Infoseek 楽天

朝ドラ「虎に翼」山田よね役・土居志央梨ロングインタビュー〈前篇〉「弁護士バッジをつけた時、よねと気持ちがリンクした」

iza(イザ!) 2024年8月23日 12時0分

現在放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」で、伊藤沙莉演じる主人公の学友、山田よね役を好演している女優の土居志央梨。「おちょやん」(2020年度後期放送)以来となる2度目の朝ドラで抜群の存在感を示し、多くの視聴者を楽しませている。

物語は、第21週「貞女は二夫に見えず?」(第101~105回)まで進み、主人公の佐田寅子(伊藤)が、「永遠を誓わない愛」を試している恋人、星航一(岡田将生)との婚姻関係に進むかどうか葛藤するなかで、男女別姓や同性婚といった多様な関係性について思いをめぐらせた末に、正式な結婚を決意。家族やよねたちから祝福を受ける様子が描かれた。

地方の貧しい農家に生まれたよねは、女郎屋に売られそうになって女であることをやめ、故郷を捨てて上京。カフェーのボーイとして働きながら大学に通い、弁護士を目指して法律を学んだ苦労人で、法的知識、弱者救済の理想と資質は十分に持っていたが、男装を貫き、まったく愛想がなく、差別的な扱いには徹底的に抗う姿勢から、高等試験(現在の司法試験)の口述試験で落とされ、なかなか弁護士資格をとれないでいた。戦後、街で再会した学友、轟太一(戸塚純貴)を誘って共同で法律事務所を設立。ボランティアで戦災孤児の保護などにも携わりながら、ついに弁護士資格を取得した。そのストイックな性格から、寅子の言動にダメ出しすることが多く、何かと頼ってくる寅子を煩わしがって冷淡にあしらうが、拒むわけではない不思議な間柄となっている。また、土居は同作放送中にこれまで2度、情報番組「あさイチ」のスタジオゲストとして登場。よねのイメージとは真逆の柔らかい物腰と屈託ない笑顔にギャップ萌えする朝ドラファンが続出している。

フェミニンな役が多かった自分にできるだろうかと不安に

――出演オファーを受けた際の感想、周囲の人の反応を

「決まったのは、伊藤沙莉ちゃんの主演が発表された後だったと思うんですが、そのニュースを見て、『絶対に見よう』と決めていたドラマだったので、台本をもらうまでは『本当なのかな?』と信じられない期間が長かったです。本当にうれしくて、家族は本当に喜んでくれましたし、寅子のお兄さん、猪爪直道役で(同じ大学で一緒に演劇をしていた)上川周作と共演するとことになったので、大学の仲間もすごく喜んでくれました」

――朝ドラ出演は「おちょやん」についで2作目ですが、「おちょやん」と今作両方でチーフ演出を務めた梛川善郎監督からは、起用の理由について何かお話がありましたか? また梛川監督の演出についての感想もお聞かせください

「聞いてみたら、『ちょっと外側に立ってみんなを冷静に見ている感じがよねだと思った』と言ってくださって、意外でした。梛川さんは策士というか、役者の状態によって細かく演出を使い分ける方で、自分が演じてみせてそのテンション感みたいなのを伝えてくれたり、すごく小さな声で感情一つひとつ整理して伝えてくれる時もあれば、何も言わずに見ているだけの時もあって、私だけでなく、すべての役者さんに対して使い分けているので、とんでもないキャパだと思います」

――「あさイチ」にゲスト出演されている時の土居さんは、優しそうな柔らかいイメージで、よねとは全然印象が違いますが、似ているところ、違うところは?

「よねと似ているのは、周りの人をけっこう観察するところでしょうか。それ以外は似ていないかもしれないですね」

――男装の女性という役柄についての第一印象は?

「台本が届く前に男装の女性だとは聞いていて、一体どういう人なんだろうとすごく興味が湧いて。今まではフェミニンな感じの役を演じる機会が多かったので、果たして自分にできるんだろうかという不安はありました」

――その不安を打ち消すような取り組みは何かしましたか?

「まず台本を読んで、よねにはつらい過去があって、それを頑張って乗り越えようとしている人だというところで、彼女のことがよく理解できましたし、魅力的な人だと思えたので、そこからはよねとの距離がぐっと縮まったというか、吉田恵里香さんが描く台本の力と、あとは髪を切ったことが大きかったかなと思います」

――土居さんの公式インスタグラムなどではずっとロングヘアで、今作の出演が決まってショートにしたと思うんですが、髪を切ると決めた時の心境は?

「髪はずっと切りたかったんですよ。ショートヘアの役が来た時のために伸ばしていたので、むしろありがとうございますというか、嬉々として切りました」

よねを演じている期間は、私服でもスカート履かず「役が染みついた」

――実際に男装姿になってみて、周囲の反響とご自身の感想を

「最初の衣装合わせの時はまだ髪を切っていなかったので、ショートヘアのカツラでスーツを合わせたんですが、その時のカツラがあまりにも似合っていなくて(笑)。『大丈夫かな? これで1年間やっていけるかな?』と思いました。実際に髪を切ってからは、自分でもすごくしっくりきましたし、今はスーツ姿の自分の方が見慣れている感じで、周囲からもかっこいいとか似合ってると言ってもらえるので、自信になります」

――どんな感じのカツラでしたか?

「写真でお見せしたいぐらいで、全部下した前髪を無理やりセットしてる風にあげて、ピンで止めたんですが、それがコントみたいになっちゃってて(笑)、ちょっと不安になりましたね」

――ふだんのかわいらしい感じと違って、低い声で演じられているのが印象的ですが、声のトーンや演じ方でどんなことに気をつけましたか?

「意志の宿った声というか、力強い声がよねに似合うと思っていたので、家で1人で喋ったりしながら探ったり、よねはずっとスーツを着て生活している人なので、スーツのポケットに手を入れたりするのも、とってつけたようにならず、慣れた仕草に見えるようにということは意識しました」

――よねの低い声を出す時の切り替えは難しいものですか?

「新潟編の撮影中、(自身の出番の)撮影が空いた期間があって、久しぶりの撮影となった時はチューニングがよくわからなくなって、低すぎて悪魔みたいな声になっちゃったりしました。そういう時は、監督たちに意見を聞いたり沙莉ちゃんたちに『今の大丈夫だったかな?』とか相談しながらやっています」

――普段の生活のなかで、役の立ち居振る舞いが出たりすることも?

「よねを演じている期間は、たぶん私服でもスカートを1回も履いてないんじゃないかな。この現場に来る時はあまりそういう(スカートを履きたい)気持ちにならなくて。(役が)染みついちゃってるんだろうと思います」

寅子へのきつい言葉は「愛情表現」

――よねが寅子にダメ出しする場面が多いですが、脚本を担当されている吉田恵里香さんの気持ちをよねが代弁しているように感じられました。よねに託した吉田さんの思いを、どういうところに強く感じましたか?

「よねがトラちゃんや周りの女子部のみんなと明らかに違うのは、恵まれない生い立ち、持たざるものであるというところで、そういう役割をよねは担っていると思っていて、持たざるものの逆襲というか、懸命に時代を這い上がっていく様子っていうのをよねは常に持っています。トラちゃんに対してきついことをたくさん言いますが、私はよねの愛情表現だと思って演じています。学生時代からよねがずっと『うっとうしい』言っていて、構わずにトラちゃんが『よねさん、よねさん』って来る様子が2人の仲良しの証拠だと思っていて、戦後、再会してからも基本的なところは変わっていないと感じています」

――「うるさい、黙れ!」というセリフが繰り返し出てきます。その時その時で言葉の裏にある気持ちは少しずつ違うと思うのですが、同じセリフでどんな風に演じ分けていましたか?

「『うるさい』とか『アホか』というようなセリフを読み解いていくと、結局よねがうれしい時、照れている時、図星を刺された時に言っているので、その時々のよねの焦り具合というか、動揺のレベルを考えながら演じています」

――今作にはいろんな立場を象徴する女性たちが出てきます。そんななかの1人であるよねに託された役割をどのように感じましたか?

「よねは自分の生い立ちもあって、恵まれない立場にいる人を救いたいという信念は最初からずっと一貫していて、そこがブレないように気をつけました。劇中の時代は、どうしても女性が弱い立場にいるので、結果として女性の味方みたいにはなっていますが、戦災孤児を保護する活動をしていたことからもわかるように、弱い立場の人の絶対的な味方であるという点に意識を置いていました」

――第20週でよねがいよいよ弁護士資格を取りました。土居さんは公式ガイドブックのインタビューで、『よねには弁護士になってほしい。絶対法廷に立ちたいです』とおっしゃっていましたが、この週の台本を初めて読まれた時の印象と実際演じた時の心境、どう演じたかを聞かせてください

「台本を読んだ時はもちろんうれしかったのですが、一番グッときたのは第20週からの衣装合わせで着たスーツに弁護士バッジをつけてもらった時、ちょっと泣きそうになるぐらい、何十年越しの夢が叶ったというか『こんな気持ちになるんだ』と思ってすごくうれしくて。よねと気持ちがリンクした感じがしました。法律事務所の名前で、山田と轟、どちらを先にするかをじゃんけんで決めるシーンがありましたが、私が全然勝てなくて7回戦ぐらい、本当に2人とも超白熱してじゃんけんしてました(笑)」(つづく)

この記事の関連ニュース