テレ東系、深夜の「ドラマ24」(金曜深夜0・12)といえば、「孤独のグルメ」シリーズを始め、数々のヒット作を生み出してきた枠。最新作「家政婦クロミは腐った家族を許さない」で主演を務める関水渚は、優秀ながらどこか不気味で、自身の理想とする「理想の家族」を作るためには、いかなる手段も辞さない家政婦のクロミこと黒見白華をホラーテイスト満載で演じている。ひと癖もふた癖もあるキャラクターに挑む心境を聞いた。
――クロミをどんな人物だと捉えていますか?
「クロミは自分のことをものすごく高貴で、正しい人間だということを一番大切にしている気がしました。だから、『お仕えするご家族が正しくなくてかわいそうだから、正しい私が正してあげましょう、導いて差し上げましょう』というマインドでいると思います。
台本を読んで、誰の人生にとっても“育てられ方”って大きな影響を及ぼすものだと思ったんです。灰原家の子どもたちもそうですが、クロミ自身も育てられた人の影響を強く受けているので、家族のあり方みたいなものを考えさせられました」
――クロミの思考回路や行動で、さすがに理解できないと思ったところはありましたか?
「演じる役について、理解できない状態で演じるのは避けたいと思っています。だから理解できるまで台本を読み込むようにして、ときには周りの方に意見を求めることもあります。クロミに対して、最初から共感できたわけではないですけど、台本を読むときに『この場面でこの言動は、こういう気持ちからではないか』と想像して、クロミの気持ちに寄り添うことを意識しました」
――クロミを演じる上での面白みや、反対に難しいと思った部分は?
「まず、キャラクター性がすごく強い。家政婦って、家族の中でも浮いている存在じゃないですか。その家にいるのに、家族ではない。『どんなキャラクターにしましょうか?』となったとき、監督からとにかくゆっくりセリフを言ってほしい、とのリクエストがありました。灰原家の人たちがどれだけ速いスピードでセリフを言っても、引っ張られないでほしい、と。
実際、撮影が始まると、最初はゆっくりと話していても、どうしても引っ張られちゃうんですよね。そうならないように努めるのはちょっと大変でした。
クロミの特技というか、とっさに出まかせが言えるのはすごいと思っています(笑)。人を困惑させるようなことや、 自分のしてほしいように相手を導くような発言が、慎重に言葉を選びながら、ポンポンと出てくるんです。『こんなことが実際にできたらすごいだろうな』と思いながらセリフを言っています」
――ストーリーで面白く感じているところは?
「最初に台本を読んだとき、人間って何歳になっても自分勝手だということをすごく感じたんです。ドラマを見てくれる皆さんが『自分はどうだろう』と顧みるような作品になればいいな、と思っています。灰原家で、奥様(藤原紀香)や旦那様(高橋光臣)が子どもたちに対して、『そんなことをしちゃう?』っていう言動を取るときがあるんですけど、自分ではそれを正しいと思っているんです。そもそもクロミだって破綻しているところがあるし、登場人物の誰もが『ちょっとどうかしている』と思える部分がリアルに描かれているのが、面白いですね」
――公式コメントには、キャストの皆さんと本読みをした段階で「間違いなく面白くなる」と確信を持った、とありました
「藤原さんをはじめ、 灰原家の家族を演じる皆さんが本読みをしたときすでに“家族”だったんです。私が視聴者だとしても、同じ家に暮らす4人家族だと思わせる説得力があって、『このキャストの皆さんと一緒なら、絶対大丈夫だ』と思えました」
――“理想の家族”に対して異常なほどの執着を見せるクロミにとって、家族はどういう存在だと思いますか?
「そのことについて、クロミは自分でもよく分からなくなっているような気がします。灰原家で『理想の家族を作り上げる』という目的達成のため、突き進むのかといえば、そうじゃない局面があるんです。そこにはちゃんと理由がありますが、クロミにも人間らしい一面があり、これからどう行動するのか、見ていただきたいです」
――では、関水さん自身が抱く理想の家族像とは?
「それがないんです。ないと言っても、多分私は恵まれている方だと思います。両親は普通に仲が良いんです。“普通”がどれくらいの状況を指すのか、よく分からないですけど(笑)。でも、自分の両親や家庭環境のことを『これが当たり前』と思えて、結婚したらこんな家庭を作りたいと思えるということは、それが私にとって理想の家族像なのかもしれないですね」
――改めて番組の見どこを教えてください
「第1話で、奥様の仕事のパートナー、真希子(しゅはまはるみ)さんを通して、嫉妬心の醜さや、嫉妬心が身を滅ぼすことの恐ろしさを描きました。全編を通して、人間の醜さをいろいろな面から描いていきますので、『自分は大丈夫だろうか』と思いながら、ご覧いただきたいです」
《プロフィール》関水渚
1998年生まれ。神奈川県出身。2015年開催の「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」をきっかけに芸能界入り。24年は「彼女と彼氏の明るい未来」「ブラックガールズトーク」で主演を務め、「伝説の頭 翔」ではアイドルグループ「古くさい街角のスケ番ズ」のエースとして活躍するヒロインの藤谷彩を演じ、グループとして実際にシングル「バッキャロー! LOVE」を発売。