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持っているだけで楽しい! “ゲームボーイオマージュ”のAndroidデバイス「AYANEO Pocket DMG」の実力を試す

ITmedia PC USER 2025年1月29日 12時20分

 夢中になって遊び回ったあの日──白髪が目立ち始める年齢になってくると、昔に戻りたいと思うこともある。体力は戻らなくても、ガジェットで“あの日”の気分だけでも味わいたい。

 そんな願いをかなえるのが、懐かしの家庭用ゲーム機などのデザインをオマージュした「AYANEO REMAKE」ブランドを展開する中国AYANEOの「AYANEO Pocket DMG」だ。

 AYANEO Pocket DMGは、これまでAYANEOが市場に送り出してきたポータブルゲーム機と異なり、縦型ボディーを採用している。そう、任天堂のゲームボーイをオマージュしたデザインのAndroidデバイスだ。

 編集部では、限定版の「AYANEO Pocket DMG Retro Color」モデルを入手した。懐かしさに溺れないよう、じっくりと検証した結果を紹介する。

●AYANEO Pocket DMGの仕様

 AYANEO Pocket DMGのディスプレイは、3.92型(1240×1080ピクセル、アスペクト比は31:27)の有機EL(OLED)で、SoCにはQualcomm Snapdragon G3×Gen2を採用している。メモリとストレージのバリエーションは、8GB/128GB、12GB/256GB、16GB/512GB、16GB/1TBを用意している。OSはAndroid 13だ。

 カラーバリエーションはArtic Black、Moon White、Retro Colorの3色で、Retro Colorのみが16GB/1TBモデルとなっており、他の2色はメモリとストレージが最大16GB/512GBという構成だ。

 ゲームのデータサイズが巨大化している昨今、できれば全カラーに1TBストレージモデルを用意してほしかったというのが正直なところだが、最大読み取り速度が毎秒100MBのmicroSDメモリーカードスロットを搭載しているので、なんとかカバーできそうだ。

 国内での正規代理店はハイビームで、モデルごとの価格は以下のようになっている。

 通信機能としてWi-Fi 7、Bluetooth 5.3に対応しており、搭載している端子はUSB 3.2 Gen 2 Type-Cとなっている。自宅のWi-Fi環境が整っていれば、高速にゲームのダウンロードなどを行えるだろう。

 本体サイズは実測で91(幅)×15(奥行き)×22.2(高さ)mm、重さは271.5gとコンパクトかつ軽量だが、内蔵バッテリーの容量は6000mAhもあり、スマートフォンと比べて大容量なのでパワーを要するゲームも長時間楽しめる。

 左ジョイスティック、十字ボタン、ABXYボタン、STARTボタン、SELECTボタン、R1/R2、L1/L2ボタンの他、AYANEO独自のAYAボタン、LC/RCボタン、Menuボタン、カスタムボタン、指紋認証一体型電源ボタンを備える。

 ユニークなのは、右ジョイスティックの代わりにタッチパッドを採用したこと、そしてダイヤル操作とスイッチ操作を行える「MagicSwitch」を搭載していることだ。MagicSwitchの詳細については後述する。

 ソフト面で特徴的なのは、管理アプリ「AYASpace」がプリインストールされていることだろう。動作パフォーマンスの変更、本体のライトエフェクトの設定、ABXYボタンのリマップなど、Androidについての深い知識がなくても行える。

 しかも、物理的なAYAボタンを短押しすれば「AYA Quick Tool」、長押しでAYASpaceを起動できる。AYA Quick Toolを使えばゲーム中でも、ゲーム画面を落とすことなくパフォーマンスや画面の明るさなどをスピーディーに変更できる。

 なお、パフォーマンスのみであれば、右側面にあるターボボタンでも変えられる。上に押し上げるごとに、「Saving」「Balance」「Game」「Max」モードの順に切り替わる。ゲーム場面の中でもまったりとした進行のときには「Balance」モードで、戦闘シーンでは「Max」で、という具合に切り替えれば、バッテリーの持続時間を伸ばすこともできそうだ。

●気になる外観をチェック

 AYANEO製品は、パッケージにもこだわりがある。AYANEO Pocket DMGも例外ではなく、箱本体をスリーブが包んでいる。

 箱の上のふたを取り除くと、取り換え可能なショルダー(R1/R2、L1/L2)ボタンとジョイスティックキャップについての説明書きがある。その下にはAYANEO Pocket DMGの線描図もあり、さらにそれらを取り除くとようやくAYANEO Pocket DMG本体と対面できる。

 箱の中には、本体の他、交換部品やUSB Type-Cケーブル、取扱説明書が収められている。

 それでは、外観をじっくり見ていこう。

 縦型ボディーの上半分はディスプレイが占めている。3.92型というディスプレイサイズは、初代iPhone SEよりわずかに小さいのだが、本家のゲームボーイと比べると大きいと感じる。

 少し前に販売を開始したAYANEO Pocket Sでは、前面をオールガラスにするなど高級感を押し出していたが、こちらは全体的にプラスチッキーでチープなイメージだ。レトロな雰囲気を出すため、あえて狙ったような気がする。

 下半分はコントローラーが占める。左上から時計回りに十字ボタン、ABXYボタン、STARTボタン、SELECTボタン、AYASpaceボタン、タッチパッド、左ジョイスティックだ。

 AYANEO Pocket MICROを除くその他のAYANEO製品と異なり、ABXYボタンの配置がNintendo Switchと同じであることに注意が必要だ。とはいえ、これはAYASpaceで入れ替えられるので、好みの配置にすると良いだろう。

 Retro Colorバージョンはカラーリングがより一層、初代ゲームボーイのオマージュになっている。十字ボタンのダークグレー、ディスプレイ周りのライトグレー、ABボタンのえんじ色などだ。残念ながら筆者は初代ゲームボーイを持っていないのだが、昔、遊んでいたという人であれば、懐かしさもひとしおだろう。

 ぐるりと外観を見ていこう。左側面にはスピーカー、LCボタン、Menuボタン、音量ダイヤル兼MagicSwitch、ターボボタンがある。右側面にはmicroSDメモリーカードスロット、指紋認証一体型電源ボタン、カスタムボタン(=の刻印)、RCボタン、スピーカーだ。

 MagicSwitchは、クルクルと上下に回せばデフォルトで音量の上げ下げを行えるが、垂直に長押しして表示されるメニューをダイヤルで選べば、輝度、パフォーマンス、バイブレーション、ファンなどの設定へと変えられる。

 例えば、MagicSwitchを長押ししていったん指を離し、上下に回して輝度を選び、短押しして確定すると、次からはMagicSwitchを上へ回すとディスプレイが明るく、下へ回すと暗くなり、短押しで最低輝度になる、という具合だ。

 他も見ていこう。下部にはマイク、USB 3.2 Gen 2 Type-C端子、電源インジケーターランプがある。上部にあるのは排気口だ。ファンをMAXにすると、かなり強い風が吹き出してくるので、向かい合って座っていると、相手から「向きを変えて」といわれてしまうレベルなので注意したい。

 背面には給気口、R1/R2、L1/L2ボタンがある。デフォルトではボタンの色は本体と同じだが、メタル塗装の施された換装用部品が用意されている。

 以下は、ゲームボーイカラーと並べてみた正面以外の写真である。特に感心したのは、側面上部のギザギザデザインをスピーカー穴で表現しているところだ。背面のスロットの出っ張りをR1/R2、L1/L2ボタンに置き換えているところも「デザインへのリスペクト度が高い」と感じた。

●ゲームは快適に遊べる? 動作パフォーマンスをチェック

 見た目は良くても中身はどうか、というところが気になるだろう。そこで、ベンチマークテストや実際のゲームプレイで性能や使い勝手がどうなのかを見ていきたい。

 なお、パフォーマンスとファンの回転速度はともにMaxに設定した。

 まずはおなじみ「AnTuTu Benchmark 3D」でベンチマークテストを行ったところ、総合では153万4498であった。CPUは37万1263、GPUは56万8281、MEMは32万352、UXは2万7462というスコアであった。

 「Geekbench 6」では、4回測定した平均値で、CPUシングルコアが2144、CPUマルチコアが5588.3、GPUで1万2247であった。これは、シングルコアでSamsung Galaxy S24 Plusの2091より、マルチコアでSamsung Galaxy S23 Plusの5064より、GPUではSamsung Galaxy Z Fold4の5573より高いスコアだ。

 「3DMark」の「Wild Life Extreme」でも計測した。これは、2020年に発表された「Wild Life」の3倍の負荷をかけたベンチマークテストで、5回計測した平均値は総合スコアで3388.8、平均フレームレートは20.41FPSであった。

 次に、ゲームの快適性も検証したい。

 最初にプレイしたのはmiHoYoの「ゼンレスゾーンゼロ」だ。同作品は、コントローラーによるプレイにネイティブで対応している。ゲーム起動後の設定で「UIレイアウト」をコントローラーに変更するだけで快適に遊べる。

 他の多くのスマートフォンとはアスペクト比が異なるものの、縦長に表示されるということはない。また、419ppiと比較的高い画素密度のおかげで、画質も良好だ

 ただし、ゼンレスゾーンゼロではフレーバーテキストが多く、近くを見づらい年頃の筆者では、文字を読むのが厳しいと感じた。

 「Stardew Valley」のようなドット絵を駆使したゲームなどは相性が良い。表示されるテキストが少ないうえ、比較的大きめだからだ。

●外部ディスプレイにも出力できる!

 性能の高さを生かしきれないのはもったいない。そこで、懐かしさを覚える年代の人には、外部ディスプレイの利用をおすすめしたい。AYANEO Pocket DMGのUSB Type-C端子は画面出力に対応しているので、ケーブル一本で外部ディスプレイに接続できる。本体が小さいので、コントローラーのように使えるだろう。

 Steam Linkを利用して、Steam Deckをリモートでプレイすることも試してみた。

 いったん接続してしまえば、画面の小ささ以外に何の問題もなくSteam Deckライブラリにあるゲームをリモートで遊ぶことができた。

 ズボンの尻ポケットに入るサイズで持ち運びしやすく、懐かしさからレトロゲームを遊びたくなるなど、持っているだけで楽しくなるAYANEO Pocket DMGだが、操作性であえて難点を挙げるとすれば、寝転んだ状態でのゲームプレイが難しいということだろう。

 ほとんどのポータブルゲーム機は横長で、コントローラーのグリップがしっかりしているだけでなく、母指球(手のひら側の親指の付け根)で本体を支えるだけのスペースがある。しかし本機ではそれが難しい。

 プレイヤーがわずかでも下を向いた状態(画面が上向き)で操作している間は中指から小指で本体を支えられるが、少しでも上を向いてプレイしようとすると途端に安定感が失われて操作性が損なわれてしまう。AYANEO Pocket DMGが顔面を直撃する可能性も出てくる。

 小さいからと、どこへでも持ち運びたくなるデバイスではあるが、ソファやベッドで寝転びながらのプレイには十分注意したい。

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