ASUS JAPANから登場した「ZenBook SORA UX3407RA」シリーズは、約980gの超軽量ボディーに14型の有機ELディスプレイ、QualcommのSoC「Snapdragon X Elite」(X1E-78-100)を搭載した薄型軽量のモバイルPCだ。
同時に、重量が約899gでSoCにSnapdragon X(X1-26-100)を採用した下位の「Zenbook SORA UX3407QA」シリーズも、UX3407RAシリーズと同じ2月5日から発売される。いずれもMicrosoftが「新しいAI PC」として提唱する「Copilot+ PC」の要件も満たす。
このZenBook SORAは、グローバルでは「ZenBook A14」シリーズとして展開されるが、「日本向けに調査および開発がされた特別モデル」ということで、日本市場でのみ製品名を変更して発表されている。
今回は発売前の試作機(UX3407RA-HA32570GR)を評価機として入手したので、パフォーマンスやバッテリー駆動時間を検証していこう。
●QualcommのSnapdragon X Elite(X1E-78-100)を採用
システムの中核であるSoCとして、QualcommのSnapdragon X Elite(X1E-78-100)を搭載する。Snapdragon X Eliteの4種類のSKUのうち一番下のグレードにあたる。これは世界初のCopilot+ PCの1つである「Vivobook S 15 S5507QA」と共通だ。
Qualcommが独自に開発したArmアーキテクチャのCPUコア「Oryon(オライオン)」を12基搭載し、最大周波数が3.4GHz、キャッシュは42MBとなる。さらに45TOPSのAIパフォーマンスを持つ「Hexagon NPU」、3.8GFLOPSの浮動小数点演算パフォーマンスを持つDirectX 12対応の「Adreno GPU(Adreno-741)」を統合している。
Snapdragon X Eliteは、ボディーの熱設計等によって実際に発揮できるパフォーマンスが変わってくるが、本機は約980gという超軽量ボディーでありながらデュアルファンを備えた冷却機構を搭載しており、45WのCPUパフォーマンスが発揮できる設計となっているという。
メモリはLPDDR5X-8448をオンボードで32GB実装する。ストレージはPCI Express 4.0 x4対応のSSDを採用している。評価機のSSD容量は512GBだが、1TBのモデルも用意される。
●プレミアムな質感が際立つ超軽量ボディー
ボディーサイズは、約310.7(幅)×213.9(奥行き)×13.4~15.9(厚さ)mm、重量は約980gと薄型軽量だ。
このボディーは、セラミックとアルミニウムを融合させたASUS独自の素材「Ceraluminum(セラルミナム)」を採用する。硬度が高く、耐摩耗性や耐食性にも優れ、美しい外観を長く保つことができるという。
さらに100%リサイクル可能で、サステナビリティーの観点からも優れる。耐久性については、米軍の調達基準である「MIL-STD-810H」に準拠したテストを開発段階でクリアしている裏付けもある。
実機は、見た目からして洗練されたオーラが漂う。実際に触れてみると伝わってくるのは、絶妙な手触りの良さだ。手になじむソフトな感触でありながら、ベトつきがなくサラッとしている。いつまでも触っていたくなるような、抜群の上質感が所有欲を刺激してくる。剛性感も高く、皮脂も付きにくいため、気兼ねなく持ち運びできる安心感もある。
●公称約29時間のロングバッテリーを実現
本機は1kgを切る軽量ボディーでありながら、70Whと大容量のバッテリーを内蔵している。公称の駆動時間は、同社の独自基準で約29時間と長い。条件を見ると、画面輝度150ニトで通信機能が無効、フルHDの動画再生などとなっており、インターネット接続が前提の実使用時間は公称値より短くなる可能性が高いが、それは後ほど検証しよう。
ちなみに、JEITA基準での駆動時間は試用時点では「測定中」だった。
付属のACアダプターは、USB Power Delivery(PD)対応で最大出力は90Wだ。本体左側面にある2基のUSB Type-C端子(USB4対応)はどちらも充電端子として利用できる。
●Wi-Fi 7の無線LANとUSB4に対応
通信機能は、Wi-Fi 7対応の無線LANとBluetooth 5.4を標準で装備している。端子類も2基のUSB4対応USB Type-Cに加え、USB 3.2 Gen 2 Standard-A、HDMI出力、ヘッドセット(ヘッドフォン兼用)端子など、実用十分な内容だ。
その一方で、ビジネス向けPCの多くが装備するセキュリティロック・スロット(盗難防止用ワイヤー)は省かれている。
ディスプレイ上部には約207万画素のWebカメラ、顔認証用IRカメラ、アレイマイクを内蔵する。Snapdragon X Eliteが統合するNPUを活用したOS(Arm版Windows 11 Home)標準の高度なカメラ効果(Windows スタジオ エフェクト)や、AIノイズキャンセリング機能を利用できる。
●鮮やかな有機ELディスプレイと打ちやすいキーボードを装備
本機が採用するディスプレイは14型の有機ELで、画面解像度は1920×1200ピクセル(WUXGA/アスペクト比16:10)となる。色域はDCI-P3 100%に対応しており、素子自体が発光し、緻密な制御ができる有機ELディスプレイならではの黒の締まった鮮やかな映像、優れた色再現性、階調表現を楽しめる。
キーボードには、Copilotキーが用意されている。実測のキーピッチは約19(横)×18(縦)mmとゆとりがあり、スイッチの感触も良好だ。青色LEDのバックライトも内蔵する。
●薄型軽量でもパワフルなパフォーマンス
ここからは、ベンチマークテストの結果を掲載する。基本的にMyASUSユーティリティーで選べるファンモードは「フルスピード」、Windows 11の電源設定は「最適なパフォーマンス」で計測している。
Snapdragon X Elite搭載機は想定している熱設計の幅が広いため、製品によって実際に発揮できるパフォーマンスが異なる傾向が強いが、本機はX1E-78-100搭載機の中でもトップクラスだ。
CINEBENCH 2024(最低実行時間10分)では、SoCが同じでより大きなフォームファクター(15型、約1.42kg)のVivobook S 15 S5507QAとほぼ同等のスコアだ。マルチスレッド性能のテストではCore Ultra 7 258V搭載の「Vivobook S 14 S5406SA」を圧倒し、Ryzen AI 9 HX 370を備えた「ZenBook S 16 UM5606WA」のスコアも上回っている。
その他のテストでも、Vivobook S 15 S5507QAと同じかそれ以上のスコアをマークしており、Snapdragon X Elite(X1E-78-100)のポテンシャルをフルに発揮できていることが分かる。
その分、フルスピードモードでの動作音はかなり高いが、ファンの動作音を抑えるスタンダードモードやウィスパーモードが用意されているので、使い分ければ良いだろう。
PCMark 10 Applications Battery Lifeで計測したバッテリー駆動時間は20時間25分(残量100%から2%まで)だった。ASUS独自基準による公称値(約29時間)には及ばないものの、十分に長い駆動時間を記録した。
●Arm版Copilot+ PCの大本命か
ZenBook SORA UX3407の魅力は、1kgを切る超軽量なボディーだ。既存のSnapdragon X Eliteを搭載したCopilot+ PCは、1.3~1.5kgくらいの重量でモバイル向けとしては少し重めの製品が多かっただけに、ようやく日本のモバイルPC市場にフィットする製品が登場してきたという感想だ。
既にSnapdragon Xシリーズを採用したCopilot+ PCを複数日本市場へ投入しているASUS JAPANの製品だけに、本機の完成度も非常に高い。x64版CPUを搭載するPCに比べてユーティリティーの機能が乏しいということもなく、Snapdragon X Eliteの高いパフォーマンスもバッテリー効率もしっかりと生かすことができている。Ceraluminum(セラルミナム)素材の採用による見た目の美しさや耐摩耗性、上質感も大きな付加価値だろう。
本機の直販価格は、Microsoft 365 Basic(1年間使用権)+Office Home & Business 2024(デジタルアタッチ版)が付属する関係で26万9800円だが、同アプリを省いたモデル(UX3407RA-HA32570BEおよびUX3407RA-HA32570GR)なら21万4800円、さらにSSDの容量を1TBとしたモデル(UX3407RA-HA32170BEおよびUX3407RA-HA32170GR)なら22万4800円だ。
ちなみに、下位となるZenBook SORA UX3407QAシリーズの直販価格は、16万1820円~18万8820円とさらに安い。
加えて、2月5日から3月31日の期間限定で、Zenbook SORA UX3407シリーズを購入して応募すると1万円相当(学生は2万円相当)の選べるデジタルギフトを必ずもらえるキャンペーンも開催される(詳細はキャンペーンサイトをチェックしてほしい)。
Armアーキテクチャ/Arm版Windows 11搭載機ゆえの互換性の課題には留意が必要だが、それを承知で選択するユーザー、特に持ち運んで使いたいユーザーにとっては、大本命といえる存在だろう。