南米中央部ボリビアで今から4年前、狭いアパートでペットとして飼われていたクモザル(Spider monkey)が野生動物保護団体に保護され、サンクチュアリー(自然保護区)での2年間のリハビリ後に森に放たれた。そして野生の群れと暮らすようになって2年が経過した昨年末、サルはサンクチュアリーの近くでリハビリを共にした男性を発見し、歩み寄るとそっと抱きしめたのであった。心温まるストーリーを米ニュースメディア『Newsweek』などが伝えた。
ボリビアのアパートでペットとして飼われていたクモザルが今から4年前、野生動物保護団体「ONCA Wildlife Rescue、以下ONCA」によって保護された。
“マイカ(Mikah)”と名付けられたメスザルは違法な野生動物取引の犠牲者で、狭いアパートの小さなケージに閉じ込められ、他のサルとの接触を一切絶たれた。そのためONCAのサンクチュアリーでのリハビリは2年を要したが、2年前に野生の群れに受け入れられ、第2の人生を歩み始めた。
そんなマイカのリハビリに深く関わったのが、米ミシガン州出身の野生動物写真家で、ONCAと一緒に活動するようになって3年になるというケイシー・クーパーさん(Casey Cooper)で、マイカと最初に対面した時のことをInstagramにこのように綴っていた。
「マイカを紹介されたのは、私が最初にONCAに到着した日のことだった。マイカは当時、リードを付けていてね。リードは2本の木を繋ぐ1本のロープに結ばれていた。これはリハビリの最初のプロセスで、野生の群れへの紹介がスムーズにいくように行っていることだった。」
「当時の私はサルのリハビリは初めてで、『もしかしたら襲われるのでは?』と不安だった。でも驚くことに、マイカは私をじっと見つめて歩み寄り、片脚の上に乗って首周りをハグしてくれたんだ。私はすぐにマイカに魅了され、こう誓った。『マイカやアマゾンに住む同種のサルたちを救うため、できる限りのことをする』とね。」
こうして今から2年前、マイカがリハビリを終え、野生の群れに受け入れられるのを見守ったケイシーさんは、自由な時間があればONCAに足を運んだ。そして昨年12月、2年ぶりにマイカと会うチャンスに恵まれた。マイカが暮らす野生の群れはサンクチュアリーのすぐそばにあるそうで、サルたちは時折、森から姿を現すという。
ケイシーさんは当時の気持ちをこう明かす。
「マイカのリハビリは“一生忘れることがない思い出”として記憶していてね。多くの時間を過ごしたマイカや他のサルたちとの再会には心躍らせたよ。サルというのは頭がいいから、『彼らはきっと、私のことを覚えていてくれるだろう』と思っていたんだ。ただ、あれから2年も経っていたし、『嫌がることなく、自分のそばに来てくれるだろうか』という不安はあった。」
ところがその日、カメラを抱えて座っていたケイシーさんを見つけたマイカは、そんな心配を一蹴する驚きの行動に出た。
「私を見つけたマイカは、木の上から降りてきて歩み寄ってきた。そして温かい“ウェルカム”のハグをして、妊娠中のお腹を見せてくれたんだ!」と明かすケイシーさん。当時の動画では、マイカが長い両手をケイシーさんの肩に回し、顔を胸にうずめるのが見て取れ、ケイシーさんは嬉しそうに微笑むと優しくキスしている。
ケイシーさんはこの瞬間、「マイカが幸せに、そして自由に暮らし、野生の群れに貢献できるような存在になっていることに気付いて胸がいっぱいになった」と明かしており、思わず涙がこぼれたという。
そしてこの時の動画をSNSに投稿したところ、次のような声が寄せられた。
「こんなに賢く素晴らしい動物たちをケージに閉じ込めて飼うなんて、野蛮。野生動物は自然の中にいるのが一番よ。」
「なんて美しい関係なのだろう。」
「野生動物のリハビリは決して楽な仕事ではない。ありがとう。」
「動物たちは心が純粋な人が分かるんだよ。」
「マイカはあなただったから安心し、そばに来てハグしたのよ。」
ちなみにマイカは、ボリビア北部に生息するペルークロクモザル(Black-faced black spider monkey)と思われ、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、近い将来野生絶滅の危険が高い種である「絶滅危惧IB類(EN)」に指定されている。ケイシーさんは動画の大きな反響に驚きつつも、次のようにコメントした。
「この動画を見たからといって、『クモザルはいいペットになる』と考えないで欲しい。マイカのような野生動物を相手に何年も仕事をしてきても、噛まれたり傷つけられたり…ということを避けることはできないし、飼い主の手に負えなくなったエキゾチックな動物は、我々のようなサンクチュアリーでの長いリハビリが必要になるのだから。だからどうか違法な野生動物取引ではなく、我々のようなサンクチュアリーへの支援をお願いしたい。」
なおテックインサイト編集部がケイシーさんに「この仕事でこれまでに最もつらかったこと」を尋ねたところ、「保護しても、生き抜くことができないサルを見た時」との回答があった。ケイシーさんは以前、薬物やアルコール依存症で苦しんだことがあり、「野生動物のリハビリは、自分がリハビリをしていた頃と重なるんだ。全ての動物たちが必要なのは、彼らを心から信じてくれる人。『もうダメなのでは』と思われるケースでも、最終的に野生に戻っていくのを見ることができるのはとても幸せなことだよ」と語っている。
画像は『Casey Cooper 2024年1月11日付TikTok「Mikah the spider monkey once lived in a tiny cage」』『Save the Chimps 2023年6月15日付Instagram「Vanilla and Shake have been fully integrated into a large family group and were released onto their island home!」』『WeRateDogs 2023年10月27日付Instagram「This is Dora.」』『Liberia Chimpanzee Rescue 2022年9月27日付Facebook「Little boy Beckley meets all of his new family for the first time」』『CBC.ca 2023年7月17日付「B.C. man fired from job after saving moose calf on the highway」(Submitted by Mark Skage)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)
ボリビアのアパートでペットとして飼われていたクモザルが今から4年前、野生動物保護団体「ONCA Wildlife Rescue、以下ONCA」によって保護された。
“マイカ(Mikah)”と名付けられたメスザルは違法な野生動物取引の犠牲者で、狭いアパートの小さなケージに閉じ込められ、他のサルとの接触を一切絶たれた。そのためONCAのサンクチュアリーでのリハビリは2年を要したが、2年前に野生の群れに受け入れられ、第2の人生を歩み始めた。
そんなマイカのリハビリに深く関わったのが、米ミシガン州出身の野生動物写真家で、ONCAと一緒に活動するようになって3年になるというケイシー・クーパーさん(Casey Cooper)で、マイカと最初に対面した時のことをInstagramにこのように綴っていた。
「マイカを紹介されたのは、私が最初にONCAに到着した日のことだった。マイカは当時、リードを付けていてね。リードは2本の木を繋ぐ1本のロープに結ばれていた。これはリハビリの最初のプロセスで、野生の群れへの紹介がスムーズにいくように行っていることだった。」
「当時の私はサルのリハビリは初めてで、『もしかしたら襲われるのでは?』と不安だった。でも驚くことに、マイカは私をじっと見つめて歩み寄り、片脚の上に乗って首周りをハグしてくれたんだ。私はすぐにマイカに魅了され、こう誓った。『マイカやアマゾンに住む同種のサルたちを救うため、できる限りのことをする』とね。」
こうして今から2年前、マイカがリハビリを終え、野生の群れに受け入れられるのを見守ったケイシーさんは、自由な時間があればONCAに足を運んだ。そして昨年12月、2年ぶりにマイカと会うチャンスに恵まれた。マイカが暮らす野生の群れはサンクチュアリーのすぐそばにあるそうで、サルたちは時折、森から姿を現すという。
ケイシーさんは当時の気持ちをこう明かす。
「マイカのリハビリは“一生忘れることがない思い出”として記憶していてね。多くの時間を過ごしたマイカや他のサルたちとの再会には心躍らせたよ。サルというのは頭がいいから、『彼らはきっと、私のことを覚えていてくれるだろう』と思っていたんだ。ただ、あれから2年も経っていたし、『嫌がることなく、自分のそばに来てくれるだろうか』という不安はあった。」
ところがその日、カメラを抱えて座っていたケイシーさんを見つけたマイカは、そんな心配を一蹴する驚きの行動に出た。
「私を見つけたマイカは、木の上から降りてきて歩み寄ってきた。そして温かい“ウェルカム”のハグをして、妊娠中のお腹を見せてくれたんだ!」と明かすケイシーさん。当時の動画では、マイカが長い両手をケイシーさんの肩に回し、顔を胸にうずめるのが見て取れ、ケイシーさんは嬉しそうに微笑むと優しくキスしている。
ケイシーさんはこの瞬間、「マイカが幸せに、そして自由に暮らし、野生の群れに貢献できるような存在になっていることに気付いて胸がいっぱいになった」と明かしており、思わず涙がこぼれたという。
そしてこの時の動画をSNSに投稿したところ、次のような声が寄せられた。
「こんなに賢く素晴らしい動物たちをケージに閉じ込めて飼うなんて、野蛮。野生動物は自然の中にいるのが一番よ。」
「なんて美しい関係なのだろう。」
「野生動物のリハビリは決して楽な仕事ではない。ありがとう。」
「動物たちは心が純粋な人が分かるんだよ。」
「マイカはあなただったから安心し、そばに来てハグしたのよ。」
ちなみにマイカは、ボリビア北部に生息するペルークロクモザル(Black-faced black spider monkey)と思われ、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、近い将来野生絶滅の危険が高い種である「絶滅危惧IB類(EN)」に指定されている。ケイシーさんは動画の大きな反響に驚きつつも、次のようにコメントした。
「この動画を見たからといって、『クモザルはいいペットになる』と考えないで欲しい。マイカのような野生動物を相手に何年も仕事をしてきても、噛まれたり傷つけられたり…ということを避けることはできないし、飼い主の手に負えなくなったエキゾチックな動物は、我々のようなサンクチュアリーでの長いリハビリが必要になるのだから。だからどうか違法な野生動物取引ではなく、我々のようなサンクチュアリーへの支援をお願いしたい。」
なおテックインサイト編集部がケイシーさんに「この仕事でこれまでに最もつらかったこと」を尋ねたところ、「保護しても、生き抜くことができないサルを見た時」との回答があった。ケイシーさんは以前、薬物やアルコール依存症で苦しんだことがあり、「野生動物のリハビリは、自分がリハビリをしていた頃と重なるんだ。全ての動物たちが必要なのは、彼らを心から信じてくれる人。『もうダメなのでは』と思われるケースでも、最終的に野生に戻っていくのを見ることができるのはとても幸せなことだよ」と語っている。
画像は『Casey Cooper 2024年1月11日付TikTok「Mikah the spider monkey once lived in a tiny cage」』『Save the Chimps 2023年6月15日付Instagram「Vanilla and Shake have been fully integrated into a large family group and were released onto their island home!」』『WeRateDogs 2023年10月27日付Instagram「This is Dora.」』『Liberia Chimpanzee Rescue 2022年9月27日付Facebook「Little boy Beckley meets all of his new family for the first time」』『CBC.ca 2023年7月17日付「B.C. man fired from job after saving moose calf on the highway」(Submitted by Mark Skage)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)