脳死と判定された男性が、実は生きていて、臓器摘出手術の直前に手足をばたつかせて涙を流した―そんな信じられないような出来事が3年前、アメリカの病院で起きていた。米ニュースメディア『People.com』などが、内部告発者が明らかにした手術室での様子を報じた。
2021年10月25日、アンソニー・トーマス・“TJ”・フーバーIIさん(Anthony Thomas “TJ” Hoover II、36)は薬物の過剰摂取で心停止を起こし、米ケンタッキー州リッチモンドのバプティスト・ヘルス・リッチモンド病院に緊急搬送された。
家族は同日、医師から「アンソニーさんの脳の機能は完全に失われた状態」と告げられ、翌日には生命維持装置を外すという苦渋の決断を余儀なくされた。
病院ではその後、臓器提供の登録をしていたアンソニーさんのために、2日かけて臓器の検査が実施され、29日の摘出手術前には、ドナーに敬意を示す「見送りの儀式(オーナー・ウォーク、Honor Walk)」が行われた。この儀式は手術室へと続く廊下に医療スタッフや家族、友人らが並んでドナーを送り出すもので、家族はアンソニーさんに最後の別れを告げた。
ところがこの時、アンソニーさんの女きょうだい、ドナ・ローラーさん(Donna Rhorer)は、脳死したはずのアンソニーさんが目を開けるのを見たそうで、当時のことを次のように振り返った。
「アンソニーは視線で私たちを追い、周囲を見回していました。それはまるで『ヘイ、僕はここにいるよ』と彼なりのやり方で私たちに知らせているようでした。ところが病院のスタッフには『ただの反射で、よく起こることだ』と言われただけでした。」
「そしてアンソニーが手術室に入って1時間ほど経った頃、医師が退室してきて、私たちを呼び寄せてこう言ったのです。『時期尚早だった。彼は目が覚めたんだ』とね。」
ドナさんはその後、医師から「彼はあまり長くは生きられないだろう」と言われたが、アンソニーさんは2021年11月19日に退院した。歩くことや話すことが困難で記憶力に問題が残っているものの、3年経った今でもドナさんと一緒に暮らしている。ただドナさんは、脳死と判定されながら臓器摘出手術の直前に目覚めたアンソニーさんについて、割り切れない気持ちを抱えていた。
ところが今年1月、「ケンタッキー州臓器提供団体(KODA)」の元職員ニコレッタ・マーティンさん(Nyckoletta Martin)から連絡を受け、「2021年10月、アンソニーさんがどんな状態だったのか」について詳細を知った。
それによるとアンソニーさんは、手術の朝に行われた心臓カテーテル検査の際、手足をばたつかせる反応を示していたが、医師は鎮静剤を投与して検査を継続し、臓器摘出の準備を進めたという。
また同じくKODAの職員で、臓器摘出手術を行う際に手術室にいたというナターシャ・ミラーさん(Natasha Miller)は、こう明かしたそうだ。
「患者を一目見た瞬間、何かがおかしいと気付きました。なぜなら彼は、全く亡くなった人には見えなかったのです。」
「彼はベッドの上で動き回っていました。まさに、のたうち回っていたのです。それで近くに行ってみると、涙を流しているのが分かりました。彼は泣いていたのです。」
2人の医師はその後、アンソニーさんの手術を継続することを拒否し、その場にいた誰もが大きな衝撃を受けていたという。また手術は最終的に中止されたものの、ナターシャさんは「臓器移植のコーディネーターはKODAの上司に事情を説明しましたが、彼女は『臓器を摘出する別の医師を探せ』と指示を受けていました」とも述べていた。
そして今年9月、ニコレッタさんはこの件について内部告発し、下院エネルギー・商業委員会に書簡を提出した。
脳死と判定されてから3年、ドナさんは「裏切られたと感じている」と怒りを示しており、TikTokで3年前の見送りの儀式の動画と、現在のアンソニーさんの姿を公開し「TJ(アンソニーさん)のために正義を!」と訴えている。
画像は『Metro.co.uk 「Organ donor ‘came back to life’ while doctors prepared to remove his heart」(Picture: TikTok/Ladonna Rhorer)(Picture: Hoover Rhorer family)(Picture: Facebook/Ladonna Rhorer)』『Daily Express US 「Man declared brain dead suddenly wakes up to his organs being harvested」(Image: TikTok)』より
(TechinsightJapan編集部 A.C.)
2021年10月25日、アンソニー・トーマス・“TJ”・フーバーIIさん(Anthony Thomas “TJ” Hoover II、36)は薬物の過剰摂取で心停止を起こし、米ケンタッキー州リッチモンドのバプティスト・ヘルス・リッチモンド病院に緊急搬送された。
家族は同日、医師から「アンソニーさんの脳の機能は完全に失われた状態」と告げられ、翌日には生命維持装置を外すという苦渋の決断を余儀なくされた。
病院ではその後、臓器提供の登録をしていたアンソニーさんのために、2日かけて臓器の検査が実施され、29日の摘出手術前には、ドナーに敬意を示す「見送りの儀式(オーナー・ウォーク、Honor Walk)」が行われた。この儀式は手術室へと続く廊下に医療スタッフや家族、友人らが並んでドナーを送り出すもので、家族はアンソニーさんに最後の別れを告げた。
ところがこの時、アンソニーさんの女きょうだい、ドナ・ローラーさん(Donna Rhorer)は、脳死したはずのアンソニーさんが目を開けるのを見たそうで、当時のことを次のように振り返った。
「アンソニーは視線で私たちを追い、周囲を見回していました。それはまるで『ヘイ、僕はここにいるよ』と彼なりのやり方で私たちに知らせているようでした。ところが病院のスタッフには『ただの反射で、よく起こることだ』と言われただけでした。」
「そしてアンソニーが手術室に入って1時間ほど経った頃、医師が退室してきて、私たちを呼び寄せてこう言ったのです。『時期尚早だった。彼は目が覚めたんだ』とね。」
ドナさんはその後、医師から「彼はあまり長くは生きられないだろう」と言われたが、アンソニーさんは2021年11月19日に退院した。歩くことや話すことが困難で記憶力に問題が残っているものの、3年経った今でもドナさんと一緒に暮らしている。ただドナさんは、脳死と判定されながら臓器摘出手術の直前に目覚めたアンソニーさんについて、割り切れない気持ちを抱えていた。
ところが今年1月、「ケンタッキー州臓器提供団体(KODA)」の元職員ニコレッタ・マーティンさん(Nyckoletta Martin)から連絡を受け、「2021年10月、アンソニーさんがどんな状態だったのか」について詳細を知った。
それによるとアンソニーさんは、手術の朝に行われた心臓カテーテル検査の際、手足をばたつかせる反応を示していたが、医師は鎮静剤を投与して検査を継続し、臓器摘出の準備を進めたという。
また同じくKODAの職員で、臓器摘出手術を行う際に手術室にいたというナターシャ・ミラーさん(Natasha Miller)は、こう明かしたそうだ。
「患者を一目見た瞬間、何かがおかしいと気付きました。なぜなら彼は、全く亡くなった人には見えなかったのです。」
「彼はベッドの上で動き回っていました。まさに、のたうち回っていたのです。それで近くに行ってみると、涙を流しているのが分かりました。彼は泣いていたのです。」
2人の医師はその後、アンソニーさんの手術を継続することを拒否し、その場にいた誰もが大きな衝撃を受けていたという。また手術は最終的に中止されたものの、ナターシャさんは「臓器移植のコーディネーターはKODAの上司に事情を説明しましたが、彼女は『臓器を摘出する別の医師を探せ』と指示を受けていました」とも述べていた。
そして今年9月、ニコレッタさんはこの件について内部告発し、下院エネルギー・商業委員会に書簡を提出した。
脳死と判定されてから3年、ドナさんは「裏切られたと感じている」と怒りを示しており、TikTokで3年前の見送りの儀式の動画と、現在のアンソニーさんの姿を公開し「TJ(アンソニーさん)のために正義を!」と訴えている。
画像は『Metro.co.uk 「Organ donor ‘came back to life’ while doctors prepared to remove his heart」(Picture: TikTok/Ladonna Rhorer)(Picture: Hoover Rhorer family)(Picture: Facebook/Ladonna Rhorer)』『Daily Express US 「Man declared brain dead suddenly wakes up to his organs being harvested」(Image: TikTok)』より
(TechinsightJapan編集部 A.C.)