡単に行えます。
これらの録音、文字起こし、手書きメモ、写真などのデータは1つのノートとなり、「その会議」のまとまりとして管理できます。
録音データなどはAINOTE Air 2が提供するクラウドサービスと、シームレスなデータ同期が可能です。同期すれば、専用のスマホアプリから内容を確認することもできます。
そして、これらは基本的に時系列で管理されていきます。「週報」という表示があるのですが、作成や更新したタイミングが時間軸で表示されます。これが意外と便利で、「先週の火曜日に実施した会議の内容は……」など、目的のデータを探しやすくなっています。私は「時系列順」というのは最強のソートキーだと考えています。
もちろんこうした作業は、スマホやPCなどでもうまく組み合わせれば実現可能です。しかし、AINOTE Air2を使えば、一連の流れが既に出来上がっています。余計な操作をせずとも、目的が達成できる。結果的に作業時間が短縮でき、会議をすればするほど、その効果を実感できることでしょう。
●AIの精度は?
ここまでに紹介したような作業フローは素晴らしいです。しかし、気になるのは、音声認識や要約の精度ではないでしょうか。
この精度レベルは、良い意味でも悪い意味でもなく、正直なところ「今ある技術」水準のものです。滑舌悪く話すとも認識できず、要約も実体はChatGPTなので、お使いの方はどのような精度なのかが分かるかと思います。
AINOTE Air2だから他製品に比べて大きな違いを感じるほど精度が高い、といったものではない点は留意しておいた方がよいでしょう。前述しましたが、目玉は「用意された作業フロー」です。
なお、リアルタイム文字起こしや翻訳機能はインターネット接続が必要です。会議中に、その場で内容を文字起こししながら使いたい場合は、ネット環境が必須となるので注意が必要です。
ただし、ネット環境がなくとも録音自体はでき、後で文字起こしや翻訳処理をかけることは可能です。これは、翻訳言語設定を誤っていて、あらためて翻訳したい時などにも活用できます。
取りあえず録音データを確保しておけば、後日、AIの精度が上がった際に再度文字起こしや翻訳をかけると、より精度の高い内容で出力できるかもしれませんね。
なお、ChatGPTの利用にログインは不要です。アカウントなしで利用できます。
●重要なペンの書き心地 こちらも素晴らしい
ペン好きな私ですが、AINOTE Air2のペンは私の中ではトップクラスの完成度だと感じました。反応も良く、パームリジェクションも素晴らしいです。ペンの後ろ側には消しゴム機能が搭載されており、消した部位のみが消えるタイプです。
OSレベルでペンの種類を変えられる点もユニークだと感じました。よくあるのはアプリごとにペン設定を変えられるものですが、AINOTE Air 2は端末としてペン設定を変更することができます。
また、メモ上で特定の記号を書くことで、タスクやスター付きリストに自動的に振り分けられるのも面白いです。タッチキーボード入力を使わず、ペンでいろいろな操作をして欲しい、という思いを感じます。
●他にも多少機能はあるが、実用性は人それぞれか
メールの送受信など、他にも多少の機能が備わっています。しかし、電子ペーパーでわざわざメールを使う必要があるかというと疑問が残ります。
Kindleアプリの利用や、PDFを取り込んで表示することもできます。このあたりは電子ペーパー端末の強みとなる点でしょう。
PCとUSBケーブルで接続すれば、外部ストレージとして認識するので、ファイルのやりとりも容易です。ペンが素晴らしいので、AINOTE Air2にPDFを取り込んで書き込みたくなります。
いろいろできるわけですが、私はそもそも「何でも1台で使う」端末ではないと感じています。あくまで「デジタルノート」として使うべきデバイスだと感じます。
●ビジネスで活用するには?
さて、ビジネスシーンで大活躍しそうなAINOTE Air2ですが、忘れてはいけない点があります。
ビジネスデータを扱う場合、セキュリティ面での慎重な判断が必要かと思います。本体には指紋認証が搭載されており安心感はありますが、インターネット接続を前提とした機能が多いため、そのセキュリティリスクの判断は企業によってさまざまでしょう。
企業での利用を想定する場合、データの暗号化や管理機能のさらなる強化が期待されます。チームでの共有機能が充実すれば、会議での利用価値が一層高まるでしょう。
こうしたエンタープライズ向けの機能が充実していくと、セキュリティ面についても気兼ねなく、ビジネスでガンガン使用していけるようになるでしょう。特に会議は機密情報の塊でもありますので「便利だから使う」とはいかない面がどうしてもありますね。
●手元で使用していて心地のよい端末
“AI”という言葉はミスリードしてしまうことも多いですが、AINOTE Air2は現在の技術を上手に組み込んだ、完成度の高いガジェットだと感じました。
会議に付随する要素を、いかに効率よく対応するかに注力。会議のお供として、大きな生産性向上に寄与するでしょう。
薄く軽量なデザインも非常に魅力的です。ノートを時系列で表示し、そのままデータとして蓄積できる点は一度使うと手放せなくなるでしょう。
こうした使い方にマッチすると感じた方は、ぜひ一度体験していただきたい端末です。AINOTE Air 2はMakuakeで先行発売されます。
(製品協力:iFLYTEK)