このほどフランスのパリから、世界で初めて同一患者に2度目の顔面移植手術を行い、見事成功したという話題が届いた。患者である男性は昨年末、1度目に移植した顔面が拒絶反応を起こしたために切除し、顔の無い生活を送らざるを得ない状態だったことなどが明かされた。『CBC.ca』『ABC 7』などが伝えている。
今年1月、パリのジョルジュ・ポンピドー欧州病院(the Georges-Pompidou European Hospital)にて、ジェローム・アモンさん(Jérôme Hamon、43)が2度目の顔面移植手術を受けた。執刀したのは形成外科のロラン・ランティエリ教授(Pr Laurent Lantieri)が率いる医療チームである。
アモンさんが1度目の顔面移植手術を受けたのは2010年のことだった。当時の彼は神経線維腫症I型(neurofibromatosis type1)という皮膚の病変を特徴とし、骨、眼、神経系などに様々な病変を生じる遺伝性疾患に悩まされていた。写真の左側が顔面移植を受ける前のアモンさんの姿である。
この時、執刀したのもランティエリ教授であった。移植された顔面は60代男性のものであったが手術は無事成功し、術後3か月経った頃にアモンさんは外出もできるようになったという。しかし2016年の夏頃、顔面に慢性的な拒絶反応の徴候が出始めたのだ。
そのためアモンさんは2017年10月にフランスの生物医学機関により、再び全国移植待機リストに登録されることとなった。ドナーを待ち続けていたアモンさんだが、拒絶反応が酷く顔面が壊死し始めたため、同年11月下旬に移植した顔面を全て切除した。そして集中治療室にて、局所感染や拒絶反応による免疫学的問題により引き起こされる合併症を防ぐため数週間の徹底的なケアが施された。
約1か月半の間、アモンさんの顔には皮膚が無くまぶたや耳も無い状態だった。食事を摂ることや話すこともできず、相手の声を少し聞き取ることはできても意思伝達には頭を少し揺らすことしかできなかったという。
その後、ついにドナーが見つかり2度目の移植手術を受けることになった。移植を受ける前にアモンさんは体内の血液を全て入れ替えなければならなかった。そして今年1月15日の午後一番に始まった手術は、翌16日の早朝に無事終了した。それは血管柄付複合組織移植は慢性的な拒否反応が起きた場合でも(顔と手の場合に限る)再移植が可能であることを、世界で初めて症例として示すものだった。
しかし油断は禁物で、アモンさんは拒絶反応を起こす可能性のある抗体を排除するために血漿(けっしょう)浄化療法を含む免疫治療を続けなければならなかった。それだけではなく、今のアモンさんは精神的なサポートと言語療法を受けており、それは長期間に及ぶものとみられている。
アモンさんは現在43歳だが、今回移植した顔面は22歳男性のものだったため、随分と若返ったように見える。アモンさん自身もフランスのテレビ番組で「私は43歳だがドナーは22歳だったので、20歳くらいに若返ることができました」と少し冗談めいた発言をしていた。
今回の移植手術について、アメリカで顔面移植を行っているハーバード大学のボダン・ポマハック医師(Dr. Bohdan Pomahac)は「今後、患者が増えることによって同様の移植手術が一般的になるだろう」と話している。
画像提供「ASSISTANCE PUBLIQUE HÔPITAUX DE PARIS UNIVERSITY HOSPITAL OF ÎLE-DE-FRANCE」(Service presse AP-HP)
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)
今年1月、パリのジョルジュ・ポンピドー欧州病院(the Georges-Pompidou European Hospital)にて、ジェローム・アモンさん(Jérôme Hamon、43)が2度目の顔面移植手術を受けた。執刀したのは形成外科のロラン・ランティエリ教授(Pr Laurent Lantieri)が率いる医療チームである。
アモンさんが1度目の顔面移植手術を受けたのは2010年のことだった。当時の彼は神経線維腫症I型(neurofibromatosis type1)という皮膚の病変を特徴とし、骨、眼、神経系などに様々な病変を生じる遺伝性疾患に悩まされていた。写真の左側が顔面移植を受ける前のアモンさんの姿である。
この時、執刀したのもランティエリ教授であった。移植された顔面は60代男性のものであったが手術は無事成功し、術後3か月経った頃にアモンさんは外出もできるようになったという。しかし2016年の夏頃、顔面に慢性的な拒絶反応の徴候が出始めたのだ。
そのためアモンさんは2017年10月にフランスの生物医学機関により、再び全国移植待機リストに登録されることとなった。ドナーを待ち続けていたアモンさんだが、拒絶反応が酷く顔面が壊死し始めたため、同年11月下旬に移植した顔面を全て切除した。そして集中治療室にて、局所感染や拒絶反応による免疫学的問題により引き起こされる合併症を防ぐため数週間の徹底的なケアが施された。
約1か月半の間、アモンさんの顔には皮膚が無くまぶたや耳も無い状態だった。食事を摂ることや話すこともできず、相手の声を少し聞き取ることはできても意思伝達には頭を少し揺らすことしかできなかったという。
その後、ついにドナーが見つかり2度目の移植手術を受けることになった。移植を受ける前にアモンさんは体内の血液を全て入れ替えなければならなかった。そして今年1月15日の午後一番に始まった手術は、翌16日の早朝に無事終了した。それは血管柄付複合組織移植は慢性的な拒否反応が起きた場合でも(顔と手の場合に限る)再移植が可能であることを、世界で初めて症例として示すものだった。
しかし油断は禁物で、アモンさんは拒絶反応を起こす可能性のある抗体を排除するために血漿(けっしょう)浄化療法を含む免疫治療を続けなければならなかった。それだけではなく、今のアモンさんは精神的なサポートと言語療法を受けており、それは長期間に及ぶものとみられている。
アモンさんは現在43歳だが、今回移植した顔面は22歳男性のものだったため、随分と若返ったように見える。アモンさん自身もフランスのテレビ番組で「私は43歳だがドナーは22歳だったので、20歳くらいに若返ることができました」と少し冗談めいた発言をしていた。
今回の移植手術について、アメリカで顔面移植を行っているハーバード大学のボダン・ポマハック医師(Dr. Bohdan Pomahac)は「今後、患者が増えることによって同様の移植手術が一般的になるだろう」と話している。
画像提供「ASSISTANCE PUBLIQUE HÔPITAUX DE PARIS UNIVERSITY HOSPITAL OF ÎLE-DE-FRANCE」(Service presse AP-HP)
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)