イギリスで、2021年に白骨化した状態で発見された女性の遺体について先日、死因審問が行われた。女性は生前、統合失調症を患っており、家族とは疎遠になっていた。英ニュースメディア『The Mirror』などが伝えた。
英サリー州ウォキングにあるアパートの一室で2021年5月、この部屋に住むローラ・ウィンハムさん(Laura Winham)の遺体が、ほぼ白骨化した状態で見つかった。彼女の家族が通報し、警察と共に遺体を発見した。現地時間10月1日にサリー州検視裁判所で行われた死因審問では、検視官が「遺体が腐敗した状態で発見されたことを、家族は決して忘れることはないだろう」と述べた。
また今回の審問で、ローラさんが統合失調症を患っていたことが明らかとなり、彼女の姉妹ニッキー・ウィンハムさん(Nicky Winham)は、次のように証言した。
「ローラは2度、精神科に入院しており、家族が自分に危害を加えようとしていると信じていたため、私たちとの連絡を絶ってしまったのです。」
ローラさんは家族と距離を置き、公営アパートに一人で暮らしていたが、連絡がとれないローラさんの身を案じた母親とローラさんの兄弟ロイ・ウィンハムさん(Roy Winham)が、2021年5月に彼女の部屋を訪れることにした。
母親とロイさんは、玄関のドア越しにローラさんの名前を何度も呼んだが、返事は全くなく、ロイさんはドアにある郵便受けの中から室内をのぞいた。すると、腐敗した脚が見え、ショックを受けたロイさんと母親はすぐに警察に連絡し、部屋の鍵を開けて室内を捜索するよう依頼した。
遺体の検視結果でローラさんの死因は明らかになっておらず、死亡時期もはっきりしていないが、ローラさんの家族は遺体発見から3年半前の2017年11月、彼女が38歳の時に亡くなったと推定している。というのも、ローラさんの部屋のカレンダーの日付には印が付けられていたが、2017年11月のカレンダーには「助けてほしい」と書かれていて、それ以降は何も書かれていなかったからだ。
また、ローラさんの部屋には、マーガリンの容器とトマトソースの瓶、そしてティーバッグがいくつかあっただけで他に食料は見つからなかった。ローラさんの銀行口座には3000ポンド(約58万3000円)の預金があったものの、現金を引き出すには町の中心部まで行かなければならず、精神的な疾患を持つローラさんにとって、行動に移すことが難しかったのではないかとニッキーさんは話している。
ニッキーさんは審問で、ローラさんと最後に直接会ったのが2009年で、SNSでのやり取りは2014年頃から途絶えたと証言した。一方でロイさんは、父親の健康状態が悪化していることを伝えるため、2021年1月頃からローラさんとの接触を試みたという。
ローラさんの家族は、彼女のケアをするはずだった地域の社会福祉サービスや精神保健チームに対して、3年半もの間ケアがなかったことについてこのように批判した。
「ローラに何らかのケアをする義務を負っていた人たちは皆、彼女から手を引いてそのまま忘れてしまったようです。ローラは見捨てられ、息を引き取るまで放置されてしまいました。」
また、2014年にやつれ切ったローラさんを心配したアパート管理組合の職員が、社会福祉局に連絡したところ、ローラさんのもとに同局から地元のフードバンクや支援チームの連絡先が書かれた手紙が送られた。しかし同局は、2週間経ってもローラさんからの返事がなかったため、支援する予定を打ち切っていた。
ローラさんの遺族の代理人を務める弁護士のイフティカール・マンズール氏(Iftikhar Manzoor)は「非常に多くの危険信号が見落とされてしまった」として、次のように述べた。
「非常に悲劇的な事件です。関係機関のシステムが適切に機能せず、弱者である彼女の命が失われてしまいました。家族は何度も連絡を取ろうと試みました。ローラさんは、アパートの床の上でひとりぼっちで亡くなる運命ではなかったはずです。支援付きの施設に入所させるべきでした。」
なお、審問は今後も続く予定だ。
画像は『BBC 「Family’s ‘horrifying discovery’ of body in flat」(Hudgell Solicitors/PA Wire)』より
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)
英サリー州ウォキングにあるアパートの一室で2021年5月、この部屋に住むローラ・ウィンハムさん(Laura Winham)の遺体が、ほぼ白骨化した状態で見つかった。彼女の家族が通報し、警察と共に遺体を発見した。現地時間10月1日にサリー州検視裁判所で行われた死因審問では、検視官が「遺体が腐敗した状態で発見されたことを、家族は決して忘れることはないだろう」と述べた。
また今回の審問で、ローラさんが統合失調症を患っていたことが明らかとなり、彼女の姉妹ニッキー・ウィンハムさん(Nicky Winham)は、次のように証言した。
「ローラは2度、精神科に入院しており、家族が自分に危害を加えようとしていると信じていたため、私たちとの連絡を絶ってしまったのです。」
ローラさんは家族と距離を置き、公営アパートに一人で暮らしていたが、連絡がとれないローラさんの身を案じた母親とローラさんの兄弟ロイ・ウィンハムさん(Roy Winham)が、2021年5月に彼女の部屋を訪れることにした。
母親とロイさんは、玄関のドア越しにローラさんの名前を何度も呼んだが、返事は全くなく、ロイさんはドアにある郵便受けの中から室内をのぞいた。すると、腐敗した脚が見え、ショックを受けたロイさんと母親はすぐに警察に連絡し、部屋の鍵を開けて室内を捜索するよう依頼した。
遺体の検視結果でローラさんの死因は明らかになっておらず、死亡時期もはっきりしていないが、ローラさんの家族は遺体発見から3年半前の2017年11月、彼女が38歳の時に亡くなったと推定している。というのも、ローラさんの部屋のカレンダーの日付には印が付けられていたが、2017年11月のカレンダーには「助けてほしい」と書かれていて、それ以降は何も書かれていなかったからだ。
また、ローラさんの部屋には、マーガリンの容器とトマトソースの瓶、そしてティーバッグがいくつかあっただけで他に食料は見つからなかった。ローラさんの銀行口座には3000ポンド(約58万3000円)の預金があったものの、現金を引き出すには町の中心部まで行かなければならず、精神的な疾患を持つローラさんにとって、行動に移すことが難しかったのではないかとニッキーさんは話している。
ニッキーさんは審問で、ローラさんと最後に直接会ったのが2009年で、SNSでのやり取りは2014年頃から途絶えたと証言した。一方でロイさんは、父親の健康状態が悪化していることを伝えるため、2021年1月頃からローラさんとの接触を試みたという。
ローラさんの家族は、彼女のケアをするはずだった地域の社会福祉サービスや精神保健チームに対して、3年半もの間ケアがなかったことについてこのように批判した。
「ローラに何らかのケアをする義務を負っていた人たちは皆、彼女から手を引いてそのまま忘れてしまったようです。ローラは見捨てられ、息を引き取るまで放置されてしまいました。」
また、2014年にやつれ切ったローラさんを心配したアパート管理組合の職員が、社会福祉局に連絡したところ、ローラさんのもとに同局から地元のフードバンクや支援チームの連絡先が書かれた手紙が送られた。しかし同局は、2週間経ってもローラさんからの返事がなかったため、支援する予定を打ち切っていた。
ローラさんの遺族の代理人を務める弁護士のイフティカール・マンズール氏(Iftikhar Manzoor)は「非常に多くの危険信号が見落とされてしまった」として、次のように述べた。
「非常に悲劇的な事件です。関係機関のシステムが適切に機能せず、弱者である彼女の命が失われてしまいました。家族は何度も連絡を取ろうと試みました。ローラさんは、アパートの床の上でひとりぼっちで亡くなる運命ではなかったはずです。支援付きの施設に入所させるべきでした。」
なお、審問は今後も続く予定だ。
画像は『BBC 「Family’s ‘horrifying discovery’ of body in flat」(Hudgell Solicitors/PA Wire)』より
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)