水不足が深刻化している南アフリカのケープタウン。先月30日に「ダムの貯水率が13.5%になる“Day ZERO”は4月16日あたり」と発表され、市民はパニックになった。この政策で水道水が出なくなると、市民はケープタウン市内200か所に設置される水供給ポイントへ行き、1人あたり25リットルしか水を汲むことができない。しかしこの水不足が、すでに1990年に予測されていたことが明らかになった。
1月31日のケープタウンのダム貯水率は26.1%。ホテルでは観光客のキャンセルが相次ぎ、学校は“Day ZERO”になった場合には休校する可能性を示唆している。“Day ZERO”が間近に迫ったことで、ケープタウン市民はようやく危機感を持ち始めた。
その日まであと2か月ほどだが、市民は水を求めてスーパーなどに殺到している。一度使った水は「グレイウォーター」と呼びトイレの水に再利用できるが、調理や飲料、体を洗うための水は水道水が使えなくなると市販の水に頼ることになるからだ。現在ケープタウンのスーパーで水は常に売り切れ状態で、入荷すると1分も経たないうちに完売となってしまう。1970年代に日本で起こったオイルショックのような光景である。オンラインサイトでも水は入荷待ちで、水を使わないで済むウェットティッシュやハンドウォッシュ、ドライシャンプー、ボディジェルなども品切れ状態とのことだ。
さらに2月1日からは水の制限レベルが“6B”となり、一日の1人あたりの使用量は87リットルから50リットルになった。50リットルとはトイレの水を約10回流すだけの量しかない。
このような危機的状態の中で、1990年4月26日に発行された『Cape Times』紙の記事が注目されている。それによると水研究委員会(Water Research Commission)が「17年後の2007年にはケープタウンの水がなくなる。今後は排水を再処理して利用することが不可欠になるのではないか」と警告しているのだ。
故ネルソン・マンデラ氏が初の黒人大統領に就任し人種隔離政策(アパルトヘイト)が廃止された1994年以降、南アフリカでは水資源に関する議論が盛んになり、1998年には水利大臣アズマル・カダール氏が中心となって法改正が行われた。また西ケープ州6大ダムの一つと言われるバーグリバーダム(Berg River Dam)の建設が提案され、2009年にこのダムが稼働した。
その後は2012年に2度ほどエルニーニョ現象が起こったが、大した被害を被らなかったケープタウンは危機感を抱くことがなかった。また市の人口が1996年と比較して約2倍も増加しているにもかかわらず、経済成長を重要課題として水不足への対策はなおざりにされてきた。
2014年~15年のエルニーニョ現象で世界的に深刻な影響が懸念されるようになると、市ではようやく水の使用制限を始めたが、市民のほとんどが「何とかなるだろう」という感覚で過ごしてきた。しかし昨年は冬の間に期待されていた雨があまり降らず、ここにきてようやく「雨乞いに頼っている場合ではない」と本腰を入れ始めたようだ。
ケープタウン市では現在、海水淡水化設備を3か所に建設中としており、5月までの稼働が期待されているが詳細は発表されていない。市長は「水不足は異常気象によるもので予測できなかった」としているものの、28年も前から予測されていた水の危機。ここまで深刻になる前に対策が取られてこなかったことが残念でならない。
画像は『IOL 2018年2月1日付「#WaterCrisis: 1990 article shows Day Zero plans should’ve began years ago」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)
1月31日のケープタウンのダム貯水率は26.1%。ホテルでは観光客のキャンセルが相次ぎ、学校は“Day ZERO”になった場合には休校する可能性を示唆している。“Day ZERO”が間近に迫ったことで、ケープタウン市民はようやく危機感を持ち始めた。
その日まであと2か月ほどだが、市民は水を求めてスーパーなどに殺到している。一度使った水は「グレイウォーター」と呼びトイレの水に再利用できるが、調理や飲料、体を洗うための水は水道水が使えなくなると市販の水に頼ることになるからだ。現在ケープタウンのスーパーで水は常に売り切れ状態で、入荷すると1分も経たないうちに完売となってしまう。1970年代に日本で起こったオイルショックのような光景である。オンラインサイトでも水は入荷待ちで、水を使わないで済むウェットティッシュやハンドウォッシュ、ドライシャンプー、ボディジェルなども品切れ状態とのことだ。
さらに2月1日からは水の制限レベルが“6B”となり、一日の1人あたりの使用量は87リットルから50リットルになった。50リットルとはトイレの水を約10回流すだけの量しかない。
このような危機的状態の中で、1990年4月26日に発行された『Cape Times』紙の記事が注目されている。それによると水研究委員会(Water Research Commission)が「17年後の2007年にはケープタウンの水がなくなる。今後は排水を再処理して利用することが不可欠になるのではないか」と警告しているのだ。
故ネルソン・マンデラ氏が初の黒人大統領に就任し人種隔離政策(アパルトヘイト)が廃止された1994年以降、南アフリカでは水資源に関する議論が盛んになり、1998年には水利大臣アズマル・カダール氏が中心となって法改正が行われた。また西ケープ州6大ダムの一つと言われるバーグリバーダム(Berg River Dam)の建設が提案され、2009年にこのダムが稼働した。
その後は2012年に2度ほどエルニーニョ現象が起こったが、大した被害を被らなかったケープタウンは危機感を抱くことがなかった。また市の人口が1996年と比較して約2倍も増加しているにもかかわらず、経済成長を重要課題として水不足への対策はなおざりにされてきた。
2014年~15年のエルニーニョ現象で世界的に深刻な影響が懸念されるようになると、市ではようやく水の使用制限を始めたが、市民のほとんどが「何とかなるだろう」という感覚で過ごしてきた。しかし昨年は冬の間に期待されていた雨があまり降らず、ここにきてようやく「雨乞いに頼っている場合ではない」と本腰を入れ始めたようだ。
ケープタウン市では現在、海水淡水化設備を3か所に建設中としており、5月までの稼働が期待されているが詳細は発表されていない。市長は「水不足は異常気象によるもので予測できなかった」としているものの、28年も前から予測されていた水の危機。ここまで深刻になる前に対策が取られてこなかったことが残念でならない。
画像は『IOL 2018年2月1日付「#WaterCrisis: 1990 article shows Day Zero plans should’ve began years ago」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)