チャールズ国王(74)が、即位後初となる国会開会式(The State Opening of Parliament)で演説を行った。国王はカミラ王妃とともに貴族院の玉座に座ると、リシ・スナク英首相による来年のアジェンダ(議題)を読み上げた。国会議事堂へ向かう沿道には反王政派がプラカードを掲げて抗議活動をしており、演説後には国王に対してブーイングの声が上がる場面もあった。
現地時間7日、ロンドンのウェストミンスター宮殿(国会議事堂)で、毎年の恒例行事である国会開会式が執り行われた。式典は14世紀後半に確立された王室の伝統儀式であり、君主の演説によって議会の正式な始まりを告げるものだ。
昨年はエリザベス女王の健康状態を考慮し、チャールズ皇太子(当時)が代理で女王の演説を読み上げた。女王が昨年9月に崩御後、即位したチャールズ国王が君主として国会開会式の演説を行うのは、今回が初めてとなる。
国王夫妻は、エリザベス女王即位60周年を記念して作られた馬車「ダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」に乗って国会議事堂に到着した。
この日、沿道では反王政派のデモ隊が集まり、「Not my king(私の国王ではない)」と書いたプラカードを掲げて、抗議活動を行っていた。
議事堂内に入った国王は、頭上に「大英帝国王冠(インペリアル・ステート・クラウン)」を被り、カミラ王妃とともに儀式用のローブを纏って貴族院の玉座に向かって歩いた。白いドレスを着た王妃の頭上には、「ジョージ4世のステート・ダイアデム(王冠)」が輝いていた。
チャールズ国王夫妻が玉座に着席すると、国王が演説を開始し、最初に「COVIDの流行とウクライナ紛争が、英国にとって長期的な大きな課題を生み出した」と指摘した。
この後、リシ・スナク英首相による来年のアジェンダ(議題)を読み上げた。その中では、警察の権限を強化し「デジタル犯罪」に取り組むためのさらなる法整備を発表した。
国王は「最も重大な犯罪者に対する刑をより厳しくし、被害者の信頼を高めるための法案が提出される」と述べ、こう続けた。
「大臣達は、デジタル犯罪や児童性的虐待といった、新たな犯罪や複雑な犯罪を防止するために、警察や刑事司法制度を強化する法律を導入する。」
政府の計画によると、犯罪者が判決公判への出廷を拒否した場合には、さらに24か月の懲役刑に処されることになるという。
さらに演説では、スナク首相が1月に発表したインフレ率を引き下げるとの公約に言及した。国王は、政府が「そのために行動を取り続ける」と述べ、「支出と借り入れに関する責任ある決断を下し、その目標のためにイングランド銀行を支援する」と付け加えた。
これまでにスナク首相は、喫煙を取り締まるため、イングランドで煙草を購入できる法定年齢を毎年1歳ずつ引き上げることで、“煙のない世代”を作ることを約束していた。
国王はこの公約にも言及し、現在14歳以下の子供達に煙草を売られることがないよう、政府は煙草の販売を制限すると述べた。
また、長年の環境保護運動家である国王は国会議員や下院議員に対し、政府が「将来的な新規油田・ガス田のライセンス取得を支援する」と伝えた。
この法案は、英国のエネルギー安全保障を強化し、不安定な国際エネルギー市場や敵対的な外国政権への依存を減らすことを意図するものだという。
国王はこの計画について「家庭への過度な負担を増やすことなく、2050年までに国がネット・ゼロに移行するのを支援するものだ」と説明した。
続いて演説では、“NHS(国民保健サービス)”の医療スタッフのストライキによって患者の安全を損なうことを防ぐため、「最低限のサービスレベルを維持しながら、政府はNHSにおいて待機者削減計画を実現する」と述べた。
11分間の演説の最後で、国王は次のように語った。
「わが政府はあらゆる面において、未来の世代のために長期的な決断を下すよう努める。わが閣僚は、財政支出や借金を増やすことよりも、インフレや低成長の要因に対処する。わが閣僚は、地域社会と国家の安全を、それらを危険にさらす人々の権利よりも優先する。」
そして「こうした長期的な決断を下すことで、わが政府はこの国を変え、より良い未来を築くだろう」と締めくくった。
国王の演説は1,223語に及び、議会開会式の君主のスピーチとしては2005年以来、最長となった。
演説を終えた国王が国会議事堂を出ると、沿道に集まった反王政派からブーイングの声が上がる場面も見られた。
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画像は『House of Lords 2023年11月7日付Instagram「Their Majesties The King and Queen arrive in the @UKHouseOfLords chamber for The King’s Speech.」』『The Royal Family 2023年11月7日付Instagram「At The King’s first State Opening of Parliament as Sovereign earlier today,」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)
現地時間7日、ロンドンのウェストミンスター宮殿(国会議事堂)で、毎年の恒例行事である国会開会式が執り行われた。式典は14世紀後半に確立された王室の伝統儀式であり、君主の演説によって議会の正式な始まりを告げるものだ。
昨年はエリザベス女王の健康状態を考慮し、チャールズ皇太子(当時)が代理で女王の演説を読み上げた。女王が昨年9月に崩御後、即位したチャールズ国王が君主として国会開会式の演説を行うのは、今回が初めてとなる。
国王夫妻は、エリザベス女王即位60周年を記念して作られた馬車「ダイヤモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」に乗って国会議事堂に到着した。
この日、沿道では反王政派のデモ隊が集まり、「Not my king(私の国王ではない)」と書いたプラカードを掲げて、抗議活動を行っていた。
議事堂内に入った国王は、頭上に「大英帝国王冠(インペリアル・ステート・クラウン)」を被り、カミラ王妃とともに儀式用のローブを纏って貴族院の玉座に向かって歩いた。白いドレスを着た王妃の頭上には、「ジョージ4世のステート・ダイアデム(王冠)」が輝いていた。
チャールズ国王夫妻が玉座に着席すると、国王が演説を開始し、最初に「COVIDの流行とウクライナ紛争が、英国にとって長期的な大きな課題を生み出した」と指摘した。
この後、リシ・スナク英首相による来年のアジェンダ(議題)を読み上げた。その中では、警察の権限を強化し「デジタル犯罪」に取り組むためのさらなる法整備を発表した。
国王は「最も重大な犯罪者に対する刑をより厳しくし、被害者の信頼を高めるための法案が提出される」と述べ、こう続けた。
「大臣達は、デジタル犯罪や児童性的虐待といった、新たな犯罪や複雑な犯罪を防止するために、警察や刑事司法制度を強化する法律を導入する。」
政府の計画によると、犯罪者が判決公判への出廷を拒否した場合には、さらに24か月の懲役刑に処されることになるという。
さらに演説では、スナク首相が1月に発表したインフレ率を引き下げるとの公約に言及した。国王は、政府が「そのために行動を取り続ける」と述べ、「支出と借り入れに関する責任ある決断を下し、その目標のためにイングランド銀行を支援する」と付け加えた。
これまでにスナク首相は、喫煙を取り締まるため、イングランドで煙草を購入できる法定年齢を毎年1歳ずつ引き上げることで、“煙のない世代”を作ることを約束していた。
国王はこの公約にも言及し、現在14歳以下の子供達に煙草を売られることがないよう、政府は煙草の販売を制限すると述べた。
また、長年の環境保護運動家である国王は国会議員や下院議員に対し、政府が「将来的な新規油田・ガス田のライセンス取得を支援する」と伝えた。
この法案は、英国のエネルギー安全保障を強化し、不安定な国際エネルギー市場や敵対的な外国政権への依存を減らすことを意図するものだという。
国王はこの計画について「家庭への過度な負担を増やすことなく、2050年までに国がネット・ゼロに移行するのを支援するものだ」と説明した。
続いて演説では、“NHS(国民保健サービス)”の医療スタッフのストライキによって患者の安全を損なうことを防ぐため、「最低限のサービスレベルを維持しながら、政府はNHSにおいて待機者削減計画を実現する」と述べた。
11分間の演説の最後で、国王は次のように語った。
「わが政府はあらゆる面において、未来の世代のために長期的な決断を下すよう努める。わが閣僚は、財政支出や借金を増やすことよりも、インフレや低成長の要因に対処する。わが閣僚は、地域社会と国家の安全を、それらを危険にさらす人々の権利よりも優先する。」
そして「こうした長期的な決断を下すことで、わが政府はこの国を変え、より良い未来を築くだろう」と締めくくった。
国王の演説は1,223語に及び、議会開会式の君主のスピーチとしては2005年以来、最長となった。
演説を終えた国王が国会議事堂を出ると、沿道に集まった反王政派からブーイングの声が上がる場面も見られた。
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画像は『House of Lords 2023年11月7日付Instagram「Their Majesties The King and Queen arrive in the @UKHouseOfLords chamber for The King’s Speech.」』『The Royal Family 2023年11月7日付Instagram「At The King’s first State Opening of Parliament as Sovereign earlier today,」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)