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【エンタがビタミン♪】坂本龍一 『戦メリ』の曲は「意識をなくし目覚めたら譜面になっていた」

TechinsightJapan 2017年11月1日 18時8分

10月25日から東京・六本木を中心に開催中の『第30回 東京国際映画祭』で第4回『SAMURAI(サムライ)賞』を授賞したミュージシャンの坂本龍一(65)が11月1日、受賞を記念したスペシャルトークイベントに登場した。これまでに『戦場のメリークリスマス』を皮切りに、『ラストエンペラー』『レヴェナント:蘇えりし者』『怒り』などいくつもの映画音楽を手がけてきた彼が「映像と音の関係」について制作秘話などを語った。

一般の聴講者を前に登場した坂本龍一は、まずモデレーターを務めた音楽・文芸評論家の小沼純一氏からSAMURAI賞の受賞を祝福されると、「よく分からないですけど、侍ですかね?」と笑わせた。同賞は東京国際映画祭により、比類なき感性で「サムライ」のごとく常に時代を斬り開く革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を称えるものだ。



トークイベントで坂本龍一は、映画音楽を手がけた最初の作品『戦場のメリークリスマス』(1983年)で、音楽を担当することになったきっかけから語り出した。「生意気ですが自分からオファーしました」と述懐した坂本は、大島渚監督から俳優として出演してほしいと言われ「何を血迷ったか、『音楽もやらせてくれるなら出てもいい』と言った。大島さんは『お願いします』と。役者をやるのも初めて。(映画音楽をやるのも初めてで)初めてのことが2つも重なった。大島監督は勇気あるなーと思いますね」と感心した。



実際に曲を作り始めたが「大島監督は教えてくれない。『好きにやってくれ』と言われてもねぇ…」と手探りで始めたようだが、まずテーマを考えたという。「メリークリスマスだからクリスマスソングだろうと。有名なクリスマスソングを改めて聞いてみると、鐘のような音が入っていることが多い。だけどこの映画のクリスマスは南洋ですよね」と理詰めで考えて2週間ぐらい試行錯誤した。するとある日の午後にビアノであれこれやっていたところ「ふと意識がなくなったんですよ。すると目覚めてみたら譜面が書いてある。便利ですよね。基本となるのは一瞬でできたので自分で作った気がしないんですよ」と驚きのエピソードを明かした。

また、レオナルド・ディカプリオが悲願のオスカーを獲得した『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)では、「あえて途切れ途切れでなるべく音楽にしないようにした。この映画の主役は自然の音。風、鳥やコヨーテの鳴き声が主役で、音楽はそれを際立たせるためのもの。そこは監督の意向ともバッチリ合っていた」とあくまでもそれぞれの作品の中での音楽の役割について追求している姿勢を垣間見せた。



坂本は「結論から言っちゃうと、いい映画は音楽って必要ないんですよ。自分の職業を否定するようですが」「映像に力があるものはそんなに音楽は要らない。音楽はどうしても補完という部分が映画の中では大きいので」としつつも「(映像と音楽が)なるべく1+1=3になるようにしたい」と理想を掲げた。



聴講者からのQ&Aを終えて、最後に坂本は「今日言いたかったことは、(映像の中ではなく単に)音楽として存在しているのと、映画の中のコンテンツに入った音楽との役割は違うと思う。存在の仕方も違うと僕は思った。映画の中の音楽は、音楽としては仮に役不足でも十分ある種の役割を果たす場合も多々ある。そこが分かると映画を観ていても面白いのではないかと思う。僕も刺激を受けて、映画音楽でいろいろな実験をすることで自分の作る音楽が変わってくることも当然あります。音楽としての文法を壊していきたいと強く最近思っているのは映画の影響が強いかもしれない」と自身の音楽論と心境を語った。



同映画祭では、5年にわたる本人への密着取材により実現した坂本龍一のドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto:CODA』を特別招待作品部門にて上映する。
(TechinsightJapan編集部 関原りあん)

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