HIV陽性であるにもかかわらず、出会った男性を騙して性交渉し意図的にHIVに感染させたとして、このほどゲイの美容師の男に最短12年の懲役刑が下された。イギリスでは、他者をHIVに感染させようとして身体的危害を加えた者への初の実刑判決となった。英メディア『Mirror』『The Sun』『Metro』などが伝えている。
スコットランド・エジンバラ出身の美容師ダリル・ロウ(27歳)は、2015年4月にHIV陽性と診断された。その結果に対してできるだけ多くの人に感染させてやろうと復讐心を抱いたダリルは、10月にイースト・サセックス州のブライトンに引っ越してから2016年2月までの間、ゲイのデートアプリ「Grindr」を通して出会った男性8人と性交渉した。ダリルは自分がHIV陽性であることを隠し、コンドーム無しで性交渉に及んだ時もあれば、相手がコンドーム使用を望むとあらかじめ巧妙に穴を開けたものを用意して安全な性交渉をしている振りをしていた。
2016年2月5日、Sexual health clinic(性と健康クリニック)のスタッフが、患者2名が似たような人物からHIVに感染させられたとして通報したことから、警察はダリルを逮捕。事情聴取でダリルは自分がHIV陽性であることを否定し、2人の男性のことも知らないと嘘をついた。ダリルは釈放されたが、2月23日には警察と衛生管理局が「スコットランドの訛りを持つ20代男と性行為をした人は検査を受けるように」と注意喚起を促し、新たな被害者が明らかとなった。
その後、サセックス州からイギリス北東部ノーサンバーランドのベリック・アポン・ツイードに逃走していたダリルを警察は再び事情聴取した。警察ではこの頃にはダリルのカルテを入手しており、ダリルによる「HIV陽性ではない」という供述が嘘だったことも判明していた。しかし保釈金を支払うことで11月まで保釈のみとなったが、ダリルは再び逃亡。11月にサセックス州警察とノーサンブリア警察が合同でダリルを指名手配し行方を追っていたところ、ノース・タインサイドのウォールセンドである男性の自宅に隠れていたダリルを発見、逮捕した。ダリルはさらに2人の男性をターゲットにしていたようで、この時本人のリュックからは穴が開けられたコンドームが見つかっている。
12月に7件の重大な身体的危害を与えた容疑と、それを意図した1件の容疑で起訴されたダリルの裁判はニューカッスル刑事法院からイースト・サセックス州のルイス刑事法院へと移された。2017年2月に行われた公判でダリルは容疑を否認していたが、この時には更なる被害者も判明しており、ダリルには有罪判決が確定した。
被害者となった1人の男性は、ダリルから「俺、HIV陽性なんだよね」と軽く言われたという。それからの日々は自殺まで考えるようになり、他の人との交際にも懐疑的になってしまったと話す。別の被害者男性は「彼は私の人生をぶち壊しました。こんなことをされるのなら、まだ殺してくれた方が良かった」と嘆いた。また子供の頃にエイズで両親を2人とも亡くし、自身の行為にも慎重になっていたという被害者男性は「2015年11月3日、私は彼に裏切られました。HIV陽性と診断されて以来、自分の一部は死んだも同然です」と明かしている。
結果として、ダリルには2015年10月~2016年2月までの間に5件の意図的で重大な身体的危害を加えた罪およびそれを意図した5件の罪で最短12年の懲役刑が科せられた。これまで治療を拒否し、医師のアドバイスも無視し続けていたダリルは、検察官が被害者からの声明文を読み上げた時にも顔色一つ変えることはなかったという。クリスティーン・ヘンソン判事は、「嫌悪に満ちた悪質な暴力だ。残酷で身勝手な行為により5人の被害者を不幸な結果に陥らせた。加害者がもう危害を加えないとは言い難いため、終身刑は妥当であると言えよう」と述べた。これによりダリルは、故意にHIVを感染させようとし被害者に“重大な身体的危害(GBH)”を加えた罪で刑を科されたイギリスで初のケースとなった。
画像は『The Sun 2018年4月18日付「‘HE IS grotesque’ Who is Daryll Rowe? Hairdresser jailed for life for trying to infect men he met on gay dating app Grindr with HIV」(PA:Press Association)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)
スコットランド・エジンバラ出身の美容師ダリル・ロウ(27歳)は、2015年4月にHIV陽性と診断された。その結果に対してできるだけ多くの人に感染させてやろうと復讐心を抱いたダリルは、10月にイースト・サセックス州のブライトンに引っ越してから2016年2月までの間、ゲイのデートアプリ「Grindr」を通して出会った男性8人と性交渉した。ダリルは自分がHIV陽性であることを隠し、コンドーム無しで性交渉に及んだ時もあれば、相手がコンドーム使用を望むとあらかじめ巧妙に穴を開けたものを用意して安全な性交渉をしている振りをしていた。
2016年2月5日、Sexual health clinic(性と健康クリニック)のスタッフが、患者2名が似たような人物からHIVに感染させられたとして通報したことから、警察はダリルを逮捕。事情聴取でダリルは自分がHIV陽性であることを否定し、2人の男性のことも知らないと嘘をついた。ダリルは釈放されたが、2月23日には警察と衛生管理局が「スコットランドの訛りを持つ20代男と性行為をした人は検査を受けるように」と注意喚起を促し、新たな被害者が明らかとなった。
その後、サセックス州からイギリス北東部ノーサンバーランドのベリック・アポン・ツイードに逃走していたダリルを警察は再び事情聴取した。警察ではこの頃にはダリルのカルテを入手しており、ダリルによる「HIV陽性ではない」という供述が嘘だったことも判明していた。しかし保釈金を支払うことで11月まで保釈のみとなったが、ダリルは再び逃亡。11月にサセックス州警察とノーサンブリア警察が合同でダリルを指名手配し行方を追っていたところ、ノース・タインサイドのウォールセンドである男性の自宅に隠れていたダリルを発見、逮捕した。ダリルはさらに2人の男性をターゲットにしていたようで、この時本人のリュックからは穴が開けられたコンドームが見つかっている。
12月に7件の重大な身体的危害を与えた容疑と、それを意図した1件の容疑で起訴されたダリルの裁判はニューカッスル刑事法院からイースト・サセックス州のルイス刑事法院へと移された。2017年2月に行われた公判でダリルは容疑を否認していたが、この時には更なる被害者も判明しており、ダリルには有罪判決が確定した。
被害者となった1人の男性は、ダリルから「俺、HIV陽性なんだよね」と軽く言われたという。それからの日々は自殺まで考えるようになり、他の人との交際にも懐疑的になってしまったと話す。別の被害者男性は「彼は私の人生をぶち壊しました。こんなことをされるのなら、まだ殺してくれた方が良かった」と嘆いた。また子供の頃にエイズで両親を2人とも亡くし、自身の行為にも慎重になっていたという被害者男性は「2015年11月3日、私は彼に裏切られました。HIV陽性と診断されて以来、自分の一部は死んだも同然です」と明かしている。
結果として、ダリルには2015年10月~2016年2月までの間に5件の意図的で重大な身体的危害を加えた罪およびそれを意図した5件の罪で最短12年の懲役刑が科せられた。これまで治療を拒否し、医師のアドバイスも無視し続けていたダリルは、検察官が被害者からの声明文を読み上げた時にも顔色一つ変えることはなかったという。クリスティーン・ヘンソン判事は、「嫌悪に満ちた悪質な暴力だ。残酷で身勝手な行為により5人の被害者を不幸な結果に陥らせた。加害者がもう危害を加えないとは言い難いため、終身刑は妥当であると言えよう」と述べた。これによりダリルは、故意にHIVを感染させようとし被害者に“重大な身体的危害(GBH)”を加えた罪で刑を科されたイギリスで初のケースとなった。
画像は『The Sun 2018年4月18日付「‘HE IS grotesque’ Who is Daryll Rowe? Hairdresser jailed for life for trying to infect men he met on gay dating app Grindr with HIV」(PA:Press Association)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)