アメリカのある歯科医院を訪れた女性が、1回の診察で合計30か所以上の治療を受けた。一般的には1回の診察で1か所~数か所の治療を行うが、一度に多数の治療を受けたことで女性は酷い痛みに苦しんだという。さらに他の歯科医院にも通うこととなり、担当した歯科医師に損害賠償を求めて訴えた。米ニュースメディア『New York Post』などが報じている。
今回訴訟を起こしたのは、米ミネソタ州ヘネピン郡エデン・プレイリー市にある歯科医院「Molldrem Family Dentistry」を訪れたキャスリーン・ウィルソンさん(Kathleen Wilson)だ。キャスリーンさんは2020年7月に同院を訪れたが、たった1回の診察で、8か所にクラウン治療(かぶせ物)、4か所の根幹治療、そして20本の歯に詰め物して虫歯の治療が行われた。
一般的に、歯科治療は1回で終わることは少なく、1~2週間に1回など段階的に治療が進められていく。これは虫歯や歯周病の進行度合い、口腔内のかみ合わせや状態を確認して治療を進めていくためだ。また日本においては、保険適用の治療に制限があるため、1回の診察で行える治療内容は限られてくる。
国によって保険のルールが異なるとはいえ、1回の診察で30か所以上の治療を行うのは明らかに度が過ぎていることが分かる。また、キャスリーンさんの治療を担当した20年のキャリアを持つ歯科医師のケヴィン・モルドレムさん(Kevin Molldrem)は、推奨量を大幅に超える麻酔を使用し、その投与量を改ざんして記録していたという。
キャスリーンさんの弁護士であるナサニエル・ヴァイマーさん(Nathaniel Weimer)によると、フロリダ州のノバ・サウスイースタン大学(Nova Southeastern University)で非常勤講師を務めるアヴラム・ゴールドスタイン歯学博士(Avrum Goldstein, D.M.D.)が専門家証人となり、キャスリーンさんの医療記録の確認を行った。
アヴラムさんは昨年11月14日付の報告書で、「『キャスリーンさんのほとんどの歯が虫歯だった』というケヴィン歯科医師の診断は正しいものでした」としているものの、「治療はゆっくりと注意深く、慎重な対応が必要です。一度の診察ですべての虫歯の穴を埋めるのはあり得ません」と、ケヴィンさんの対応は間違っていたと指摘している。
キャスリーンさんは虫歯になりやすい体質だと言い、将来的に歯を失ってしまう可能性を考えて治療計画が立てられるべきだったが、ケヴィンさんが行った治療はそれらについて「考慮されていなかった」とアヴラムさんは報告している。
さらに、麻酔薬の最大投与量は490ミリグラムであるが、ケヴィンさんがキャスリーンさんに使用した麻酔量は、約2倍の960ミリグラムだったことが分かった。アヴラムさんの報告書では、「投与された麻酔量は安全と考えられる量を著しく超えていました。5~6時間の間に投与できる麻酔の量には限りがあり、それを超えると患者に悪影響を与えるリスクがあります」と書かれていた。
キャスリーンさんの治療は5時間半もかかったそうで、彼女は不適切な治療を受けたことで、酷い痛みや苦痛に襲われたと主張した。その後、ミネソタ大学の付属歯科医院で数か月にわたる治療が必要になったと言い、キャスリーンさんは損害賠償として5万ドル(約710万円)を求めている。
ちなみに2019年にはシンガポールで、歯の治療で味覚障害になってしまった敏腕シェフが職を失い、治療を行った歯科医師が850万円以上の損害賠償を支払うことになった。
画像は『New York Post 2023年12月26日付「Woman sues dentist who allegedly performed 8 crowns, 4 root canals, 20 fillings in one visit, leaving her disfigured」(Molldrem Family Dentistry/Facebook)、2019年4月11日付「Patient claims disgraced dentist fractured her jaw: ‘I started screaming’」(Facebook)』『AsiaOne 2019年9月4日付「Chef’s taste buds affected by wisdom tooth extraction; gets $105,000 for job loss, pain after suing dentist」(PHOTO: The Straits Times file)』『Express.co.uk 2023年8月11日付「Girl ‘choked on her own blood’ and died after suffering a gushing haemorrhage at dentist」(Image: FACEBOOK)』『Amanda Turner 2022年6月22日付TikTok』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)
今回訴訟を起こしたのは、米ミネソタ州ヘネピン郡エデン・プレイリー市にある歯科医院「Molldrem Family Dentistry」を訪れたキャスリーン・ウィルソンさん(Kathleen Wilson)だ。キャスリーンさんは2020年7月に同院を訪れたが、たった1回の診察で、8か所にクラウン治療(かぶせ物)、4か所の根幹治療、そして20本の歯に詰め物して虫歯の治療が行われた。
一般的に、歯科治療は1回で終わることは少なく、1~2週間に1回など段階的に治療が進められていく。これは虫歯や歯周病の進行度合い、口腔内のかみ合わせや状態を確認して治療を進めていくためだ。また日本においては、保険適用の治療に制限があるため、1回の診察で行える治療内容は限られてくる。
国によって保険のルールが異なるとはいえ、1回の診察で30か所以上の治療を行うのは明らかに度が過ぎていることが分かる。また、キャスリーンさんの治療を担当した20年のキャリアを持つ歯科医師のケヴィン・モルドレムさん(Kevin Molldrem)は、推奨量を大幅に超える麻酔を使用し、その投与量を改ざんして記録していたという。
キャスリーンさんの弁護士であるナサニエル・ヴァイマーさん(Nathaniel Weimer)によると、フロリダ州のノバ・サウスイースタン大学(Nova Southeastern University)で非常勤講師を務めるアヴラム・ゴールドスタイン歯学博士(Avrum Goldstein, D.M.D.)が専門家証人となり、キャスリーンさんの医療記録の確認を行った。
アヴラムさんは昨年11月14日付の報告書で、「『キャスリーンさんのほとんどの歯が虫歯だった』というケヴィン歯科医師の診断は正しいものでした」としているものの、「治療はゆっくりと注意深く、慎重な対応が必要です。一度の診察ですべての虫歯の穴を埋めるのはあり得ません」と、ケヴィンさんの対応は間違っていたと指摘している。
キャスリーンさんは虫歯になりやすい体質だと言い、将来的に歯を失ってしまう可能性を考えて治療計画が立てられるべきだったが、ケヴィンさんが行った治療はそれらについて「考慮されていなかった」とアヴラムさんは報告している。
さらに、麻酔薬の最大投与量は490ミリグラムであるが、ケヴィンさんがキャスリーンさんに使用した麻酔量は、約2倍の960ミリグラムだったことが分かった。アヴラムさんの報告書では、「投与された麻酔量は安全と考えられる量を著しく超えていました。5~6時間の間に投与できる麻酔の量には限りがあり、それを超えると患者に悪影響を与えるリスクがあります」と書かれていた。
キャスリーンさんの治療は5時間半もかかったそうで、彼女は不適切な治療を受けたことで、酷い痛みや苦痛に襲われたと主張した。その後、ミネソタ大学の付属歯科医院で数か月にわたる治療が必要になったと言い、キャスリーンさんは損害賠償として5万ドル(約710万円)を求めている。
ちなみに2019年にはシンガポールで、歯の治療で味覚障害になってしまった敏腕シェフが職を失い、治療を行った歯科医師が850万円以上の損害賠償を支払うことになった。
画像は『New York Post 2023年12月26日付「Woman sues dentist who allegedly performed 8 crowns, 4 root canals, 20 fillings in one visit, leaving her disfigured」(Molldrem Family Dentistry/Facebook)、2019年4月11日付「Patient claims disgraced dentist fractured her jaw: ‘I started screaming’」(Facebook)』『AsiaOne 2019年9月4日付「Chef’s taste buds affected by wisdom tooth extraction; gets $105,000 for job loss, pain after suing dentist」(PHOTO: The Straits Times file)』『Express.co.uk 2023年8月11日付「Girl ‘choked on her own blood’ and died after suffering a gushing haemorrhage at dentist」(Image: FACEBOOK)』『Amanda Turner 2022年6月22日付TikTok』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)