ウエスタンデジタルが1月31日、PCI Express 4.0接続の新型M.2 SSD「WD_BLACK SN7100」を発売した。容量は500GB/1TB/2TB/4TBの4種類から選択可能で、直販価格は500GBモデルが9020円、1TBモデルが1万2540円、2万2880円となる(4TBモデルは後日発売予定)。
WD_BLACKは主にゲーミングPCでの利用を想定したストレージ製品シリーズで、今回取り上げるWD_BLACK SN7100は、Type2280(幅22×長さ80mm)形状のM.2 SSDの最新モデルという位置付けだ。ウエスタンデジタルから本製品の2TBを借りたので、その特徴と実力をチェックしていく。
●電力効率は最大2倍 ただし「DRAMレス」
WD_BLACK SN7100は、「ますますファイルサイズが大きくなる昨今の高精細で没入感あふれるゲームを最大限に楽しむのに最適」とうたうM.2 SSDで、ノートPCやポータブルゲーミングPCのM.2 SSDの換装を視野に入れた製品となる。公称スペックは以下の通りだ。
・接続インタフェース:PCI Express 4.0 x4(PCI Express 2.0/3.0と後方互換)
・NANDモジュール:Western Digital BiCS8 TLC 3D NAND
・読み書きパフォーマンス
・500GBモデル
・シーケンシャルリード:最大毎秒6800MB
・シーケンシャルライト:最大毎秒5800MB
・耐久性:300TBW
1TBモデル/2TBモデル
・シーケンシャルリード:最大毎秒7250MB
・シーケンシャルライト:最大毎秒6900MB
・耐久性:600TBW(1TBモデル)/1200TBW(2TBモデル)
保証期間:5年間(5年以内に耐久性上限を超えた場合はその時点)
消費電力については、1TBモデル同士の比較において2022年2月発売の「WD_BLACK SN770」の最大半分となっている。ノートPCやポータブルゲーミングPCで使うことを考えると、ある意味でありがたい。
読み書きパフォーマンスは500GBモデルとそれ以外で差が出ているが、いずれもPCI Express 4.0 x4の性能をしっかりと引き出せている。ただし、本製品はDRAMレス設計となっていることに注意を要する。
SSDの中には、読み書きキャッシュとしてDRAM(メモリ)を搭載していることがある。DRAMを搭載すると読み書きのパフォーマンスを一層向上しやすくなるのだが、DRAMがある分だけ価格は上昇し、消費電力も増えてしまう。
そこで登場するのがDRAMレスのSSDだ。DRAMを非搭載とすることで価格と消費電力を抑えることができる。DRAMがない分だけ読み書きパフォーマンスは低下してしまいがちだが、SSDの一部領域をキャッシュ代わりに使う技術を搭載したり、ホストデバイス(PC)のメモリの一部をキャッシュとして利用する「HBM(Host Memory Buffer)」を利用したりすることで読み書き速度を向上している。
本製品は、Western Digital(WD)のハイブリッドSLCキャッシュ技術「nCache 4.0」によってSSDの一部領域をキャッシュとして利用する。そのため、理論的にはストレージ容量を使い切るとパフォーマンスが大幅に低下してしまう可能性が高い。
もっとも、特にOS(システム)の起動に使うストレージの場合、容量をいっぱいいっぱいまで使うことはめったにないと思われる。そこまで気にしなくてもよいだろう。
●どんな環境にも組み込みやすい片面実装 モジュールには意外なロゴが
WD_BLACK SN7100は、どの容量もいわゆる「片面実装」となっている。NANDやコントローラーチップは全て表面に集中実装されており、背面に部品は一切ない。そのため、M.2スロットとのクリアランスが狭いPCでも組み込みやすい。
今回レビューしている2TBモデルの場合、NANDチップは1枚構成となる。2TBというとそこそこに大容量だと思うのだが、1チップで収まるのは驚きだ。
片面実装だけなので、モジュールの裏面には部品が実装されていない……のだが、本製品ではなぜか「SanDisk」のロゴが印字されている。「あれ、WDブランドの製品なのに、なぜSanDiskロゴが……?」と、若干混乱する。
SanDiskは元々、フラッシュメモリ関連製品を手掛ける独立した企業だったが、2016年5月付でWDに買収された。米国におけるSanDiskは法人としては存続したものの、買収以降の製品はWDを通して販売されることになった。
日本ではWDとSanDiskがそれぞれ「ウエスタンデジタルジャパン」「サンディスク」という現地法人を設立し、買収後もしばらく併存していたが、2021年1月1日付でサンディスクを「ウエスタンデジタル」と商号変更した上で法人を一本化している(※1)。
(※1)商号変更と同時に法人形式を「株式会社」から「合同会社」に改めている。なお、WDの日本法人としてはHDDの開発/製造を手掛ける「ウエスタンデジタルテクノロジーズ」(旧日立グローバルストレージテクノロジーズ→HGST)も存在する
本製品の基板にWDロゴではなくSanDiskロゴが刻印されているのは、WDがSanDisk(フラッシュメモリ関連事業)を再度分離する動きと関連しているのだろうか……?
日本でも直販ストアが「HDD製品(WDブランドサイト上)」と「フラッシュメモリ製品(SanDiskブランドサイト上)」に分かれている。米国では、SanDiskブランドのリニューアルが発表されており、2月11日(米国太平洋時間)には企業としてのSandiskの投資家説明会も開催される予定だ。
ともあれ、今回の新製品はWDからSanDisk改め「Sandisk」が再分離する前の“過渡期”ならではの製品となるかもしれない。ただし、現時点でWD(やウエスタンデジタル)からSandisk分離後の製品名に関する案内はない。WD_BLACKのようにHDDとフラッシュメモリに“またがる”ブランドもあるため、簡単に整理できないような気もするが、どうなるか……。
●パフォーマンスはどう?
WD_BLACK SN7100の紹介が一通り終わったところで、2TBモデルのパフォーマンスをベンチマークテストアプリ「CrystalDiskMark 8.0.6」を使ってチェックしてみよう。
今回は、2022年に発売された「ThinkPad X13 Gen 3」(Core i7-1280P/32GBメモリ)に本製品を組み込んだ上で、組み込み前に作っておいたリカバリーイメージ付きの「回復ドライブ」でWindows 11 Pro(バージョン24H2)を改めて導入してからテストを行っている。
CrystalDiskMark 8.0.6の計測モードは「NVMe SSD」で、それ以外の設定は標準通りとした場合の主な結果は以下の通りだ。
・シーケンシャル(SEQ1M Q8T1)
・読み出し:毎秒6849.38MB
・書き込み:毎秒6330.31MB
ランダム(RND4K Q32T16)
・読み出し:797.17MB
・書き込み:340.56MB
一部のSSDは、ハードウェアベースのデータ圧縮機能を備えていることがあり、データの内容によっては実際よりも“高速に”読み書きできる。そのため、データ圧縮が効かないようにすべく、テストデータを全て「0x00(0 Fill)」としたテストも実施した。主な結果は以下の通りだ。
・シーケンシャル(SEQ1M Q8T1)
・読み出し:毎秒6895.99MB
・書き込み:毎秒6079.25MB
ランダム(RND4K Q32T16)
・読み出し:781.88MB
・書き込み:340.69MB
「0x00」のオン/オフでどちらも、結果は大差なかった。シーケンシャルの読み出しについては公称スペックの95%の性能、書き込みは92%の性能となった。
想定よりも若干低いものの、以前の「WD BLUE SN5000」(1TBモデル)のレビューと見比べれば分かる通り、いずれもPCI Express 4.0 x4接続のSSDとしては十分に高速といえる。放熱をもっとしっかりとすれば、公称の性能に近づくと思われるが、時間の都合で追加の検証までは行えなかった。
●「手頃で速いSSD」が欲しい人にお勧め
本製品は、DRAMレスながらもPCI Express 4.0 x4の限界に近い読み書き速度を実現しているという点が“キモ”だ。今回のテストではピーク時のモジュール温度は50度台前半(S.M.A.R.T.による計測時)だった。PCI Express 4.0 x4対応のSSDが出始めた頃を思い出しつつ、「結構スピード出るのに、そんなに熱くならないんだな……」と感慨にふけってしまった。
ノートPCだけでなくデスクトップPCでも、特にOS起動用のストレージとしてWD_BLACK SN7100は有力な選択肢となりそうだ。