母親が妊娠中に合成オピオイド「フェンタニル」を使用すると、誕生した赤ちゃんに影響はあるのだろうか? アメリカの小児科医らが今年9月、「胎児性フェンタニル症候群」の可能性を示唆する研究結果を発表し、今月になってYouTubeチャンネル『NBC News』などが写真を公開して衝撃が広がっている。フェンタニルを使用した母親から生まれた赤ちゃんには、共通する特徴的顔貌と身体的異常があるという。
ヘロインの50倍、モルヒネの100倍強いと言われる合成オピオイド「フェンタニル」と、赤ちゃんの先天異常には関連があるのだろうか?
米デラウェア州の「ネマーズ小児病院(Nemours Children’s Hospital、以下NCH)」の遺伝伝カウンセラーと医師のグループは昨夏、地元の新生児集中治療室から「哺乳が困難である」と転院してきた新生児ら数人に、ある“共通点”があることに気付いた。
そして赤ちゃん10人について調査を行い、電子医療ジャーナル『Genetics in Medicine Open』に今年9月、論文を発表した。
著者の一人でNCHの遺伝子診療部長のカレン・W・グリップ医師(Karen W. Gripp)によると、10人は全員が小頭症、低身長で特徴的な顔貌をしており、複数に口蓋裂、足の変形(丸みを帯びた揺り椅子状足底)、生殖器の奇形、短く幅が広い親指、合趾症などが見られたという。
調査の対象となった赤ちゃんはNCHの6人と、カリフォルニア州(2人)、マサチューセッツ州、ロードアイランド州からの4人で、医師らは当初、「スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)」を疑った。SLOSとは、遺伝子の異常によりコレステロールが体内でうまく生成されず、小頭症、特徴的顔貌、知的障害、口蓋裂、合趾症といった全身性の症状が現れる。
しかし遺伝子検査の結果、全員が陰性であることが分かり、胎児性アルコール症候群についても調べた結果、やはり陰性だった。その後のさらなる調査により、10人の母親全員が妊娠中にフェンタニルを使用していたことが分かり、赤ちゃんも誕生時、フェンタニルの陽性反応があったという。
しかしながら、「フェンタニルは非常に強力な合成オピオイドで、胎盤を通過して先天異常を引き起こす」ということは証明されているものの、10人の母親がいつ、どのくらいの量のフェンタニルを使用したのかなどについての情報は乏しいという。また、対象が10人と少ないうえ、母親がフェンタニルではない別の薬物を摂取していたケースもあるそうで、グリップ医師は「フェンタニルが赤ちゃんの全身性の異常を引き起こしたのかどうかについては、さらなる調査が必要」と述べている。
ちなみに10人の患者のうち1人はすでに亡くなっており、他の9人については医師らが現在も経過観察を続けている。最年長は3歳で、患者の多くが物を上手く掴むことができなかったり、歩くことが困難なため、理学療法や作業療法が必要とのことだ。また、発達が遅れていたり、話をすることができない子もいるそうで、このニュースには「子供がかわいそう」「母親は処罰されるべき」「いったいどれだけ薬物を摂取したんだ」「関連はあるだろうね」といった声があがっている。
なおアメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、同国では毎日、フェンタニルのような合成オピオイドの過剰摂取によって150人以上が死亡しているという。
画像は『WPMI 2023年12月8日付「Fentanyl exposure could be the cause of a new syndrome found in babies, ADPH says more research is needed」(WPMI)』『NBC News 2023年12月6日付「New syndrome in newborns exposed to fentanyl possibly found」(Elsevier 2023)』『New York Post 2022年12月14日付「Florida cop treated for overdose after exposure to fentanyl during traffic stop」(Tavares Police Department)』『NY Daily News 2017年11月16日付「Mother dies after cleaning up drugs from son’s suspected overdose」(Facebook)』『Arisley T Pacheco 2023年4月9日付Instagram「NEWS & Education ONLY」』のスクリーンショット、『CBS 17 2020年3月10日公開 YouTube「WATCH: Officer collapses while packing up drug evidence laced with fentanyl」』のサムネイル
(TechinsightJapan編集部 A.C.)
ヘロインの50倍、モルヒネの100倍強いと言われる合成オピオイド「フェンタニル」と、赤ちゃんの先天異常には関連があるのだろうか?
米デラウェア州の「ネマーズ小児病院(Nemours Children’s Hospital、以下NCH)」の遺伝伝カウンセラーと医師のグループは昨夏、地元の新生児集中治療室から「哺乳が困難である」と転院してきた新生児ら数人に、ある“共通点”があることに気付いた。
そして赤ちゃん10人について調査を行い、電子医療ジャーナル『Genetics in Medicine Open』に今年9月、論文を発表した。
著者の一人でNCHの遺伝子診療部長のカレン・W・グリップ医師(Karen W. Gripp)によると、10人は全員が小頭症、低身長で特徴的な顔貌をしており、複数に口蓋裂、足の変形(丸みを帯びた揺り椅子状足底)、生殖器の奇形、短く幅が広い親指、合趾症などが見られたという。
調査の対象となった赤ちゃんはNCHの6人と、カリフォルニア州(2人)、マサチューセッツ州、ロードアイランド州からの4人で、医師らは当初、「スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)」を疑った。SLOSとは、遺伝子の異常によりコレステロールが体内でうまく生成されず、小頭症、特徴的顔貌、知的障害、口蓋裂、合趾症といった全身性の症状が現れる。
しかし遺伝子検査の結果、全員が陰性であることが分かり、胎児性アルコール症候群についても調べた結果、やはり陰性だった。その後のさらなる調査により、10人の母親全員が妊娠中にフェンタニルを使用していたことが分かり、赤ちゃんも誕生時、フェンタニルの陽性反応があったという。
しかしながら、「フェンタニルは非常に強力な合成オピオイドで、胎盤を通過して先天異常を引き起こす」ということは証明されているものの、10人の母親がいつ、どのくらいの量のフェンタニルを使用したのかなどについての情報は乏しいという。また、対象が10人と少ないうえ、母親がフェンタニルではない別の薬物を摂取していたケースもあるそうで、グリップ医師は「フェンタニルが赤ちゃんの全身性の異常を引き起こしたのかどうかについては、さらなる調査が必要」と述べている。
ちなみに10人の患者のうち1人はすでに亡くなっており、他の9人については医師らが現在も経過観察を続けている。最年長は3歳で、患者の多くが物を上手く掴むことができなかったり、歩くことが困難なため、理学療法や作業療法が必要とのことだ。また、発達が遅れていたり、話をすることができない子もいるそうで、このニュースには「子供がかわいそう」「母親は処罰されるべき」「いったいどれだけ薬物を摂取したんだ」「関連はあるだろうね」といった声があがっている。
なおアメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、同国では毎日、フェンタニルのような合成オピオイドの過剰摂取によって150人以上が死亡しているという。
画像は『WPMI 2023年12月8日付「Fentanyl exposure could be the cause of a new syndrome found in babies, ADPH says more research is needed」(WPMI)』『NBC News 2023年12月6日付「New syndrome in newborns exposed to fentanyl possibly found」(Elsevier 2023)』『New York Post 2022年12月14日付「Florida cop treated for overdose after exposure to fentanyl during traffic stop」(Tavares Police Department)』『NY Daily News 2017年11月16日付「Mother dies after cleaning up drugs from son’s suspected overdose」(Facebook)』『Arisley T Pacheco 2023年4月9日付Instagram「NEWS & Education ONLY」』のスクリーンショット、『CBS 17 2020年3月10日公開 YouTube「WATCH: Officer collapses while packing up drug evidence laced with fentanyl」』のサムネイル
(TechinsightJapan編集部 A.C.)