待望のNVIDIA次世代ハイエンドGPU搭載グラフィックスカードの販売開始。自作PC界隈なら盛り上がることが確実なトピックスが、深刻なトラブルの火種に変わってしまった。
●リアル店舗での販売は軒並み回避 GeForce RTX 5090/5080カード
1月30日午後11時の販売解禁時刻に合わせ、パソコン工房 秋葉原パーツ館が先着順による販売予約を行ったところ、予想を超える行列が作られ、最終的に一部の人が近隣の幼稚園の柵をまたぐなどの事態が発生した。同店も事前に行列を作る時間や近隣に迷惑をかけないルールなどを提示していたものの、現場を収拾できず、販売イベントはGeForce RTX 5080搭載カードの抽選前に中止している。
この騒動の影響により、1月31日の通常営業時間からの販売を予定していたパソコンSHOPアークやドスパラ秋葉原本店などの周辺ショップも、当該カードの店舗販売を一旦取りやめる事態となった。
各ショップの反応はさまざまながら、一店舗を批判する声は少なく、むしろ業界全体の危機を叫ぶ声が多かったのが印象的だった。
ショップAは「先着順で並ばせるのはリスクが高すぎたとは思いますが、そもそもRTX 5090/5080カードが周辺国も含めてもっと普通に手に入る状況だったら、ここまでの騒動にはならなかったわけで……。取り扱う商品の怖さを改めて感じました」と語る。
また、ショップBは「2023年の年末頃でしたが、米国が中国に(前世代最上位の)RTX 4090搭載カードの輸出規制を加えたことがありました。そのときも中国で払底したRTX 4090を日本で手に入れるという動きが加熱して大変でしたが、今回はその強化版がGPUの販売開始時と重なったのが大きかったと思います。普通の自作PCユーザーとは違う思惑、違うかいわい、違うニーズの人達が集結したわけで、従来の牧歌的なルールはなかなか守られない。かといって属性で切り分けるようなことはできませんし、本当に苦しいです」と、かつてもあった政治バランスの兼ね合いを重ねて言及する。
そうしたリスクが今後も高まるなら、今回も多くのショップが回避策として採用したオンラインでの抽選販売方式を採用するのが無難と思われる。
しかし、そこにジレンマを抱えているとショップCは吐露する。「特価イベントもそうですが、リアル店舗だから味わえる体験もあります。リスクを嫌って何でもオンラインで済ませてしまうのは、我々の業態を自滅させかねない。かといって近隣の方々にも、自作PCを楽しみたい多くの方々にも迷惑をかけたくない。ここ数年ずっと悩んでいます」と語る。
各ショップ、引いては秋葉原のPCパーツショップがどんなスタンスを取っていくのか。GeForce RTX 5090/5080カードの再入荷か、今後登場予定の下位GPU搭載カードの販売機会に見えてくるものがあるだろう。
●枯渇するRTX 5090/5080 それでもBTOなら入手性がグンと上がる
1月31日夕方時点において、秋葉原電気街でGeForce RTX 5090/5080カード単体を入手するのは、ほぼ絶望的な状況といえる。ただしBTOモデルであれば、搭載マシンが比較的早め、かつ確実に手に入るかもしれない。
BTOマシンを取り扱うPCパーツショップを見て回ったところ、GeForce RTX 5080カードを採用するモデルなら比較的在庫が残っているケースが多かった。
ただし、即納となるとやはり厳しそうだ。TSUKUMO eX.は「現在の在庫状況をみると、31日のうちに在庫切れとなる見込みが高いですね」という。
パソコンSHOPアークも「単品販売用のカードとBTO用の入荷数を比べると、やっぱりBTO用の方が多いですから。それでもRTX 5090カードはまだ供給量が圧倒的に足りませんし、RTX 5080も安定するのはもうちょっと時間がかかりそうです」と話していた。