心を通わせる友人というのは、遠く離れた場所に住んでいようがしばらく疎遠になっていようが、互いに直感が働くものなのだろう。このほどオーストラリアに住む旧友へ久しぶりに電話をしたニュージーランドの友人が、ビデオ通話「FaceTime」で旧友の異変を感じた。咄嗟の機転で救急車の手配を頼んだ友人は、脳卒中に陥った旧友の命を危機一髪のところで救ったのである。『Storytrender』『Metro』などが伝えた。
オーストラリアのブリスベンに住む14歳と15歳の子供を持つシングルマザー、ジョディー・ウィルキンスさん(48歳)は3月12日(報道により13日とも)の朝、目覚めて激しい偏頭痛に見舞われた。ソファでしばらく体を休めていた時に、旧友のキャリーズ・シンプソンさん(48歳)からFaceTimeに電話があった。
ニュージーランドのオークランド在住のキャリーズさんとジョディーさんは、13歳の頃からニュージーランドで育った仲だった。ジョディーさんがオーストラリアへ引っ越してからも交流は続いたが、互いに忙しく6年も会っておらず、最近は電話で話す機会もほとんどなかったという。この日は久しぶりにキャリーズさんから連絡があったものの、ジョディーさんはあまりの頭痛のために電話に出ることをためらった。しかしなぜか「電話に出なきゃ」という直感が働き、電話を取った。
1時間ほど話をしていた2人だったが、キャリーズさんがジョディーさんの異変に気付いた。突然ジョディーさんの言葉が不明瞭になり、意味のわからないことを話し出したからだ。キャリーズさんはかつて友人が脳卒中を患ったことがあり、ジョディーさんの兆候から脳卒中になったのではと思った。しかし2人は離れた国からの電話中で、緊急通報するにもキャリーズさんはオーストラリアの緊急通報先を知らなかった。そこでキャリーズさんはジョディーさんの元夫に連絡し、すぐに救急車を要請するよう頼んだ。
病院に搬送されたジョディーさんは検査の結果、血栓ができやすい先天性の血液凝固異常症である「Factor V Leiden(第5因子ライデン変異)」であることが判明、血栓を除去する手術が2時間かけて行われた。医師からは「対応が遅ければ、激しい脳損傷を起こして意識が戻らない状態か命を落としていたところだった」と伝えられたという。5日間入院したジョディーさんは、その後リハビリセンターに4週間入院し、現在は自宅から週ごとに理学療法士、作業療法士、言語療法士らのリハビリセッションに通っているという。ジョディーさんはこれまでの心境をこのように話している。
「キャリーズと話していた時、突然彼女の顔色が変わってとても不安そうに見えたんです。『ジョディー、どうしたの!? どこか具合が悪いの!? 何を言っているのかわからないわ』と叫び出して。でも私こそ彼女が何を言っているのか分かりませんでした。自分では普通に話していると思っていたんです。そうしたらキャリーズが『両腕を高くあげてみて』と言ったので、やってみたら右腕しか上がらず、左側が麻痺していることに気付きました。歩くこともできず左側が何も感じなくなっていたのです。キャリーズから『脳卒中を起こしている』と言われた時には信じられませんでした。脳卒中というのは、70歳代か80歳代の高齢者に起こる病気だと思っていましたから。」
「私はよく偏頭痛になっていましたが、脳卒中と診断される数週間前からは偏頭痛になる頻度が増えていて痛みも深刻でした。顔の左部分が痺れたように感じていましたが、偏頭痛になった時にもそう感じたことがあったので、あの日の朝も深くは考えていなかったのです。血栓除去の手術を受けた後、左脚の感覚が少し回復して、数日後に左腕も少しあがるようになりましたが、左手の動きはまだ回復していません。ナイフやフォークが使えず、髪をまとめてポニーテールにするにも20分はかかってしまいます。でも、手が動かなくなるよりも脳障害が残る方がもっと怖いと思いました。」
ジョディーさんは頭頂葉に深刻なダメージを受け、言葉が少し不明瞭になり、記憶喪失や集中困難、慢性疲労や一部の視界損傷などの障がいに加えて脳卒中後うつ病や不安症を抱えるようになったという。
「私は全身麻痺になっていないので、ほとんどの人が『もう大丈夫』と思うようですが、誰も私の心の中まではわかりません。病の後は自分を失ってしまったような感じになりました。何をするにも気持ちがかき乱れて集中できないから感情が爆発しやすくなるんです。医師からは、脳のダメージのせいで私が元通りの体になる確信は持てないと聞かされましたが、厳しいリハビリで日に日に良くなってはいるので、いつか左手の機能も回復できることを願っています。私を救ってくれたキャリーズには感謝しかありません。素早く兆候を見抜いて対応してくれたからこそ、私は一命を取り留めることができたのです。」
大切な旧友を救ったキャリーズさんは、後にこのように語っている。
「私たちは子供の頃からとても近い存在です。最近はなかなか電話で話す機会もありませんでしたが、あの日私が電話したのは運命だったのでしょう。酷い偏頭痛が治らないとジョディーから聞いて心配していたら、彼女の様子が急変したんです。あまりにも意味のわからない言葉を話すので、最初は電波が悪いのかと思って『今、なんて言ったの? もう一度言って』と頼んでいました。でも彼女の様子から只事ではないと気付いたんです。違う国にいるので役に立たないことをもどかしく思いましたが、間に合って良かった。脳卒中の治療は一刻を争いますから。」
今は定期的にジョディーさんと連絡を取っているというキャリーズさんは、近々会いに行く予定とのことだ。今回の件をきっかけに、2人の友情の絆はますます深まるに違いない。
画像は『Metro 2018年5月8日付「FaceTime saved woman’s life as she had stroke while talking to friend on the phone」(Picture: Caters)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)
オーストラリアのブリスベンに住む14歳と15歳の子供を持つシングルマザー、ジョディー・ウィルキンスさん(48歳)は3月12日(報道により13日とも)の朝、目覚めて激しい偏頭痛に見舞われた。ソファでしばらく体を休めていた時に、旧友のキャリーズ・シンプソンさん(48歳)からFaceTimeに電話があった。
ニュージーランドのオークランド在住のキャリーズさんとジョディーさんは、13歳の頃からニュージーランドで育った仲だった。ジョディーさんがオーストラリアへ引っ越してからも交流は続いたが、互いに忙しく6年も会っておらず、最近は電話で話す機会もほとんどなかったという。この日は久しぶりにキャリーズさんから連絡があったものの、ジョディーさんはあまりの頭痛のために電話に出ることをためらった。しかしなぜか「電話に出なきゃ」という直感が働き、電話を取った。
1時間ほど話をしていた2人だったが、キャリーズさんがジョディーさんの異変に気付いた。突然ジョディーさんの言葉が不明瞭になり、意味のわからないことを話し出したからだ。キャリーズさんはかつて友人が脳卒中を患ったことがあり、ジョディーさんの兆候から脳卒中になったのではと思った。しかし2人は離れた国からの電話中で、緊急通報するにもキャリーズさんはオーストラリアの緊急通報先を知らなかった。そこでキャリーズさんはジョディーさんの元夫に連絡し、すぐに救急車を要請するよう頼んだ。
病院に搬送されたジョディーさんは検査の結果、血栓ができやすい先天性の血液凝固異常症である「Factor V Leiden(第5因子ライデン変異)」であることが判明、血栓を除去する手術が2時間かけて行われた。医師からは「対応が遅ければ、激しい脳損傷を起こして意識が戻らない状態か命を落としていたところだった」と伝えられたという。5日間入院したジョディーさんは、その後リハビリセンターに4週間入院し、現在は自宅から週ごとに理学療法士、作業療法士、言語療法士らのリハビリセッションに通っているという。ジョディーさんはこれまでの心境をこのように話している。
「キャリーズと話していた時、突然彼女の顔色が変わってとても不安そうに見えたんです。『ジョディー、どうしたの!? どこか具合が悪いの!? 何を言っているのかわからないわ』と叫び出して。でも私こそ彼女が何を言っているのか分かりませんでした。自分では普通に話していると思っていたんです。そうしたらキャリーズが『両腕を高くあげてみて』と言ったので、やってみたら右腕しか上がらず、左側が麻痺していることに気付きました。歩くこともできず左側が何も感じなくなっていたのです。キャリーズから『脳卒中を起こしている』と言われた時には信じられませんでした。脳卒中というのは、70歳代か80歳代の高齢者に起こる病気だと思っていましたから。」
「私はよく偏頭痛になっていましたが、脳卒中と診断される数週間前からは偏頭痛になる頻度が増えていて痛みも深刻でした。顔の左部分が痺れたように感じていましたが、偏頭痛になった時にもそう感じたことがあったので、あの日の朝も深くは考えていなかったのです。血栓除去の手術を受けた後、左脚の感覚が少し回復して、数日後に左腕も少しあがるようになりましたが、左手の動きはまだ回復していません。ナイフやフォークが使えず、髪をまとめてポニーテールにするにも20分はかかってしまいます。でも、手が動かなくなるよりも脳障害が残る方がもっと怖いと思いました。」
ジョディーさんは頭頂葉に深刻なダメージを受け、言葉が少し不明瞭になり、記憶喪失や集中困難、慢性疲労や一部の視界損傷などの障がいに加えて脳卒中後うつ病や不安症を抱えるようになったという。
「私は全身麻痺になっていないので、ほとんどの人が『もう大丈夫』と思うようですが、誰も私の心の中まではわかりません。病の後は自分を失ってしまったような感じになりました。何をするにも気持ちがかき乱れて集中できないから感情が爆発しやすくなるんです。医師からは、脳のダメージのせいで私が元通りの体になる確信は持てないと聞かされましたが、厳しいリハビリで日に日に良くなってはいるので、いつか左手の機能も回復できることを願っています。私を救ってくれたキャリーズには感謝しかありません。素早く兆候を見抜いて対応してくれたからこそ、私は一命を取り留めることができたのです。」
大切な旧友を救ったキャリーズさんは、後にこのように語っている。
「私たちは子供の頃からとても近い存在です。最近はなかなか電話で話す機会もありませんでしたが、あの日私が電話したのは運命だったのでしょう。酷い偏頭痛が治らないとジョディーから聞いて心配していたら、彼女の様子が急変したんです。あまりにも意味のわからない言葉を話すので、最初は電波が悪いのかと思って『今、なんて言ったの? もう一度言って』と頼んでいました。でも彼女の様子から只事ではないと気付いたんです。違う国にいるので役に立たないことをもどかしく思いましたが、間に合って良かった。脳卒中の治療は一刻を争いますから。」
今は定期的にジョディーさんと連絡を取っているというキャリーズさんは、近々会いに行く予定とのことだ。今回の件をきっかけに、2人の友情の絆はますます深まるに違いない。
画像は『Metro 2018年5月8日付「FaceTime saved woman’s life as she had stroke while talking to friend on the phone」(Picture: Caters)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)