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朝ドラ「虎に翼」“佐田寅子”伊藤沙莉インタビュー 第12~14週を振り返り「なぜ穂高にここまで怒るんだろう?と悩みました」

iza(イザ!) 2024年7月5日 12時0分

現在放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」も中盤に差し掛かり、第12週「家に女房なきは火のない炉のごとし?」(第56~60回)で、ついに家庭裁判所が発足。伊藤沙莉演じる主人公、佐田寅子は東京家庭裁判所特例判事補兼最高裁判所家庭局事任命にされ、第14週「女房百日 馬二十日?」(第66~70回)にかけて、非行少年の救済や家裁の広報活動、さらには初代最高裁長官の著書の改稿作業も手伝うなど、目覚ましい活躍を見せ、多くの視聴者を楽しませた。一方、多忙を極めたしわ寄せが家事と育児にのしかかり、愛娘の優未との間に不穏な空気が流れたり、また確執のある学友や恩師との関係に悩む様子も描かれた。そんな怒とうの3週間を伊藤本人が回想。印象深いシーンへの思いや撮影現場でのできごとを語った。

――東京家庭裁判所判事補・最高裁判所家庭局事務官としての歩みがスタートして早々に、明律大の同窓である山田よね(土居志央梨)や轟太一(戸塚純貴)と再会しました

「寅子としては、2人と再会できてすごくうれしかったです。それと同時に、失った信頼をどう取り戻していくかという試練もあって。やっぱり彼女は、何においても女子部の存在が軸にありますし、特によねさんは一番の戦友でしたので。だから、来るなと言われても何度も会いに行くんですよね。演じている私ですら、もうやめたら!?と思うくらい。よねさんは彼女のなかで大きな存在ですし、どこかでつながっていると信じているから、寅子は諦めきれないんですよね」

――演じていて印象深かったシーンは?

「戦争孤児たちがたたずんでいる道を歩くシーンはよく覚えています。道男を探している場面だったので止まらずに歩かなければいけなかったのですが、子どもたちがどんな思いでそこにいるんだろうと考えたら、立ち止まらずにはいられなくて。トラちゃんではなく私個人として、通り過ぎることが冷たいと感じてしまったんですよね。でもそれは表面上の優しさで、私自身の甘さだなって。もしこれが現実の世界だったら、立ち止まって何かするよりも、もっと広い視野でこの子たちを助ける解決方法を探らなきゃいけないと思うので。撮影中はそんなことを考えながら、もがいていました」

――第12週の終わりには、母、はる(石田ゆり子)が突然の死を迎えました

「ここは特に、花江(森田望智)のありがたみを感じましたね。一緒に泣いて、母を弔ってくれる親友が家族としていてくれる。それがこんなにありがたいことだったんだと、寅子は母の死をもって実感したんだと思います。撮影では、望智の存在がすごく支えになりました。日記を燃やすシーンでは、炎に日記をくべるお芝居をしなきゃいけないのに、なかなかできなくて。もし私1人だったら、どうなっていたんだろう。望智に感謝です」

――第65回(6月28日放送)では、寅子が歌う「モン・パパ」に合わせて登場人物たちの思いが交錯するシーンもありました

「『きっと家裁で働く私を、夫もほめてくれると思います』と、改めて優三さん(仲野太賀)に思いをはせるんですよね。寅子の心には常に優三さんがいるということを表現できたことも含めて、このシーンには思い入れがあります。第10週の第48回(6月5日放送)で、優三さんの幻影が寅子に『何かに無我夢中になっているときのトラちゃんの顔が大好き』と語りかけるシーンがありましたが、そこからここにつながっている流れがすごく好きなんですよ。優三さん亡き今、彼に対してできることが『何かに一生懸命になること』だとしたら、このとき日々の充実を感じているからこそ、再び優三さんを思い出したというか。そして寅子が歌っているときは、周りにいるみんなが泣きそうになっているんですよね。激動の時代、それぞれに人生があり、いろんな葛藤と戦ってきて今がある。全員がそんな顔をしていて、ぐっときました」

――第69回(7月4日放送)、穂高先生(小林薫)の退任祝賀会でのやり取りも印象的でした。演じていていかがでしたか?

「演じるにあたっては、なぜ寅子は穂高にここまで怒るんだろう?と悩みました。その気持ちを監督に話したら『表現としては怒りかもしれないけれど、ここは寅子から穂高に愛情を伝えるシーン。ここで二人は、ただの仕事相手や師弟関係じゃできないけんかをしている。もはや、ある種の親子げんかであって、これは大いなる愛なんです!』と。そうした視点で脚本を読み返したら、ふに落ちたんです。

きっと寅子は、穂高先生のあいさつを聞いて『今までやってきたことすべてが雨垂れの一滴(ひとしずく)だと言うの? すごいことを成し遂げた先生を尊敬していたのに、そんな後ろ向きなことを言わないでよ!』と感じたんですよね。怒っているときって、根底にあるくやしい気持ちや悲しみ、恥ずかしさなどが怒りとして表れているんだと思うんです。ここでも寅子の声色や温度感は怒りに見えますが、根底にある先生への愛と敬意が怒りとして表れたと捉えていただけたらうれしいです」

――そんなところも寅子らしいですね

「もう最後だからいいや!と見逃がさないのが寅子ですし、それが彼女の愛なんです(笑)。まぁいっか!で、その人との関係性を終わらせたり諦めたりしない。寅子は絶対に、相手に気持ちを届けることを諦めず、かかわり続けていく人なんですよ。かつて懐かしき兄(直道、演:上川周作)が、『思ってることは口にだしていかないとね。うん、その方がいい!』(第15回、4月19日放送)と言っていましたが、寅子もそのマインドを持っているんだなと思いましたね」

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