ケニー・オルテガ、この名を聞いて真っ先に思い浮かぶのは故マイケル・ジャクソンのドキュメンタリー映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』ではないだろうか。マイケルのファンはもちろん、この映画を観てケニーの人柄、才能を知った人も多い。“親友”であり“心友”のマイケルが世を去ってから6年。ディズニー・チャンネルにて年内放送予定の話題作『ディセンダント』のエグゼクティブ・プロデューサー兼監督として戻ってきたケニー・オルテガを、テックインサイト編集部が直撃した。
ケニーがスタジオ入りすると、緊張感が漂うスタジオの空気が一変して和やかになり、ケニーの笑顔と人柄がインタビュアー、テックインサイト編集長・村上あいの緊張を解きほぐした。
<マイケルはインスピレーションの源。マイケルはいつも傍にいる>
―早いものでマイケルが亡くなり6年になります。この6年という年月をどのように過ごされ、仕事に向き合ってこられたのでしょうか?
ケニー:常にマイケルのことは想っています。マイケルは私にとってインスピレーションの源でもあります。マイケル・ジャクソンの仕事に対する姿勢は、恐れというものを持たず、常に「オリジナルでいたい」「独自のものでありたい」というものでした。マイケルと私は、お互いに仕事のファンであり、協業というものを楽しみにしていました。私が自分の中でよく問いかけることは「マイケルだったらどう考えるだろう? どう思うだろう?」と。私の仕事人生で彼と過ごした経験は大切なもので、彼と仕事を一緒にできたことは大変幸せなことです。本当に勇敢なアーティストでした。マイケルは今でも自分の心の傍にいます。
<「配役はその人自身を知ることが大事」世界各地で選んだ素晴らしい役者に大満足>
―『ディセンダント』でもケニーさんの指導のもと、クールなダンスや歌を主人公たちが披露しています。彼らはオーディションによって選ばれたのでしょうか? それともケニーさんご自身が決めた配役なのでしょうか?
ケニー:非常に大規模なオーディションを実施しました。全米ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、カナダ(トロント、バンクーバー)、オーストラリア(メルボルン、シドニー)、イギリス(ロンドン)など、本当に色々なところで探していました。ディズニー・チャンネルのキャスティングのジュディー・テイラー氏、ラパデュラ氏、ハート氏と大勢の方を見てきました。また5か月という期間の中で一度だけでなく(役者たちには)何度も来てもらい、ダヴ・キャメロン(主人公でマレフィセントの娘を演じるマル役)と他の主要キャストについては、役にとって正しい配役をすることだけではなく、キャスト自体の相性も見ていました。歌や踊りだけではなく、実際に会話をして“その人がどういう人なのか”、“どういうことを考えているのか”を知ることまで行いました。関わった全ての人の意見として言えることは、結果として自分たちが選んだ役者さんたち、そして配役は大変満足のいくものになったということです。
<ダンスは愛! ダンスは運命! 両親のダンス好きがケニー・オルテガの未来を築く>
―オルテガさんご自身についても少し伺わせて下さい。ご自身がダンスを始められたきっかけは何だったのでしょうか?
ケニー:今でもよく覚えているのですが、自分が幼い時、姉と2人の従妹が通っていたダンス教室へ母に連れられて行ったのです。その時、自分はステージのところに行き踊り出してしまい、母はそれを止めて連れ出そうとしたのですが、インストラクターの先生が「いいの、そのまま踊らせて」と言ってくれてずっと踊っていたんです(笑)。両親はダンスが好きで、家では常に音楽がかかっていました。レコードをかけると、父がクルクルと回りながら母と一緒に踊り、2人が本当に笑いながら楽しそうに踊っている光景を見て“自分にとってダンス=愛だ! ダンスは愛なんだ!”ということが分かりました。ただ、当時男の子がダンスをするというのは大変難しい時代でもありました。いじめられ周りに理解してもらえない、否定的でネガティブな経験もたくさんあったのですが、自分の気持ちの中では絶対これ(ダンス)は、自分がやること、やりたいこと、追求するもの、運命なんだと思い、屈せずやってきました。
<エネルギッシュなダヴ・キャメロンに太鼓判。「知性・深み・ユーモア」を兼ね備えた女優>
―主人公マル役にダヴ・キャメロン、マルの母親役にクリスティン・チェノウェスと出演者も話題になっています。主演のダヴ・キャメロンはどんな子だったのでしょうか?
ケニー:ダヴが幼かった頃、彼女の夢はクリスティン・チェノウェスと共演するということでした。今回クリスティンが彼女の母親役を演じると聞いて、大興奮してとても喜んでいましたね(笑)。ダヴには若い女優としての知性を感じました。彼女は人としての深みやユーモアもあり、彼女のエネルギーが部屋全体を明るくし、雰囲気をよくしてくれました。彼女のオーディションは15回くらいやっているのですが、毎回ずっと一貫した姿勢なのです。絶対にエネルギーが落ちることなく、私たちも“彼女だったら”と自信を持つことができました。
<ケニー・オルテガの作品の原点は「イマジネーションが現実を創造する」>
―前回来日された時に「イマジネーションを武器に新境地に挑みたい」とおっしゃっておられました。本作ではそのようなところが盛り込まれていますか? また3Dの撮影にも大変興味をお持ちでしたが、3D映像は使われましたか?
ケニー:(嬉しそうに笑いながら記者にケニー自ら握手を求める)私が耳にした時、心に残ったある表現があります。初来日した時だったと思うのですが、1970年代に“ザ・チューブス”というロックバンドの仕事をしていた時に「イマジネーションが現実を創造する」という言葉があり、とても心に残りました。『ディセンダント』にしても他の自分の作品にしても、自分の仕事の姿勢としては「自分のイマジネーション(創造性)を使いそれが現実になる」ということを念頭においています。視覚的にはCGなどの特殊効果は使っていますが、3Dは本作では使用していません。3Dにも魅了されていますが3D以降の4Kなど開発されている技術にも関心があり、10年後のこの世界はどうなっているか、映画もどうなっているのか興味があります。将来的には映画会社の作り手として自分の作品にも新しい技術を取りこんでいきたいと思います。今、関心があるのは自分自身を映画の中におけるという技術で、実際に手を伸ばしたら触れることができたりなど“拡張現実”というものであったり、技術が構築されていく発想や物を個人的に楽しんでいます。
<素晴らしいダンスをする3人組の男の子との出会いに感激!>
―今回の来日で印象に残ったことはありますか?
ケニー:福岡に行って河川敷で美味しいラーメンを頂いた時に、3人の十代の少年たちがサイリュームを持ってダンスをする姿があまりにも素晴らしかったので、ビデオを撮って彼らの所に行き「素晴らしい!! 自分の夢を追い続けなさい」と激励しました。この光景もそうですが、今は世界的にも男の子が踊るということが受け入れられています。若い男の子がたくさん踊って、ストリートや色々な所でダンスが広がっているのはとてもいいと思います。“フルーツバスケット”(福岡のダンスグループ)の君たちと絶対いつかどこかで会いたい。
世界的に著名なケニー・オルテガ。驕り高ぶることのない気さくな人柄には、誰しもが感銘を受ける。故マイケル・ジャクソンの心友であったケニーはマイケルの死後、絶望的な深い悲しみに打ちひしがれたことは想像に難くない。マイケルを常に想い続けるケニーを、いつもマイケルが傍で見守っている。生前マイケルがケニーに言った「何も怖がることはないよ。必ず実現できるよ」という言葉が、ケニーの心の中にはいつもあるのだろう。ケニーが生み出す素晴らしい世界は、両親の愛があふれるダンスとマイケルの存在から生まれることを確信した。“ダンスは愛”その言葉はケニー・オルテガそのものである。
(TechinsightJapan編集部 うめ智子)
ケニーがスタジオ入りすると、緊張感が漂うスタジオの空気が一変して和やかになり、ケニーの笑顔と人柄がインタビュアー、テックインサイト編集長・村上あいの緊張を解きほぐした。
<マイケルはインスピレーションの源。マイケルはいつも傍にいる>
―早いものでマイケルが亡くなり6年になります。この6年という年月をどのように過ごされ、仕事に向き合ってこられたのでしょうか?
ケニー:常にマイケルのことは想っています。マイケルは私にとってインスピレーションの源でもあります。マイケル・ジャクソンの仕事に対する姿勢は、恐れというものを持たず、常に「オリジナルでいたい」「独自のものでありたい」というものでした。マイケルと私は、お互いに仕事のファンであり、協業というものを楽しみにしていました。私が自分の中でよく問いかけることは「マイケルだったらどう考えるだろう? どう思うだろう?」と。私の仕事人生で彼と過ごした経験は大切なもので、彼と仕事を一緒にできたことは大変幸せなことです。本当に勇敢なアーティストでした。マイケルは今でも自分の心の傍にいます。
<「配役はその人自身を知ることが大事」世界各地で選んだ素晴らしい役者に大満足>
―『ディセンダント』でもケニーさんの指導のもと、クールなダンスや歌を主人公たちが披露しています。彼らはオーディションによって選ばれたのでしょうか? それともケニーさんご自身が決めた配役なのでしょうか?
ケニー:非常に大規模なオーディションを実施しました。全米ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、カナダ(トロント、バンクーバー)、オーストラリア(メルボルン、シドニー)、イギリス(ロンドン)など、本当に色々なところで探していました。ディズニー・チャンネルのキャスティングのジュディー・テイラー氏、ラパデュラ氏、ハート氏と大勢の方を見てきました。また5か月という期間の中で一度だけでなく(役者たちには)何度も来てもらい、ダヴ・キャメロン(主人公でマレフィセントの娘を演じるマル役)と他の主要キャストについては、役にとって正しい配役をすることだけではなく、キャスト自体の相性も見ていました。歌や踊りだけではなく、実際に会話をして“その人がどういう人なのか”、“どういうことを考えているのか”を知ることまで行いました。関わった全ての人の意見として言えることは、結果として自分たちが選んだ役者さんたち、そして配役は大変満足のいくものになったということです。
<ダンスは愛! ダンスは運命! 両親のダンス好きがケニー・オルテガの未来を築く>
―オルテガさんご自身についても少し伺わせて下さい。ご自身がダンスを始められたきっかけは何だったのでしょうか?
ケニー:今でもよく覚えているのですが、自分が幼い時、姉と2人の従妹が通っていたダンス教室へ母に連れられて行ったのです。その時、自分はステージのところに行き踊り出してしまい、母はそれを止めて連れ出そうとしたのですが、インストラクターの先生が「いいの、そのまま踊らせて」と言ってくれてずっと踊っていたんです(笑)。両親はダンスが好きで、家では常に音楽がかかっていました。レコードをかけると、父がクルクルと回りながら母と一緒に踊り、2人が本当に笑いながら楽しそうに踊っている光景を見て“自分にとってダンス=愛だ! ダンスは愛なんだ!”ということが分かりました。ただ、当時男の子がダンスをするというのは大変難しい時代でもありました。いじめられ周りに理解してもらえない、否定的でネガティブな経験もたくさんあったのですが、自分の気持ちの中では絶対これ(ダンス)は、自分がやること、やりたいこと、追求するもの、運命なんだと思い、屈せずやってきました。
<エネルギッシュなダヴ・キャメロンに太鼓判。「知性・深み・ユーモア」を兼ね備えた女優>
―主人公マル役にダヴ・キャメロン、マルの母親役にクリスティン・チェノウェスと出演者も話題になっています。主演のダヴ・キャメロンはどんな子だったのでしょうか?
ケニー:ダヴが幼かった頃、彼女の夢はクリスティン・チェノウェスと共演するということでした。今回クリスティンが彼女の母親役を演じると聞いて、大興奮してとても喜んでいましたね(笑)。ダヴには若い女優としての知性を感じました。彼女は人としての深みやユーモアもあり、彼女のエネルギーが部屋全体を明るくし、雰囲気をよくしてくれました。彼女のオーディションは15回くらいやっているのですが、毎回ずっと一貫した姿勢なのです。絶対にエネルギーが落ちることなく、私たちも“彼女だったら”と自信を持つことができました。
<ケニー・オルテガの作品の原点は「イマジネーションが現実を創造する」>
―前回来日された時に「イマジネーションを武器に新境地に挑みたい」とおっしゃっておられました。本作ではそのようなところが盛り込まれていますか? また3Dの撮影にも大変興味をお持ちでしたが、3D映像は使われましたか?
ケニー:(嬉しそうに笑いながら記者にケニー自ら握手を求める)私が耳にした時、心に残ったある表現があります。初来日した時だったと思うのですが、1970年代に“ザ・チューブス”というロックバンドの仕事をしていた時に「イマジネーションが現実を創造する」という言葉があり、とても心に残りました。『ディセンダント』にしても他の自分の作品にしても、自分の仕事の姿勢としては「自分のイマジネーション(創造性)を使いそれが現実になる」ということを念頭においています。視覚的にはCGなどの特殊効果は使っていますが、3Dは本作では使用していません。3Dにも魅了されていますが3D以降の4Kなど開発されている技術にも関心があり、10年後のこの世界はどうなっているか、映画もどうなっているのか興味があります。将来的には映画会社の作り手として自分の作品にも新しい技術を取りこんでいきたいと思います。今、関心があるのは自分自身を映画の中におけるという技術で、実際に手を伸ばしたら触れることができたりなど“拡張現実”というものであったり、技術が構築されていく発想や物を個人的に楽しんでいます。
<素晴らしいダンスをする3人組の男の子との出会いに感激!>
―今回の来日で印象に残ったことはありますか?
ケニー:福岡に行って河川敷で美味しいラーメンを頂いた時に、3人の十代の少年たちがサイリュームを持ってダンスをする姿があまりにも素晴らしかったので、ビデオを撮って彼らの所に行き「素晴らしい!! 自分の夢を追い続けなさい」と激励しました。この光景もそうですが、今は世界的にも男の子が踊るということが受け入れられています。若い男の子がたくさん踊って、ストリートや色々な所でダンスが広がっているのはとてもいいと思います。“フルーツバスケット”(福岡のダンスグループ)の君たちと絶対いつかどこかで会いたい。
世界的に著名なケニー・オルテガ。驕り高ぶることのない気さくな人柄には、誰しもが感銘を受ける。故マイケル・ジャクソンの心友であったケニーはマイケルの死後、絶望的な深い悲しみに打ちひしがれたことは想像に難くない。マイケルを常に想い続けるケニーを、いつもマイケルが傍で見守っている。生前マイケルがケニーに言った「何も怖がることはないよ。必ず実現できるよ」という言葉が、ケニーの心の中にはいつもあるのだろう。ケニーが生み出す素晴らしい世界は、両親の愛があふれるダンスとマイケルの存在から生まれることを確信した。“ダンスは愛”その言葉はケニー・オルテガそのものである。
(TechinsightJapan編集部 うめ智子)