ブラジルのサンパウロ州に住み、2人の娘を育てるシングルファーザーが今月、難病のため重度の奇形を持つ長女についてブラジルのネットメディア『Crescer』に語った。男性は長女の誕生後、医師に「余命9時間」と言われたそうだが、女児は家族らの温かい愛に包まれて7歳の誕生日を迎えている。
サンパウロ州ピラスヌンガ出身のマルコス・ベッカーさん(Marcos Becker、40)は、タリタちゃん(Thalita、7)とマレッサちゃん(Mharessa、5)の2人の娘を育てるシングルファーザーだ。
長女タリタちゃんは2016年、マルコスさんが教会で知り合い、一緒に暮らしていたアナさん(Ana)との間に誕生した。顔や手などに重度の奇形を持って生まれ、のちに羊膜索症候群と診断された。
羊膜索症候群とは、妊娠早期に羊膜の一部が破れて紐状の羊膜索となり、これが胎児の体に絡みつくことで様々な奇形が起きる病態のことで、タリタちゃんは顔の奇形が重度だった。また手指が癒着しているほか、歩くことができないため車椅子での生活を強いられており、脳がうまく機能していないという。
それでも出生前検査で異常が見つからず、マルコスさんは「病気は超音波検査で分かったはず。でも医師たちは十分な注意を払っていなかった」と明かす。そして誕生したタリタちゃんを見た小児科医に「20年のキャリアの中でこんな症例は初めて」と言われ、専門家には「生存できるのは長くて9時間だろう」と告げられたそうで、マルコスさんは当時のことをこのように語った。
「私の人生の中でも特に記憶に残っている光景は、タリタを初めて見た時だった。あの子は目を閉じ、気管挿管されて人工呼吸器に繋がれていた。それでそばに行くと、あの子は私の指をギュッと掴んだ。まるで『私のために闘って』とでも言っているかのようにね。」
こうしてマルコスさんの人生をかけた闘いが始まり、タリタちゃんは地元ピラスヌンガの病院の集中治療室で「余命9時間」を生き延び、16日間を過ごした。そしてサンパウロ州内の2つの病院で90日間入院し、水頭症で頭に溜まった余分な髄液を排出するためのシャント手術や、胃に直接栄養を流し込めるチューブを入れる手術を受けた。
一方で連れ子の息子がいたアナさんは、娘を一度も受け入れずに拒絶し、そのうちうつ病で通院するようになった。そうして2018年、マルコスさんはアナさんから別れを切り出されたものの、「もう1人子供を作ろう」と説得し、2019年8月に元気な女の子、マレッサちゃんが誕生したのだった。
ところが幸せは長く続かず、アナさんはマレッサちゃんが生後1か月の時に別の男性と恋に落ち、その3か月後に手紙を残して姿を消した。その結果、マルコスさんは当時2歳半だったタリタちゃんと、生後4か月だったマレッサちゃんのシングルファーザーとなり、義理の息子はアナさんの家族と一緒に暮らすようになった。
実はマルコスさんは3人兄弟の長男で、12歳だった時に母親が手紙を残して姿を消していた。そのため「私も父に育てられた。だから母に捨てられた子どもの気持ちはよく分かる」と話す。しかしながら2人の娘を抱えての暮らしは決して楽ではなく、マルコスさんは「長女に最高のケアを受けさせたい」と何度も引っ越しをしたという。
そして現在はサンパウロ州ボトゥカトゥに住み、市から娘の障がい者手当を受け取っている。また今年1月に始めたTikTokが好評で、地域住民をはじめとする多くの人がマルコスさん一家を支援してくれるようになり、タリタちゃんのおむつ代や医療費のための寄付も集まっているという。さらにマレッサちゃんの明るさに魅了される人も多いようで、マルコスさんは「TikTokを通し、もっと多くの人に私たち家族や病気のことを知ってもらえれば」と夢を語る。
なお子供たちはというと、マレッサちゃんは朝7時半から夕方4時半まで学校で、タリタちゃんは午後の特別学級のほか、理学療法や音楽療法、サンパウロ州立大学での経過観察などの予定がぎっしり詰まっている。そのためマルコスさんは週末に3人でゆっくりと過ごす時間を大切にしているそうで、タリタちゃんのケアについてはこう述べている。
「タリタは痙攣をコントロールするための薬が必要で、最も注意が必要なのは開いたままの口なんだ。ハエや蚊、細菌などが入ってしまうからね。歯の磨き方も特別だし、口から水が入ってくるから入浴中は溺れないように気を付けなくてはならない。それにタリタは片目しか見えないから、目は常に清潔にしておく必要がある。ただ最大の課題は、やはり“偏見”だね。」
ちなみにタリタちゃんは来年、顔の形成手術を数回受けるそうで、マルコスさんは「専門家には一日一日を大切にするように言われているよ」と語っている。ただ日々を一生懸命生きることはマルコスさんがこれまでずっと続けてきたことであり、タリタちゃんの「余命9時間」と言われた人生はすでに7年目を迎えている。
なお2020年には、脳がはみ出して生まれた男児が1歳4か月を迎えており、母親は息子を「奇跡の子」と呼んでいた。
画像は『paizinho2024 TikTok「#CapCut」「A responder a @saymon_brasil」「A responder a @thaismoreiramore」「A responder a @sonhador202 #amigostiktok2024」』より
(TechinsightJapan編集部 A.C.)
サンパウロ州ピラスヌンガ出身のマルコス・ベッカーさん(Marcos Becker、40)は、タリタちゃん(Thalita、7)とマレッサちゃん(Mharessa、5)の2人の娘を育てるシングルファーザーだ。
長女タリタちゃんは2016年、マルコスさんが教会で知り合い、一緒に暮らしていたアナさん(Ana)との間に誕生した。顔や手などに重度の奇形を持って生まれ、のちに羊膜索症候群と診断された。
羊膜索症候群とは、妊娠早期に羊膜の一部が破れて紐状の羊膜索となり、これが胎児の体に絡みつくことで様々な奇形が起きる病態のことで、タリタちゃんは顔の奇形が重度だった。また手指が癒着しているほか、歩くことができないため車椅子での生活を強いられており、脳がうまく機能していないという。
それでも出生前検査で異常が見つからず、マルコスさんは「病気は超音波検査で分かったはず。でも医師たちは十分な注意を払っていなかった」と明かす。そして誕生したタリタちゃんを見た小児科医に「20年のキャリアの中でこんな症例は初めて」と言われ、専門家には「生存できるのは長くて9時間だろう」と告げられたそうで、マルコスさんは当時のことをこのように語った。
「私の人生の中でも特に記憶に残っている光景は、タリタを初めて見た時だった。あの子は目を閉じ、気管挿管されて人工呼吸器に繋がれていた。それでそばに行くと、あの子は私の指をギュッと掴んだ。まるで『私のために闘って』とでも言っているかのようにね。」
こうしてマルコスさんの人生をかけた闘いが始まり、タリタちゃんは地元ピラスヌンガの病院の集中治療室で「余命9時間」を生き延び、16日間を過ごした。そしてサンパウロ州内の2つの病院で90日間入院し、水頭症で頭に溜まった余分な髄液を排出するためのシャント手術や、胃に直接栄養を流し込めるチューブを入れる手術を受けた。
一方で連れ子の息子がいたアナさんは、娘を一度も受け入れずに拒絶し、そのうちうつ病で通院するようになった。そうして2018年、マルコスさんはアナさんから別れを切り出されたものの、「もう1人子供を作ろう」と説得し、2019年8月に元気な女の子、マレッサちゃんが誕生したのだった。
ところが幸せは長く続かず、アナさんはマレッサちゃんが生後1か月の時に別の男性と恋に落ち、その3か月後に手紙を残して姿を消した。その結果、マルコスさんは当時2歳半だったタリタちゃんと、生後4か月だったマレッサちゃんのシングルファーザーとなり、義理の息子はアナさんの家族と一緒に暮らすようになった。
実はマルコスさんは3人兄弟の長男で、12歳だった時に母親が手紙を残して姿を消していた。そのため「私も父に育てられた。だから母に捨てられた子どもの気持ちはよく分かる」と話す。しかしながら2人の娘を抱えての暮らしは決して楽ではなく、マルコスさんは「長女に最高のケアを受けさせたい」と何度も引っ越しをしたという。
そして現在はサンパウロ州ボトゥカトゥに住み、市から娘の障がい者手当を受け取っている。また今年1月に始めたTikTokが好評で、地域住民をはじめとする多くの人がマルコスさん一家を支援してくれるようになり、タリタちゃんのおむつ代や医療費のための寄付も集まっているという。さらにマレッサちゃんの明るさに魅了される人も多いようで、マルコスさんは「TikTokを通し、もっと多くの人に私たち家族や病気のことを知ってもらえれば」と夢を語る。
なお子供たちはというと、マレッサちゃんは朝7時半から夕方4時半まで学校で、タリタちゃんは午後の特別学級のほか、理学療法や音楽療法、サンパウロ州立大学での経過観察などの予定がぎっしり詰まっている。そのためマルコスさんは週末に3人でゆっくりと過ごす時間を大切にしているそうで、タリタちゃんのケアについてはこう述べている。
「タリタは痙攣をコントロールするための薬が必要で、最も注意が必要なのは開いたままの口なんだ。ハエや蚊、細菌などが入ってしまうからね。歯の磨き方も特別だし、口から水が入ってくるから入浴中は溺れないように気を付けなくてはならない。それにタリタは片目しか見えないから、目は常に清潔にしておく必要がある。ただ最大の課題は、やはり“偏見”だね。」
ちなみにタリタちゃんは来年、顔の形成手術を数回受けるそうで、マルコスさんは「専門家には一日一日を大切にするように言われているよ」と語っている。ただ日々を一生懸命生きることはマルコスさんがこれまでずっと続けてきたことであり、タリタちゃんの「余命9時間」と言われた人生はすでに7年目を迎えている。
なお2020年には、脳がはみ出して生まれた男児が1歳4か月を迎えており、母親は息子を「奇跡の子」と呼んでいた。
画像は『paizinho2024 TikTok「#CapCut」「A responder a @saymon_brasil」「A responder a @thaismoreiramore」「A responder a @sonhador202 #amigostiktok2024」』より
(TechinsightJapan編集部 A.C.)