仲間思いで、頭がいいと言われるゾウ。このたびアフリカ南西部ナミビア共和国の国立公園で撮影された“心優しい”ゾウの動画が注目されている。少なくとも20頭のゾウが、水場で動けなくなったクロサイを襲撃していたライオンの群れを追い払い、そのうちの1頭は数時間をかけ、クロサイを水場から救出しようとしたという。アフリカの野生動物専門サイト『Latest Sightings』などが伝えた。
南アフリカを拠点とする金融サービス会社「ディスカバリー(Discovery Limited)」に勤務するキム・ハサウェイさん(Kim Hathaway)は最近、ナミビア共和国北部の「エトーシャ国立公園(Etosha National Park)」を友人らと一緒に訪れ、一生に一度あるかないかという光景に出くわした。
野生動物が集まることで知られる同公園の水場を訪れていたキムさんはその日、動物を全く目にすることができずにいた。また水場には当時、他の観光客はおらず、次の場所に移動しようとしていた。しかし突然、丘の上からメスのライオンが姿を現し、後を追うように群れが水場に近づいてきたのだった。
さらに数分後、今度は同じ丘の上から大きなクロサイが現れ、小さな水場までまっすぐ走ってきたそうで、泥水の中に飛び込むとまるでナミビアの暑さで疲れた体を癒すかのように涼んでいたという。
キムさんは「目の前で起きている光景に、自身の幸運が信じられなかった」と明かし、当時のことをこう語った。
「クロサイは近くにいる捕食者の存在をほとんど気にせず、水を飲もうとしていたわ。一方でライオンたちはクロサイの存在を認識し、少しずつ近づいてきたの。ただそれでもクロサイはあまり反応がなくてね。動きたくても動けないようだった…。」
キムさんはその時、クロサイに何らかの異変が起きていることを察した。実は水場はかなりの深さで、底には厚い泥が堆積していたようで、クロサイは水場から抜け出すことができなくなってしまったのだ。
そんなクロサイの窮地にライオンの群れが気付かないはずはなく、ライオンたちは「サイがいかに危険であるか」ということを十分承知のうえで、水場の個体を襲い始めた。
ところが万事休すと思われた瞬間、救世主のようにゾウの群れが現れ、ライオンたちを追い払おうと水場に向かってきたという。
こうなるとライオンたちはその場から撤退するしかなく、ゾウたちのほとんどはライオンたちが視界から消えたことに満足したのか、そのまま歩を進めていったという。しかしそのうちの1頭だけは水場に残り、クロサイの救出にあたったのだった。
キムさんはその時のことをこのように説明した。
「あのゾウは、鼻や脚を使ってクロサイを押し出そうとしていたの。それで一時は、その個体の上に乗っているかのように見えたほどだった。そして助け出そうとして数時間後、『もうできることはない』と悟るとその場から去っていった。もちろんライオンが待機していることを知ったうえでの行動だった。」
ライオンの群れが再びクロサイを襲うまでそれほど時間はかからなかったようで、近くにいたゾウたちはその後もライオンを2、3回追い払っていたという。しかし最後は諦め、クロサイをその場に放置した。
こうしてライオンの群れはその後、水場でクロサイの体をひっくり返して溺れさせ、待ちに待った御馳走にありついた。
なお、この動画には次のようなコメントが寄せられた。
「危険なクロサイを溺れさせてから襲うなんて、ライオンは頭がいい。」
「クロサイはかわいそうだけど、これこそ自然。サークル・オブ・ライフ(生命の輪)だよ。」
「ゾウの思いやり、優しさ、粘り強さをリスペクトする。」
「ゾウたちは、ライオンが賢いことを知っていて、子ゾウを囲んでいる。本当に頭がいい動物だよ。」
「ゾウがクロサイを助けようとするなんて! なんて素晴らしい生き物なんだろう。それなのに象牙のために密猟をしようとする人間がいるなんて…。ゾウのほうが人間よりもずっと、思いやりがあるよね。」
「クロサイを助けられないと知った後の、ゾウの鳴き声がなんとも悲しい。」
「人間が作った水場だよね? なぜ絶滅の危機にあるクロサイを助けなかったの?」
「人間は介入すべきではないよ。」
「あんな場面で人間がクロサイを助けられるわけがない。これだから観光客が襲われる事故が絶えないわけだ。」
ちなみにこれらの声に対し、キムさんは「私たちだけで水場から動けないクロサイを助けることなんて無理だった。あそこには9頭のライオンと少なくとも20頭のゾウ、ほかにも2頭のハイエナがいたの。それに現場は最も近い施設から車で2時間かかり、携帯電話も使えなかった」とコメントしていた。
画像は『Latest Sightings 2024年1月9日公開 YouTube「Elephants Try Saving Stuck Rhino from Hungry Lions」』のサムネイル、『Latest Sightings 2024年1月9日付「Elephants Try Saving Stuck Rhino from Hungry Lions」、2022年7月1日付「Lions Hunt Pregnant Wildebeest and Pull the Baby Out!」、2022年7月28日付「Hyena Gets Away With Elephant’s Giant Foot」』『Parveen Kaswan, IFS 2022年6月25日付X「Mother elephant saving calf from drowning is the best thing you watch today.」』『The Hindu 2023年1月3日付「Image of reunited elephant calf’s nap with mother in T.N.’s Anamalai Tiger Reserve wins hearts」(Photo Credit: Special Arrangement)』『Frankie Adamson 2023年9月15日付Instagram「Life’s still not fair」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)
南アフリカを拠点とする金融サービス会社「ディスカバリー(Discovery Limited)」に勤務するキム・ハサウェイさん(Kim Hathaway)は最近、ナミビア共和国北部の「エトーシャ国立公園(Etosha National Park)」を友人らと一緒に訪れ、一生に一度あるかないかという光景に出くわした。
野生動物が集まることで知られる同公園の水場を訪れていたキムさんはその日、動物を全く目にすることができずにいた。また水場には当時、他の観光客はおらず、次の場所に移動しようとしていた。しかし突然、丘の上からメスのライオンが姿を現し、後を追うように群れが水場に近づいてきたのだった。
さらに数分後、今度は同じ丘の上から大きなクロサイが現れ、小さな水場までまっすぐ走ってきたそうで、泥水の中に飛び込むとまるでナミビアの暑さで疲れた体を癒すかのように涼んでいたという。
キムさんは「目の前で起きている光景に、自身の幸運が信じられなかった」と明かし、当時のことをこう語った。
「クロサイは近くにいる捕食者の存在をほとんど気にせず、水を飲もうとしていたわ。一方でライオンたちはクロサイの存在を認識し、少しずつ近づいてきたの。ただそれでもクロサイはあまり反応がなくてね。動きたくても動けないようだった…。」
キムさんはその時、クロサイに何らかの異変が起きていることを察した。実は水場はかなりの深さで、底には厚い泥が堆積していたようで、クロサイは水場から抜け出すことができなくなってしまったのだ。
そんなクロサイの窮地にライオンの群れが気付かないはずはなく、ライオンたちは「サイがいかに危険であるか」ということを十分承知のうえで、水場の個体を襲い始めた。
ところが万事休すと思われた瞬間、救世主のようにゾウの群れが現れ、ライオンたちを追い払おうと水場に向かってきたという。
こうなるとライオンたちはその場から撤退するしかなく、ゾウたちのほとんどはライオンたちが視界から消えたことに満足したのか、そのまま歩を進めていったという。しかしそのうちの1頭だけは水場に残り、クロサイの救出にあたったのだった。
キムさんはその時のことをこのように説明した。
「あのゾウは、鼻や脚を使ってクロサイを押し出そうとしていたの。それで一時は、その個体の上に乗っているかのように見えたほどだった。そして助け出そうとして数時間後、『もうできることはない』と悟るとその場から去っていった。もちろんライオンが待機していることを知ったうえでの行動だった。」
ライオンの群れが再びクロサイを襲うまでそれほど時間はかからなかったようで、近くにいたゾウたちはその後もライオンを2、3回追い払っていたという。しかし最後は諦め、クロサイをその場に放置した。
こうしてライオンの群れはその後、水場でクロサイの体をひっくり返して溺れさせ、待ちに待った御馳走にありついた。
なお、この動画には次のようなコメントが寄せられた。
「危険なクロサイを溺れさせてから襲うなんて、ライオンは頭がいい。」
「クロサイはかわいそうだけど、これこそ自然。サークル・オブ・ライフ(生命の輪)だよ。」
「ゾウの思いやり、優しさ、粘り強さをリスペクトする。」
「ゾウたちは、ライオンが賢いことを知っていて、子ゾウを囲んでいる。本当に頭がいい動物だよ。」
「ゾウがクロサイを助けようとするなんて! なんて素晴らしい生き物なんだろう。それなのに象牙のために密猟をしようとする人間がいるなんて…。ゾウのほうが人間よりもずっと、思いやりがあるよね。」
「クロサイを助けられないと知った後の、ゾウの鳴き声がなんとも悲しい。」
「人間が作った水場だよね? なぜ絶滅の危機にあるクロサイを助けなかったの?」
「人間は介入すべきではないよ。」
「あんな場面で人間がクロサイを助けられるわけがない。これだから観光客が襲われる事故が絶えないわけだ。」
ちなみにこれらの声に対し、キムさんは「私たちだけで水場から動けないクロサイを助けることなんて無理だった。あそこには9頭のライオンと少なくとも20頭のゾウ、ほかにも2頭のハイエナがいたの。それに現場は最も近い施設から車で2時間かかり、携帯電話も使えなかった」とコメントしていた。
画像は『Latest Sightings 2024年1月9日公開 YouTube「Elephants Try Saving Stuck Rhino from Hungry Lions」』のサムネイル、『Latest Sightings 2024年1月9日付「Elephants Try Saving Stuck Rhino from Hungry Lions」、2022年7月1日付「Lions Hunt Pregnant Wildebeest and Pull the Baby Out!」、2022年7月28日付「Hyena Gets Away With Elephant’s Giant Foot」』『Parveen Kaswan, IFS 2022年6月25日付X「Mother elephant saving calf from drowning is the best thing you watch today.」』『The Hindu 2023年1月3日付「Image of reunited elephant calf’s nap with mother in T.N.’s Anamalai Tiger Reserve wins hearts」(Photo Credit: Special Arrangement)』『Frankie Adamson 2023年9月15日付Instagram「Life’s still not fair」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)